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十分な予算措置が必要――停滞する鳥獣害対策(2面・総合)【2010年8月4週号】

事業仕分けで交付金減額
 深刻化する野生鳥獣の被害対策を検討するため、農林水産省は20日、鳥獣害対策に先進的に取り組む市町村長から提言を聞いた。首長らは鳥獣被害の現状と被害対策の内容を報告し、必要な鳥獣害対策予算の確保を訴えた。現行の「鳥獣被害防止総合対策交付金」は昨年の事業仕分けの判定に基づいて大幅減額され、鳥獣被害対策が滞っている状況も報告された。地方経済が疲弊し、自治体の財政状況が厳しい折、地方負担での鳥獣害対策の実施は難しい。2011年度予算編成に向け、効果的な対策と十分な予算措置が欠かせない。鳥獣被害対策を巡って話し合った。

〈A〉鳥獣害対策の特措法の施行に合わせて創設した「鳥獣被害防止総合対策事業」の08、09年度の予算額は28億円。10年度予算は、事業仕分けで「(事業の実施は)自治体の判断に任せる」と判定され、5億円余りを減額し、地方の自主性・裁量性を高めるため都道府県への「交付金」に見直した。「鳥獣害対策は重要だが、事業は国が行うべきではない。国は、県をまたがる動物の移動などに関する情報管理に特化すべきだ」などと整理された。
〈B〉市町村長から提言を聞く会で、滋賀県多賀町の久保久良町長は、10年度の鳥獣害対策費の削減を「現場の落胆は大きい」として十分な予算額確保を求めた。獣害防止対策協議会を設置、緩衝帯の整備や侵入防止柵の設置を進めてきた。「08年、09年と先行した地区は効果を上げているが、今年度に予定していた地区は事業が進まない。不満の声が大きい」と訴えた。
〈A〉市町村の被害防止計画の策定や事業実施に向けた地域の合意が整い、申請が増えてきた矢先だった。農林水産省では「今年度の事業実施の申請は、当初予算の2倍強に上り、生産現場の要望に十分に応えられなかった」(生産局生産支援課)とする。
〈C〉鳥獣被害の問題は、農作物の金銭的な被害にとどまらず、中山間地域を中心に高齢農家の営農の断念、耕作放棄地の増加を加速する点が指摘される。気象災害と異なり、効果的な対策を打たなければ、被害が拡大していく特徴もある。予算削減の結果、要望に応えきれないのは失態だ。
〈B〉長野県大町市の牛越徹市長はニホンザルによる被害の急増を報告。「農家の生産意欲の減退が深刻だ。農地保全は危機的な状況で、集落の存立にも影響する」と訴えた。
〈A〉鳥獣被害対策への取り組みの歴史の長い島根県美郷町の樋ケ司副町長は、侵入防止柵の設置など対処療法的な事業は、施工も保守も財政負担が大きいことを十分認識し、事業規模は小さくても持続可能なものにする必要性を述べた。
〈B〉山田正彦農相は、地域の実情と意見を聞き、「耕作放棄地の解消や食料自給率向上などを図る上でとても重要だ。鳥獣害対策は国の責任でやらねばならない」と述べた。農林水産省は24日、民主党農林水産部門会議に、11年度の予算概算要求に「鳥獣被害緊急総合対策」113億円を盛り込む案を示した。現行対策の大幅強化を目指す。
〈C〉鳥獣害対策は、侵入防止柵の設置などを行えば短期的な効果を得られるが、それで完結するものではない。自治体の連携による広域的な対策も重要で、人材育成など時間を掛けて取り組む必要もある。生産現場の意見を踏まえた効果の上がる対策と必要な予算の長期にわたる安定確保が求められる。

(2面・総合)

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