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今週のヘッドライン: 2010年3月アーカイブ

 農作業事故に注意してほしい。春の農繁期は、農作業事故が多発する時期だ。農林水産省は1日から5月末まで、農業機械の転落・転倒事故防止などを重点とした春の農作業安全確認運動を展開する。農業機械士協議会が中心になり、農作業安全を呼びかけるチラシの配布や安全講習会を開く、茨城県那珂市の取り組みをルポで紹介。農作業死亡事故の現状や農作業事故を防ぐ対策のポイントなどを特集する。
 
100325_01.jpg ▼事故ゼロへ地域一丸 〈茨城県 那珂市農業機械士協議会〉
 農業機械を使うときの安全意識を高めようと、茨城県の那珂市農業機械士協議会(35人)は、講習会や危険箇所の看板設置などの活動を30年近く続けている。
 近年、農作業中のけがは70代が中心で、その多くが農地の借り手や農作業受託を行う"鍬頭(くわがしら)"だという。会長の和田勝一さん(67)=水稲20ヘクタール、麦15ヘクタールなど=は「けがをすれば自分の経営だけでなく、地域への影響も大きい」と説明する。
 農作業安全に向け、毎年、農業機械や農作業安全の講習会を開く。講習会では、運転技術の実習と農作業安全の講義、農業機械の構造、作業前後の点検方法を教わる。本年度は講習会も兼ねたトラクター競技会を開いた。
 講師は、農業大学校や農業改良普及センターなどに依頼する。加えて農業機械メーカーやJAの施設を訪ねることもある。「もっと行政で専門の人が増えてくれるとありがたい」と和田さんは話す。
 講習は毎回20~30人が参加。会員以外の農家も受講可能だ。一人でも多く参加してもらおうと、チラシの戸別配布や電話で、会員が担当地区の農家に案内する。
100325_02.jpg 副会長の秋山東明さん(79)=水稲約1ヘクタール、ソバ約5ヘクタール=は、圃場で農家仲間と話すときや茶飲みの場で話題に出すという。「集落の事故防止が目的ですが、自分のためになります。発信する側が『けがや事故を起こすわけにはいかない』と緊張感を保てますから」と話す。

(1面)

 
〈写真上:和田さんは「トラクターの作業機は正しい手順で装着するなど。基本を守ることが事故を防ぐ」と話す〉
〈写真下:坂の登り口に注意喚起の看板立てている〉

 乗用トラクターなど、農業機械での農作業事故を防ぐポイントを、全国農業機械士協議会の小田林徳治会長に取材した。また、農林水産省の取り組み、農薬取り扱い時の注意点、万が一負傷したときの応急処置や労災保険のあらましなどを紹介する。
 
 大切な農機の整備
 「事故を防ぐには、農繁期前の始業点検などを行って農業機械を事前に整備することが大切」と小田林さんは話す。
 始業点検では①エンジンオイルや冷却水の汚れ・量②各部のボルトのゆるみ③ブレーキやクラッチの効き具合④タイヤの空気圧⑤ハンドルの遊び⑥灯火装置の不良⑦安全カバーの有無や変形――などを確認。「忙しい時期に機械の調子が悪くなると修理の時間がない上、作業が遅れて気持ちも焦る。事故につながりやすい」と指摘する。
 死亡事故が多発している乗用トラクターの横転・転落事故対策では、キャブ・フレームの装着が有効だ。生研センターの調査によると、キャブ・フレームを取り付けることで、乗用トラクターの横転・転落事故での死亡率は約8分の1に低下するという。
 
 農薬使用時の安全対策
 安全対策の第一は、保護具の正しい着用だ。帽子、マスク、保護メガネ、長そで長ズボンの防除衣、手袋、靴を着用しよう。農薬の製品ラベルに「注意喚起マーク」がある場合は、その内容に合った保護具を使う。
 マスクは防護能力別に、粉剤・液剤用の農薬用マスクとろ過材付きの防護マスク、土壌くん蒸剤用で吸収缶付きの防護マスクがある。安全使用上の注意を確認して選ぶ。
 散布は強風や気温の高い日中は避け、早朝が望ましい。作業後は手足・顔などをせっけんでよく洗い、うがいをする。

(7面)

 日本農業機械化協会は3日、都内で「農作業事故防止中央推進会議」を開いた。会議では、久留米大学医学部の末永隆次郎講師が農家が、農業機械を使う際の安全意識の調査結果などを報告。草刈り作業時の顔の防護など安全対策の実施を訴えた。概要を紹介する。
 
100325_04.jpg 安全意識の調査は、福岡県の農家3130人を対象に負傷事故が多い草刈り機と、死亡事故が多発している乗用トラクターについて調べた。
 それによると、草刈り機の使用時に顔の防護を特にしない人は53%、作業前の安全確認を特にしない人は63%のぼる。
 作業中に身の危険を感じる「ひやり・はっと体験」の経験者は、87%。内容は「硬い石などでキックバック」62%、「石や空き缶などの飛来物」54%、「足を滑らせる」44.3%などとなった。
 末永講師は「草刈り機による死亡事故はトラクターなどに比べ少ないが、けがが多発している。使用前は、作業場の状況をしっかり確認し、作業中はせめて目だけでも防護してほしい」と呼びかける。
 「農作業事故を減らすには、負傷事故も含めた全国的な事故調査と原因の分析が必要」と話す末永講師。日本農村医学研究所などと協力して行った負傷を含む農作業事故の調査結果も報告した。
 農業機械事故の発生時間は、午前10時~午前11時と午後3時~午後4時に集中していることが分かった。「長時間の作業で集中力が切れたり、眠気に襲われることが原因ではないか」と末永講師。「長時間作業するときは、十分に休憩を取ってほしい」と話していた。

(8面)

 
写真:133人が参加した農作業事故防止中央推進会議

 農林水産省の花き産業振興方針検討会(座長・腰岡政二日本大学教授)は15日、新たな「花き産業振興方針案」を取りまとめた。花離れの進展や国内生産の減少傾向が続く中、消費者ニーズの強い「日持ち性向上」への対応強化を柱に、官民挙げた需要拡大対策の取り組みを提起。具体策に「日持ち保証販売」の推進や生産者から小売りに直送する「商物分離」の積極的な導入などを挙げた。花きの正しい知識の普及や生産者のこだわりなど消費者に向けた生産サイドからの積極的な情報提供の推進も盛り込んだ。農林水産省は、3月中に策定する新たな食料・農業・農村基本計画に、初めて花き振興の記述を盛り込む考えで、新たな方針は基本計画策定を踏まえて、正式に公表する。
 
  花き産業振興方針は、10年程度先を見通して花き産業の振興の基本的な方針と具体的な取り組みを示すもの。現行方針は、食料・農業・農村基本計画の策定とあわせて2000年に策定され、05年3月に見直された。
  この間、ライフスタイルの変化などで花離れが進展。07年の花きの国内仕向け額はピーク時(97年)に比べ、1400億円減の5400億円となった。1世帯当たりの購入金額の減少に歯止めがかからず、農林水産省は、25年の一般消費者の切り花と園芸品・園芸用品(鉢物など)の年間購入金額は07年比で28%減少すると予測。輸入も増加し続けている。
  需要拡大対策は「日持ち性向上」への対応強化を柱とした。〈1〉消費者への正しい知識の普及〈2〉新しい需要の創出〈3〉ニーズに対応した生産・流通・販売――に分けて対応策を提示。特に切り花は「1回の失望が花離れを招きかねない」と、清潔な水・容器による水上げと温度管理の徹底、保冷庫の整備など品質管理の徹底への対応強化を強調した。鉢物も消費者が期待する観賞期間が長いことから、適正管理の徹底を促す。

(2面・総合)

 農家女性6人で構成する福井県大野市篠座の農事組合法人「豆の木」は、在来青大豆「大だるま」で、保存料などを使わない無添加のみそ造りに取り組む。「コシヒカリ」の一等米で造った麹〈こうじ〉を用いるなど、材料にこだわった「大だるまみそ」は、顧客から「こくがあって風味が良い」と評判だ。メンバーは「農閑期にみんなでがやがやみそ造りをするのが楽しい。法人化した以上、売り上げも伸ばしていきたい」と口をそろえる。
 
100325_03.jpg みその仕込み作業は、農閑期の1~3月上旬に1日おきに行う。今年は7トンの製造予定だ。
 大だるまは甘味が強く香りがあり、地元ではみそ加工中心に使われてきた。80アールを栽培する代表の長田泰子さん(62)をはじめ、メンバーが生産したものを豆の木が買い上げる。今年は2.4トンを購入した。
 大だるまは市場に出荷しても価格が安い。「一般に出回っていないことを逆手にとり、希少品として販売しようと考えた。みそはこくがあっておいしいと周りから評判だった」と長田さん。「今さらみそという声もあったが、原料にこだわって作れば差別化できる」と話す。
 麹はメンバーが生産したコシヒカリの一等米から造る。天然の甘塩を使い、保存料などは一切加えない。大豆を圧力鍋で15分ほど煮た後、さましてからチョッパーにかけて細かく砕く。大豆に麹、塩、湯冷ましを加えて混ぜ合わせ、たるに入れる。夏にはクーラーを入れるなど低温に保った倉庫に保管して熟成を待つ。大豆60キロと米60キロから約200キロのみそが出来るという。

(3面・暮らし)

 
写真:左から神山則子さん、長田泰子さん、猪島愛津子さん。イベントにも積極的に参加し、みそを販売する

 農林水産省は、農業災害補償法施行規則を一部改正し、麦共済と家畜共済の運用改善を行う。4月1日に施行する。麦共済では2011年産麦から、農家ごとだった加入方式が「類区分」ごとに選択できるようになる。家畜共済では、子牛・胎児を含めた乳用牛と肉用牛の両方の包括共済に加入する農家について、乳牛が産んだ雄子牛と肉用子牛を肉用牛の包括共済に異動する手続きを簡略化する。家畜共済に継続加入する畜産農家が複数集まって経営を法人化した場合などに生じていた「待期間」をなくし、継続して補償を受けられるようにする。

●麦共済 類区分ごとの加入方式に
 麦共済では2011年産麦から、農家は類区分ごとに加入方式を選択できるようになる。類区分は、秋播き・春播きごと、小麦・二条大麦など麦種ごとの区分。補償割合も類区分ごとに選択できる。
 水稲共済でも、同一農家が主食用米と併せて飼料用米や米粉用米などを作付ける場合がある。
 農林水産省では「10年産の水稲共済から、主食用米、飼料用米、米粉用米などの別ごとに、加入方式と補償割合をそれぞれ選択できるよう検討を進めている」(経営局保険課農作物再保険班)としている。

●家畜共済 異動の手続きを簡略化
 家畜共済では、酪農・肥育の複合経営農家を対象に、乳牛が産んだ雄子牛と肉用子牛を肉用牛等の包括共済に異動する手続きを、現行の「出生後10日目」から「出生の翌月の末日」に延長する。
 手続きの時期を「出生の翌月の末日」に延長し、一カ月分まとめることで、加入者の手続きを簡素化する。
 併せて、家畜共済に継続加入していた畜産農家が複数集まって共済関係を継承して経営を法人化した場合、補償対象とならない待期間が生じないよう改善される。

(5面・NOSAI)

 食料・農業・農村基本計画の策定に向けた議論が大詰めを迎える中、農林水産省は18日、2032年までの農業構造の展望(案)を示した。戸別所得補償制度など各種施策の導入により農家数の減少を最小限に食い止め、担い手への農地の利用集積促進などで461万ヘクタールの農地の維持と有効活用を図り、カロリーベースの食料自給率50%の達成を目指す。自給率50%の達成に必要な予算総額は約1兆円と試算した。
 販売農家数は、これまでの趨勢(すうせい)のままでは、09年の170万戸は32年に111万戸程度に減少する見通し。だが、戸別所得補償制度の導入による小規模農家の離農率の低下や新規参入を促して121万戸程度にとどまるとした。主業農家も09年の35万戸から23万戸程度に減るところ、離農の抑制で24万戸程度になるとした。

(2面・総合)

 「水田農業の新たな展開と技術」をテーマに、農研機構・中央農業総合研究センター(中央農研)は15日、東京都江東区でシンポジウムを開催。研究機関が開発した栽培技術を導入した農家の成果報告から、水田の高度利用と省力化、経費節減を図り、安定生産に取り組む二つの事例を紹介する。
 
100325_05.jpg 不耕起播種機での稲・麦・大豆生産〈茨城県筑西市 有限会社山善農園〉
 大豆の不耕起狭畦(きょうけい)密植栽培を2005年から導入。経費節減と省力化のため、同じ播種機を活用しようと06年から水稲の不耕起乾田直播に取り組む。
 中央農研が開発したディスク駆動式不耕起播種機は、前作の残さを排除しながらY字型の播種溝を作り、覆土鎮圧する。圃場の整備が不十分でも高い精度で播種でき、降雨直後の播種も可能だ。
 水稲の不耕起乾田直播は、種子を浸種し、芽出しは行わない。鳥害防止の種子粉衣はせず、播種直後に麦踏みローラーで鎮圧する。
〈写真:杉山善司代表〉
 
 
 
 
 
 
 
 
 
100325_06.jpg 耕うん同時畝立て栽培(大豆)〈富山県南砺市 農事組合法人「ファーム八乙女」〉
 大麦後作に大豆を栽培する2年3作体系を2008年から導入。耕うん同時畝立て栽培と中耕培土を行わない狭畦密植栽培を組み合わせて、作業時間は導入前と比べて46%減少した。
 耕うんと同時に畝立てと播種を行う作業機を使い、湿害での発芽遅れの回避を図る。作業が一工程で済むため、播種時期の降雨リスクの軽減にもつながるという。作業機は、砕土性や前作の残さすきこみ効率が良いアップカット(逆転)ロータリーを採用する。

〈写真:澤田秀継理事〉

 【岩手支局】「日々の農作業の中で不便なことがあると、発明で克服したくなる」という金ケ崎町の菅原成徳さん(69)は、アイデア農器具の開発を続けている。このほど新たに開発した三つの道具は、農家目線の発明とあって評判も上々。発明で、地域農業への貢献を目指している。
 
100325_07.jpg 菅原さんは、水田1.8ヘクタールや花き類の露地栽培10アール、大豆など1ヘクタールを営む傍ら、園芸用器具を発明している。
 最近開発した器具は「Aリング・カッター」「爪(つめ)刃草取りお手手」「一粒種蒔(ま)きスプーン」の三つ。Aリング・カッターは、園芸用のカッターで、指先の作業をしながら、カッターを保持できるのが特徴だ。野菜の根切りなど、刃物の手入れが大変な作業も、カッターなので、刃を交換すれば済む。
 爪刃草取りお手手は、園芸作業で、草取りや土よせ、土掘り、苗の移植などを一つの機材で効率よく行うために考案。軽量化のため、中央部に穴を開けている。刃部分が丸みを帯びていて、両刃の数カ所に切れ込みがあるのが特徴だ。
 一粒種蒔きスプーンは、種を一粒ずつすくい、正確に播くことが可能。セル育苗時、セルトレーへの播種は、小さい種ほど大変だが、効率よく作業できる。また、両先端に、それぞれ2.5ミリと4ミリの2種類のくぼみをつけているため、径の大きいコーティングされた種にも対応しているという。
 菅原さんは「こうした発明から、地域の農業や産業に寄与できれば」と話している。
 

 
100325_08.jpg100325_09.jpg
 
〈写真上:「爪刃草取りお手手」を手に菅原さん。これ一つで草取りや土よせ、土掘り、苗の移植などができる〉
〈写真右下:一粒種蒔きスプーンは、持ちやすさを考えた構造だ〉
〈写真左下:Aリング・カッター。カッターを置かずに作業できる〉

100325_10.jpg 【新潟支局】長岡市高瀬町の有限会社アラカワファーム(荒川貴行代表取締役=38歳、水稲36ヘクタール、大豆12ヘクタール)は、昨年からペレット肥料を使った水稲栽培に取り組んでいる。
 導入した乾式ペレット製造機は、ペレットを乾燥させる必要がなく、1時間に約150キロを製造。粒の大きさも2種類指定でき、散布機の種類に合わせ製造が可能だ。
 ペレットは、同社で管理するコイン精米機から出る米ぬかと発酵鶏ふんを8対2の割合で配合したものに、独自に蒸製骨粉、乾燥海藻などのミネラル分や菜種かすをブレンドして製造する。
 昨年は、試験的に3ヘクタールに使用した。元肥として10アール当たり60キロのペレットを散布し、化学肥料の散布は約7割に抑制。化学肥料だけの圃場と比べ減収が無く、また実入りが良く倒伏気味になった圃場もあったことから、肥料効果があったと手応えを感じている。
 同社の荒川俊一会長(63)は「今後はペレット肥料を散布する面積を増やし、有機肥料による安全・安心な米づくりをしたい」と話す。
 
写真:乾式ペレット製造機の横で有機ペレット肥料を手に荒川会長

<100325_11.jpg 【滋賀支局】映画で農業の面白さを伝えようと、栗東市荒張の養鶏農家・中辻正人さん(47)が、日常の作業風景などを撮った映画を制作。上映を通じて市民との交流を深めている。
 中辻さん方の養鶏(500羽)は平地飼いで、5年前からは餌の原料をほぼ地場産に変更。玄米をメーンに、小麦や大豆、茶などを発酵させた餌を与えている。卵は、互いの顔が見える取引を心がけ、宅配や朝市で販売する。
 映画制作は3年前、自身が会長を務めていた農業後継者クラブに提案し、上映会と自分たちが作った野菜の即売会を併せたイベント「映画の朝市」を企画。撮影を開始した。プロの映画監督からのアドバイスを生かし、餌やりなど鶏と向き合う姿や、宅配先での顧客との会話など、ありのままの日常を撮った。
 「今後は芸術家など異業種の映像とのコラボレーションも計画中」と、中辻さんの夢は膨らむ。
 
写真:「映画と農業、どちらも物作りは楽しい」と中辻さん。右上は短編映画のDVD

100325_12.jpg 【徳島支局】「果実が大きく糖度もあるので、贈答用にピッタリだと喜ばれています」と話す、JA徳島市佐那河内支所キウイフルーツ部会の大窪勢冶会長(62)。昨年から売り出した大玉キウイフルーツ「達磨(だるま)」が、順調に売り上げを伸ばしている。
 達磨は、1玉180グラム以上のキウイフルーツをブランド化したもので、年間の出荷量は約6トン(総出荷量の約3%)。糖度14~17度以上、食味の良さがセールスポイントだ。通常サイズに比べて4倍ほどの高値で取引されている。
 「これからも市場の動向を見極めながら、消費者の期待に応える高品質な商品の提供に努めたい」と大窪会長は意気込む。
 
写真:達磨キウイの化粧箱を手に大窪会長

100325_13.jpg 【青森支局】"夢の舞台は大空からリンゴ園へ"。航空パイロットを目指していた弘前市下湯口の石岡紫織さん(27)は、父の死を機に実家のリンゴ園の世帯主・経営者になること決意。現在、「日々、リンゴと向き合い、弘前リンゴ生産の激戦地で腕を磨いています」と話す。
 石岡さん方では、リンゴ2・4ヘクタールを母の留美子さん(52)と二人で栽培している。
 ニュージーランドへ航空留学し、資格を取得して帰国した石岡さんだが、08年6月に父・譲(ゆずる)さんが突然他界。実家のリンゴ園を見て、「これを残した先祖や父の後を継がなくては」と、夢の場を大空からリンゴ園に切り替えた。
 「経営・生産・販売と手をかけることが結果に表れ、やりがいを感じている」と紫織さん。この冬からは先進農家に師事し、自ら剪定(せんてい)を始めた。「園地で実際に師匠に付いて作業することで学ぶことがとても多い」と話す。
 
写真:剪定をする石岡さん

100325_14.jpg 【秋田支局】「軽量野菜でウドほどの重労働を要しないのが良い。冬場の大事な収入源」と話す能代市朴瀬(ほのきせ)の鷲尾一季(ひとき)さん(49)は、20年ほど前からギョウジャニンニクを栽培している。自家採種を行いその後、規模を拡大。ハウス2棟(約80坪)と露地1ヘクタールで手掛けている。
 鷲尾さんは山菜採りが好きで、山に出掛けては自生するギョウジャニンニクを収穫していた。「栽培してみようと、山から掘ってきた株を8年間育て自家採種した」と話す。
 収穫後は地元JAに出荷。販売先は県外にも及ぶ。「ギョウジャニンニクは茎の長さと赤みがどれだけ出せるかで品質の良さが決まる」と鷲尾さん。「今後は苗販売にも挑戦したい」と張り切っている。
 
写真:ギョウジャニンニクへの思いを話す鷲尾さん

100325_15.jpg 【兵庫支局】さまざまな加工品を製造する淡路市郡家の農家女性5人の特産工房「くにうみ」惣菜(そうざい)部(村﨑まゆみ代表=53歳)の、フキを使ったつくだ煮(1個500円)が好評だ。
 2005年の春から、直販「いちのみや」と多賀直売所で販売。フキ独特の風味がいいと評判で、年配者を中心にリピーターが増えている。
 フキは、風味を逃がさないように一本一本手作業で皮をむき、厳選した昆布とともに煮詰める。「『家ではなかなかこの味は出せない』と、お客さんが喜んでくれるのがうれしい」とメンバーは話す。
 新商品も開発中で、「長く地産地消に貢献していきたい」と話している。
 
写真:「くにうみ」惣菜部のメンバー

 ▼農林水産省は、2020年度の食料自給率を供給熱量(カロリー)ベースで50%とする新たな「食料・農業・農村基本計画」素案を示した。「関係者の最大限の努力」と「持てる資源をすべて投入」した時に達成可能な目標と位置づけ、現行計画の数値を5ポイント引き上げた。
 ▼生産振興の柱は穀物生産の拡大と農地資源の確保だ。現状で合計1万トン程度の米粉用米と飼料用米は120万トンに増産し、小麦は88万トンを180万トンに、大豆は26万トンを60万トンに倍増する。農地面積は現在の461万ヘクタールを維持しながら水田の二毛作や裏作を促す。92%の農業耕地利用率を108%まで高める。
 ▼赤松広隆農相は「意欲ある数字を政治や行政が示し、どうすれば達成できるか裏付けていく」と強調。目標達成に必要な財政負担額を約1兆円程度とする試算も示した。3月中の閣議決定を目指し、食料・農業・農村政策審議会企画部会での議論や与党との調整を進めている。
 ▼課題は消費拡大だ。人口減少と高齢化社会の進展が見込まれる中、輸入農産物との競争に勝ち、需要の掘り起こしや国産農産物の選択を促すのは簡単ではない。
 ▼企画部会の委員からは「市販の小麦粉に一定割合の米粉を混ぜるなど需要を広げる仕組みが必要」との意見も出された。生産者側の努力とともに、食品関連企業との連携や国産農産物に対する消費者の理解促進を強力に進めないと目標達成は難しい。
 ▼初めて基本計画を策定した2000年以降、政府は10年後に45%とする自給率目標を掲げてきた。しかし、40%前後の維持が精一杯で生産基盤の弱体化が進んでいる。基本計画を派手な打ち上げ花火で終わらせてはいけない。望むのは、政府の覚悟を国民の共通理解として、農業・農村を再生する実効性のある政策の展開だ。

 農林水産省は2010年度、戸別所得補償モデル対策を実施する。「農政の大転換の第一歩」(赤松広隆農相)との位置づけで、4月1日から加入申請書・作付面積確認依頼書の受け付けが始まる。モデル対策のうち、「米戸別所得補償モデル事業」は主食用米を対象に、標準的な生産費と販売価格の差額などを全国一律に補てん。自然災害のため個々の農家が受けた損害の補てんは、農業災害対策のNOSAIが担う。農家の経営安定には両制度への加入が必要であり、NOSAI団体では、地域水田協議会など関係機関と協力し、制度説明や加入推進に全力を挙げていく。
 
100318_01.jpg 米戸別所得補償モデル事業は生産数量目標に即した生産を行う販売農家・集落営農を対象にしたメリット措置で、10アール当たり1万5千円を全国一律に直接支払いする。10年産の販売価格が大幅に下落し、定額の直接支払いを加えても標準的な生産費を下回った場合は、その差額も補てんする。
 水田農業を安定的に営むには、恒常的なコスト割れを補てんするモデル事業のほか、自然災害への備えとしてNOSAI制度への加入が欠かせない。
 米戸別所得補償モデル事業の交付対象者は「米の生産数量目標に即して生産を行った販売農家・集落営農」としている。ここでいう販売農家は「水稲共済加入者であれば販売農家とみなす」とされた。販売目的で米を生産する農家を広くとらえ、栽培面積などを容易に確認できるためだ。水稲共済細目書異動申告書と照らした書類確認などの方法で行われる。
 
 ◆モデル事業の円滑実施を支援

 全国農業共済協会 常務 鈴木 直

 2010年度に実施される戸別所得補償モデル対策は、農業経営を支援する新たな試みであり、11年度の本格実施に向けてNOSAI団体としても円滑実施に協力していきたい。中でも、米戸別所得補償モデル事業では、交付対象となる販売農家は「水稲共済加入者を基本とする」こととされました。水稲共済に引受け漏れのないよう努めるとともに、モデル事業への加入・参加手続きが円滑に進むよう支援していきたい。モデル事業と自然災害による損失を補てんする水稲共済は、その目的と機能は異なるもので、経営安定のためには両制度への加入が望ましい。NOSAI団体としては、制度の適正な事業運用に努めるとともに両制度の関係を分かりやすく説明し、経営安定化への取り組みを呼び掛けていきたい。
(1面)

写真:米戸別取得補償モデル事業で政策対象となる販売農家は、水稲共済加入者を基本に位置づけている

 農林水産省は9日、3月中に策定する新たな食料・農業・農村基本計画の素案を示した。2020年度の食料自給率目標(カロリーベース)は50%。「わが国の持てる資源をすべて投入した時に初めて可能となる」と強調し、現行基本計画の目標を5ポイント引き上げた。小麦の二毛作の飛躍的拡大や未利用地への米粉・飼料用米、大豆などの作付拡大、さらに技術の開発普及、農地確保などを推進する。
 11年度からの戸別所得補償制度の本格実施に向けた検討も明記した。恒常的に販売価格が生産費を下回っている米、麦、大豆など土地利用型作物を対象に制度設計を行い、具体的な品目などの検討を進める。規模や品質、環境保全の取り組みなどへの加算は制度上の位置付けを検討。また、畜産・酪農は、所得補償制度の在り方や導入時期を検討する。野菜・果樹は、恒常的に販売価格が生産費を下回っていないことから、戸別所得補償制度とは別の新たな支援策を検討するとした。

(1面)

 資金繰りなど課題を抱えながら、収支改善や経営多角化に努力する集落営農組織の実態が、農林水産省が9日に公表した2009年度の調査結果で明らかになった。「円滑に運営できた」が4割、「課題はあったが克服できた」が5割を占めるが、1割が「課題があり、運営に支障が生じた」と回答。収支は11%が赤字だ。全体の半数以上が前年度に比べ「改善した」と回答したが、肥料価格高騰や農産物価格低迷で、構成員の労賃や地代を下げて収支改善を図った組織も見られた。集落営農は、担い手不足が深刻化する中で耕作放棄地解消や生産性向上など地域農業の維持・発展に貢献してきた。地域の実情に即した組織づくりや営農の継続に向けた支援の充実が求められている。
 
  全国の集落営農数(09年2月1日現在)は、1万3436あり、うち水田・畑作経営所得安定対策の加入組織は7194。対策に加入する534組織を対象に昨年6月に実施した。組織形態は「法人」と「特定農業団体」(経理を一元化)と、「特定農業団体に準ずる組織」(経理の一部を一元化)となっている。
  08年度の組織運営状況は、「円滑に運営できた」が41%、「課題はあったが克服できた」が52%だった。7%は「多くの課題があり、運営に支障が生じた」と回答した。
  支障となった課題は、複数回答で、「肥料代の高騰など支出が多かった」が70%と突出した。「作柄が悪く作物の販売量が確保できなかった」「機械・施設の導入などで資金繰りに苦労した」「新規作物・多角化部門の導入ができなかった」との回答もそれぞれ3割程度を占めた。「団地化による作業効率化が不十分」(21%)など経営改善の取り組みが実現できていない現状も示された。

(2面・総合)

 農山漁村での起業活動などで活躍する女性たちを表彰する「農山漁村女性チャレンジ活動表彰」(主催=農山漁村女性・生活活動支援協会など)の2009年度の受賞団体・個人が決まり、10日、東京都内で表彰式が行われた。最優秀賞の農林水産大臣賞に選ばれた1個人・2団体を紹介する。
 
 高松市生活研究グループ連絡協議会〈香川県高松市〉
 ▽佃俊子会長、会員277人
100318_02.jpg 高松市の14グループで組織する。「先輩から受け継いだ知恵や技、工夫、経験を生かし、後継者につなげる重要さを感じている」と佃会長。後継者の育成や食育、地産地消活動に力を入れる。
 後継者で組織する「フレッシュコスモス生活改善グループ」は、農業簿記記帳などを学ぶ。
 
 企業組合うつい工房〈山口県下関市〉
 ▽中野千鶴子代表、組合員24人
 下関市内日〈うつい〉地区の女性たちが、JAの店舗閉鎖をきっかけに食料品や日用雑貨を販売する集落唯一の店舗運営を始めた。漬物、総菜加工に乗り出すなど取り組みを広げ、現在は6部門で活動する。若い世代の希望を受けて米粉のパンやケーキを作る部門を立ち上げ、意欲的に働ける環境を整えた。
 
 松村 久子さん〈群馬県伊勢崎市〉
 ネギやハクサイ、トマトなど野菜の生産(約18ヘクタール)と加工、販売を行う有限会社「あずま産直ねっと」の社長を務める。会長を務める夫が生産、松村さんが販売を担当する。
 就農希望者を研修生として受け入れ、うち4人が独立した。独立後も農地の賃貸や農機具の貸し出し、収穫物の買い取りなど継続的に支援して、地域への定着を図る。

(3面・暮らし)

〈写真:高松市生活研究グループ連絡協議会は地元農産物を使ったレシピを開発する〉

 乳酸菌を添加したエコフィード(食品残さを利用した飼料)を給与し、薬剤を投与せずに育てたブランド豚「朝霧ヨーグル豚(とん)」が人気だ。静岡県富士宮市の養豚農家と精肉店が共同運営する「朝霧ヨーグル豚販売協同組合」が生産、販売している。農家と小売店が連携して生産から販売までを管理。農家は販路を確立でき、精肉店はオンリーワンの商品を販売できる。消費者からは「あっさりしていておいしい」と好評で売上額は年々増え、昨年は約1億円を売り上げた。
 
100318_03.jpg 「朝霧ヨーグル豚は肉がやわらかく、脂に臭みがない。さめてもおいしい」と話すのは、富士宮市上井出の料理店「ふじしげ」の小林繁嗣店長。6年前から朝霧ヨーグル豚のしゃぶしゃぶなどを提供し、人気メニューになっている。
 組合では、ブランド豚で地域おこしをしようとエコフィードを利用した環境保全型養豚を実践。安全で健康な豚を育てるため、飼料に乳酸菌を添加し、法定ワクチン以外の薬剤を使わずに飼育している。
 養豚農家で組合の理事長を務める松野育士さん(55)=肥育1千頭=は「抗生物質を用いない飼育法はリスクが大きいが、おいしい豚肉を届けたい。販路が確立しているので計画生産しやすい」と話す。
 朝霧ヨーグル豚は、食肉処理場ではほかの豚と区別して解体し、すべての部位を組合で買い戻す。購入価格は、市場価格よりキロ当たり数十円高いという。
 ロースやバラ肉は精肉で人気の部位だが、もも肉などは需要が少ない。組合では一部の部位があまるのを避けるため、もも肉などはハムに加工し、すべての肉を無駄なく活用している。

(10面・流通)

 
写真:松野さんは「ブランド化で、ほかの豚肉との価格競争を避けている」と話す

 独立行政法人農研機構・生研センターは、目標ランプを設置してトラクターの直進走行を支援する自動誘導システムを開発中だ。トラクターを使った播種やあぜ塗りなど、作業をしながらの直進走行は熟練の技術が必要となる。長時間の作業になるとオペレーターの身体的・精神的負担も大きい。自動誘導システムは、トラクターの横方向へのずれを正確に検出して補正する画像処理・制御技術を考案し、熟練農業者と同等以上の直進精度を確保できる。
 
100318_04.jpg 自動誘導システムは、単眼カメラと画像処理装置の「ビジョンシステム」、駆動モーターとコントローラーの「自動操舵(そうだ)装置」、直進を誘導する発光ダイオードの「目標ランプ」で構成する。
 カメラは、トラクターの運転席天井に進行方向へ向けて取り付け、誘導する作業経路の端に目標ランプを設置する。目標ランプは晴天時に500メートル先から検出可能な長距離対応タイプ(バッテリー込み重量12.8キロ)と、ランプ数を減らして300メートル先から検出できるポータブルタイプ(同5.1キロ)を試作した。目標ランプは0.2秒間隔で点滅する。
 自動操舵装置は市販のトラクターに設置でき、駆動モーターはステアリングコラム、コントローラーは座席の後ろに取り付ける。運転席にスイッチボックスを設け、自動直進と手動の切り替えが可能だ。
 開発した画像処理・制御手法(偏差修正制御)で目標ランプの光をとらえ、トラクターの左右方向の偏りを高精度で検出できる。従来の操向制御に比べ、傾斜地や作業機からの力による横方向へのずれや、カメラの取り付け誤差などへの対応能力が向上した。

(11面・営農技術)

 政府は12日、「農林漁業者による農林漁業の6次産業化の促進に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。
 6次産業化を「農林水産物と地域資源を有効に活用し、1次、2次、3次産業の融合を図る取り組み」と定義。自ら加工や販売を手がけ、新たな需要の開拓を図る農林漁業者などを総合的に支援し、農山漁村の活性化を目指す。農林漁業者に協力する民間事業者も対象とするほか、6次産業化に役立つ研究開発なども支援する。
 農林水産大臣が、農山漁村の6次産業化の基本理念・意義を明記した基本方針を策定。農林漁業者が提出する事業計画を認定し、取り組みを支援する。
 農林漁業者向けの無利子融資資金の償還期間・据置期間の延長、直売所などを建築する際の農地転用の手続きの簡素化――など法律上の特例措置を講じる。農林水産省が関連する補助事業の採択も受けやすくなる。2010年度政府予算案では、6次産業化対策に131億円を確保した。

(2面・総合)

 水田を基軸とした耕畜連携での飼料生産を振興しようと、農研機構・畜産草地研究所と全国農業改良普及支援協会は1日、東京都内で「飼料イネの研究と普及に関する情報交換会」を開いた。情報交換会には、行政や試験場、農業団体関係者など約340人が参加。飼料用米の調製給与技術、飼料稲と飼料麦の二毛作体系、稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ=WCS)の広域流通技術が報告された。概要を紹介する。
 
 稲ソフトグレインサイレージ・圧ぺんもみの調製給与技術
 〈福島県農業総合センター畜産研究所 矢内清恭氏〉

 2002年から稲もみをサイレージ化(ソフトグレインサイレージ=SGS)して牛への給与試験に取り組み、濃厚飼料の代替として利用可能とわかった。
 飼料用米品種「ふくひびき」を使って乳熟期、糊熟期〈こじゅくき〉、黄熟期の収量を比較すると、茎葉部分の収量は大差ないが、もみの乾物収量が多いため黄熟期の収穫が良い。また、水分を加えた方が発酵は進む。
 もみは破砕後にサイレージ化した。これは良好な発酵を促すだけでなく、牛に給与した際の消化が良くなり、破砕率を高めると栄養価も向上するため。乳酸菌と糖みつを添加して密封すると、サイレージの品質が安定する。
 
 飼料稲・飼料麦の二毛作体系
 〈畜産草地研究所飼料作生産性向上研究チーム 佐藤節郎氏〉

 飼料稲栽培の普及で大麦やライ小麦など飼料麦と共用可能な収穫機が開発されている。飼料稲・飼料麦の二毛作体系を導入する契機と考えられ、導入のメリットと課題などを検討した。
 飼料麦の栽培面積はエン麦を除くと、極めて少ない状況にある。10月上旬に飼料稲を収穫する地域では、10月下旬~11月上旬が播種適期の飼料麦を組み合わせると二毛作が可能だ。
 
 飼料稲ロールベールサイレージの広域流通技術
 〈畜産草地研究所飼料調製給与研究チーム 松尾守展氏〉

 飼料稲のロールベールは、輸送作業中にラップフィルムの破損や変形などにより品質劣化の恐れがある。そこでフォークリフトを使って簡便で確実に輸送でき、流通過程で損傷や変敗を起こさないロールベール用荷役具を開発した。
 ロールベールの形状に着目して、底部のすき間からすくい上げる方式を採用。ロールベールの底部に挿入可能なサイズで、ロールベールの重さ(約300キロ)にも耐えられる1トン容量のフレコンバッグ用素材で筒状の荷役具を製作した。

(8面)

 【山形支局】小国町や県、生産者などが共同で開発に取り組んできた、同町産タカキビを置賜産の豚肉に混ぜ込んだ「みれっとハンバーグ」が商品化された。もっちりとした食感が人気を呼び、11月の発売から約3カ月で1千パックを販売。予想以上の売れ行きに関係者たちも驚いている。
 
100318_05.jpg 小国町では、転作の取り組みの一つとして雑穀を栽培。現在の栽培面積約4ヘクタールのうち、約1.3ヘクタールにタカキビが作付けされている。2004年には、生産者、飲食店、消費者らで「小国五穀の会」(渡部茂雄代表、現会員13人)を立ち上げ、生産振興と消費拡大を図ってきた。
 みれっとハンバーグは、県の「雑穀振興プロジェクト」事業に同町や小国五穀の会が参加して取り組み、生まれた。プロジェクトは二つの部会に分かれ、生産部会では栽培方法をマニュアル化し高品質、安定生産を目指し、利活用部会ではクッキーやハンバーグ作りに挑戦し、雑穀の分量や組み合わせの材料を吟味してきた。
 雑穀はビタミンや食物繊維が豊富な健康食品として人気。その中で利活用部会が注目したのはタカキビだ。10アール当たりの収量は良くて200キロ。栽培には手間がかかるが、粒が大きく紫がかった色で、加工しても雑穀らしさが生かされる。
 同部会のメンバーらは、炊くとひき肉のような食感になることから、ハンバーグにすることを思いついた。利活用部会リーダーの山口ひとみさんは「ひき肉とタカキビの割合や、ひき肉は豚肉にするか牛肉にするかなど、試作を繰り返しました」と振り返る。
 試食会を何度も実施して改良を重ね、置賜産の豚肉を使用したソフトな食感のハンバーグが完成した。加工は米沢市の食肉加工業者に委託し、メンバーの高橋悦人さんが代表取締役を務める有限会社ハートランドファームが販売元になった。
 山口さんは「雑穀の良さを多くの人に知ってもらうために、新たな商品を開発したい。商品がその場で味わえるような施設や直売所を町内に増やしたい」と話す。小国産雑穀の加工品が特産になり、町おこしにつながればと、関係者らの夢は膨らむ。
 
写真:左から商品開発に携わった高橋さん、山口さん、町担当者の瀬斉知倫さん

100318_06.jpg 【広島支局】伐採した竹を粉にして利用する竹肥料農法に、庄原市山内自治振興区が昨年から取り組んでいる。特産品の開発も視野に入れ、振興区長の市川基矩さん(70)は「里山を守り、収益にもつながる取り組みとして広げていけたら」と話す。
 振興区では、14ある自治会のうち、5自治会が破砕機で約14トンの竹パウダーを製造。これを農家に配布して、農作業に活用してもらい、減農薬や農産物の品質向上を図る。
 竹パウダーを使って栽培したものは、特産品として販売していきたいという。「米や野菜で試験栽培して、いずれはブランド化を」と計画する。
 作業に参加した実安裕美さん(62)は「今までは燃やしていた廃材が特産品に変わる。ほかの自治会にも広めたい」と話す。
 市川さんは「今年は約30トンの竹パウダーができる見込み。多くの農家に使用してもらいたい」と意欲を見せる。
 
写真:市川さん(左)と実安さん

100318_07.jpg 【栃木支局】草刈り機の飛び石防止板を、那須塩原市の関尾惣一さん(69)が自作し、安全・効率的な作業に役立てている。
 この防止板は、市販品と同じく、草刈り機本体に取り付けて使う。昨年6月から友人や地元のシルバー人材センターで使われていて、完成度の高さから口コミで人気が広がっている。
 作製のきっかけは、シルバー人材センターからの依頼だ。当初は主要部分に金属板やベニヤなどを使っていたために重く、飛び石との相性も悪かったためグラスファイバーに変更。飛散防止部分には、柔軟性と耐久性を兼ねて約3ミリの厚さのゴムマットを使用した。
 取り付けは、刈り刃から約1センチのすき間を空け、草刈り機本体にボルトで固定。刈り刃とのすき間を空けることで、雑草が詰まりにくくしている。
 友人からの依頼で、刈った草をまとめる器具も製作。柔軟性のある長さ5センチ強の鉄板を前後に取り付け、上下に移動させたり左右に曲げることで、決まった個所にまとめることに成功した。
 「これからも、誰にでも扱いやすく安心して使えるように工夫していきたいですね」と、関尾さんは話している。
 
写真:飛び石防止板を付けた草刈り機を手に関尾さん

100318_08.jpg 【静岡支局】浜松市北区のミカン農家・石川重宏(いしかわしげひろ)さん(42)は、コンテナに入れたミカンを自動で選果作業台に広げる装置を自作し、作業の効率化に役立てている。
 選果中に腰が痛くなっていたことから、自分や家族の体に合わせ、作業台を15センチ高くした石川さん。家族からは作業しやすいと好評だったが、今度は位置が高くなった分、作業台にミカンを広げることが大変になったという。
 「これでは作業台を高くした意味がない」と感じた石川さんは、コンテナのミカンを作業台に広げるこの装置を考案。エアシリンダーで作動する仕組みで、「スッタン・パッタン」と名づけた。
 さらに石川さんは、作業台の高さまでコンテナを持ち上げるため、モーター付きのチェーンブロックの利用を思いついた。コンテナをつり上げるためのワンタッチフックを製作。ミカンへの衝撃を抑えるためのつり上げスプリングも開発した。
 「ミカン農家は、人生で何杯コンテナを運ぶと思う? おかげで仕事は楽になったよ」と石川さん。「開発する側・作る側・作業する側が一体となれば、農家が本当に使いやすい道具は生まれると思うよ」と話している。

写真:「スッタン・パッタン」と名づけた装置

100318_09.jpg 【青森支局】青森県のソバ奨励品種「階上早生」を栽培する階上町赤保内の松橋勝美さん(72)は、階上そば振興委員会(阿部武志会長・12人)の副会長として、「道の駅はしかみ」内の作業所でそば打ちを実演。「階上早生の魅力を伝えたい」と張りきっている。
 松橋さんは、階上早生について「実が大きめで黒褐色、粘りが強く香りが強い。本当においしいソバ」と自信を込めて話す。
 栽培は、妻のセツさん(69)と二人で行う。「種を厚めに播くと細めになる」と、播種量は10アール当たり5キロと少なめだ。振興会員の栽培面積は2009年が約20ヘクタールで、今年は25ヘクタールまで広げる予定という。
 振興会を代表するそば打ちの腕前の松橋さん。基本を一度習っただけで、あとは独学で技術を身に付けた。「そば関連のイベントでは愛好会の協力で多くの人に階上早生そばを楽しんでもらえる。今後も階上早生そばのおいしさをPRしていきたい」と話している。
 
写真:そば粉を手に松橋さん

100318_10.jpg 【香川支局】「年齢層が比較的若い一般消費者向けに販売していこうと、産直ではなく100円ショップに目をつけ、店と交渉しました」。土庄町滝宮の農家7人は、100円ショップの一角で毎日、新鮮な野菜を100円均一で販売している。
 2007年に試験的に始め、今年で4年目。人気コーナーとして定着した。主に野菜を出荷する石井一右(かずすけ)さん(74)は、「売れ残りは翌日に引き取ることにしていますが、ほとんど残りません」と話す。出荷する野菜は、仲間と相談して、商品が重ならないよう調整するが、これが7人の悩みどころという。
 石井さんは「農繁期は作業に追われるが、今後も地元でできた新鮮な野菜を提供していきたい」と話している。
 
写真:野菜コーナーで石井さん

100318_11.jpg 【北海道支局】北海道名寄農業高等学校では、ヒマワリの種から抽出した油「大地の輝き」を今年から販売し、人気となっている。
 名寄市では、観光資源のヒマワリ畑の再利用と地産地消に向け、名寄農業高校、農家、名寄市立大学などが共同で研究に取り組んできた。2年ほど前からは、作付けを食用油専用種に切り替え、さらに、昨年の暮れから搾油工場が稼働している。
 名寄農高では、生活科学科の5人が昨年、ヒマワリ30アールを作付け。種子250キロを収穫した。リーダーの佐藤美彦さん(2年)は「すべて手作業だったので苦労しました。今年は収量を上げ、搾りかすなど副産物の再利用も研究したい」と話している。
 
写真:ヒマワリ油「大地の輝き」

 ▼国内に生息するスズメの数がこの50年間で10分の1に減ったと報じられた。環境省による推計で、スズメが巣作りできる木造住宅の減少に加え、都市部で空き地や原っぱが少なくなったことが主な原因という。特に都市部の住宅地で見られなくなっているようだ。
 ▼スズメは、人家とその周辺の樹林、農耕地を拠点に生息する里地里山の代表的な野鳥だ。成鳥は一つの行動圏内で1年を過ごし、遠くへの移動はしない。森林の奥深くには生息せず、人が集落から離れて無人になるとスズメも姿を消す行動が確認されている。
 ▼イネ科やタデ科、キク科の種子を好んで食べ、水稲や麦など穀類栽培には害鳥となる。一方で、春から夏にかけての繁殖期を中心に小型の昆虫類を多く捕食し、多種類の雑草種子を食べる益鳥の顔も併せ持つ。
 ▼田んぼに立つかかしは、スズメを追い払うために考案されたと言われ、古くから人との間で米の争奪戦を繰り返してきた。取材先で、早生品種の田んぼをスズメが襲って全滅に近い被害が出たと聞き、個体は小さくても群れになると大きな脅威になると実感した。
 ▼子どものころ、水稲の収穫期には、きらきらと光る防鳥テープが張られ、網をかけた田んぼも多かった。一定時間ごとに爆音器が出す大きな音がこだましていた。2008年度の鳥類による農作物被害は、カラス被害が1万7千ヘクタールを超え、半分を占める。04年に1万5千ヘクタールに上ったスズメ被害は6100ヘクタールになり、減少傾向にある。
 ▼農村部でもコンバインの普及で餌だった稲の天日干しが減り、生息数が減った要因の一つとの指摘がある。農作物被害はない方がありがたい。しかし、多様な生物がバランスを保ちながら生息できる環境を守っていかないと、特定の生物が大発生して被害をもたらすなど別方向から影響を受ける心配がある。人々の生活と共にいて、最も身近なスズメの減少は、さまざまなことを考えさせる。

 「若者が夢の持てるミカン農業を」――三重県熊野市金山町にある株式会社「金山パイロットファーム」の大西誠代表(74)は話す。表年は半分の枝ごとに摘果剤を散布し、翌年の着果を促す半樹摘果の技術を取り入れた。単価の高い裏年の収量を引き上げて収益を確保。経営不振だった同ファームを3年で再建した。高品質果実の生産に向けてマルチ栽培と点滴灌水〈かんすい〉を組み合わせた「マルドリ方式」の面積を拡大、作業の省力化にも努める。地域農業の拠点として、かんきつを中心に年間を通して楽しめる観光農園を目指し、準備を進めている。
 
100311_01.jpg 三重県南部の熊野市にある金山パイロットファームは、温暖な気候を利用して温州ミカンや中晩かん類の生産・販売を行う。現在は36.1ヘクタールを経営し、35人が働いている。
 早生温州(24.6ヘクタール)は糖度が14~15度で収穫し、JA出荷が中心だ。「マルチミカンでも表年は安い。キロ当たり200円の生産原価は確保したい」と大西代表。直売や宅配を行っていて、おいしさが人気を呼び、顧客は口コミで増えている。
 大西代表は「半樹摘果を行うと、手作業での摘果に比べ10分の1程度の労力で済む。また、集中して果実を成らせるため、着果ストレスで糖度が1度ぐらい高くなる」と説明する。
 ミカンの木を観察し、摘果剤を散布する枝には目印の白いテープを巻き付ける。裏年でも確実に実が付くように、前年の花が満開後10日をめどに摘果剤を散布。摘果は6月中に終わらせ、裏年は表年より2割ほど多収になるように管理する。
 ミカンの品質向上を図るマルドリ方式は10ヘクタールに導入している。マルチシートの下に直径30ミリの点滴チューブを2メートル間隔で張り巡らせ、水や液肥を供給する仕組みだ。点滴チューブには30センチ間隔で穴を開けている。
 極早生や早生温州では、8月中旬以降に約10分ずつの少量多灌水を行って酸を抜く方法としても用いている。
100311_02.jpg この方式では、施肥や灌水のたびにシートをめくる必要がなく、省力化が図れる。品質が向上して灌水と施肥効率が良く、環境への負荷を軽減しコスト低減にもつながった。水源は、畑地灌漑事業で完成したため池から引いている。

(1面)

 
写真上:「2009年産ミカンは表年だが、干ばつと台風18号の影響で傷果が多く、収量は目標の25%減」と話す大西代表
写真左:巻き取り機を使ってマルチシートを広げる

 農林水産省は4日、新たな食料・農業・農村基本計画のポイントを農林水産政策会議で示した。焦点の一つである担い手政策は、要件を設けて一部の農業者に支援を集中する現行計画を見直し、小規模農家を含むすべての意欲ある農業者の営農継続と経営発展を支援する施策への転換を打ち出した。戸別所得補償制度の導入で経営を下支えし、家族経営を中心とした多様な経営体の発展を促す。6次産業化などの取り組みを通じて女性や高齢者が活躍できる環境づくりを促進する。3月中の新たな基本計画策定に向け、農業・農村の将来象や目標の明確化、政策の具体化などの検討が大詰めとなる。
 
  基本計画のポイントは、意欲ある多様な農業者を育成・確保する政策への転換を掲げた。家族経営を「地域農業の担い手の中心」と位置付け、規模拡大や6次産業化などの経営発展に向けた取り組みを推進。支援には、現行の認定農業者制度を活用する。戸別所得補償制度とともに、融資や施設整備を支援し、6次産業化を推進する。
  認定農業者は昨年3月末で24万6千となり、地域営農の中核となっている。しかし、生産現場では「年齢や経営規模などの制限がある」「兼業農家や規模拡大をしないと認定されない」などの誤解があるとして、制度の周知徹底を図る。
  現行基本計画では効率的・安定的な農業経営を担い手と位置付け、各種施策を「集中的・重点的に実施する」と明記した。特に土地利用型農業の構造改革推進を目指したが、実際には農業所得の減少などから担い手不足は深刻化した。次の基本計画では担い手を幅広く位置付けて戸別所得補償制度と6次産業化を柱に農業・農村の再生を図る。

(2面・総合)

 モモの里に人を呼ぼう――和歌山県紀の川市桃山町のモモ農家などでつくる女性グループ「桃(とう)りゃんせ夢工房」(34人)は、特産のモモなどを使った農産加工体験を受け入れている。体験メニューはジャム作りや桃染め、こんにゃく作りなど。工房に参加する四つの生活研究グループが、それぞれ得意な技を持ち寄る。大阪をはじめ主に関西地区の都市住民が訪れ、昨年度は約500人が体験した。代表の稲垣明美さん(50)=モモ1.2ヘクタール、イチジク10アール=は「体験を通して田舎のよさを伝えたい」と話す。
 
100311_03.jpg 「コンニャクイモなどは知らずに育ったので、子どもになるべく多くのものを見せてあげたい」とは、大阪府堺市から体験に訪れた鈴木佳世さん(43)。取材当日、同市に住む2組の親子がこんにゃくとモモジャム作りを体験した。
 ジャム作りでは、"先生"の瀬藤和子さん(58)=モモ50アール=から手順を教わりながら、3人の女の子たちを中心に材料を計るところからスタート。まず、煮る前にモモを味見して「おいしい」「このモモでジャムを作るなんてぜいたくだね」などと歓声が上がった。
 同市桃山町はブランドモモ「あら川の桃」の産地だ。モモの花が咲く時期と果実を直売する時期に観光客が集中するという。「それ以外の時期も都市の人に来てもらえるようにしたい」と、副代表の日浦成美さん(59)=モモ50アール。「都市と農村の交流が地域を元気にするんです」と強調する。

(3面・暮らし)

 
写真:モモジャムをびんに詰める作業。瀬藤さん(右)は「おしゃべりも楽しい」という

 NOSAI福井(福井県農業共済組合、酒井哲夫組合長)では、損害防止事業の一環として、農家へカーペットダスターや自走ラジコン動噴機などの防除機器を貸し出している。また、看板を取り付けた公用車で管内を巡回し、適期作業や防除の呼びかけに積極的だ。
 
100311_04.jpg 貸し出しはJAと連携して実施する。機器はNOSAIが購入し、地域の農業事情に合わせて県内13カ所のJAに配置。JAが窓口となり、希望する農家に1日単位で貸し出す。圃場が比較的広い平場地域には、カーペットダスターなどの大型機械を中心に配置し、中山間地には背負い式動力散布機などを置く。
 48戸で水稲37ヘクタール、大麦・大豆15ヘクタールを作付ける福井市南江守町の南江守生産組合では昨年、ブームスプレーヤー1台を借りた。4月中旬~下旬に大麦に2回、8月中旬~下旬に大豆に2回散布した。組合長の杉本進さん(62)は「機器を購入するには資金も必要だし、リースサービスもない。これからも事業を継続してほしい」と話す。

(5面・NOSAI)

 
写真:「看板は、農家の意識付けにつながっている」と杉本さん(右)

 畜産の生産現場で診療活動に携わる獣医師が、診療技術などに関して研究成果を発表する第36回家畜診療等技術全国研究集会(主催=NOSAI全国)が2月24日と25日、東京・港区のヤクルトホールで開かれた。地区発表会を経た21題の研究発表が行われ、NOSAIえひめ松山家畜診療所の神野雅子獣医師が最優秀の農林水産大臣賞を受賞。そのほか、農林水産省経営局長省9点(うち吉田賞1点、奨励賞2点)、全国農業共済協会長賞11点が選ばれた(審査委員長=佐々木伸雄東京大学教授)。農林水産大臣賞など上位入賞の研究成果のほか、畜産農家の飼養管理に参考となる主な研究内容を紹介。農研機構動物衛生研究所の林智人主任研究員が「臨床現場につながる基礎免疫学――全身性免疫と粘膜免疫」と題して行った講演の概要も紹介する。
 
 「研究発表と入賞者」
 (敬称略)
 〈農林水産大臣賞〉「クレブシエラ菌(Klebsiella pneumonie)による牛甚急性乳房炎に対する抗生剤の使用法の検討」愛媛県・NOSAIえひめ松山家畜診療所=神野雅子ほか
 〈吉田賞・農林水産省経営局長賞〉「歩様異常を主徴とした黒毛和種子牛の脊髄形成異常症の4例」岩手県・NOSAI胆江=渡辺崇ほか
 〈奨励賞・農林水産省経営局長賞〉「経口投薬器を用いた耳道洗浄効果の検討」北海道・道南NOSAI南部家畜診療センター駒ケ岳大沼家畜診療所=寺澤早紀子▽「早期離乳黒毛和種子牛に多発した大脳皮質壊死症」宮崎県・NOSAIみやざき=上松瑞穂ほか

(9面)

 「全国果樹技術・経営コンクール」(中央果実生産出荷安定基金協会など主催)の表彰式が2月26日、東京都品川区で開かれた。農林水産大臣賞の受賞者、団体の概要を紹介する。
 
 大町さくらんぼ生産組合〈山形県天童市 サクランボ〉
 水田転作で農地を団地化して樹園地270アールを造成し、高品質・高収量の栽培に取り組む。
 「佐藤錦」を中心に収穫期が早い「正光錦」や晩生種「紅秀峰」を栽培し、3年間の平均収量は10アール当たり803キロ。佐藤錦はLと2Lが約8割を占め、糖度20度のものが中心だ。
 毎年秋には、土壌改良機「グロースガン」で酸素供給と耕盤破砕を行い、土壌の物理性の改善、維持に努める。
 
 大槻善治さん〈福島県福島市 モモ、リンゴ、サクランボ〉
 モモ175アール、リンゴ115アール、サクランボ20アール。各品目の多品種作付けで労力分散と天候や市場価格に左右されない経営に努める。労働力は、家族4人を中心に年間延べ400人を雇用する。
 モモは、低樹高栽培に取り組む。地区の生産者でバックホーやマニュアスプレッダーを共同購入し、経費節減を図る。
 土壌診断に基づく土壌改良や複合性フェロモン剤を使用し、殺虫剤の使用を減らしている。2003年にはエコファーマーの認定を受けた。
 
 竹平伸敏さん〈静岡県浜松市・かんきつ〉
 かんきつ専作で、「青島温州」440アールを中心に620アールを栽培する。基盤整備と機械化の徹底で、家族5人の労働力を中心に省力的な経営を実現した。
 園地は、自宅から半径500メートル以内にある。園内道や作業道を整備し全園地にスピードスプレーヤーや肥料散布機、高床作業車などの大型作業機械の乗り入れを可能にした。フォークリフトを利用した収出庫やパワーリフターでの収納・点検、ダンプカーでの出荷など機械化を図っている。
 
 福岡憲三さん〈愛知県日進市・ブドウ〉
 果樹専業でブドウ285アールを中心に柿など計316アールを栽培する。ブドウ園地2カ所の標高差が72メートルあり、早生から晩生の23品種を組み合わせ、8月上旬から9月下旬までの長期収穫を実現した。労働力は、家族4人のほか13人を雇用する。
 WH型平行整枝短梢剪定(せんてい)を取り入れた。直線的な作業で、従来の自然型整枝と比べて約2割の省力化となった。

(15面・営農技術)

 社団法人中央酪農会議(中酪)は3日の通常総会で、2010年度から3カ年の「牛乳消費喚起対策」実施を決めた。他飲料との混ぜ飲みや料理への利用など直接飲用以外の市場を開拓し、最近の急激な牛乳消費の減少傾向の解消を目指す。子どもを持つ30代の母親をメーンターゲットとした。価格や安全・安心、健康などに加え、牛乳に求めているおいしさ・効能・牧場の「実感」を意識して牛乳の新たな価値の開発・訴求を図る。
 基本的な戦術は、「酪農家による消費者コミュニケーション」運動の展開。生産者の「まじめで一生懸命な活動」を前面に出し、牧場の現状や酪農家の顔・思いを伝えることに重点を置く。テレビ広告などに依存した情報発信から、話題を開発しそれをマスコミに取り上げてもらう「広報的手法」と複数のメディアを効率的に活用する「広告的手法」を組み入れた「生活提案型」の広報活動に転換する。

(2面・総合)

 全国のNOSAIの組合等・連合会では、地域の実情に応じた多彩なリスクマネジメント(RM)支援活動を展開中だ。有機・減農薬栽培の普及や食の安全・安心の確保への取り組みなどに配慮しながら、地域の損害防止支援センター的な役割を果たそうと努めている。RM支援活動の推進は、NOSAIの全国運動の推進課題の柱の一つ。新年度からスタートする「『信頼のきずな』未来を拓く運動」では、これまでの取り組みを一層充実し、関係機関との連携で、農家の生産と経営を力強く支援していく。
 
100311_05.jpg 共子 NOSAIのRM支援活動は、どんな取り組みが多いのかしら。
 済太郎 NOSAI全国(全国農業共済協会)は4日、「信頼のきずな」実践強化運動の全国会議を開き、RM支援活動の取り組み状況を取りまとめている。NOSAI連合会等の報告によると全国的には、水稲・麦・大豆など地域の基幹作物の防除支援(34道府県)、野生動物の侵入防止柵の導入など獣害対策支援(19県)――などが多い。航空防除など共同防除の減少や、野生鳥獣による被害も全国的に拡大しているからね。
 共子 農家の高齢化、兼業化が進む中、「NOSAIの支援が役立つ」という農家の声をよく聞くわ。
 済太郎 そのほか、野菜・果樹などの土壌診断、家畜の健康診断に基づく飼養管理指導、畜舎消毒――などの支援も多い。近年は、営農技術の講習会開催や農機具の貸し出し、農業政策の勉強会など、営農支援というとらえ方で幅広く取り組んでいるNOSAIも増えている。

(5面・NOSAI)

 
写真:温湯消毒で減農薬栽培に協力(埼玉県・NOSAI埼玉東部)

 日本施設園芸協会は2月25~26日、東京都内で「施設園芸総合セミナー・機器資材展」を開いた。省力化や低コスト技術をテーマにした講演から、低段と多段栽培を組み合わせたトマトの周年栽培、単為結果ナスの開発、加工用ホウレンソウの機械化体系の概要を紹介する。
 
100311_06.jpg 「低段・多段組み合わせ栽培によるトマトの日本型周年多収生産技術」〈神奈川県農業技術センター 北 宜裕野菜作物研究部長〉
 トマトの養液栽培で同一の栽培ベッドで低段密植と長期多段どりの苗を一緒に栽培する「低段・多段組み合わせ栽培」を開発。夏は低段密植、冬春は長期多段どりで、実証試験では10アール当たり24.2トンを収穫した。
 低段密植と長期多段どりの切り替えは、収穫中の株間に苗を定植するインタープランティング方式で行う。苗は第1花の開花まで育苗する。
 定植時期は、日別平均気温で積算温度を割り、育成期間の所要日数を計算して設定。低段密植は株間10センチ、第3~4花房で摘心し、長期多段どりでは株間30センチ、第8~13花房で摘心する。

(12面)

100311_08.jpg100311_07.jpg 【長野支局】日本ではまだ珍しい「セロリ・ラブ(根セロリ)」の生産に、原村大久保の永田せつ子さん(56)が取り組んでいる。市場価格は1株1千円と高値で取引されており、永田さんは「地元原村での普及を図るため、料理法などを開発していきたい」と意欲的だ。
 永田さんは、夫の広幸さん(61)と息子の司さん(27)、研修生の2人で露地、ハウスを含め3ヘクタールでセロリを栽培している。
 セロリ・ラブはセロリと同様、夏場を中心に生産。肥大した根の部分を食用とするため、株の直径を約18センチまで成長させる。
 販売は、栽培1年目に浜松市のフランス料理店のシェフが直接、永田さんのハウスを訪れ、その場で全量が売買契約された。
 「原村で生産されたセロリ・ラブが一般の家庭でも、普通に食べられる日が来ることを期待しています」と話す永田さん。今年は、JAの直売コーナーへレシピを付けて出荷する予定だ。

写真:セロリ・ラブのハウスで永田さん。右写真は鉢植えしてみたというセロリ・ラブ(土の上に出ている株が食用になる)

100311_09.jpg 【島根支局】「青首大根」の3~5倍という辛味と太く長いひげ根を持つことから、出雲神話のヤマタノオロチをイメージして名付けられた「出雲おろち大根」は、島根大学(松江市西川津町)生まれのオリジナル野菜だ。
 元になった品種は、出雲地方の宍道湖畔(しんじこはん)や島根半島沿岸に自生し、そばの薬味などとして親しまれてきた「ハマダイコン」。同大学生物資源科学部の小林伸雄教授(41)は"これを地元の伝統野菜に育てよう"と、2004年から品種改良に取り組んできた。
 栽培は、9月に播種して12~2月に収穫。小林教授は、「ステーキや焼き魚にも合います。しつこい脂を辛味成分が和らげてくれます」とアピールする。

写真:辛味と太いひげ根が特徴の「出雲おろち大根」を手に小林教授

 【北海道支局】余市町で果樹園を経営する女性農業者のグループ「農と食を楽しむ会・果夢里(かむり)(内田多恵子代表=63歳)」は、昨年4月、自費でフルーツ料理のレシピ集(B5判63ページ)を発行した。内田代表は「身近にある材料で簡単に利用できる料理を満載しています」と話す。
 レシピ集では、自家産野菜や、リンゴ、サクランボ、プルーンといった地元特産フルーツを使った菓子などを多数紹介。中には「さくらんぼごはん」や「りんごのお好み焼き」といった料理もある。
 タイトルは、「果樹園から夢を届けるふる里レシピ」で、1千部を作成し、800冊以上を売り上げた。

100311_10.jpg 【新潟支局】「地元の農家から直接野菜を仕入れて給食に使えば、地産地消につながると思った」と話す長嶋信司さん(55)は、2007年11月、健幸食品株式会社(新潟市)を設立し代表取締役を務め、野菜の新たな流通システムを確立して地産地消に貢献している。
 今まで、農家が収穫した野菜はJA、市場、仲卸、八百屋の経路で流通していたが、同社の流通システムは、直接農家から野菜を買い付け、足りなければJA、市場、仲卸の順で仕入れて、配送・販売を行うものだ。
 仕入れた野菜は、長嶋さんが経営する会社が、幼稚園や学校の給食、社員食堂などで、地場産メニューとして提供。昨年11月、新潟市中央区にオープンさせた八百屋「やさい村」でも販売している。
 出荷は箱単位のため、資材や袋詰めの手間が省け、規格の合わない野菜も仕入れ、集荷まで行うことから農家の評価は上々だという。

写真:安さと新鮮さが売りのやさい村のスタッフ。地場産野菜を中心に米や納豆、総菜なども販売している

100311_11.jpg 【兵庫支局】兵庫県植物防疫協会は、農薬種類名と商品名の交互の読み替えが一目で分かる「農薬名称読替一覧」第2版を発刊した。新規登録された農薬(2009年9月末現在)を追加。A6判のポケットサイズで、農業関係機関から、使いやすいと好評だ。
 執筆した同協会の吉川年彦技術顧問は、「農薬を調べるとっかかりとして便利です。農薬は日々、登録・追加されているので、毎年改訂版を発行したい」と話す。

写真:冊子を手に執筆者の吉川技術顧問

100311_13.jpg 【鹿児島支局】奄美市の「奄美きょら海工房」では、黒糖を中心に地元の食材を使ったパンやスイーツなどの加工品を製造・販売している。中でも地元産サトウキビをふんだんに使った「黒糖生キャラメル」が人気だ。
 工房の道路に面した側では黒糖作りを実演していて、もくもくと立ち上る白い湯気に道行く人が目をとめていく。
 店内はカフェとレストランを併設していて、休日にもなると多くの利用者でにぎわう。
 セールスマネジャーの勢田裕久さんは「生キャラメルなど手間ひまかけて作った地元の味を、地域だけでなく県外の多くの方へPRしていきたい」と話す。

写真:店舗内には黒糖などを使った加工品がズラリ

100311_12.jpg 【岩手支局】手作りの「焼きプリン大福」が、花巻市上似内の農産物直売所「案山子(かかし)」で販売され、人気が定着している。
 焼きプリン大福は、「案山子」の女性会員17人で結成した農産物加工グループ「せきざくらの会」(照井正子代表)が、製造・販売しているオリジナル商品だ。
 もちと焼きプリン、クリーム、カラメルが溶け合う食感は、ほかでは味わえないおいしさで、1日平均300個を製造。大福人気のおかげで野菜などの売り上げが伸びたという。
 照井代表は「おいしい地場産品にこだわって、これからも新商品にチャレンジしたい」と意欲を見せる。

写真:上から焼きプリン大福、抹茶ババロア大福、生苺大福。大福は全部で6種類ある

 ▼毎年400人前後もの死者が出る農作業事故の防止を呼びかけようと、農林水産省は「春の農作業安全確認運動」をスタートさせた。事故が多発する春作業に向け、3月1日から5月末日まで3カ月間の運動を展開し、安全対策の徹底を促す。
 ▼重点事項には、重大事故に直結する転落・転倒の現状と対策への理解増進、万一の事故に備えた労災保険への加入促進を掲げた。機械の転落・転倒は、死亡事故の5割を占め、特に乗用型や歩行型のトラクター、運搬車などの事故が多い。圃場だけでなく、道路での事故が半数に及ぶ。
 ▼もう一つ重視するのは高齢者の安全対策だ。犠牲者の7割は65歳以上の高齢者であり、農業就業者の高齢化と並行して死亡事故に占める高齢者の割合が高まっている。農業就業者数が減少する中で死亡事故件数は横ばいが続き、死亡事故の発生率でみれば上昇に歯止めがかからず、深刻な状況との指摘もある。
 ▼農業者を重労働から解放し、年齢を重ねても農業を続けるには農業機械は欠かせない。しかし、操作ミスや安全確保の意識不足などから、取り返しのつかない事故につながる危険性がある点は忘れてはならない。事故防止には、圃場や道路などの危険個所の確認と改善が大切だ。農業者が柔軟性や俊敏性など自分の身体能力を把握する必要もある。
 ▼機械作業に伴う危険個所の確認や改善の要点などは、農林水産省の「農作業安全対策」、生研センターが運営する「農作業安全情報センター」、日本農業機械化協会のホームページなどに掲載されている。ただ、パソコンを持たない人もいる。個人まかせにせず、多くの農業者が参加できる地域的な取り組み体制の構築が求められる。
 ▼中山間地が多い日本の農地は、進入路が狭く、圃場自体が傾斜しているなど機械作業の面では危険と隣り合わせにある。普段から十分な対策を講じ、高齢者も安心して作業できる環境を整えておきたい。

 農林水産省は2月24日、畜産・酪農の2010年度政策価格と関連対策を決定した。食肉の安定価格と肉用子牛の保証基準価格・合理化目標価格は全畜種で据え置き。酪農の加工原料乳生産者補給金単価は据え置いたが、限度数量は牛乳・乳製品の需給緩和を反映して前年度比10万トン減の185万トンとした。新たにチーズ・生クリーム向けの新規需要創出を促す緊急対策を措置して、削減での農家手取りの減少回避と需給の安定を図る。「肉用牛肥育経営安定特別対策事業(新マルキン)」の創設など、肉用牛や養豚の経営安定対策を拡充した。
 
 畜産・酪農の政策価格は、食料・農業・農村政策審議会畜産部会(部会長・鈴木宣弘東大大学院教授)の答申を踏まえ、決定した。関連対策を含めた予算総額は前年度比198億円増の総額2099億円を確保。うち経営安定対策は、693億円増の1896億円を計上した。肉用牛や養豚の経営安定対策は、既存事業の統合や算定方法の一本化など仕組みを簡素化。赤松広隆農相は24日の会見で「将来の所得補償制度に向け、布石を打つことができた」と強調した。
 
1004_01.jpg 酪農は、10年度の生乳需給が30万トン程度緩和すると見込まれる。加工原料乳生産者補給金制度の限度数量は現行制度が導入された01年度以降最少となる185万トンに削減した。
 一方で、関連対策は「生乳需要創出緊急支援事業」に58億円を計上。削減分の10万トンをチーズや生クリームなど液状乳製品に仕向け、輸入品と置き換えるなど需要を確保する。
 
 肉用牛肥育経営安定特別対策(新マルキン)事業には846億円を盛り込んだ。現行の家族労働費割れの8割を補てんする肉用牛肥育経営安定対策(マルキン)事業と、物財費割れの6割を補てんする肥育牛生産者収益性低下緊急対策(補完マルキン)事業を統合。補てん金の算定方法を全国一本化した。
 肥育経営の収益悪化時に、生産者と国が基金を造成し、四半期ごとに肥育牛1頭当たりの粗収益(全国平均)と生産費(同)との差額の8割を補てんする。拠出割合は生産者が4分の1で、国が4分の3だ。
 
 
 
 
 
 所得補償導入に向け「明確・具体的なメッセージを」
1004_02.jpg 食料・農業・農村政策審議会畜産部会の鈴木宣弘部会長(東大大学院教授)は2月23日、記者会見で、11年度以降の導入が検討されている畜産・酪農の所得補償制度について、「できるだけ早く具体的なメッセージを出すことが必要」と述べた。
 赤松広隆農相は畜産・酪農でも所得保障制度を導入する方針を示している。農林水産省は3月に食料・農業・農村基本計画を策定する。畜産部会では、酪農肉用牛生産の近代化基本方針(酪肉近代化方針)の議論が大詰めを迎える。基本計画や酪肉近代化方針に11年度以降の明確・具体的なメッセージを盛り込み、生産現場に対し持続的にこういう制度で支えていくという方向性を示す必要がある。

(1面)

 
写真:食料・農業・農村政策審議会畜産部会の鈴木部会長

 産業動物獣医師の確保など獣医療の提供体制を整備する基本方針を策定するため、農林水産省は2月22日、獣医事審議会・企画部会(部会長=山根義久・日本獣医師会会長)を開き、原案を示した。獣医師確保では、〈1〉学生が産業動物診療の意義と魅力を知る機会の拡大〈2〉労働環境の改善〈3〉管理獣医師の育成など専門性の高い卒後研修の充実――など方向を示した。近年、産業動物診療に就業する獣医師が減少傾向にあり、産業動物獣医師の確保対策が緊急の課題となっている。4月下旬に開く計画部会で取りまとめ、農林水産大臣に答申。2010年度から10年間適用する第3次基本方針を策定する。
 
  農林水産省の基本方針原案は、産業動物獣医師の不足の原因として、〈1〉安全で良質な畜産物生産を支える職務について社会的評価が行き届いていない〈2〉獣医学教育で産業動物診療の意義や魅力を知る機会が少ない〈3〉小動物分野と比べて所得格差がある――などを指摘した。新規獣医師が都市部の小動物分野に集中する一方、産業動物診療施設は運営経費の合理化のため統廃合が進み、獣医師の活動分野や地域に偏りが発生。将来、獣医療が提供されない地域の発生が心配されている。
  NOSAI獣医師は産業動物獣医師の約4割を占め、家畜の飼養頭数の約7割の診療を担う。NOSAI団体も、産業動物獣医師の確保を大きな課題ととらえ、学生の臨床実習の積極的な受け入れや、獣医師職員採用説明会の実施などに力を入れている。
  基本方針原案の産業獣医師確保に向けた対策では、〈1〉学生を産業動物分野に誘引する措置の充実〈2〉獣医療関連施設の連携などによる労働環境面の改善〈3〉就業状況、求職情報の一元化と情報提供の全国ネットワーク化〈4〉飼養管理や経営も指導できる管理獣医師の育成など卒後研修の充実〈5〉休職・離職中の獣医師の再就職の支援――などを挙げる。

(2面・総合)

1004_03.jpg 民宿経営を通じて地域の活性化に貢献する女性を選定する「農林漁家民宿おかあさん100選」の第3回選定者が決まり、2月23日、東京都内で認定式が行われた(主催=都市農山漁村交流活性化機構)。農林漁家民宿の経営者や農林水産省など行政関係者ら約200人が出席。以前からの認定者も加わったパネルディスカッションが開かれた。都会の人が来て、環境改善に地域が動き出したなどの事例が報告された。
 
 宮城県石巻市で17年間、農・漁家民宿「のんびり村」を営む坂下清子さんは、「自分の地域らしさを生かしたツーリズムを形づくりたい」と発言。カキの殻むきなど特産品を使った体験メニューを準備するほか、山林でハイキングコースの整備を目指していると報告した。
 「どうやってお客さんに満足してもらうか、いつも考える」とは、「陽(ひ)なたぼっこのよしおちゃん家」(鹿児島県南九州市)を経営する宮崎トミ枝さん。宿泊客には夜遅い時間まで話が尽きない人もいる。宮崎さんがただ話を聞くだけの場合もあるが「ゆっくり話を聞いてくれる人を求めて来るお客さんもいる。精いっぱいのことができればいいと思う」と話す。
 地域と連携して農村環境の美化に取り組むのは、熊本県産山村で「民宿・山の里」を営む井(い)ゆいさん。豆腐屋やレストランなどと一緒に公園の再整備や河川の掃除を行っている。「20年後、きれいになった山を子どもたちやお客さんに見てもらいたい」
 山形県鶴岡市の小野寺美佐子さん(「農家の宿・母屋」経営)は民宿周辺を散策する客に、好意的に接してくれる地域住民がいる重要性を報告。「地域の人に協力してもらっている」と話す。特産のエダマメ「だだちゃ豆」の注文を近所の農家につなぐなど、地域で利益を分かち合っているという。

(2面・総合)

 
写真:民宿経営には「自分と家族の健康に気を配るのも大事」という意見も出た

1004_04.jpg 野菜の共同栽培・販売に取り組むのは、大阪府河内長野市岩瀬地区の農家や市内の住民など、60~70代中心のグループ「天見生きがいサロン」(会員延べ85人)だ。約30人が共同圃場で活動し、経験のない会員向けに、農家が栽培管理など指導する貸し農園を設置している。パソコンや囲碁・将棋の教室も運営。「たくさんの人に会うのが楽しい」と、代表の中林義明さん(75)=水稲3.5アール、野菜3.5アール=は話す。会員は年々増え、住民の交流の輪が広がっている。
 
 天見生きがいサロンが活動する河内長野市岩瀬地区は、石積みの棚田が残る山村地域。すぐ隣は新興住宅地で、会員の中には、散歩中にサロンの段々畑を見たのがきっかけで加入した住民もいるという。
 共同圃場(約9アール)ではナスやジャガイモ、サトイモなどを栽培。春~秋はほぼ毎日、冬は週3回ほど収穫を行う。地区の専業農家や自給的農家、新興住宅地の住民などが参加し、分担して作業する。会員の鈴木英二さん(70)は「作業は半分、茶飲みの場でもあるんですよ」と話す。
 貸し農園(約30アール)は現在、16人が利用する。作付ける野菜の種類は自由だ。専業農家の会員(5人)が交代で農園にいるため、わからない点はその場でアドバイスを受けられる。指導を担当する門林伸伍さん(70)=水稲50アール、クリ30アールなど=は「真剣に話を聞いてくれるので、やりがいがあります」という。
 共同圃場と貸し農園は会員の農家が提供している。農家が体調を崩すなど一時的に作れなくなっても、サロンが受け皿になれるという。
 共同圃場でとれた野菜は主に市内の直売所に出荷。貸し農園のものも、借り主がサロンに手数料を納めれば販売できる。出荷先の一つ、JA大阪南河内長野支店内にある直売所「アグリかわちながの」の徳備啓員店長は「毎月、防除日誌を出してもらい、きちんとした品質の商品を納めてもらっています。年間切らさず出荷してもらえると、もっといいですね」と話す。
 販売利益は資材の購入など運営費用にするほか、バーベキューや芋煮会など農園会員のイベントに活用する。「食べて飲んで親睦〈しんぼく〉を深めるのが大事」と中林さんは話す。

(3面・暮らし)

 
写真:鈴木さん(右)は「直売所から注文を受けるようになり、地域に役立っていると感じます」。中央は中林さん、左は江藤さん

1004_05.jpg 奈良県のやまと北部NOSAI(やまと北部農業共済組合、松岡嘉平治組合長)では、NOSAI部長が建物共済の加入推進や共済細目書の取りまとめなどを行っている。管内は水稲や柿、イチゴなどの栽培が盛んだが、近年は後継者不足や宅地化が進み、農家が減少。そんな中、地域の農業を守ろうと活躍するNOSAI部長を取材した。
 
 「100歳まで生涯現役で柿の栽培を続けたい。そのためにも自然災害から経営を守るNOSAI制度は不可欠だ」と話すのは、天理市杣之内町木堂の森田周作さん(72)=柿1.5ヘクタール、水稲50アールなど。
 NOSAI部長を務めて約15年になる。担当地区の建物共済の加入率はほぼ100%で、更新時には補償充実に向けた増額や加入プランの見直しを提案。集落の会合などでNOSAI制度の重要性を説明する。
 4年前にUターン就農した同町木堂の鈴木四郎さん(62)=柿約50アールなど=は「森田さんは地域のまとめ役で頼もしい。熱意を持って農業に取り組む姿は、勉強になる」と話す。
 NOSAI部長を務める同町の竹村一美さん(62)は、地域では数少ない専業農家だ。妻のはるみさん(63)とイチゴ17アール、水稲20アールなどを栽培する。「国の基本は農業。自給率が低迷する中、何とか農地を守っていきたい」と強調する。
 担当地区の農家は全員が建物共済に加入。一美さんは「周りの農家からは『加入していると万が一のときも安心』と喜ばれている」という。
 はるみさんも「NOSAIの建物共済は民間損保などに比べ、損害評価から共済金の支払いが早い」と話している。
 やまと北部NOSAIでは年に2回、「NOSAI部長会議」を開き、建物共済の仕組みなどを説明。被災したときは早く被害申告するよう呼びかけている。

(5面・NOSAI)

 
写真:「NOSAIの建物共済は、ほかの保険に比べて掛金が安いので加入しやすい」と森田さん(左)。右は鈴木さん

1004_06.jpg 品質の良さを打ち出して特産ジネンジョの販路拡大に取り組む、茨城県笠間市の「笠間自然薯(じねんじょ)研究会」(大里安夫会長=70歳、18人)。栽培方法を合わせて、糖度が高く粘りの強いジネンジョを生産する。1キロ2500円を基本にした価格設定で、贈答用中心に売り上げを伸ばしてきた。試食で食味を確認してもらう対面販売を基本に販路を開拓し、規格外品はけんちん汁に調理する工夫などで収益性を高めている。「高品質のジネンジョは作れるようになった。さらに販売に力を入れたい」とPRに積極的だ。
 
 「個人では大口の注文に対応できず、取引先から信用が得られない。人が集まって量を確保すれば、通年で安定的に販売できる」と話すのは、会長の大里さん。笠間市箱田でジネンジョ25アールと水稲1.3ヘクタールを栽培する。
 研究会では、スーパーでの対面販売や生協にジネンジョを出荷。注文に応じてメンバーが数量を分担する。ホームページでのPRや直販も手掛け、保冷庫を設置して通年での需要に対応。メンバーは各自顧客を抱え、直販や直売所での販売にも取り組む。
 PRや販売の機会を作るため、研究会では、毎週土、日曜には高速道路のサービスエリア2カ所で直売会を行う。県観光物産協会に入会し、年間10回ほどカシマサッカースタジアムで試合が催される日にも出店。ジネンジョや規格外品を使ったけんちん汁(300円)などを販売する。
 出店の際は、ジネンジョの粘りと食味を伝えるため、必ず試食を提供するという。商品には、研究会のPRや生産者名、レシピを書いたチラシを入れる。

(8面・流通)

 
写真:笠間自然薯研究会のメンバー。右が会長の大里さん

1004_07.jpg 母牛89頭の黒毛和牛繁殖経営を行う沖縄県糸満市摩文仁地区の伊保俊彦さん(60)は、サトウキビ農家から株の更新時に畑を借りるなど自給飼料生産に努めるほか、豆腐かすやビールかすといった食品残さも活用し、生産コスト低減に取り組む。「子牛の市場価格は低迷し、飼料も高止まりのまま。利益の確保には、飼料作りが欠かせない」と話す伊保さん。また、早期離乳で、子牛の病気を防ぐとともに受胎率を上げ、平均分娩(ぶんべん)間隔12.5カ月を達成している。
 
 伊保牧場は、毎年2~8月に4~5軒のサトウキビ農家から計1.5ヘクタールの畑を借りる。堆肥を10アール当たり6トン投入して、ソルゴーを直播し、3月以降に収穫。一番草、二番草を合わせて2トン収穫して、青刈りのまま給餌する。堆肥をまいて耕うんし、畝立て後にサトウキビ農家へ返却する。
 この取り組みは4年前から始めた。今ではサトウキビ農家の方からの依頼もあるという。
 牧場は妻・智栄美さん(57)と就農1年目の長男・俊洋さん(24)の3人で経営する。1人30頭の管理を目指し、規模拡大してきた。伊保さんが主に母牛の管理や堆肥出し、機械作業などを担当し、智栄美さんと俊洋さんが餌の調合や給与を行う。
 自己所有の飼料畑4ヘクタールでは、ローズグラスを主体に栽培。マニュアスプレッダーで堆肥を散布し、化成肥料だけの施肥と比べ、肥料代は3分の1で済ませている。ローズグラスは乾燥ロールにして貯蔵する。
 1~3月には廃棄されるサトウキビの鞘頭(しょうとう)部を農家から無償で譲り受け、粗飼料に使う。毎日、市内の豆腐屋から約400リットルの豆腐かすを引き取り、2週間に一度はビール工場からビールかす2トンを購入するなど食品残さも利用する。
 母牛への餌やりは朝と夕方の2回。朝はソルゴーやローズグラスなどの粗飼料と、豆腐かす5割、ビールかす4割、配合飼料1割を混ぜた餌を与える。夕方は粗飼料だけだ。伊保さんは「飼料を全量購入する同規模の農家に比べ、約4割の飼料費節減につながっている」と説明する。

(9面・営農技術)

 
〈写真:サトウキビの鞘頭部を与える伊保さん。1度に軽トラック1台分を使う〉

100304_a.jpg 【高知支局】高知県は日本一の冬春ハウスナスの産地。高知市春野町の雨森広志さん(75)は、グリーンの色鮮やかな「みどりナス」の育成を1995年ころに始めた。みどりナスの生産農家はまだ少ないが、珍しさなどから普通ナスよりも高値で取引され、業務用として東京の高級料亭などで、コース料理の一品として活用されている。
 
 「みどりナスは、中国の品種(母親)と日本のみどり色のナス(父親=大刀・白神)を選抜して固定し、2種類を育成した」と雨森さんは話す。
 現在、みどりナスをハウス栽培(10アール)しているのは、雨森さん一人で、露地では、地元の農家が家庭菜園用に栽培している程度。
 普通ナスほど収量は上がらない反面、価格は普通ナスの約2倍で、2本入りのパックが、120~
130円の高値で取引されている。本県での需要が少ないことから、需要の掘り起こしが急務だ。
 みどりナスは、1果重約120グラムを目安に収穫。JA高知春野から県園芸連を通じ、東京築地市場に出荷され、東京の高級料亭で消費されるのがほとんどという。
 特徴は、皮が柔らかく、果肉がしっかりしていること。家庭料理では、揚げ物や酢・塩もみなどに向き、食事の彩りにもなる。
 
写真:みどりナスの成長を確認する雨森さん

100304_b.jpg 【福岡支局】「オカワカメの生産、出荷の拡大を図りたい」と話す、古賀市青柳の森敏幸さん(53)は、昨年からハウスでオカワカメを栽培している。
 オカワカメは南米原産のツルムラサキ科のつる性多年草で、別名「雲南百薬(うんなんひゃくやく)」という。葉は鮮やかな緑色で肉厚のハート型。生食やおひたし、いため物などに利用できる。
 森さんはオカヒジキ栽培(ハウス90アール)の傍ら、ハウスでパパイアやパッションフルーツなど、地元農家があまり取り組んでいない作物を試験的に栽培してきた。「パッションフルーツの栽培棚の下が空いていたので、何か作れないかと模索していたとき、インターネットでオカワカメを知りました」と話す。
 沖縄から苗を取り寄せ、昨年6月に栽培開始。「水分を多く欲しがる植物なので、灌水(かんすい)が大変。最近は『むかご』での繁殖もやっています」と森さんは話す。完全無農薬で栽培し、定植から2~3カ月で収穫。地域の直売所に出荷する。
 
写真:オカワカメの圃場で森さん

100304_c.jpg 【島根支局】「西条柿」の規格外品の有効利用として、試行錯誤の末に柿酢の商品化を実現させた雲南市大東町の柿生産者・青木勤さん(82)と綾子さん(77)夫妻。昔から地元で、柿で作った酢を飲んだり、酢の物に利用していたことから、商品化を思いついたという。
 現在の栽培面積は、10アール。収穫後、規格外の柿は完熟させ、11月にたるに漬け込んでおく。それを翌年4月ごろにろ過し、約2年間熟成させたものが柿酢となる。「できる限り純粋なものにしたかったので、いろいろなろ過方法を試みましたよ」と青木さんは話す。
 出来上がったばかりの酢は、発酵が続いているため、しばらく時間を置いてから瓶詰めする。青木さん夫妻は「需要に合った量だけ製造して、産直市などに出しています。喜んで買ってくれる人がいるので、とても励みになりますよ」と話している。
 
写真:「商品になるまでに10年かかりました」と話す青木さん夫妻

100304_d.jpg 【秋田支局】自動販売機で自家産の野菜や果物、米などの直売を行う、秋田市下新城中野の長谷川富士美さん(57)は、「顔なじみのお客もできた。無人販売の問い合わせに訪れる人もいる」と手応えを感じている。
 この販売機には自家産農産物24品を収納。年中無休で、近所の人や自宅裏にある県立大学の学生を中心に好評を得ている。
 自動販売機は、結婚30年の記念として、夫の巖さん(56)が長谷川さんにプレゼントしたもの。これをきっかけに、2008年秋から直売をスタートさせた。
 商品は、長ネギ、チンゲンサイ、トマトなどの野菜と、米や大豆、ナシ、ブドウ、モモなど。もち米やもち粉なども販売し、すべてが長谷川さん夫妻の自信作だ。「一番人気はナシ、ブドウなどの果物」と長谷川さんは話す。
 
写真:ジャガイモを補充する長谷川さん。朝、昼、夕方の3回行う

100304_e.jpg 【茨城支局】県産「コシヒカリ」を使った米粉加工品の開発に、下妻市の下妻食と農を考える女性の会「ウィマム」新食材部(谷田部美千代代表、メンバー7人)が取り組んでいる。
 米粉パンは現在、アンパン、プレーン、カレーパン、クリームパン、揚げパン、ピザの6種類を主体に、要望に応じて食パンやシフォンケーキなども製造。アンパンのあんやカレーパンの具、ピザの野菜は、メンバーが作ったものを持ち寄っているという。
 パンは、加工所の窓口と、JAの直売所で販売。小麦粉のパンと比べると腹持ちが良く、独特の食感にリピーターも多いという。
 新食材部ではこのほか、米粉を使った料理の紹介やパン教室も開催。食育の講習会の講師を務めるなど、米粉の普及や食育推進活動にも力を入れている。
 
写真:新食材部の商品

100304_f.jpg 【岡山支局】「もち米『ヒメノモチ』のブランド化を」と新庄村では村を挙げて、ヒメノモチの生産・加工・販売に取り組み、生産を拡大している。
 新庄村ヒメノモチ生産組合(110人、63ヘクタール)の西村和仁(かずと)組合長(63歳、ヒメノモチ約1.1ヘクタール)は「現在、村内の米生産量の70%以上がヒメノモチ。うるち米を大きく上回っている」と説明する。
 同村は寒暖の差とミネラルを多く含んだ水、良質な堆肥の積み重なった土壌などが要因となって良食味のもち米が生産されている。
 村では村民などが参加してヒメノモチのブランド推進プロジェクトチームを立ち上げ、年間約80回、祭りや百貨店・スーパーなどでもちつきの実演販売を行い知名度を上げている。恒例イベントには固定客も付き、メディアでも取り上げられた。
 
写真:村内にあるもち米加工場

100304_g.jpg 【香川支局】特産ブロッコリーの芯を漬物に加工している、東かがわ市与田山の「フレッシュファーム」(メンバー3人)では、販売にも取り組んでいる。代表の髙原幸子さん(54)は「コリコリとした食感は、たくあん漬けのよう。お好みでユズやショウガ、レモンを入れると、それぞれの風味で楽しめますよ」と話す。
 材料は、収穫されたブロッコリーを出荷規定の長さに切りそろえて廃棄する芯の部分。これを丸ごと利用する。
 髙原さんらは珍しい土産品としてこの漬物を編み出し、普段は、毎週金曜日の午前中だけオープンする「生活研究グループの店」で販売中だ。
 
写真:「ブロッコリーの芯漬」

 ▼畜産・酪農の2010年度の政策価格と関連対策が決定した。赤松広隆農相ら政務三役を中心に、経営安定対策を見直して内容充実を図るなど前年度を上回る予算を措置した。副大臣や政務官が視察を重ね「生産現場の厳しい状況や意見を踏まえた」(赤松農相)とした。
 ▼政治主導を掲げる現政権では、政務三役が政策決定の責任を持つ。ただ、政策の検討や決定の過程が見えず課題を残した。特に与党への説明や事前調整のない決定に強い反発を招いた。副大臣が主催する政策会議では「結果報告だけでは協議にならない」と批判が相次いだという。
 ▼食料・農業・農村政策審議会畜産部会では、生産者委員が「関連対策が見えないと政策価格の妥当性が判断できない」と訴えた。酪農の加工原料乳生産者補給金で限度数量の10万トン削減が諮問される一方で、農家手取りの減少を回避する関連対策の内容が不明だったためだ。
 ▼従来の、畜産部会の審議よりも政府・与党の協議が先行し、答申前に実質的な内容が固まった進め方にも問題があったが、関連対策の方向は把握できた。政策価格の妥当性だけの審議でいいのか、畜産部会のあり方の検討が必要だ。
 ▼また、昨年まで畜産部会の答申には「建議」として畜産政策への意見を添えた。ところが今回は農林水産省側の意向で「意見の概要」とされた。「位置づけは変わらない」(畜産企画課)と説明するが、意見の重みを軽くされた印象だ。
 ▼農政の基本方向を示す新たな「食料・農業・農村基本計画」の検討は、3月中の策定に向け大詰めを迎えた。並行して「酪農肉用牛生産の近代化基本方針」の協議も進められる。赤松農相は、畜産にも所得補償制度を導入する考えだが、農業・農村の再生とどう結びつけるのか道筋を明らかにしていない。国を挙げて取り組む計画の策定には、早急に案を示し、幅広い意見や提案を集めて内容を練る過程が大切ではないか。

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