東北地域で水稲直播栽培をさらに拡大しようと、農林水産省などの主催によるフォーラムが先ごろ、青森市で開催された。農家や研究者など約300人が出席した。稲作の生産コストを5割まで削減できる最新技術や実践事例が紹介された。概要を紹介する。
水稲直播栽培の現状と今後の展開
〈農研機構・東北農業研究センター 持田秀之研究管理監〉
水稲直播栽培は、稲作の大規模化や米価の下落が進む中、一層の低コスト化・省力化を図る技術として注目されている。
直播栽培技術導入のメリットは、(1)育苗、田植え作業が省略できる(2)生育ステージをずらして、収穫作業などの秋作業が分散できる(3)労働力不足や高齢化などの問題解決に貢献できる(4)余った労働力を園芸作物など、ほかの作物に振り分けられる――などがある。
しかし、倒伏しやすい、鳥害を受けやすいなど、高単収を実現する上での課題もある。東北地域の全作付面積に占める割合は、0.9%程度(2009年度速報値)にとどまっている。
鉄コーティングによって鳥害を軽減したり、作溝により出芽・苗立ちを安定化させたりするなど、新技術の開発で課題解決が進み、一層の普及が期待されている。
大規模畑作並みの米作りを目指す乾田直播技術
〈農研機構・東北農業研究センター 大谷隆二上席研究員〉
乾田直播ではロータリーシーダーを使うことが多いが、購入費用がかかる。麦用播種機のグレーンドリルを活用すると機械導入費の大幅な削減が図れる。
グレーンドリルは、(1)時速10キロ程度の高速作業ができる(2)種子や肥料を繰り出す精度が高い(3)耐久性が高い――といったメリットがある。一方、麦用播種機のため、播種の深さが30~50ミリと、寒冷地の乾田直播に適する15ミリよりも深いという課題があった。グレーンドリルの改造には、コストが発生する。
研究では、播種後にカルチパッカーで圃場に重量をかけて鎮圧し、種子の深さを15ミリ程度にした。
経営規模にかかわらず導入できる鉄コーティング湛水直播栽培
〈農研機構・東北農業研究センター 白土(しらつち)宏之主任研究員〉
水稲種子の鉄コーティングは、(1)背負式動力散布機、無人ヘリなどで播種でき、専用の播種機が不要(2)スズメの食害を受けにくい(3)種子の消毒効果がある――などメリットがある。一方、表面播種で倒伏のリスクが高い課題もある。
研究では、耐倒伏性が強い品種(「萌(も)えみのり」「はえぬき」)と鉄コーティング法を組み合わせ、高単収の実現に取り組んだ。
萌えみのりを用いた現地試験では、「あきたこまち」などの良食味品種の移植栽培に比べ倒伏は少なく、多くの圃場で600キロ以上の単収が得られた。
寒冷地に合った水稲不耕起直播栽培
〈青森県産業技術センター・農林総合研究所 野沢智裕研究管理員〉
青森県では、水稲直播栽培面積は増加傾向にあり、本年度は350ヘクタールを超えた。しかし、鳥害や雑草対策などの課題もあり、試行錯誤の段階を抜け切れていない。技術の普及、定着には(1)技術に無理がない(2)地域の水利条件に合っている(3)地域の自然、社会に合っている――が必要だ。
これら3条件を満たす省力、低コスト稲作技術として不耕起直播栽培が期待されている。メリットとして、春作業の大幅な削減、本県で多いカルガモ被害の軽減、種子コーティングが不要、出芽・苗立ちの変動が少ない、融雪水を利用した代かきで漏水の激しい圃場の漏水を軽減できる――などが挙げられる。
実証試験では、移植栽培とほぼ同等の単収が得られ、10アール当たりの労働時間は、約9時間と、移植栽培の28時間に比べて大幅に削減された。
(7面・特集)