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今週のヘッドライン: 2009年9月アーカイブ

090923_01.jpg 「『小笹農園の米や野菜が無いと困る』と、買ってくれる人に頼られる農業経営体になりたい」と話す、滋賀県草津市北山田町の小笹長造さん(43)は、水稲8ヘクタールのほか、ハウス1.3ヘクタール(28棟)でダイコンやメロンなどを栽培する。家族4人で小笹農園を経営し、農産物は大半を直売。近隣の顧客には注文を受けてから精米して宅配するなど、喜ばれるサービスを実践する。品目の組み合わせで労力を分散するほか、中古機械を自ら整備するなど、作業の効率化と経費削減にも努めている。スーパーの要請で、かつて草津市で生産が盛んだった葉付きダイコンの契約栽培も2005年からスタート。注文に沿った品質、規格、供給量を確保し、信頼を得ている。

090923_02.jpg 顧客の一人、草津市上笠の伴弘子さん(65)は「忙しい時もすぐに精米して持ってきてくれる。おいしいので何人かに紹介した」と、小笹農園の魅力を話す。
 米は、生産量の半分を飲食店向けに販売。個人客も約30人いる。「キヌヒカリ」と「ヒノヒカリ」が半分ずつのブレンド米として販売し、価格は10キロ4300円だ。
 ハウスでは、ダイコンとホウレンソウ、メロンを中心に、ミズナ、ミブナなどを組み合わせる。メロンは「アムスメロン」や「マスクメロン」などを栽培。主に中元の贈答用として、約150人の顧客に直販する。
 ダイコンは「桜風」を栽培。葉付きダイコンとして、近畿圏を中心に86店舗(2月末現在)を展開するスーパー「イズミヤ株式会社」との契約栽培に取り組む。
 ダイコン1本当たり100円が手元に残るよう、市場を通じて販路を探した。「種を播く前から出荷価格が決まっているとモチベーションが違う」と小笹さんは話す。
 仕入れを担当するイズミヤ農産部の中内佳宏さんは「農法にこだわり、甘味が強く葉もおいしいと好評です。春先の人気商品としてお客さまにも浸透しています」と評価。ダイコンの販売が好調なことから、小笹農園のホウレンソウやミズナも優先的に仕入れてもらっているという。

(1面)

<写真上:贈答用として、米と野菜を箱に詰める小笹さん>
<写真左:玄米は13度に設定した保冷庫で保存する>

 鳩山由紀夫内閣が発足し、農相に衆院議員の赤松広隆氏が就任した。17日の会見では「マニフェスト(政権公約)で国民と約束した農業者戸別所得補償は、2011年度からスタートできるよう10年度中に制度設計する」と述べた。

090923_03.jpg ――どのように農林水産行政に取り組むのか。
 赤松 これまで努力し、お金をかけてきたにもかかわらず、農林水産業は衰退の一途をたどっている。食料だけでなく、環境・水・緑などいろんな意味で農業の再生・発展なくして、日本の社会、特に地方の再生はありえない。一番の柱は戸別所得補償制度であり、着実に実行する。農林水産行政は、非常に幅広く、国民生活に直結している。この1、2年が、本当に日本の農林水産行政が大きく転換し、また発展をした時期だったと言われるようにしたい。
 ――戸別所得補償の実施に向けた進め方は。
 赤松 2011年度から責任を持って実施する。10年度中に制度設計しないと間に合わない。いろんな調査やモデル事業も実施する。省内に完全実施に向けた関係部局の作業チームをつくって、大臣、副大臣、政務官の三役と連携しながらピッチを上げて準備を進める。法案は来年の通常国会にかけることになる。
 ――必要な財源の確保は。
 赤松 すべての事業を洗い直し、無駄を省く。農業土木は見直すが、現実には無駄な事業は減っている。農業土木の見直しだけで、戸別所得補償の財源とした1兆円を確保できるわけではない。09年度補正予算の農地集積加速化事業なども含めて精査したい。

(2面・総合)

 農林水産省は11日、2007年度の農業・食料関連産業の経済計算(速報)を発表した。
 国内生産額は産業全体の約1割に当たる97兆9959億円。このうち農業生産額は、9兆5962億円で、農業・食料関連産業の約1割を占める。農業所得に当たる農業純生産は、飼料や原油高騰などの影響を受け、前年度比5.5%減の3兆2287億円となった。
 農業生産額の内訳は、耕種部門が6兆260億円で全体の6割を占める。品目別では、米は生産量が増加したものの価格が前年割れとなり、前年度比1.3%減の1兆8165億円。野菜はトマトやキュウリなどの価格下落で0.1%減の2兆507億円となった。果実は2.9%減の7748億円で、ミカンなどの価格低迷により下落幅が最も大きかった。
 畜産部門は2兆9968億円で、生乳生産量の減少などから酪農が1.8%減の8719億円となった。一方、肉用牛は生産量の増加などで1.9%増の8089億円だった。農業サービス部門は5734億円(同6.0%)。
 国内生産額から中間投入(生産に要した物財やサービスの費用)を引いた農業の国内総生産(付加価値額)は、4兆3908億円となった。

(2面・総合)

 群馬県富岡市上小林の山本貞司さんは82歳の現在も、生産現場で活躍する現役の産業動物獣医師(NOSAIの指定獣医師)だ。山本動物病院を経営し、家畜と併せて犬猫などペットの診療を行っている。畜産業に携わってきた60年間に、農家と厚い信頼関係を築いてきた。近年は家畜を飼う農家が減少しているが、残った農家はまだまだ地域で頑張っている。「わたしを信頼してくれる農家がいる限り、その期待に応えていきたい」と話している。

090923_04.jpg 右に左にうねる道を、慣れた手つきでハンドルを切って峠を越えていく山本さん。
 「トウモロコシのサイロ詰めだね。ちょっと牛の様子を見に寄らせてもらったよ」「遠いところご苦労さま。相変わらずお元気ですね」--と大きな声が飛び交う。
 デントコーンの収穫作業を進める甘楽町秋畑の酪農家・佐嶋学さん(59)、まゆみさん(60)夫妻を訪ねた。
 「畑のイノシシ被害がひどいの。何とかならないかしら」とまゆみさん。30年以上の長い知り合いだからこそ、難しい問題も山本さんには気さくに相談できるし一緒に考えてもくれる。
 山本さんの仕事の手際は今もあざやか。産後の起立不能の牛を診てもらったとき、体勢が悪いからとロープを使って軽々と牛の体を動かし、姿勢を整えたという。「小柄なのに、何て人かしら。年齢を感じさせない人」と驚いた。
 山本さんに診療を依頼している畜産農家は、現在は8戸ほど。下仁田町栗山の岩崎美佐子さん(69)もその一人だ。肥育牛40頭ほどを飼育している。
 飼養管理では、突発的な牛の病気が心配。万一の相談相手は、やはり山本さんだ。すぐに駆け付けられないときも、「牛や牛舎の様子をよく知っているから電話でも的確に指示してくれる。心強い」と話す。鼓張症で牛が倒れたとき、山本さんのアドバイスで食用油を飲ませて難を逃れた。
 山本さんは「農家から『牛が元気になった』『もうかった』という声を聞くのが励み。それを支えに続けてこられた」と振り返る。

(3面・暮らし)


<写真:「乳牛の健康のためにも、良いサイレージをたくさん作ってくださいね」と山本さん(右)ハーベスターの前で佐嶋さん夫妻と話す>

 施設園芸では冬に向かい、加温の機会が増える。原油価格が上昇傾向にある中、安定的な経営には、省エネルギー対策は欠かせない。基本的な対策について農林水産省が作成した「施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル」をもとにまとめた。

▽機器の点検・清掃
 暖房装置の効率低下や故障などを最小限に抑え、長期間使用するには、定期的な点検・清掃が欠かせない。最低でも1年に1回は行う。説明書に従い、熱交換面(缶体)やバーナーノズル周辺のすすなどを定期的に取り除く。

▽適切な温度管理の準備
 栽培する品目や品種、生育ステージごとに、生育適温の温度域がある。トマトでは、昼気温の適温は20~25度、夜気温は8~13度、地温は15~18度。過度の省エネルギー対策は、生育不良や品質低下、収量の減収などを招くので、作物の生育適温を確認する。

▽内張りカーテンの確認
 ハウス内に内張りカーテンを展張すれば、保温効果が向上。多層被覆にするほど保温効果は高く、天井カーテンだけでなく側面カーテンを複層化することでも効果は得られる。多層被覆を行うと、石油燃料使用量の30%以上の削減が見込まれる。
 内張りカーテンの破れやつなぎ目、すそ部のすき間が無いか注意。特に出入り口周辺のカーテンのすき間やサイド換気部の接続部分、ハウス谷間部分などにすき間ができやすい。

▽チェックシートで確認
 農林水産省ではマニュアルに連動したチェックシートを作成している。暖房機の点検やハウスのすき間確認など、基本的な省エネルギー対策を各自でチェックできるのが特徴。チェック項目にはマニュアルの解説ページ数が書かれ、対策の詳細が分かりやすい。マニュアルとチェックシートは、農林水産省のホームページ(http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/nenyu_koutou/n_energy/index.html)からダウンロードできる。

(7面・特集)

 農業環境技術研究所(農環研)と農林水産省農林水産技術会議事務局は10日、土壌中の微生物相を解析して病害軽減などにつなげようと取り組むプロジェクト研究を報告するシンポジウムを開いた。シンポジウムでは、土壌微生物のDNA抽出技術や連作障害と微生物のかかわりなどの研究成果を紹介。土壌の物理性や化学性に生物性を加味した土壌診断法の開発・普及などが期待されている。

090923_05.jpg 農環研は、関係機関と連携し、2006年からプロジェクト研究「土壌微生物相の解明による土壌生物性の解析技術の開発」に取り組んでいる。研究成果として(1)土壌生物の解析技術(2)生物性の評価法(3)多くの情報を解析できるシステム(分析結果のデータベース化)――などを紹介した。
 土壌中の微生物は、土壌病害の発生や作物の生育に密接に関係するとされている。しかし、従来の解析方法(培養法)では全細菌の約1%しか培養できず、微生物の種類や生態などの生物性を十分に把握できなかった。
 農環研では、土壌から微生物のDNAを直接抽出して解析する「PCR―DGGE法」を開発した。土壌中の微生物相を把握できるのが特徴だ。
 解析可能なDNAは細菌とセンチュウ、糸状菌。土壌の採取方法などを定めた解析マニュアルを作成し、インターネットで公開している。
 DNAは、「DGGEゲルバンド」にバーコード状のバンドとして表示される。バンドの数が微生物の豊富さ(多様性)を示し、バンドの位置が、微生物の種類を表している。

(11面・営農技術)

<写真:シンポジウムには、行政担当者など約200人が参加した>

090923_06.jpg 【神奈川支局】全国的にも珍しい食用バラの出荷を、平塚市城所の横田敬一さん(43)が今年の夏から始めた。安全性に配慮して栽培したバラを県内や都内のイタリアンとフレンチレストランに出荷。バラを食べる珍しさと色、味、香りが楽しめると人気がある。

 横田さん方では、施設3棟・約630坪でブライダル用のバラ「スプレーウィット」など12品種をロックウール栽培していたが、施設1棟・約210坪を食用バラ専用(土耕栽培)に切り替えた。
 友人のバラ農家や公園のバラなど約100種類を口にして、渋味が少なく香りが特徴的な7品種を選定した。現在、濃いピンクの「イブピアッチェ」、純白の「アンタルティック」、アイボリーの「フェアビアンカ」の3種類を栽培する。
 安全性に気を使い、化学農薬は使わず生物農薬や天然物由来の農薬で防除。肥料は「切り花と同等の品質を確保したい」と有機質肥料と化学肥料をバランスよく施肥する。
 出荷先は県内や都内のイタリアンとフレンチのレストラン計7店。サラダやアイスなどのデザートのほか肉料理との相性も良く、女性客に人気がある。
 横田さんは「年末には全7品種が出そろう予定です。新しい花の楽しみ方を提案し、花の文化が広がってくれるとうれしいです」と話している。

<写真:食用バラを手に横田さん。花の新しい楽しみ方を提案する>

090923_07.jpg 【岩手支局】「これだと思った本物の商品を提供することが経営理念」と話す、遠野市宮守町の阿部幸光さん(60)は、市内でも珍しいジャージー種を導入している。今年7月には、牧場の近くに店舗を構えて、自家産生乳を使ったソフトクリームの販売を開始。昨年からは、収入の増加を図るため、自家製の牛ふん堆肥を販売するなど、多角的経営を行っている。
 阿部さんは、先進農家を積極的に視察し、飼育や経営について研究。ソフトクリームショップ「まきばのおもてなし」をオープンさせる。店舗は牧場の頂に建設した。「この環境で育った牛から生まれた商品だということを知ってほしかった」と話す。
 昨年からは、自家製堆肥を販売(10キロ300円)。利用者から「野菜に使用したら育ちが良くなった」と好評だという。

<写真:「夏山冬里方式」を導入する阿部さん>

090923_08.jpg 【長崎支局】繁殖和牛100頭を飼養している南島原市深江町の廣瀨(ひろせ)佳剛(けいごう)さん(25)は、生後7日齢から2カ月半の子牛の管理に木製の枠を利用している。
 この枠は幅約200センチ、奥行き90センチ、高さ90センチ。五つに仕切られ、5頭が入るようになっている。
 哺乳(ほにゅう)の管理がスムーズになったことで、発育のバランスも向上。弱い子牛も安心してミルクを飲めるようになった。
 牛舎では、5、6頭の子牛が同じ部屋にいるが、この枠に入らないと餌が食べられない作りになっている。これまでは子牛がけんかするため、弱い牛は発育のバランスが悪く、病気に気づくのが遅れることがあった。
 「知り合いの畜産農家が使っていたので分けてもらいました」と話す廣瀨さん。自らも枠を作って活用している。

<写真:「子牛が同時に餌を食べても、けんかがなくなりました」と廣瀨さん>

090923_09.jpg 【愛媛支局】「丹原もぎたて倶楽部(くらぶ)」(会長=佐伯高至さん)は、西条市丹原町の8戸の観光農園が集まり12年前に結成した。すべての農園が同一料金で旬の果物が取れる農園へ利用客を案内。8戸の農家が連携し、情報や技術を共有することで、一年を通して果物などが取れる周年農園として機能し、利用客の要望に応える。
 事務局を務めるのは、山内雅明さん(52)、千賀子さん(52)、郁美さん(25)の親子3人で経営する「四季彩農園」。2ヘクタールで、イチゴ、モモ、ブルーベリー、ブドウ、イチジクの5種類を栽培する。
 同園では、発芽から収穫までを写真で解説し、名前や品種を手作りのポップで説明。郁美さんは「裏話や雑学・秘密を話すと、興味を持ってもらい、お客さんとの会話が弾みます。そこから農業に関心を持ってもらえれば」と期待を寄せる。

<写真:取れたてのイチジクを手に郁美さん>

090923_10.jpg 【福井支局】福井県農業試験場では、特産のミディトマト「越のルビー」を品種改良し、一層おいしく、病気に強くするための研究を進めてきた。2月に品種登録された、「越のルビーさやか」は、越のルビーに比べ、収量や糖度が高く、食味も優れている。
 越のルビーさやかは、実を部分的に壊死(えし)させるタバコモザイクウイルス病に抵抗性があり、樹勢が強いため少ない肥料で栽培できるのが特徴だ。
 JA若狭などは今秋からの本格的な出荷に向け、研修会では会員間の栽培管理の統一が確認された。
 JA若狭ミディトマト生産協議会の中野利久雄会長は、「さらに、品質の向上に努めたい」と期待を込める。

090923_11.jpg 【宮崎支局】都城市山之口町の南絹子さん(58歳、乳用牛10頭、ハウスキンカン20アール、水稲70アール)は、自家産キンカンで「完熟きんかんシロップ漬け」を作り、出荷先の道の駅などから人気を得ている。
 栽培する中で、「規格外(B・C品や小玉)で何か加工品はできないか」と思案。地元普及センターの指導のもと2000年に商品化し、直販と地方発送を開始した。「完熟キンカンを煮る時の火加減や時間をマスターするのに苦労しました」と南さん。シロップに漬けているので、長期保存が可能だという。

<写真:「風邪予防にも」と南さん>

 【京都支局】「魅力あるむらづくりを」――笠置町切山地区では、地区の有志で「きりやま21」を結成し、荒廃竹林の整備や、竹炭の販売などに取り組んでいる。
 竹林整備は伐採に適している冬場に実施。これまで年に3回行い、「電線にひっかかる竹がなくなり、道路の景観も良くなった」と会長の上村(かみむら)秀夫さん(65)は笑顔で話す。
 竹炭作りは当初、ドラム缶の窯で製造していたが、昨年、移動式炭化炉を購入し、量産が可能に。竹林整備と竹炭作りは本格化してきた。
 竹炭は130グラムを袋詰めにして年間200~300袋出荷。町内の観光施設や温泉施設で「きりやま竹炭」として販売している。

 ▼米の需要拡大にパンやめん、菓子など加工利用の拡大が期待されている。原料米の価格など課題も残るが、需要が増えれば水田の利用促進にもつながる。人口減少とともに主食用米の消費も減ると予測され、用途の多様化は農業生産面からも重要だ。
 ▼米粉は昔からの身近な食材だが、従来の製粉方法では粉が粗く、パンを焼いても味が悪かった。用途拡大は小麦粉並みの微細な製粉を可能とした技術改良がもたらした。小麦の代替利用にとどまらず、高い吸水性など米粉の特性を生かした食品開発も進められている。
 ▼生産現場では、低コスト生産の促進や多様な生物の保全が可能な生産技術の確立、地球温暖化の影響回避など多くの課題を抱える。新たな局面を開くため、技術開発への期待は大きい。特に民間では採算性が合わない基礎的な研究分野などは研究機関の連携を図って一体的に進める必要がある。
 ▼ところが農林水産省は、先にまとめた2010年度の組織・定員要求案で、長く研究行政を担ってきた農林水産技術会議と同事務局の廃止を打ち出した。大臣官房に設置する「技術・環境政策部」とする格下げだ。その一方、事故米事件の反省から、農相に直属する「農林水産行政監察・評価本部」を新設し、各部署の業務監察や会計監査を行う。本部長は局長ポスト。
 ▼技術会議は、当時の河野一郎農相の指示を受け、農林水産技術の飛躍的発展を目指して1956(昭和31)年に発足した。農林水産省設置法に「特別な機関」と位置づけ、会長と委員6人の有識者で構成する。有識者による会議としたのは、長期的で幅広い視野に立って試験研究の基本計画を企画しようとの意図がある。歴代の事務次官にも事務局長経験者は多い。
 ▼不祥事の再発を防ぐ組織改革や規律強化は重要だが、それは組織内の問題だ。国内農業の発展を後押しする研究・技術開発の推進にこそ一層力を入れるべきではないか。

090916_01.jpg 農家13人で作る愛媛県上島町・岩城島のNPO法人「豊かな食の島岩城農村塾」は、町と連携してIターン就農希望者の受け入れ体制を整えている。昨年7月の活動開始以降、2人が県外から移り住んだ。1週間で島の暮らしを体験できる「ワーキングホリデー」など町の事業で農業研修を担当するほか、就農後の技術指導といった支援を実施。就農希望者を呼び込むため、県外で島のPRにも取り組む。理事長の脇義富さん(62)=レモン、「せとか」などかんきつ2ヘクタール=は「新しい人を受け入れるには、行政と実際に面倒をみる住民組織の協力が必要です」と話している。

 「レモンとかんきつを作りたかった。ワーキングホリデーで脇さんの講義を聞き、『ここでまちがいない』と決めました」と話す、仲平〈なかだいら〉まゆみさん(56)。昨年9月に初めて岩城島を訪れ、今春に就農した。
 借地40アールのうち、現在はレモンや「せとか」「たまみ」などを26アールで栽培し、残りはこれから耕す予定。以前、脇さんが借りていた場所を引き継いだ。農村塾で栽培指導を担当する脇さんの圃場が横にあり、困った時はすぐ相談できるという。
 農村塾のメンバーは40~70代で、かんきつ類や野菜の生産、養豚を行っている。半数が女性だ。脇さんは「組織の目的は島の活性化。農業や観光、福祉など何にでも取り組みます」と強調する。
 現在は、Iターン希望者の受け入れのほか、特産化を目指すたまみの栽培講習会やPR活動、子供の農業体験などを実施している。
090916_02.jpg ワーキングホリデーは町の定住促進事業の一つで、農村塾の立ち上げと同時期に設けられた。1週間のうち、援農体験を3日間、釣りや島内めぐりなど観光を3日間行い、島の魅力を伝える。
 昨年7月から現在まで、ワーキングホリデーの受け入れは延べ25人。参加者は10~50代の男女で、大半が農業の経験を持たない人だ。
 窓口となっている町に申し込みがあると、農村塾メンバーの中で援農先を調整する。参加者となるべく多くのメンバーが知り合えるよう、日ごとに受け入れ農家を替える。
 事業では、交通費と民宿の宿泊費は参加者負担だ。援農に対し、1日当たり町は5千円、農家は2500円(保険代込み)を参加者に支払う。

(1面)

<写真上:仲平さんにたまみの栽培管理を教える脇さん。「仲平さんたちが来てくれて、ありがたいです」と話す>
<写真左:ワーキングホリデーでの援農の様子。昼食は農家が提供し、参加者と交流を図る>

 農林水産省は8日、「2008年地球温暖化影響調査レポート」を発表した。年平均気温が平年に比べ約0・5度高かった昨年は、北海道を除く各都府県から水稲、果樹、野菜、畜産などで生育不良や品質・収量の低下、繁殖成績の低下といった多くの影響が報告された。被害回避への対応では、高温耐性品種や適応技術の開発・導入が進んでいる。気象情報の活用や亜熱帯作物の導入など特徴的な事例も紹介している。

 水稲は、関東・北陸や東海・近畿地域を中心に33県で出穂期から登熟期(7~9月)の高温で白未熟粒が発生した。斑点米カメムシ類も多発(14県)し、登熟期の高温で粒の充実不足(8県)や胴割れ粒の発生(7県)などもみられた。さらに以前は見られなかったカスミカメムシやミナミアオカメムシが各地で生息・多発している。
 白未熟粒や胴割れ米の発生抑制対策では、適正施肥や深水管理など水管理の徹底が挙がった。収量・品質の安定に向け、高温耐性品種の導入や遅植えなども実施されている。また、高知県では気象庁のデータを活用し、白未熟粒の発生危険度が高まった場合に注意報を発信。水管理の徹底などを呼びかけている。

(2面・総合)

090916_03.jpg 「明日を拓(ひら)くわい化栽培技術をめざして」をテーマに第56回全国リンゴ研究大会が3~4日、盛岡市で開かれた。リンゴ産業を発展させるため、技術力の向上と情報発信、消費拡大に取り組むことを決議。高品質果実の低コスト生産、技術の研修や意見交換を行った。

 リンゴは、景気低迷の影響などで近年になく販売価格が低下。資材の高騰も著しく、生産者は極めて厳しい環境に直面している。
 大会では〈1〉優良品種への改植、わい化栽培、新技術などの導入〈2〉毎日くだもの200グラム運動などの推進〈3〉果樹経営支援対策事業の継続、火傷病や害虫の侵入阻止のための監視体制強化――などの決議を採択。「生産者」から「経営者」への意識改革を進め、意欲ある担い手育成に努めることを掲げた。
 研究発表では三つの成果が報告された。

(2面・総合)

<写真:大会では研究発表や意見交換が行われた>

090916_04.jpg 「この土地の自然環境を生かし、牛の自活で生み出される自然に最も近い牛乳を目指してきた」とは、岩手県田野畑村で山地酪農に取り組む吉塚牧場の吉塚公雄さん(58)だ。妻の登志子さん(52)とともに、長男・公太郎さん(27)と次男・恭次さん(24)が牧場経営に携わる。同じく山地酪農を営む近隣の熊谷牧場と共同でプライベートブランド「田野畑山地酪農牛乳」を直販。家族で支え合いながら、自信を持って牛乳を届けている。

 山林が約6割を占める田野畑村。標高400~450メートルの傾斜地にある吉塚牧場では、放牧地10ヘクタールに経産牛15頭を放牧している。牛が群れをなして草をはむ光景が見られる。
 取材当日、山地酪農牛乳を愛飲しているという茨城県龍ヶ崎市の岩井辰士さん(57)が牧場を訪れていた。岩井さんは「あっさりと飲みやすく、小学生のときに給食で飲んだ牛乳の味がします。放牧地を見て、吉塚さんと話をして、ますます安心して牛乳が飲めます」
 牛の管理で、25項目の生産者規定を設定した。〈1〉放牧地面積1ヘクタール当たり成牛2頭まで〈2〉牧区はできる限り区切らない〈3〉放牧地には化学肥料・薬品類(除草剤・殺虫剤など)は一切使用しない--などだ。
 搾乳牛1頭当たりの年間搾乳量は2500~3000キロで、平均の乳脂率は約3・8%、無脂固形分率は約9%。濃厚飼料は与えず、放牧地の牧草と自給飼料を給餌している。
 山地酪農牛乳は、1996年に販売を始め、現在、県内外に600人以上の顧客を持つ。吉塚さんは「応援してくれるお客さんがいてくれて、とてもありがたい」という。

(3面・暮らし)

<写真:牛や放牧地の説明をする吉塚さん(左)。牧場には度々顧客が訪れる>

090916_05.jpg 山口県柳井市余田の農事組合法人「柳井ダイヤモンドローズ」は、花きの環境保全型農業などを認証する「花き産業総合認証」(MPS)を取得し、切りバラの有利販売につなげている。ヒートポンプの導入やハウスの変温管理で省エネ栽培を実践。適切な肥培管理や防蛾(ぼうが)灯などを設置して農薬の使用量を抑えている。鮮度保持も重視していて、出荷箱には湿式の縦箱を採用し、採花日を記載して出荷。市場から「品質のよさをPRする重要な基準」と評価されている。

 「環境問題への関心が高まる中、環境に配慮した栽培方法をPRし、差別化を図っている」と、理事を務める中田隆之さん(61)は話す。ハウス約8千坪(従業員4人、パート20人)で「シェリル」など約70品種のバラを養液栽培。年間で約270万本を出荷する。
 柳井ダイヤモンドローズでは生産者が対象のMPSのうち、2008年9月に環境への負荷を抑えた栽培方法を認証する「MPS-ABC」、09年6月に流通工程での品質管理を認証する「MPS-Q」を取得している。
 同法人では、一昨年の石油価格の高騰を機に省エネ栽培を始めた。ヒートポンプ70台を導入して暖房機と併用するほか、ハウスのカーテンを二重被覆にして保温性を高めている。冬は夜にハウス内の設定温度を下げる変温管理も実践する。
 重油代は以前の3分の1に減少し、温度管理費用を約3割削減できた。「MPSは有利販売だけでなく、生産コストの削減にもつながるので取り組むメリットは大きい」と中田さんは話す。
 MPS-Qの取得の際は、出荷までの工程を見直してダイヤモンドローズ独自の品質管理システムを構築した。採花後は5分以内に水揚げ剤が入ったバケツに移すことや、バケツは30分以内に冷蔵庫に保存して鮮度を保つなどの基準を設けている。

(9面・流通)

<写真:収穫が終わった列は茎を押し倒す。「収穫しない列が一目瞭然(りょうぜん)なので、パートさんも作業しやすい」と中田さん>

090916_06.jpg 諏訪東京理科大学(長野県茅野市)とマテリアルサイエンス・ナガノ(同県岡谷市、中澤富夫社長)は、共同で植物の光合成促進機能を持つ新素材を開発した。ピンクの農業用資材(フィルムとネット)が、太陽光を吸収し、農作物の成長に有益な波長に変換するというもの。現在は14戸の農家が実証試験に取り組み、野菜や果樹で増収、栽培期間の短縮、糖度の上昇など好結果を得ている。来年4月からの販売を予定している。

 新素材は、太陽電池に使用される蛍光染料をペットボトルに使われている樹脂に混ぜて製造した。フィルムはピンクの新素材を保護するため、透明フィルムで挟んだ三層構造になっている。
 フィルムはハウスの被覆材として使用。ネットは果樹などにかぶせて使う。中澤社長は、「光変換光合成促進農法(通称=ピンク農法)」と名付け、特許を出願している。
 通常、植物が光合成を行う際に有効な波長域は400~700ナノメートルといわれる。諏訪東京理科大学システム工学部の谷辰夫教授は、「この蛍光染料は、短波長域(300~550ナノメートル)の太陽光を長波長域(610ナノメートル前後)に変換し大量に放射する」と話す。
 昨年夏から諏訪地方や山梨県北杜市などで実証試験を実施。トマトやホウレンソウ、コマツナなどの野菜、リンゴやブドウなどの果樹で効果を試してきた。

(11面・営農技術)

<写真:「コマツナを播種して1週間、発芽は良い」と話す原五郎さん(左)と中澤社長>

 石破茂農相は11日、記者会見で、2009年度補正予算に盛り込んだ食料供給力向上緊急機械リース支援事業(250億円)について、「本日中に採択者(助成対象者)を決定する」と述べ、事業を執行するよう指示したことを明らかにした。新政権を発足する民主党は補正予算の執行を一部停止する方針だ。しかし、農家の応募は約1万9千件(400億円分)に上り、申請の審査も終了した中、執行されなければ秋の機械作業など生産現場が混乱すると懸念されていた。
 リース支援事業は、クローラー式トラクター(25馬力以上)や汎用コンバイン、野菜収穫機、穀物の遠赤外線乾燥機などを導入する際、総リース料の一部(機械経費の2分の1以内)を助成する。

(2面・総合)

090916_07.jpg 【新潟支局】十日町市伊達丙の有限会社「結い」(岩崎乾一代表)は、「なぐも原・結いの里」(飯塚茂夫代表)で、6年前からサルナシの栽培を始めた。収穫体験やオーナー制度を導入するほか、果実をジャムや果実酒などに加工・販売し、好評を得ている。

 結いの里は、都市部の人たちを中心に田植えや野菜収穫などの体験を通じ、持続可能な新たな村づくりを行う拠点として2002年にオープンした。そこで農作物の栽培管理などを行うのが有限会社結いだ。
 サルナシ栽培担当責任者の宮沢八州男さんは、「雪国でも栽培でき、収穫期が米と重ならないので、サルナシを栽培することに決めました」と話す。
 6年前に約240本のサルナシの木を植え、現在700本まで増植し、年間約300キロの果実を収穫。収穫した果実はジャムや果実酒、アイスクリームなどに加工し、販売している。
 同社ではサルナシのオーナー制度を行っており、サルナシの木1本に1万円を出資すると、園内のサルナシの木に出資者の名札が付けられるほか、果実や加工品が届けられる。
 サルナシはマタタビ科の植物。果実は3センチほどの大きさで、無毛のキウイフルーツだ。
 「サルナシはビタミンCなどの栄養価が高く、健康に良いだけでなく美容にも効果があり、女性の方にもお薦めです」とアピールする宮沢さん。「今後は生産量をさらに増やし、サルナシを十日町の特産品としてPRしていきたい」と意気込む。

<写真:「今年は昨年より良い出来だ」と宮沢さん>

090916_08.jpg 【岩手支局】南アフリカ原産の野菜「アイスプラント」の栽培に、一関市川崎町のドンと市かわさき協同組合(佐々木正義代表)の組合員が、本年度から取り組んでいる。
 6月下旬からは、道の駅かわさきで販売を開始。不思議な形状と高い栄養価で消費者の注目を集め、好調な売れ行きに関係者も期待を寄せている。
 アイスプラントは、ハマミズナ科で乾燥に強く、土壌の塩分を吸収する能力を持つ「塩生植物」。肉厚な葉と、表皮に発達する、ブラッター細胞(体内に侵入した塩分を隔離するための細胞)が大きな特徴だ。
 生産者の一人、滝沢美和子さん(62)は「初めての試みなので、栽培も手探りだった」と話す。6月下旬からは、100グラムのパック詰めにして道の駅かわさきで販売。最盛期には一日30パック出荷し、即日完売したという。

<写真:「初めての試みなので、栽培も手探りだった」と話す滝沢さん>

090916_09.jpg 【三重支局】木曽岬町の黒宮園芸2代目、黒宮武史(くろみやたけふみ)さん(32)は、約49.5アールのガラス室で、スパティフィラムを中心とした観葉植物を栽培している。
 武史さんの父・武さん(60)は、同町が作付面積県内1位のトマトをハウス栽培していたが、25年ほど前、農家10戸で一緒に観葉植物栽培へ転換した。
 多様な品種がある観葉植物の中から、安定した需要のあるものを中心にムラのない生産をしていこうと、親子で経営方策を相談。武史さんは武さんの指導のもと、良品生産を目指し、温度や水の管理、病害虫の発生防止などの技術を身に付けていった。
 「おまえの指示を待つ」と、一人前になった武史さんに経営を全面的に任せている武さん。頼もしくなった息子に期待をかけている。武史さんは「スパティフィラムの花言葉『爽快(そうかい)・すがすがしい』と思えるよう、前向きでやりがいのある農業経営をしていきたい」と話す。

<写真:武史さんと妻の美紀子さん>

090916_10.jpg 【富山支局】特産のラッキョウを守るため、富山市細入地域では、有志が「やるまいけらっきょう作り会」(谷井定夫代表=71歳・富山市楡原)を結成し、栽培に力を入れている。収穫したラッキョウで加工品を製造・販売するほか、栽培面積の拡大や後継者育成にも力を注ぐ。
 同会は2002年、谷井さんが30人ほどの有志とともに結成。ラッキョウ生産組合が高齢化で解散に追い込まれたことから、「このまま地域の特産品がなくなってはいけない」と立ち上がった。
 現在、富山市片掛(細入地域)など旧村内の計2ヘクタールの畑で栽培し、収穫したラッキョウを、酢漬けなどに加工して販売している。酢漬けは、甘酢漬けとトウガラシ漬けの2種類。通年で酢漬けを作るため、7月に収穫したラッキョウを塩漬けにして保存する。
 細入地域では同会などを実行委員会に、毎年、収穫時期の7月には、道の駅細入周辺で「らっきょうの体験掘りフェア」を開催。試食コーナーでは、ラッキョウのかき揚げなどが振る舞われ、県内外の多くの利用客に喜ばれている。
 谷井さんは「細入ブランドのおいしいラッキョウをさらに広めたい」と話している。

<写真:塩漬けラッキョウの皮むき>

090916_11.jpg 【北海道支局】美唄市の農業生産法人「株式会社西川農場(西川崇徳代表)」では、この春生まれた子ヒツジたちがアスパラガスを食べてすくすくと育っている。
 アスパラを出荷する際に長さを切りそろえるために出る根元の部分(ボトムカット)は、通常廃棄されるが、このボトムカットをヒツジに与えてみると、嗜好(しこう)性が非常によく、発育もいいことが分かった。
 現在、地元のアスパラ生産組合からボトムカットを無料で提供を受け、5月から10月にかけて与えているが、肉質も臭みが少なく、うま味も向上した。
 西川農場では現在、サフォーク種を主体に約70頭(繁殖母ヒツジ約30頭)を飼育している。
 アスパラを本格的に与え始めたのは2007年ごろから。アスパラ農家はボトムカットの廃棄に手間をかけず、西川農場では飼料代の節約と、両者とも経費の削減にもつながっている。

<写真:アスパラガスを競い合って食べるヒツジ>

 【島根支局】大田市波根町の農事組合法人「はね営農組合(竹下正幸代表=62歳・62人)」では、耕作放棄地の解消と経営基盤の拡充を目的に、今年の水稲作付け約9・5ヘクタールのうち1ヘクタールで、養鶏用の飼料用米を栽培している。
 栽培品種は、熟期が遅く、他品種と収穫が重ならない主食用の「みほひかり」。同組合では、地元養鶏農家の鶏糞(けいふん)を肥料に、耕畜連携の循環型で、この栽培に取り組む。
 みほひかりは、比較的多収性の品種であることから、同組合では、反当800~900キロの収穫を目標にしている。価格は、玄米1キロ当たり40円(もみ32円)と、主食用に比べてかなり安いが、10アール当たり5万5千円(今年は最高9万3千円)の助成が、生産者にとって強い味方だという。
 JA石見銀山営農推進資材課の胡摩田弘孝課長は「飼料米をすべて養鶏場が買い取るのは、島根県だけの取り組み。地元貢献にもつながるので、JAも協力したい」と話す。

 ▼給食は、学校に通う子どもたちにとって楽しみな時間だ。最近は校内にレストランのような部屋を設けたり、バイキング形式や食材に地域特産品を使うなど内容も充実している。
 ▼脱脂粉乳と鯨肉のように世代ごとの共通体験も学校給食ならでは。ある企業の職員アンケートでは、男女や年代を問わず思い出に残る人気メニューのトップはカレーだった。年齢が高い層は、米飯給食ではないがパンに付けたりスープで食べたという。
 ▼米飯給食は1976年に本格導入された。文部省(当時)は、米飯を基本にした望ましい食習慣を身に付ける観点から、85年に週3回の実施目標を定めた。週1・9回だった全国平均の実施回数は07年度にようやく週3回に到達した。週4回の高知県を筆頭に26府県が週3・1回以上実施している。
 ▼高知県南国市は週5回の米飯給食を実現した。学校に家庭用電気炊飯器を導入して炊きたてご飯を提供する。食べ残しが減り、大釜の炊飯に比べ調理員の負担が軽減された。地域農業に対する子どもたちの関心が深まるなどの効果が注目されている。
 ▼しかし、南国市の事例をモデルに、農林水産省が本年度補正予算で10億円を計上した家庭用炊飯器導入支援事業への申請が振るわない。6月末に締めた第1回公募は、11市町村28校で376台(約1千万円)の採択にとどまった。
 ▼背景には、学校(市町村)と生産者団体による地元産米の利用計画策定など準備の手間や、農林水産省予算のため生産者団体が炊飯器を購入して学校に貸与する形にしなければならず、電気工事費は学校負担とするなど事業の煩雑さが指摘されている。同省は12月まで公募を続け申請を促す方針だが、せっかくの成功事例を全国に広げる意図があるなら、利用者の便宜を第一とした仕組みに見直してもらいたい。

090910_01.jpg 堆肥を土作りに使用した地域ブランド米「じゃんご米」を支えよう――秋田県仙北市田沢湖神代地区の農家と県外の米小売店が協力して運営する任意組織「田沢湖牛銘柄確立推進組合(モートピア神代)」は、30頭の繁殖牛経営に取り組み、米作りに不可欠な牛ふん堆肥を地域に供給している。モートピアは、1997年に設立され、12年にわたって活動を続けてきた。モートピアを応援する消費者組織「じゃんご倶楽部〈くらぶ〉」を立ち上げ、生消交流にも積極的だ。モートピアの顧問を務めるJA秋田おばこの藤村正喜組合長は「生産のプロと流通のプロが責任を持って消費者に米を届けたいと活動してきた。消費者との信頼関係を築く交流を進め、さらに地域を元気にしていきたい」と話す。

 「じゃんご」とは、秋田の方言で田舎のこと。じゃんご米は、牛ふん堆肥を10アール当たり1~1・5トン施用し、県の特別栽培米やJAこだわり米の基準で栽培した「あきたこまち」のブランド名だ。化学肥料はチッ素換算で10アール当たり4キロ以下、農薬は1成分を1回と数えて10回以下に抑えている。
 今年は「JA秋田おばこ神代有機米生産研究会」を中心に、農家54人が61ヘクタールを作付けた。昨年の集荷量は487トンだ。
 モートピア神代は、農家14人と千葉県、静岡県、東京都の米小売店主10人で構成。農家2人を常時雇用し、30頭の和牛を飼育する。昨年は、子牛22頭を販売した。
 堆肥は、牛舎2棟で集めたふんに酵素を混ぜ、堆肥舎で切り返し、十分に腐熟させて作る。

 神代地区の米は、食味が良いと高評価を受けてきた。藤村組合長は「冷害で不作の年でも、牛ふんを使った農家は被害が少なく、全国から引き合いがあった」と振り返る。
090910_02.jpg ブランド米として流通が軌道に乗ったものの、91年の牛肉輸入自由化などから、牛の飼養頭数が減少。堆肥の確保が困難になっていた。また高齢化が進み、重労働の堆肥散布も敬遠されつつあったという。危機感を持った県外の米小売店は95年、堆肥散布機12台の購入に対し、資金援助を申し出る。これを機に、1人当たり40万円の出資金を元手に生産者と米小売店が共同出資し、モートピア神代を設立した。

 静岡市で片山米店を経営する組合員の片山岳彦さん(48)は、「じゃんご米は、甘味があり粒がしっかりしている。神代地区の環境や農家の人柄も含め、この米なら消費者の方に薦められる」と評価する。

<写真上:堆肥を手にする藤村組合長。「切り返しを十分に行い、使いやすく、水田に適した堆肥に仕上げている」という>

 480議席を争った衆院選挙は民主党が過半数を大きく上回る308議席を獲得、大勝した。16日に特別国会が開かれ、民主党中心の政権が誕生する。民主党はマニフェスト(政権公約)で農業者「戸別所得補償制度」を柱とする農政への転換を掲げた。米、麦、大豆など計画生産を実施する販売農家を対象に農産物の販売価格と生産費との差額を補てんして農家所得を下支えし、食料自給率向上や農山漁村の活性化を目指す。所要額は1兆円。2011年度からの導入に向け、10年度はモデル事業や制度設計を行う方針だ。また、「税金のムダづかい」見直しを打ち出しており、09年度補正予算を含め、全面的な予算の組み替えなどを進めるとしている。

(2面・総合)

 14年前から活動する広島県安芸高田市高宮町川根地区の農家女性を中心としたグループ「ふぁみりー・ねこの手」のラベンダー製品作りに、今年6月から小さな子どもを持つ30代の女性たちが加わった。メンバー5人中4人が70代後半~80代となっていたが、新たな力を得て、一層活気づいている。作業時間を定めないなど子育て中の女性が参加しやすいように環境を整えている。グループの代表、熊高順子さん(56)は「地域のいろいろな人がかかわれる活動にしていきたい」と話す。

 高齢のメンバーがお手玉と手まりの製作、若手のメンバーが包装と分担して作業を進めながらも、笑い声が絶えない。
 1歳の息子と一緒に来ている熊高拡美ひろみさん(32)は「気楽に手伝いに来られるのがいい。おばあちゃんからお手玉の作り方を教わったり、話を聞くのが楽しい」と話す。
 若手が参加するきっかけは今年6月、ラベンダーの収穫期に、順子さんが拡美さんたちに室内作業の手伝いを頼んだこと。高齢のメンバーが花を摘み取る間、オイルの蒸留などの作業を行った。「ちょうど母親仲間で『子どもがいても何かしたいね』と話していたところでした」と拡美さんは説明する。
090910_03.jpg ラベンダーは1995年、景観作物として地元住民が河川堤防に植えたものだ。これを生かそうと、当時、野菜作りをしていた高齢の農家女性グループが96年にふぁみりー・ねこの手を作り、ラベンダーの栽培管理と加工・販売を始めた。
 長年活動する中、高齢で引退した人もいて、メンバーが減っていた。
 年代・性別を問わず「栽培だけ」「縫い物だけ」でも協力してくれる地域住民を募集中だ。

(3面・暮らし)

<写真:ふぁみりー・ねこの手のメンバー。「若い人が入ったことで、この活動の魅力を地域の人に再認識してもらえると期待しています」と熊高さん(後列右)>

 中山間地域を中心に、野生鳥獣の農作物被害が深刻化している。NOSAI制度は、台風など自然災害のほか獣害も補償し、農業経営の安定を支援。一方で、未然防止への取り組みも大切だ。NOSAI団体では、農家が講じる対策を支援しようと、さまざまなリスクマネジメント(RM)支援活動を展開している。

090910_04.jpg NOSAIの組合等では、イノシシやシカなどの侵入防止柵、電気柵、捕獲おりなどの設置費用の一部助成をはじめ、狩猟免許の取得・更新費用の一部負担などを実施。被害の深刻な地域では、NOSAI職員が狩猟免許を取得し、地域の有害鳥獣の駆除隊に参加している。農林水産省が8月に取りまとめた調査では、08年度に侵入防止柵の設置・助成を行ったNOSAIの組合等数は92と、前年度より16増加。わな猟免許を持つNOSAI職員数は4月現在、190人で前年より26人増加している。
 専門家を招いて勉強会を開くNOSAIの組合等も増えてきている。

(5面・NOSAI)

<写真:京都府・NOSAI丹後が6月に開いた鳥獣害対策学習会の様子。年々農家の関心が高まっている。(写真提供=NOSAI京都)>

 NOSAI置賜(置賜農業共済組合、平弘造組合長)では、家畜共済の損害防止事業の一環で、牛に棒状の永久磁石(パーネット)を無償投与している。胃に入れる磁石は、輸入乾草にまれに混入する針金などを牛が飲み込んだ時に、くっつけて事故を予防するものだ。「病気や事故の予防が大切」とする畜産農家の声に応え、扇風機など機材購入費の助成や削蹄の推進などにも取り組んでいる。

 NOSAI置賜では、1戸当たり飼養頭数の2割を上限に、パーネットの無償投与を実施する。年間300本を準備し、本年度は8月中旬までに32戸、215頭に投与した。
 「元気な牛を長期間飼うため、病気や事故につながる原因を少しでも減らしたい」と話す、山形県南陽市荻で酪農を営む山田要一さん(53)=経産牛50頭。廃用牛からたくさんの金属性異物が出てくるのを見た経験があり、ほとんどの牛にパーネットを投与してきた。
090910_05.jpg NOSAI置賜では、畜産の損害防止事業として、削蹄や寄生虫の駆除材の無償交付、損害防止用の器具や機材を購入した際の3割助成などを実施する。
 毎年5月に、NOSAI部長を通じて、全組合員に損害防止事業の一覧を配布。広報紙も利用し、広くPRしている。

(5面・NOSAI)

<写真:塩化ビニールのパイプを牛の口に入れる岩瀬獣医師(右)と山田さん>

 愛媛県大洲市徳森の有限会社グリーンサラダは、施設栽培の暖房費などの削減を可能とする「培地冷却型養液栽培システム」を開発した。高設栽培の培地に温水や冷水を循環させるパイプを埋設し、局所的に加熱・冷却する。培地からの水分の蒸散を防ぎ、保温効果を高める専用栽培パネルを設置したのが特徴だ。温度管理は培地に特化することでハウス内全体の暖房費を抑制。ホウレンソウなどを周年栽培し、年間2400万円を売り上げている。
 
 システムは、ロックウールや砂、パーライトなどをブレンドした培地を使用。埋設したパイプには、ボイラーで温度調整した温水や地下水などの冷水を循環させ、培地温を一定に保つ。
 外気温の変化が培地に影響しないよう、栽培ベッドは、白色の発泡スチロール製の専用栽培パネルをかぶせる。培地と外気を遮断し、夏季は直射日光による培地の加熱を防ぎ、冬季は保温効果を高めている。
090910_06.jpg 外気を遮断すると通気性が悪いため、根への酸素供給を考慮し、栽培ベッドを包む素材には不織布を採用。培地も通気性を考えたブレンド割合だ。
 専用栽培パネルの利用と培地の局所加熱・冷却技術は、グリーンサラダの特許技術。現在同社では1300平方メートルのハウスでシステムを導入している。

(11面・営農技術)

<写真:7月から8月の最盛期には、1日に約150キロ収穫する>

 農林水産省は8月28日、2009年産水稲の8月15日現在の作柄を発表した。東日本・日本海側を中心とする早場地帯(19道県)の作柄は、「平年並み」(10県)ないし「やや不良」(9道県)となった。
 遅場地帯(27都府県)も、7月以降の天候が日照不足傾向で分けつが抑制されている。東海や九州を中心に12府県が「やや不良」となった。
 ほぼ収穫を終えた早期水稲(5県)の作柄は宮崎が作況指数109、鹿児島が106の「良」、高知は103の「やや良」、徳島は99で「平年並み」、沖縄は95で「やや不良」となった。早期水稲の予想収穫量は5県で13万8480トン。

(2面・総合)

090910_07.jpg 【福島支局】「あぶくま伝統野菜をつくる会」(二本松市岩代地区、菅野(すげの)寿雄会長=55歳、会員12人)では、地域の伝統作物を発見し、保護・栽培(70アール)する活動を行っている。

 07年から、県立安達東高校の生徒と一緒に地元農家を訪問し、自家採種で栽培を続けている野菜の栽培方法や特性を調査。10種類のサンプルの提供を受け、同校で試験栽培してデータを収集した。
 その結果、固有種(在来種)と呼べる「岩代西念寺柿」「岩代昔胡瓜(きゅうり)」「岩代地南瓜(かぼちゃ)」「岩代伝統里芋」「岩代茶豆」「岩代五葉黒豆」「岩代土用小豆」の7種類を発見。成分分析の結果、一般品種よりも亜鉛やリン、マグネシウムなどのミネラル分が多く、食品として十分に価値があることが判明した。
090910_08.jpg 菅野会長は「この資源を活用するため、学校給食週間には、二本松全域の小中学校に納豆を提供する予定です。今後は、地元加工業者や農家と連携して、豆腐、納豆、漬物などを商品化して、販売したい」と話す。

<写真左:生育を記録する安達東高校の生徒。生徒たちは、生育状況や収量の調査、種の保存を行っている>
<写真右:岩代五葉黒豆を栽培する会員の国分眞さん>

090910_09.jpg 【新潟支局】農地の所有者や地域農業者だけでは解消が困難な地域の耕作放棄地に牛を放牧し、放牧地として活用する試みが新潟市秋葉区で始まった。
 この試みは、行政やJA、NOSAIなどで構成する「新潟市秋葉区耕作放棄地対策プロジェクトチーム」(事務局=秋葉区農業委員会)が、畜産農家と協力して行っているもの。
 朝日椿谷地区の約2ヘクタールの耕作放棄地のうち、約1ヘクタールの中山間地に電気牧柵を設置し、市内の農家が繁殖用和牛(雌牛)2頭を放牧した。牛が雑草を採食した後、牛の所有者が飼料作物を作付け、放牧地として農地の再生を図る予定だ。
090910_10.jpg 秋葉区産業振興課の高岡勝幸係長は「所有者一人では立て直すことが困難でも、関係機関が協力することで耕作放棄地を解消できます」と話す。

<写真左:耕作放棄地の雑草を食べる放牧牛>
<写真右:プロジェクトチームのメンバーが電気牧柵を設置した>

090910_11.jpg 【高知支局】高温による水稲の品質低下が、西日本を中心に問題化している。高知県でも3年前、中生の主力品種「ヒノヒカリ」に、高温障害に伴う白未熟粒が多発した。
 そこで、高知県では昨年、九州で育成された高温耐性新品種「にこまる」を県内5カ所で導入。今年は四万十町をはじめ、25戸の農家が773アールで、試験栽培に取り組んでいる。
 今年は7月の日照不足や8月の豪雨に遭ったものの、順調に生育。稲作農家をはじめ関係機関などでは、有望品種として期待を寄せている。
090910_12.jpg 県環境農業推進課の坂田専門技術員は「生育ステージはヒノヒカリとほぼ同じなので、これを現場で活用し、高温障害が顕著な地域に導入していきたい」と話す。

<写真左:登熟期を迎えたにこまるの実張り状況を確認する栽培農家の一人、弘田重久さん=74歳>
<写真右:にこまる(右)とヒノヒカリの玄米。にこまるの方が白未熟粒が少なく、粒張りもよい>

 【秋田支局】田んぼの中にできた小さなギャラリー――。これは、横手市平鹿町浅舞中野の鈴木清吾さん(46)が、撮影した写真を展示したものだ。農作業の合間に撮った草花などの作品が、道行く人の目を楽しませている。
090910_13.jpg 作品は、ラミネート加工した14枚を展示。
 鈴木さんは「11月ごろまで展示する予定です。写真は浅舞酒蔵の社員が更新しているブログ(夏田冬蔵・絵日記)にも掲載しています。見学できない人はブログを見てください」と話している。

<写真:農作業の合間に撮った草花の写真を飾っている農道で鈴木さん>

 【長野支局】「何より楽しく農業をしたい」と、観光果樹園「珍梨園(ちんりえん)」を経営する須坂市上八町の山上正建(やまかみまさたけ)さん(64)は、昨秋から、秋の味覚を楽しみに訪れた人たちを、アコーディオンの演奏でもてなし、話題になっている。
 果樹園の名前は、世界中の希少品種を栽培していることから名付けた。約30アールの園内では、都内の青果店で1個3千円を超える価格で販売されているナシ「かおり」や、糖度が高い洋ナシ「カリフォルニア」など、洋ナシを中心に41品種を栽培。
090910_14.jpg アコーディオンを始めたのは2年前で、山上さんは毎日練習を重ね、三橋美智也さんや千昌夫さんらの演歌約50曲をマスターした。訪れた人たちが試食を楽しむ間、余興として演奏している。
 作物に音楽を聴かせると味が良くなるという話があり、「演歌を聞かせたら甘くなった」と山上さん。昨年、来園者から「洋ナシが多いから、洋曲を聞かせたら」とアドバイスを受け、カーペンターズなどの洋曲をプラスして、ナシ園全体に愛情込めて演奏している。「今後も曲のレパートリーを増やしていきます」と意欲的だ。

<写真:得意の「北国の春」を披露する山上さん>

090910_15.jpg 【熊本支局】「牛乳の消費を促進しよう」と、県立熊本農業高校(熊本市元三町)の畜産科では、3年生7人を中心に、校内で飼育している乳牛から搾った生乳などを利用した生キャラメルの製造に取り組んでいる。
 今春卒業した生徒が考案したレシピを基本に研究を重ね、プレーン味のほか、抹茶・きな粉・コーヒー・カボチャ味の全5種類を開発。パッケージや原材料名一覧表も生徒たちの手作りだ。
090910_16.jpg 生徒らは「商品開発や販売を通して、今後も牛乳の消費を後押ししていきたい」と話している。

<写真左:生キャラメルを製造・販売する畜産科の生徒。最前列が3年生>
<写真右:生徒が作った生キャラメルのパッケージ>

090910_17.JPG 【宮崎支局】都城市高木地区の農事組合法人「きらり農場高木」では、法人化をきっかけに女性グループ(加工班)を組織し、地元産野菜の規格外品を有効利用して、総菜の実演販売に取り組んでいる。
 同法人で理事を務める、山中美代子さん(54)の呼びかけで集まった加工班は現在17人。2008年5月から道の駅都城で「がね」(サツマイモ、タマネギ、ニンジン、ニラを用いたかき揚げ)の実演販売をスタートさせた。
090910_18.JPG 同法人では、サツマイモ、大豆、ジャガイモを栽培している。これらの規格外品で作る、コロッケやおから入りのがねは、都城市の「ぼんち市」などで販売。現在、加工施設を持っていないため実演販売だけだが、「夢はおから入りがねを全国的に広めること」という。
 山中さんは「加工施設建設には経費が掛かります。まず『器より中身』で自分たちの活動を充実させ、法人構成員や地域の理解・協力を得た上で実現させたい」と意気込む。

<写真左:ぼんち市での実演販売>
<写真右:「がね」。都城地区では、「カニ」を方言で「がね」と言い、出来上がった形が「カニ」に似ていることから、かき揚げを「がね」という(1パック4枚入り200円)>

 ▼衆院選挙で国民は「政権交代」を選択した。民主党は480議席のうち308議席を獲得、単独で過半数を大幅に超える与党となった。新たな政権は9月半ばに発足する。
 ▼「歴史的圧勝」と報道されているものの、小選挙区の投票総数を比較すると議席数ほどの大きな開きはない。民主党候補は約3300万票を得たが、自民党候補も約2700万票を確保した。差は約600万票だ。投票総数に占める割合は約47%と約39%で8ポイントの差にすぎない。
 ▼議席数が開く理由は、1選挙区で一人の当選者を決める小選挙区制度の仕組みのためだ。国民の投票行動が政権選択に直結する。特に二大政党が争う選挙は、一方の政党が圧倒的な勝利を収める場合がある。郵政民営化が争点となった2005年の衆院選では自民党が大勝した。
 ▼その反面、小選挙区制には、当選者以外に投じられた票が死票になるという欠点がある。そこで衆院選挙は、小選挙区制と、政党に投票して当選者数を配分する比例代表制を同時に行う並立制となっている。ただし、小選挙区で落選した候補者が比例代表で復活当選する重複立候補の仕組みに違和感を持つ人も多い。
 ▼さて民主党は、マニフェスト(政権公約)で11年度に米、麦、大豆の「戸別所得補償制度」を導入すると訴えた。新政権発足と同時に実現に向けて動き出すことになろう。米の生産調整を含む水田農業政策見直しは選挙前から議論となっていた。現行制度は、生産調整実施者と非実施者の不公平感が強いなど打開策が求められている。政策を具体化する中で農家が納得できる枠組みを打ち出し、農業・農村の将来展望を開いてほしい。
 ▼不安もある。農政転換が生産現場に混乱を招かないよう十分な議論と配慮が必要だ。また、農業政策で与野党が対立する時、選挙結果を受けて政権交代となるたびに政策の変更が伴うのも困る。"猫の目"だけはご免被りたい。

 小規模農家の野菜などを集荷・販売する愛知県常滑市大谷の農業ベンチャー企業「株式会社M-easy〈(エム・イージー)〉」(戸田友介代表=27歳)では、「やさい安心くらぶ有限責任事業組合」を2008年9月に設立し、安全・安心な野菜作りと販売に取り組んでいる。やさい安心くらぶでは、自家用野菜の余剰分を農家約30人から集荷し、名古屋市など7カ所で移動販売。都市の消費者が喜ぶ声を農家に伝えることで、生きがいづくりにつなげているという。過疎地域に若者を定住させて活性化を図る事業も、産学官共同で今月からスタート。農業を核に、若者や高齢者が豊かに暮らせる地域づくりを目指している。

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 午前9時、名古屋市緑区の喫茶店のテラスに、朝集荷したばかりの約30品目の野菜が並ぶ。コンテナごとに農家の名前や無農薬・減農薬などを表示。らっきょう漬けや梅干しなどの加工品や米、花、卵なども販売する。
 やさい安心くらぶは「安心できる野菜を求める都市の消費者に、旬の新鮮な野菜を提供したい」と、始められた。集荷・販売は、戸田さんと溝辺育代さん(29)、遠藤頌太〈しょうた〉さん(24)が担当する。
 「農家がどのような思いで栽培しているのか、おいしい食べ方や農家の知恵も伝えたい」と溝辺さん。野菜ソムリエの資格を持ち、珍しい野菜は農家に調理法を教えてもらうほか、自ら調理して客に伝えるという。

090903_02.jpg やさい安心くらぶでは、移動販売車を使い、テラスや駐車場を借りて週5日販売する。7カ所の売り場を確保し、それぞれ100人ほどの常連客がいるという。「子どもを持つ家族や仕事帰りの会社員など、求める人がいる場所に届けることに価値があります」と、戸田さんは話す。
 出荷農家には「できるだけ農薬を使わないでほしい」と依頼。M-easyが50アールで栽培する無農薬・無化学肥料の農産物も販売する。
 出荷農家は、定年退職を機に野菜作りを始めた人が多いという。栽培面積は、1アールから1ヘクタールまでさまざま。現在は、名古屋市近郊の約30人と取引していて、出荷農家数は増えている。
 無農薬のジャガイモは500グラムで200円、ミニトマト1袋200円、長ナス1本100円――など。販売価格は、スーパーの価格を参考にして設定している。

(1面)

<写真上:「茶豆は豆ごはんにするとおいしいです」と客に調理法を説明する溝辺さん(右)と遠藤さん(中)>
<写真左:市田さん(右)の圃場で野菜を集荷する戸田さん>

 農林水産省は8月31日、2010年度予算概算要求を省議決定した。総額は09年度当初予算額対比15・1%増の2兆9480億円。地域資源を生かした生産や環境保全、介護などの生活支援を行い、集落機能の維持・再生を担う「地域マネジメント法人」の設立・育成に56億円を計上。09年度で第2期対策が終了する中山間地域等直接支払制度は団地要件などを緩和して継続実施する。農業所得増大に向け、米粉や飼料用米など新規需要米の生産拡大など水田の有効活用対策は拡充。耕作放棄地を活用したバイオマス資源の生産拡大など新たな分野への挑戦も打ち出した。また、収益性向上対策や担い手対策、食育推進など目的や手段が類似・重複する事業は統合・メニュー化してわかりやすく使いやすい補助金体系とする。

 NOSAI関係予算
 予算概算要求のうち、NOSAI関係予算は、前年度比86億6707万円(8・6%)増の1089億7914万円を計上している。
 共済掛金の一部を国が負担する「共済掛金国庫負担金」は、86億4379万円増(16・4%)の612億4907万円。各NOSAI事業の加入実績や果樹共済と畑作物共済の掛金率改定を踏まえ、適正な事業運営に必要な額を要求した。「農業共済事業事務費負担金」は前年度と同額の455億8515万円。
 関連事業では、衛生画像データーを用いて水稲の単位当たり収穫量を推定する「衛星画像を活用した損害評価方法の確立事業」に前年度同額の2億5128万円を計上。乳房炎などを早期発見し、発病を予防する「家畜共済損害防止事業交付金」には6億3432万円(前年度比174万円減)を要求した。

(2面・総合)

 農林水産省は8月31日、地方農政事務所の廃止などを含む2010年度組織・定員の要求案を省議決定した。事故米問題を受けて、農相に直結して各部署の業務監察や会計監察などを行う「農林水産行政監察・評価本部」(仮称、以下同)を新設するなど、大幅な組織再編を打ち出した。実施は10年秋を予定。
 地方農政局の下にある地方農政事務所(38拠点)や地域課(132拠点)、統計・情報センター(176拠点)を廃止し、65拠点の「地域センター」に集約する。
 米の売買・管理業務は、本省と地方農政局が担当し、地域センターでは行わない。一方で、米トレーサビリティー法の施行などに伴う追加的業務に必要な人員を確保するため、定員数は再編前と同程度となる。
 本省では、業務実施とチェック機能を分離するため、米の流通監視業務を消費・安全局に移す。「食の安全」の視点から業務を監視・調整する体制を、全部局に整備。大臣官房の協同組合検査部を「検査部」に再編し、事業振興業務を行う部局の検査機能を集約する。

(2面・総合)

 町に1軒しかなかった豆腐屋の廃業をきっかけに、栽培する大豆を使った豆腐の製造・販売に昨年11月から取り組むのは、秋田県北秋田市坊沢地区の農事組合法人坊沢営農組合(長崎克彦代表、組合員68人)。添加物を一切入れず、にがりだけを使った豆腐は、「大豆そのものの味がする」と好評だ。副代表の石井文雄さん(73)は「親せきなどへ手みやげとして持っていくと、とても喜んでもらえる。この豆腐を地域の特産品に育てていきたい」と話す。豆腐は地元スーパーなどで1個125~150円で販売するほか、仕出し店や学校給食にも納品している。

090903_03.jpg 豆腐作りは女性7人と男性3人が担当。4人ずつローテーションを組み、1日に300~400個を製造する。食味の向上や品質保持効果を期待して、大豆を浸す水などには、アルカリイオン水を使用する。
 営農組合では大豆「リュウホウ」約21ヘクタール、水稲「あきたこまち」約42ヘクタールを栽培する。大豆の10アール当たり収量は200キロ程度だ。豆腐用に、年間で大豆24トンを用意する。
 豆腐は、地元の大手スーパー、JAの宅配サービスなどで販売。仕出し店や地元の学校給食にも納品している。商品は「坊沢の木綿とうふ」(400グラム125円)、「坊沢の絹とうふ」(同)、「坊沢の寄せどうふ」(600グラム150円)だ。

(3面・暮らし)

<写真:組合員のみなさん。「若い人が取り組みるよう雇用環境を整えることが課題」と石井副代表(後列右端)>

 山口県では7月下旬、「中国・北九州豪雨」で防府市と山口市を中心に水稲や大豆の冠水、土砂崩れによる圃場への土砂の流入などの被害が出た。NOSAI山口県中部(山口県中部農業共済組合、澤重剛二組合長)では、21日から見回り調査を実施。被災農家には、NOSAI部長を通じて被害申告を忘れないよう呼びかけている。

090903_04.jpg NOSAI県中部では、雨が弱まった21日午後から見回り調査を開始。被害申告を促すパンフレットを作成し、組合の広報紙も急きょ企画を変更して被害申告を促す特集を組んだ。パンフレットと広報紙は、NOSAI部長を通じて管内の農家に配布した。
 山口市下小鯖のNOSAI部長、柴崎孝臣さん(65)=水稲40アール=は、担当地区の通行止めが解除になった24日に見回り調査を行った。
 柴崎さんは「わたしも水稲が冠水したが被害は少ないほうだ。大きな被害を受けた農家の復旧に向け、NOSAI部長として被害申告の漏れがないよう呼びかけている」と強調する。

(5面・NOSAI)

<写真:冠水した大豆の圃場(山口市小鯖地区、7月21日撮影)>

 「『食べるイグサ』でイグサの需要を興し、地域に貢献したい」と話す、熊本県八代市鏡町のイナダ有限会社社長の稲田剛夫さん(66)。無農薬でイグサを生産(約50アール)し、粉末加工して食品会社に提供している。併せて、インターネットなどで、イグサ食品の通信販売に取り組む。商品は、お茶やあめ、そうめん、青汁、アイスクリーム――など10種類以上に広がっている。

090903_05.jpg 稲田さんがイグサの食用生産を始めたのは1992年。熊本県のイグサ生産面積がピークを過ぎ、減少し始めたころだ。畳表の関連資材を販売していたため、売り上げを支えるためにも、熊本産イグサのイメージアップになる新規需要をさまざま検討した。
 情報収集する中、中国では昔から漢方薬として利用されていることを知り、食品加工を思いついたという。しかし、イグサを食品加工する技術や事例はどこにも見つけられず、食品会社の人たちとの異業種交流に参加したり、県の試験研究機関に相談したりして、粉末加工の技術を開発した。
 イグサ食品の販売は当初、なかなか伸びなかった。数年前から、マスコミなどで、イグサには食物繊維が豊富で抗酸化作用など健康に良い機能性成分を含んでいるとの研究発表が紹介されるようになり、ようやく認知されてきたという。

(9面・流通)


<写真:イグサの選別作業をするパート職員と稲田さん(右から2人目)>

 「メロンの無灌水(かんすい)栽培では、高品質の果実ができます」と話す福島県喜多方市山都町の小川光さん(61)は、山間地に建てたパイプハウスで、商品単価の高いメロンやトマトなどの有機栽培を実践する。乾燥に強い品種を選んで多本仕立てにし、畝の部分は深溝にして地域資源の落ち葉堆肥を投入。害虫対策では、周囲に天敵のすみかとなる野草帯を設ける。経営する農場では新規就農希望者を受け入れ、農産物の栽培だけでなく販売や経営指導なども行っている。
 
090903_06.jpg 小川さんは、JAS有機認証の圃場1・5ヘクタール(パイプハウス70棟)で、メロンやトマト、インゲン、イチゴなどを栽培する。圃場は自宅前と3・3キロ離れたところにあり、現在、6人の若者が農業を学んでいる。
 これまで灌水設備のない山間地は、施設園芸には適さないとされてきた。しかし、福島県農業試験場などで27年余り勤め、メロンやトマトなどの栽培を研究してきた小川さんは「山間地は気温の日較差が大きく、強風の害を受けにくい。排水が良好で病害虫が少ないなど、果菜類にとっては高品質を得やすい条件にある」と説明する。

(11面・営農技術)

<写真:「メロンの実が確定したらカボチャを成らせるといい」と、研修生に助言する小川さん(前列中央)>

090903_07.jpg 【広島支局】呉市豊浜町豊島のかんきつ農家の女性で構成する加工グループ「オレンジ・シーガールズ」(大上サザ子代表=73歳、メンバー5人)のゼリー部では、地元産のレモンを使ってスプレッドやマーマレード、レモン酢を作り、観光客などから人気を呼んでいる。
 ゼリー部は大上さんと道法和子さん(67)の2人で構成。「豊浜町の特産品を残したい」と17年前から共に加工品作りを続けている。
 材料のレモンは、ほとんど2人の自家産。足りない分は島内の農家のものを使用する。収穫期に皮のきれいなレモン約1トンを搾り、冷凍庫で保存。加工作業は年に10回程度、卸先の注文を受けてから行い、スプレッドの製造量は年間約450個だ。

<写真:作業する大上さん㊧と道法さん>

090903_09.jpg 【埼玉支局】皆野町商工会は、皆野町、皆野柿生産組合、JAちちぶの協力のもと、2004年に「柿酢プロジェクト事業」を立ち上げ、「柿のわ事業」を展開している。事業を進めるに当たり、商工会女性部、ボランティアの「しぶがき隊」(鈴木茂隊長、隊員19人)などを結成。柿畑の再生のほか、柿を使った特産品作りに取り組んでいる。
 開発された商品には「秩父の柿酢」「のむかきす」のほか、柿渋の持つ抗菌・消臭効果を生かした「シブガキ男の石鹸(せっけん)」がある。
 柿渋は、青い未熟柿を準備し、杵(きね)と臼でつぶし発酵。手作りの搾り機で搾って作る。


<写真:柿を使った商品。手前が「シブガキ男の石鹸」>

090903_10.jpg 【北海道支局】士別市内の農業青年で構成するグループ「BLUE SEEDS」は、果皮が硬い「まさかりかぼちゃ」の種子交配試験を実施して、食味の良い品種「まさかり岩男」を完成。新しい特産品としてPRしている。
 大友仁司代表(28)は「『まさかり岩男』は見た目のごつさや、堅い果皮のイメージに反して、甘味があり、なめらかな舌ざわりの品種に仕上がっています」と話す。
 昨年は250株を栽培して500キロを収穫、加工業者に依頼し250キロのペーストにした。
 大友代表とメンバーが営業活動を行った結果、札幌市内のケーキ店が、プリンやロールケーキなどの原料として採用、柔らかな食感や甘味が好評を得ている。
 今年はメンバーで分担して700株を栽培していて、ペーストのほか、真空パックでのカット野菜としての売り込みも考えている。

<写真:カボチャ畑で大友代表(右)とメンバーの石黒さん>

090903_08.jpg 【山口支局】山口市徳地では、カワラケツメイで作る健康茶を復活させ、地元の特産品にしようと、2007年にとくぢ健康茶企業組合(重本正樹理事長=72歳、理事8人)を結成。現在、地元農家40人が、約1.7ヘクタールの休耕田を利用してカワラケツメイの契約栽培に取り組む。本年度は約3トンの収穫を見込んでいる。
 同組合では、完全無肥料・完全無農薬で栽培。4月から5月の連休前後に播種し、背丈が50~60センチになり、さやが膨らんだ8月末ごろから手刈りかバインダー刈りする。収穫後は、水稲と同じようにはぜかけで乾燥させる。その後、裁断してからいり、袋詰めするという。

<写真:「香ばしくて、とてもまろやかな味です」とカワラケツメイ茶を手にする重本さん>

090903_11.jpg 【香川支局】水田の上を上下左右に泳ぐ円盤――。これは、三豊市山本町財田大野地区の岩本正義さん(72)が設置した手作りの鳥よけだ。岩本さんは「知人から、赤い布に鳥よけの効果があると聞いたのがヒント」と話す。
 材料は、トンネル栽培の支柱と赤い布で、円盤の形にして下部に銀テープや鈴を取り付ける。太めの釣り糸を結び、高さ約5メートルの竹ざおに張り渡すというもの。費用は1個当たり500円ほどで、今年は「コシヒカリ」の圃場80アールに20個を設置した。
 設置を始めて4年目になるが、鳥よけ効果は衰えていないという。

<写真:考案した鳥よけを手に岩本さん。円盤は風の状態と竹特有のしなりで奇抜な動きを見せる>

090903_12.jpg 【群馬支局】渋川市赤城町上三原田でトマト「桃太郎」をハウスで栽培する長岡圭一さん(67)は、育苗時の水を制限する技術に取り組み、品質・収量の向上を図っている。
 2005年から取り組む「スーパー育苗法」は、セル苗を、牛ふんおがくず堆肥、畑の土、ボカシ肥料の床土に鉢上げした後、活着するまでの1週間は十分水を与え、以後は朝1回、床土が少しぬれる程度に水を与える。
 「昼間は苗がしおれたように見え、かわいそうに思うこともあるが、1カ月半ほど鍛えると、茎が木のように硬くなります。丈は短いがコナジラミ知らず。丈夫なので運搬などの作業も楽です」と話す。「定植すると、水に飢えた苗は一気に根を張り、茎が伸びて強い木に育つ。枯れる株は一本もありません」と長岡さん。

<写真:苗を手に長岡さん>

090903_13.jpg 【新潟支局】「1300年間、変わらずに今に語り継がれた音楽と楽器の奥深さが魅力です」と話す新潟市西区黒鳥の大橋幸一さん(59歳、水稲2.2ヘクタール、畑80アール)は、雅楽を始めて17年がたつ。大橋さんは、NOSAI新潟中央のNOSAI部長だ。
 1991年に、「先代の住職が残してくれた高価な楽器が、本堂に飾ってあるだけではもったいない」と、寺の住職と檀家5人で活動を開始。
 雅楽は奈良時代から続く舞の音楽。大橋さんの受け持つ楽器は主旋律を奏でる「篳篥(ひちりき)」で、竹製の管と葦(あし)製の舌(ぜつ)でできた約21センチの縦笛だ。
 現在、大橋さんは「新潟楽所」に所属。毎年12月に開催される黒鳥地区芸能祭のほか、市内のイベントや法要などで年4~5回の演奏活動を行う。

<写真:装束を身につけた大橋さん>

 ▼2011年度まで農用地区域中心に10万ヘクタールの耕作放棄地解消を目指し、農林水産省は本年度から緊急対策を展開する。まず都道府県と市町村段階の協議会組織設置を進めており、市町村段階の設置数は8月15日現在で544となった。準備中か設置意向を持つ市町村を加えれば1400で全国の8割に及ぶ。
 ▼全国の耕作放棄地面積は、08年度の調査結果から28万4千ヘクタールと推計されている。そのうち農業機械による草刈りや整地、簡易な基盤整備で耕作可能となる放棄地は14万9千ヘクタール(農用地区域内は8万3千ヘクタール)という。今後、地域協議会を中心に耕作放棄地解消計画の策定と農地再生、耕作者の確保など具体的な取り組みを本格化する。
 ▼農林水産省が開いた全国会議で、先行する県や市町村から現状の成果や課題が報告された。航空写真を使った農地台帳整備など就農者希望者に分かりやすい情報提供や現場事務を支援する専門員の設置など、各地域では農地利用を促す工夫を凝らしている。
 ▼報告者が共通して訴えたのは、有望な作物や収益見通しの提示など農地を利用する耕作者の経営安定に向けた継続的な支援の重要性だ。緊急対策は、農地整備などの負担軽減を図っているが、営農を再開しても収支が見合わなければ継続は困難。再度の荒廃を招く心配もある。
 ▼土地条件の悪い農地だけが耕作放棄されるのではない。事例の中には県営事業で整備した60ヘクタール規模の開発農地もあった。面的な条件などは恵まれているはずの農地が、基幹作物の葉タバコ減少とともに荒廃が進んだ。農地再生と就農支援は、開発責任を指摘された行政側の再チャレンジでもあるという。
 ▼耕作放棄地の拡大は病虫害や鳥獣害の増加にもつながる。加工・販売も含めた営農モデルを作るなど、地域ぐるみの知恵で解消につなげたい。

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