「集落の危機に正面から向き合えば、すべきことは自然と分かるはず」と話す広島県東広島市河内町小田の吉弘昌昭(よしひろまさあき)さん(71)。地域の13集落で設立した農事組合法人「ファーム・おだ」の組合長を務め、水稲、大豆、ソバ、小麦など84ヘクタールの大規模水田営農を展開する。土作りに肥育農家から購入した堆肥を使用して生産する特別栽培農産物「小田米」は直販を中心に販売している。農作業の合理化で余った時間を活用し、女性組織が「小田そば」や手作りみそを地場産農産物から作り、直売所「寄りん菜屋(よりんさいや)」で販売している。自治組織「共和の郷・おだ」と連携し、グリーンツーリズム用の施設を整備するなど、地域の活性化に向けたさまざまな活動も行っている。
東広島市河内町を流れる小田川沿いの山あいに、小田地区はある。「地域で一人でも多くの雇用を確保し、一円でも多く地域に還元したい」と話す吉弘組合長。ファーム・おだは、2005年に設立。現在は水稲46・6ヘクタール、大豆18ヘクタール、小麦18ヘクタール、ソバ3・7ヘクタール、野菜1・5ヘクタールを34人で耕作する。給与は時給制で、年齢、経験などによらず出役の時間に応じて支払う。オペレーター作業は一般作業より高く設定している。
UターンやIターンの若者を受け入れ、積極的に雇用している。県内の自動車会社から転職した近藤泰博さん(42)は、「農業に関心があり転職しました。毎日充実しています」と話す。
法人化で生まれたゆとりを活用しようと、複数の女性グループが結成された。カボチャやトウモロコシなどの野菜を生産。手作りみそや豆ごはんの素(もと)などの加工品製造も手がけ、地区の直売所「寄りん菜屋」で販売し、収入を得ている。
ファーム・おだ設立のきっかけは、04年に地域で実施したアンケートだ。高齢化が進む中で、地区の64%の農家が「10年後には農業をやめる」と回答した。02年には小学校が廃校、05年には公民館や診療所などが閉鎖された。
小田生まれの吉弘組合長は、広島県庁の職員として農業部門を担当、退職後に小田地区に戻った。地区の現状を目の当たりにして、「このままでは生活ができなくなる」と強い危機感を抱いた。機械を効率的に利用してコスト削減を図り、集落の全員で農業に取り組まなければ、地域は守れないと農事組合法人の設立を決意した。
設立に当たっては、10年間の利用権を設定する方式を採った。設立時に参加しなかった場合は、後からの参加は認めないとハードルを設け、全農家の参加を促した。設立までには半年をかけ、50回程度、会合を開き話し合った。
(1面)
〈写真上:集落が見渡せる小田城の展望台に立つ吉弘組合長〉
〈写真下:Iターン・Uターンで就農した従業員。一通りの農作業を経験してもらう(左は吉弘組合長)〉