「売れる品種の育成には、消費者ニーズの反映が大切」と話す、岡山市瀬戸町の花澤茂さん(77)は、ハウス50アールでブドウを栽培する傍ら、30年以上育種に取り組んでいる。今までにマスカット系の7品種を品種登録。農園では自ら育成した品種を栽培し、全量を直売する。多様化するニーズに応えながら、皮も食べられる「瀬戸ジャイアンツ」や果皮が黒いマスカット「ハイベリー」など珍しい品種を提供し、個人ブランド「花澤のぶどう」の確立を目指している。
JR山陽本線・瀬戸駅から車で約5分、住宅地の一角にブドウ農園「花澤ぶどう研究所」がある。ぶどう研究所は、妻の睦子さん(75)とパート6人で経営。自ら育種した品種を中心に、年間14~15品種を無加温ハウスで平棚栽培し、育成品種の苗木販売も手がける。
「消費者志向の多様化に合わせ、色や形が異なるさまざまな品種を生産している」と話す花澤さん。"農業は品種に優る技術なし"と考え、品種育成を基本に生産、販売を行う。消費者の好みを把握する上で欠かせないのが、直売での消費者との顔の見える関係づくりだ。
インターネットを利用した宅配などで全量を直売し、消費者の反応をみながら売れ筋の品種を確認。花澤さんは「種の有無を確認する消費者が多く、食の簡便化が進んでいる。直売は品種の育成・選抜の大切な情報源」と説明する。
1年間の農作業や農薬の散布回数は、ホームページ上で公開。情報紙「千客万来」を年2回発行して消費者に情報提供している。情報紙には、資材価格の高止まりなど農業の実情のほか、消費者に信頼され、喜ばれるブドウを届けたいとの花澤さん夫妻の思いも掲載。睦子さんは「農業を理解し、わたしたちの考え方を分かってくれる人に食べてほしい」と話す。
最近の人気品種は、瀬戸ジャイアンツやハイベリー、「マスカットデュークアモーレ」など。いずれも種がなく皮ごと食べられ、糖度は約20度。果肉が硬くシャキッとした食感が特徴だ。
花澤さんは「果皮が薄く皮も食べられるので手が汚れず食べやすい。最近は、食感のよいブドウが好まれている」と話す。
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〈写真上:瀬戸ジャイアンツの父株「ネオ・マスカット」。研究所では、育種資源として既存品種だけでなく自作選抜個体も栽培している〉
〈写真下:剪定(せんてい)作業を行う花澤さん夫妻。剪定枝は、チップにして堆肥にする〉