▼政府は、2012年度予算を「日本再生元年予算」と位置づけた。東日本大震災からの復興とともに新産業創出など成長力強化に尽力し、経済成長と財政健全化の両立を実現するという。
▼重点5分野の一つに農林漁業の再生を掲げる。農地集約化と若者の新規就農、6次産業化などの施策を通じ、若者が魅力を感じ、創意工夫を生かせる農業への改革を推進するとした。前提に据えるのは、高いレベルの経済連携推進と両立可能な競争力強化だ。
▼世界共通ルールによる貿易体制を目指した世界貿易機関(WTO)の今次交渉は、事実上頓挫した。150を超える国と地域が参加したが、先進国と新興国の対立で一致点を見いだせなかった。
▼貿易交渉の主軸は、環太平洋連携協定(TPP)をはじめ少数国間の自由貿易協定(FTA)などに移る見通しだ。しかし、経済的に強い国同士が結びつき、他国を排除する経済圏のブロック化を招く懸念がある。WTOは内外無差別が原則で、協定国以外を排除する経済連携は、自由化を促す例外との位置づけだった。
▼WTO交渉で、日本は「多様な農業の共存」を主張した。農業の価値は農産物生産にとどまらず、国土や自然環境、伝統・文化を含む多面的機能を守ると訴え、各国の事情に配慮を求めた。
▼TPP交渉参加に前のめりの政府からは、こうした考えすら消えたようだ。高齢化や後継者不足は地域の景観や伝統・文化の危機でもある。競争力強化だけで賄えない価値の継承も政策の柱に位置づけるべきだ。