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今週のヘッドライン: 2010年4月アーカイブ

 伝統料理を後世に残そうと、三重県桑名市長島町の農家女性で構成する「すし工房なばな」(会員12人)は、地元に古くから伝わる「箱ずし」を商品化し、農産物直売所「青空市場」で販売している。食材は地場農産物を使用し、安全・安心志向に応えるため、無添加・無着色で手作りする。消費者からは「懐かしい味。安心して食べられる」と好評だ。
 
100430_01.jpg 「女性の力で地域を元気にしたい」と話すのは、すし工房なばなの代表、伊藤さなゑさん(73)。
 箱ずしは、箱に酢飯やシイタケ、そぼろ、卵などの食材を詰めて作る。色どりが良く、冠婚葬祭などで振る舞われていた。調理に手間がかかるため、最近は作る人が減り、料理道具も失われつつあった。
 すし工房なばなは、昭和40年代から箱ずしを作っていたJA女性部のメンバーが2005年に設立した。
 地元の木工職人に依頼して、かつて使われていたものと同じ木製のすし箱や木枠を復元した。食材は、子どもにも食べてもらえるようマグロフレークを使ったそぼろを入れるなど現代風にアレンジしている。
100430_02.jpg 会員の伊藤和子さん(55)さんは「自分が作った商品が売れるのはうれしい。消費者に喜んで食べてもらいたい」と笑顔で話す。
 食材には会員が栽培したハクサイなど地場野菜を使用し、地産地消を推進している。特に思い入れを持っているのが、地場産「コシヒカリ」を使うこと。米の消費量が減少する中、箱ずしづくりを通じて地場産米の消費拡大を図りたいとの思いからだ。

(3面・暮らし)

 
写真上:「最近は繰り返し注文してくれる固定客も増えました」とさなゑさん
写真左:「すし工房なばなと協力して地域農業を活性化していきたい」と丹羽会長

 宮崎県都農町で家畜伝染病「口蹄(こうてい)疫」が発生した。和牛繁殖農家の農場で感染が疑われる牛(疑似患畜)が確認された20日以降、現地では感染拡大を防ぐために懸命の防疫対応が続いている。
 22日までに同県川南町の3例を含め4例の疑似患畜を確認、うち1例目は23日、口蹄疫(O型)の患畜と確定した。県は当該農場の牛を殺処分するとともに、当該農場から半径10キロ圏内を「移動制限区域」に指定。半径20キロ圏内を区域外への移動を禁止する「搬出制限区域」とするなどの措置を講じている。NOSAI団体も県の方針のもと、まん延防止に協力している。
 農林水産省は20日、赤松広隆農相を本部長とする口蹄疫防疫対策本部を設置。宮崎県と連携して迅速・的確な防疫措置の実施に努め、疫学的調査のためのチームを現地に派遣し、早急に感染源の確認や感染経路の究明を進めている。また、牛肉や豚肉など畜産物輸出の一時停止を決めた。出荷停止などで影響を受けた農家への資金対策など支援も打ち出した。
 当該農場の牛は市場出荷されておらず、口蹄疫は人体には無害で仮に感染牛を食べても影響はない。ただ、風評被害も懸念されていることから、行政機関や関係団体は、消費者をはじめ、流通・小売関係者など広く国民に正確な情報を伝えるとともに、冷静な対応を呼び掛けている。

(1面)

 各地で低温や凍霜害、雪害などが発生し、気象庁がさらに低温が続くと予想していることから、農林水産省は20日、被害の予防や軽減対策など農作物の技術指導を徹底するよう各都道府県に通知した。主な内容は次の通り。
 水稲は、苗の生育に合わせた温度管理に努め、移植は、気温と水温が十分上昇してから行う。麦は、出穂後の開花期が赤カビ病の防除適期となるが、低温で出穂・開花の遅れなども予想されるため、圃場の見回りなどによる適期防除に努める。
 果樹は、霜害が発生した場合、被害を受けた新梢(しんしょう)の枯死した部分は剪除(せんじょ)する。つぼみや開花中に霜害を受けた場合は残存花への人工授粉を徹底し、結実を確保する。
 茶は、防霜ファンなどを稼働点検する。一番茶が凍霜害を受けた茶園は品質低下を防ぐため、被害葉が混入しないよう浅摘みを実施。二番茶は遅れ芽が混入しないよう出そろうのを待って、摘採面より上で浅く整枝する。遅れ芽が多い場合は、摘採後2週間以内に2回目の整枝を行う。

(2面・総合)

 農林水産省は16日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会(座長・鈴木宣弘東大大学院教授)を開き、2020年度の家畜の能力・体型・頭数の目標を示す新たな「家畜改良増殖目標(第9次)」のポイントを提示した。生産性や品質の向上など従来方針に加え、〈1〉特色ある家畜による多様な畜産経営〈2〉平均的な品質で手ごろな価格の畜産物の供給〈3〉飼料資源を無駄にしない穀物需給への適応――を軸とした家畜づくりの推進を打ち出した。
 育種資源のデータベース化を図り、特色ある家畜の利用を支援。酪農ではチーズ適性の高いブラウンスイス種、養鶏では卵肉兼用の純国産鶏種「岡崎おうはん」などを導入・増頭(羽)する。遺伝的多様性に配慮した和牛育種も進める。
 消費者に手ごろな畜産物を供給するため、平均的な品質で早く育つ和牛育成の可能性を追求。豚の離乳頭数を08年の1産当たり9.9頭から10.8頭に引き上げる、1頭から生産される畜産物を増やし、生産コストの低減を図る。

(2面・総合)

 戸別所得補償モデル対策の加入受け付けが、地方農政事務所や地域水田農業推進協議会を窓口に進められている。同対策のうち、米戸別所得補償モデル事業の交付対象面積は、農家ごとに作付面積から一律10アールずつ控除される。集落営農が「農業共済資格団体」として水稲共済に組織加入する場合は「全体から10アールを控除する」とされた。農業共済資格団体は、多くの農家にはなじみが薄いため、「どういうことか」と問い合わせが寄せられている。米戸別所得補償モデル事業と農業共済資格団体をめぐって、共子さんと済太郎くんのQ&A。
 
 共子 米戸別所得補償モデル事業では、生産数量目標に従って生産する販売農家と集落営農に対し、水稲10アール当たり1万5千円が全国一律に直接支払いされる。
 済太郎 モデル事業の交付対象となる販売農家は、「水稲共済加入者であれば販売農家とみなす」とされた。作付面積が当然加入基準より小さくこれまで加入していなかった農家も、水稲共済への加入を申し出ればモデル事業の対象とみなされる。販売目的で米を生産する販売農家を広くとらえた。
 共子 交付対象面積は、主食用米の栽培面積から一律10アールを差し引いて計算されるのね。
 済太郎 交付対象は、「販売に供する水稲作付面積」だから、自家飯米・縁故米相当分として10アールを控除する。集落営農で法人経営の場合は、控除面積は集落営農全体で10アールだけ。法人化していない集落営農でも「農業共済資格団体」として水稲共済に加入する場合は、法人と同じ扱いとなる。
 共子 農業共済資格団体は、あまり聞かない言葉ね。
 済太郎 簡単にいうと、集団で共済に加入する組織のこと。共済に加入できるのは基本的に個別農家と法人だけれど、集落営農や協業経営でも農業共済資格団体の要件を満たせば組織単位で共済に加入できる。
 共子 要件って何かしら。手続きは難しいの。
 済太郎 集落営農の規約に(1)NOSAI事業への加入(2)掛金の分担方法(3)共済金の配分――を定めていることなどが条件となっていて、難しいことをやる必要はないんだ。

(5面・NOSAI)

 中晩かん類のハウス栽培に取り組む香川県高松市中山町の横関重義さん(61)は、デコポン(品種名「不知火〈しらぬひ〉」)の7月出荷に取り組んでいる。雨よけ栽培のデコポンを3月末から4月上旬に収穫し、2カ月以上冷暗所で貯蔵した後、中元用に出荷して収益の確保を図る。鮮度保持と果実が貯蔵中に腐っても被害を最小限にとどめるため、1個ずつ袋詰めを行う。ハウス暖房用の燃料価格が高止まりする中で、地域では比較的低温に強いデコポンの面積が徐々に増加、ハウスミカンに代えて経営の柱にしようと期待されている。
 
100430_03.jpg 横関さんは3年ほど前までハウスミカンを栽培し、初夏から出荷していた。しかし燃料価格の高騰と生産農家が増加したことなどから、デコポン生産に切り替えた。「露地では腐敗果でロスが多くなるため、すべてハウス栽培にした」と話す。
 デコポンは加温18アール、無加温12アール、雨よけ10アールの3作型を取り入れた。ほかに「せとか」20アールなどを栽培する。労力分散を図り、圃場でのすべての作業を一人で行える作型にした。
 雨よけ栽培のデコポンは、6月末から出荷する。収穫して水分調整のため2~3週間冷暗所に置いた後、1個ずつ鮮度保持袋(P‐プラス)に入れる。
 貯蔵庫はハウスミカンの冷蔵用に使っていたものだ。「デコポンは冷房なしでの貯蔵が可能だ」と横関さん。
 加温栽培では、1月10日ごろからボイラーを使うが、最低温度は18度に設定する。ハウスミカンの24度に比べて低いため、燃料代は3分の1程度で済む。夏場のハウスは30度で天井が開き、換気扇が回るように設定した。樹〈き〉の管理は、無剪定〈むせんてい〉で枯れた下の枝を取り除く程度だ。果実は樹上で完熟させて11月中・下旬に出荷、正月の贈答用などに利用されている。

(11面・営農技術)

 
写真:「昨年、2年生苗木を植えたが、自動点滴給液を行う」生育が早いと話す横関さん

 【青森支局】つがる市や鶴田町のリンゴ農家仲間で構成する「つがる岩木雪蔵りんご1247の会」(増田忠蔵会長、会員8人)は、岩木山で"雪蔵(ゆきぐら)りんご"に挑戦している。このほど、初めてのリンゴの掘り起こしを行った。会員たちは「思ったより内部褐変が少なく、味もすごくいい」と手応えをつかんでいる。

100430_04.jpg 「既存のリンゴ販売のほかに販路拡大を」と模索していた、つがる岩木雪蔵りんご1247の会は、雪中貯蔵に注目。昨年11月に、岩木山の標高887メートルの5合目に144箱、同会の名称由来にもなっている標高1247メートルの8合目に48箱の合計192箱(約3.8トン)のリンゴを集積し、積雪を待った。
 NOSAI津軽広域の理事も務める増田会長(つがる市柏)は「雪の中はリンゴが凍らない温度で湿度は冷蔵庫より保たれ、もぎたてに近い味になると思う」と期待する。
 雪の中に埋めたリンゴは、「サンふじ」「有袋ふじ」「王林」「シナノゴールド」「星の金貨」などで、貯蔵期間は5合目で約150日間。8合目は積雪が7メートルで掘り起こせないため、6月までと長い。
 5合目での掘り起しを行った会員と家族ら10人は3メートル近い雪の中のリンゴと約5カ月ぶりに対面。試食した会員らは「褐変の発生具合は思ったより少なく、味もすごくいい。雪に埋めることで糖度も増した」と笑顔を見せる。
100430_05.jpg 同会ではこのリンゴを「雪蔵りんご」と命名。デパートや各種イベント会場で限定販売する。「いろんな販路ルートを見つけたい」と増田会長。「より雪蔵に適した品種を見つけ、来年も挑戦したい」と意気込む。
 
写真上:雪蔵りんごの掘り起こしはまだまだ深い雪の中で行われた
写真右:雪蔵りんご

100430_06.jpg 【宮城支局】水稲と牛の繁殖を営む富谷町の奥山秀夫さん(66)は、トラクターに取り付けた整地用キャリアを堆肥運搬機に改造。この運搬機で、作業の効率化を図っている。
 整地用キャリアの四方を合板で囲み、かさ上げして積載容積を増やし、排出用ゲートの開閉を操作する「ストップレバー」を取り付けた。
 堆肥を積み込むときは排出用ゲートを閉めて、フォークを使う。積載容積は通常の約2.5倍に増えた。
 堆肥を排出する時は、左右のストップレバーを解除すると排出用ゲートが開き、運搬機をトラクターの油圧で引き上げると一瞬で堆肥場に排出できる。
100430_07.jpg 費用は、鉄筋(直径1センチ)を溶接するときの溶接棒1本の購入だけ。特に工夫したのは「ストップレバーの開閉角度」と奥山さん。「軽トラックより小回りが利くし、田や畑も走行できるので、野菜や梱包わらなども運べて便利」と話す。
 
写真右上:堆肥運搬機とストップレバーを持つ奥山さん。レバーは左右にあり、排出用のゲートの開きをおさえて堆肥の落下を防ぐ
写真左:排出も楽にできる

100430_08.jpg 【千葉支局】ちばNOSAI連西部家畜診療所八千代出張所では、昨年12月から今年1月に、畜産農家の繁殖成績の一層の向上を目指して、実際の牛の子宮を使った農家向け「繁殖臓器実習」を行った。同出張所管内約50戸の酪農家のうち16戸が、畜主自ら人工授精を行っていて、独学した人も少なくないという。
 同家畜診療所の天野はな獣医師が作成した漫画「卵巣物語」を使って発情周期で変化する卵巣や子宮の動きの説明を聞き、実際の臓器を見ながら確認。最後は子宮の中に注入棒を入れる練習を行った。
 臓器実習に参加した3人が3月に千葉県で行われた家畜人工授精師養成講習会を受講し、全員が試験に合格。その一人、萩原直也さん(19)は昨年、祖父(勝さん=67歳、搾乳頭数50頭)が営む牧場に就農した。「実習で本物の子宮や卵巣を触っていたので、講習の内容がより深く頭に入った。近隣の酪農家とも、授精の話を通じて交流が持て、刺激になりました」と話す。
 
写真:本物の牛の直腸に手を入れ、子宮や卵巣を確認した

100430_09.jpg 【愛媛支局】犬や猫の疾病に効果がある「インターフェロン」。この薬の生成に、蚕のタンパク質合成能力が役立っている。八幡浜市の蚕種製造業「愛媛蚕種株式会社」は、この薬品の開発、研究のための蚕の幼虫を製薬会社に販売。同社社長の兵頭眞通さん(56)は、新たな蚕業の進路に期待を寄せる。
 インターフェロンとはタンパク質の一種で、ウイルス感染の阻止作用や免疫増強作用を持つ。タンパク質生産能力が高い蚕の体内に、遺伝子組み換えウイルスを注入すると体液中にインターフェロンを大量に合成する。
 同社が契約する製薬会社では、インターフェロンを研究開発し、同社は当初からその開発に携わってきた。
100430_10.jpg 通常はふ化して1週間ほどで出荷するが、開発用の幼虫は約16日間、5齢ごろまで飼育し販売する。
 「さまざまな形での利用法がある」と兵頭さんが話すように、手術用縫合糸などの医療用具、せっけんや口紅などの化粧品、健康食品など、多方面からの需要が伸びてきている蚕業。同社でも新たな販路に期待を寄せている。
 
写真上:5齢の蚕。この状態まで飼育し製薬会社へ販売する
写真右:冷蔵保存中の蚕の卵

100430_11.jpg 【岡山支局】業者との単価契約で安定出荷を実現している美作市梶並地区のシキミは、品質が評判だ。「今の4倍くらいは出荷してほしいと求められています」と話す加藤道夫さん(54)は、シキミ(約1ヘクタール)を手掛け、JA勝英梶並シキミ生産部会(皆木邦夫部会長=74歳・50戸・約5ヘクタール)の事務局も務める。
 部会全体の08年度の出荷量は、400グラム束で約6万5千束、約1200万円の実績がある。業者は5千万円程度まで受け入れが可能で、現在は需要に供給が追いついていない状況。部会では、新規栽培農家の掘り起こしに取り組む。近年は梶並地区以外の農家も生産を始めていて、勝英地区全体での生産拡大の可能性があるという。そのため栽培講習会を毎年実施し、梶並のシキミの品質を広める取り組みも行っている。
 
写真:「シキミの枝の選別作業をする加藤さん

100430_12.jpg 【兵庫支局】特産品の紫黒米(しこくまい)を使ったみその製造販売に、たつの市揖西町の「みつばグループ」(西脇允子(ちかこ)代表)が取り組んでいる。直売所や道の駅で販売。年間500箱以上出荷する人気を得ている。
 「紫黒米は、完全に精米すると、鮮やかな紫色がほとんどなくなってしまう。米の色と栄養分を多く残すための、つき具合を見つけるのに苦労しました」と西脇代表は話す。
 同グループは「紫黒米味噌(みそ)」と「手づくり味噌」の2種類を製造。原料の米は、たつの市産紫黒米と地元集落産「ヒノヒカリ」だ。大豆は「サチユタカ」を市内の営農組合から仕入れ、塩は赤穂の天塩を使用。麹(こうじ)菌は姫路市の酒造会社から購入している。
 元生活改良普及員の武内元子さんは「みそ造りの技が、女性の起業を通じて特産品販売につながっています」と評価する。
 
写真:米と麹菌を混ぜ合わせる

 ▼「私の手を見てほしい。女性らしさのかけらもない、黒くて皮が厚くて太い指。農業をする前はこんな手はしていなかった。でも私はこの手を、農業をしていることを誇りに思っている――新規就農者の女性がつづった言葉だ。山梨県中央市で農業生産法人サラダボウルを経営する田中進さんの著書『ぼくらは農業で幸せに生きる』(河出書房新社)に掲載されている。
 ▼田中さんは外資系保険会社勤務から農業に転身。野菜を生産・販売する傍ら、新規就農を目指す研修生を多く受け入れる。「農業の新しいカタチ創り」を掲げ、「現場カイゼン」手法による生産工程の見直しなど、誰もができる農業経営の仕組みづくりに取り組む。
 ▼著書で田中さんが強調するのは、農業を志す「人財」育成の重要性だ。しかし、農業を立て直そうなど格好のいい理屈を言う人は「3日で辞める」と指摘。定着する若者に共通するのは、農業が「面白い」とか「はまっちゃいました」との単純な理由が大きいと明かす。
 ▼農林水産省が取りまとめ中の2009年度「食料・農業・農村白書」案は、自分の子どもに「農業を継いでもらいたくない」と答える農業者が3割に及ぶとの調査結果を報告する。複数回答で8割以上が「農業では十分な収入が得られない」を理由に挙げ、「休みがなく、労働時間が長い」も5割を超える。
 ▼基幹的農業者の平均年齢は07年で65歳に達した。新規就農を志す人たちの受け入れ促進とともに、農家の子弟が喜んで経営継承を選択する環境整備は、農政で喫緊の課題だ。
 ▼収益確保など基本条件に加え、「面白い」と感じられる魅力づくりが大切だが、受けとめ方は個人ごとに違うから難しい。ただ、「黒くて皮が厚くて太い指」を持つ女性の手は、働く者の確かな証しだ。十分に魅力的で人に誇れるものと思う。

100421_01.jpg 甘くみずみずしいサラダ用のタマネギを「サラたまちゃん」ブランドとして確立したのは、熊本県水俣・芦北地域の「JAあしきたサラたまちゃん部会」(109人)。本年産は総作付面積が70ヘクタールで、出荷量3千トン、売り上げ4億円を目指す。除草剤は使わず、植え穴周辺の雑草は手で抜き、育苗圃場は太陽熱消毒するなど環境にも配慮する。産地の将来を見据え、定年退職者を含む幅広い担い手確保を進めようと、使いやすい農業機械を開発するなど未経験者でもできる栽培体系を整備した。部会長の田畑和雄さん(56)=タマネギ10ヘクタールなど=は「定年退職者を部会に多く引き入れ、産地を活性化したい」と意気込む。
 
 「今年も出荷が始まりました。水にさらさず生のままおいしく食べられるサラダタマネギ『サラたまちゃん』。いかがですか」――。田畑さんなど熊本から4人が駆けつけ、東京・築地市場で9日、試食会を開き、出荷が最盛期を迎えるサラたまちゃんをPRした。
 サラたまちゃん部会は水俣市を中心に芦北町、津奈木町の農家で構成する。水稲裏作としてタマネギを導入し、作付面積を広げてきた。サラダ用タマネギの販売は、20年ほど前からの取り組み。食味の向上を図るとともに、農薬や化学肥料の使用量削減など環境保全型農業を推進してきた。
 全員がエコファーマーを取得する。手作業で行う除草は最も大変な作業の一つ。畦(あぜ)や畝間も除草剤を使用しない。
 20年ほど前から育苗圃場の太陽熱消毒を導入している。畝を立てて施肥し、灌水(かんすい)してマルチを張り、7月下旬から1カ月間放置する。
 長年の努力でブランドを確立できた一方、高齢化が進むなど産地としての生産力強化が課題だ。
 「大規模農家と小規模農家が互いに助け合える産地を目指したい」と田畑さん。「小規模でも部会員がたくさんいる方が、地域に活気が生まれる。定年退職者が家族労働で50アールほど栽培するのが理想」という。
 畝立てとマルチ張り、施肥機を組み合わせた歩行型の機械をクボタと2006年に共同開発した。軽トラックに乗る大きさと高齢者や未経験者でも簡単に使える農業機械が必要と考え、話を持ちかけた。

(1面)

〈写真上:部会ではタマネギを収穫後、緑肥効果と景観を良くするため、ヒマワリを植えている〉
 
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〈写真左:東京・築地市場で午前6時から試食会を開いた。「産地の存在感を示すために毎年行っている」と田畑さん〉

 農林水産省は、今後10年程度の農林水産研究を方向付ける「農林水産研究基本計画」を決めた。3月末に閣議決定した食料・農業・農村基本計画は10年後の食料自給率を50%に引き上げる目標を掲げており、水稲・麦・大豆の輪作体系による水田の生産力倍増など目標実現に必要な技術を今後の研究開発で応えていく。温暖化に対応した品種育成や栽培技術の開発、バイオマス(生物由来資源)の利活用、医療分野の新素材開発などにも力を注ぐ。着実に目標を達成するため研究開発から普及・産業化までの一貫した支援強化を図る。
 
 〈A〉 新たな研究基本計画では、施策展開の方向に沿って、〈1〉食料安定供給〈2〉温暖化など地球規模の課題への対応〈3〉新需要創出〈4〉地域資源活用〈5〉シーズ創出(基礎研究)――の五つの研究分野を設定。分野ごと課題ごとに今後10年程度を見通した重点目標と5年後までの達成目標を盛り込んだ。
 〈B〉 食料自給率の50%達成には、2011年度からの本格実施を目指す戸別所得補償制度を柱とする経営支援のほか、農産物生産を支える技術的裏付けが欠かせない。水稲・麦・大豆の超低コスト・高単収水田輪作システムの確立、普及などを軸に研究開発を進める。耕うん同時畝立て栽培法や地下水位制御システム、輪作適応品種などの組み合わせを体系化する方向だ。
 〈A〉 生産拡大は、需要拡大と両輪で進める必要がある。米粉パン、米めんなど加工に適した米粉用品種の育成、加工技術の開発を進める。小麦は、製パン適性、中華めん適性に優れた品種育成に取り組む。
 〈B〉 飼料用米は主食用米より価格が安いため、徹底した省力化、低コスト化が前提になる。主食用米と識別しやすく直播に適し、複数の病害抵抗性を持つ多収品種を育成。10アール当たり収穫量を5年で1トンに、10年で1.2トンに引き上げる目標を掲げた。輸入トウモロコシと代替できる調製技術、給与技術の開発も行う。

(2面・総合)

 農林水産省は13日、今後5年程度の畜産・酪農政策の方向を示す酪農肉用牛生産近代化基本方針の骨子案を明らかにした。規模拡大による効率化の追求から、多様な経営の取り組みを通じた生産基盤の強化への転換を打ち出した。畜産・酪農の所得補償制度は「現在講じている畜種ごとの経営安定対策の実施状況などを踏まえてあり方や導入時期を検討する」とした。
 骨子案では「6次産業化」の取り組みなどによる持続可能な酪農・肉用牛生産を柱に掲げた。肉用牛生産では、比較的安価な和牛肉の需要が高まっていると指摘、脂肪交雑重視だけでなく黒毛和種以外も含めた多様な和牛肉生産への転換を提起した。酪農では国内消費量の8割を占める輸入チーズの国産への置き換えを推進する。

(2面・総合)

 味の良い野菜の品種を残したいと、神奈川県厚木市山際の野路稔さん(51)は、野菜の育種に取り組んでいる。2007年には県農業技術センターと共同で根深ネギの新品種「湘南一本(しょうなんいっぽん)」を育成し品種登録を行った。葉折れが少なく、軟白部が真円に近くて長いのが特徴だ。伝統の味や旬の味覚が味わえる固定種を残そうと、ダイコンやホウレンソウ、ゴボウなど15種類の野菜を栽培し、種を自家採種し保存する。「保存していかなかったら、品種が途絶えてしまう」と話している。
 
100421_03.jpg 都市近郊の専業農家として野路さんは、妻と両親の4人で、野菜と水稲の複合経営を行う。冬もののダイコン、ホウレンソウ、ゴボウ、ニンジンなどの露地野菜を1.2~1.3ヘクタールで栽培する。200坪のハウスでは6月から7月にトマト、9月から年内いっぱいはキュウリを収穫。水稲は4ヘクタールに作付ける。
 「湘南一本」は、1960年に当時の県園芸試験場が育成した根深ネギ「湘南」から選抜した。湘南は良食味だが分げつ性が強く、軟白部が扁平(へんぺい)で市場での評価が得られなかった。葉は太くて折れやすいため、機械化しにくいなどの欠点もあった。
 野路さんは湘南の欠点を改良し市場性を高めようと、目的とする性質の株を残す集団選抜による育種を89年から始めた。「当初は育種目的ではなく、味が良いので残したいと考え、長く伸びて分げつの少ない系統を残してきた」と話す。
 神奈川県農業技術センターの北宣裕企画調整部長は「野路さんが集団選抜で育種してきたネギを仕上げ、湘南一本として品種登録を行った。地産地消の有望な品種として期待される」と話す。

(3面・暮らし)

 
写真:「種とり用が中心で、同じネギ品種でも系統ごとに分けて作付けしている」と話す野路さん

 大阪府河南町の道の駅「かなん」内の農産物直売所「農村活性化センター」で「天王寺蕪(かぶら)」など「なにわの伝統野菜」が人気を呼んでいる。道の駅を管理する農事組合法人「かなん」(会員123人)が栽培。播種や収穫作業などには、地元の消費者で構成する「農作業応援団」(160人)が農作業ボランティアとして参加、生産の一翼を担う。参加者を通じて伝統野菜の人気が口コミで広がるなど地元の特産品になっている。
 
100421_04.jpg 法人の専務理事、阪上勝彦さん(67)は「農産物をPRするには農作業を体験してもらうことが一番効果的。農作業を手伝ってもらえるので、とても助かっています」と説明する。
 取材当日、応援団の団員で構成する「なにわ伝統野菜研究会」(40人)が、カボチャ「勝間南京(こつまなんきん)」の播種作業を手伝っていた。
 研究会の副会長を務める大阪府柏原市の角野正明さん(65)は「伝統野菜を守り、農家を応援したくて参加しています。以前より農業や食に対し、親しみがわきました」と笑顔で話す。
 道の駅「かなん」は国道309号線沿いに位置し、農事組合法人「かなん」の会員が栽培した伝統野菜やハクサイ、ミカンなど地場農産物を販売している。昨年は3億3千万円を売り上げた。伝統野菜は年間11品目を販売し、生産量や売上額、品目は年々増えている。
 農作業応援団は2005年、同法人が消費者に伝統野菜など地場農産物をPRし、農業への理解を深めてもらおうと設立した。
 消費者は道の駅で加入申請し、受け入れ農家と日程調整をした上で、1日に10人ほどが作業を手伝う。
 応援団を設立して以来、団員の口コミで道の駅を訪れる人が増えたという。阪上さんは「消費者のネットワークを通じて道の駅を知ってもらい、伝統野菜をPRしています」と話す。

(9面・流通)

 
写真:田辺大根を手に取り、「肉質がやわらかいので煮物に向いている」と阪上さん

 野菜作の圃場に緑肥作物の「ヘアリーベッチ」を作付け、雑草抑制と化学肥料の施用量低減を実現する技術を愛知県農業総合試験場園芸研究部・特産野菜グループが開発した。畝部分は野菜を定植する前にすき込み、畝間部分はそのまま残してリビングマルチ(草生栽培)に使う。実証研究では、(1)10アール当たりの化学肥料施用量を6キロ(チッ素換算)減らしても同等の収量を確保(2)敷きわらと遜色(そんしょく)ない雑草抑制効果――を確認した。研究を担当した浅野裕司研究員は「近年、環境保全に対する意識が高まっている。ヘアリーベッチと堆肥を使うと、化学肥料の施用量を大幅に削減できる」と説明する。
 
100421_05.jpg ヘアリーベッチはマメ科の牧草で、育てやすく管理に手間がかからず、被覆能力が高い。またライ麦などと比べ、ウイルスを媒介するアブラムシもつきにくいという。エン麦の野生種でもヘアリーベッチと同等の抑草効果が期待できるが、敷きわらとして利用する場合、刈り取り作業が必要となる。
 実証試験はカボチャ(品種「ほっこり姫」「坊ちゃん」「味平」)栽培で行った。浅野研究員は「スイカやキュウリ、トマトなど、ほかの野菜への応用が考えられる。立体栽培でも可能」と説明する。ヘアリーベッチは翌年も生えてくるが、量が少ないため毎年播種する必要がある。
 栽培体系は、10月初中旬に牛ふん堆肥を施用し、ヘアリーベッチを10アール当たり4キロ播種する。畝部分は4月初旬に小型の耕うん機ですき込む。すき込み後は、定植する野菜の生育障害を避けるため、1カ月ほど期間を空けてから苗を植える。定植したカボチャのツルとヘアリーベッチが絡まる場合は、鎮圧するか刈り取ってそのまま敷き詰める。5月に開花し、6月には畝間部分が自然に枯れ、マルチになる。

(11面・営農技術)

 
写真:「すき込まない不耕起栽培でも肥料効果が確認できるか実験を行う予定」と浅野研究員

 【岩手支局】地元の畜産後継者で組織された北上市のKITAKAMI牛研究会(高田直樹代表=31歳、会員11人)は、地域の畜産振興のために活動して2年目。これまで検証を重ねてきた血液検査に加え、遺伝子診断を取り入れ、効率の良い経営を目指している。
 
100421_06.jpg 会員は、北上市内の畜産農業後継者など。同研究会では、県の「担い手育成基金助成事業」を活用し、肉牛生産の振興を目標に活動している。
100421_07.jpg NOSAIの損害防止事業を活用した血液検査の実施や飼養管理改善に取り組む一方、今年から「脂肪交雑(サシ)の遺伝的能力」や「良質脂肪生産能力」の遺伝子診断を試験的に導入。先月行われた枝肉研究会などで検査結果と枝肉成績を比較し、遺伝子診断に手応えを感じているという。
 繁殖と肥育の一貫経営を行う高田代表は「繁殖牛の選抜においても遺伝的能力診断を利用していきたい。市内には優秀な肥育農家が多いので親睦(しんぼく)や情報交換を深め、経営者として技術を向上させたい」と意気込んでいる。
 
〈写真上:採血する小野寺獣医師(左)と高田代表〉
〈写真右:約200頭の牛を父親と叔父の3人で管理する高田代表〉

 【高知支局】JA土佐香美温室みかん部会(部員数90人)では、部会長の百田久範さん(52)が先頭に立ち、重油価格高騰対策にさまざまな方法を導入。生産コスト低減に積極的に取り組んでいる。
 JA土佐香美営農指導員の白石浩一さん(40)の指導のもと、温室ミカンの重油量の削減対策に三つの方法を導入した。
 まず、施設の多重被覆に着手。パイプ設備を増設して多重被覆した。さらに妻面と側面も被覆して保温性を向上。白石さんは多重被覆にすることで「10アール当たりの重油使用量は屋根面で約5キロリットル、側面では2キロリットル削減できる」という。
 次に、循環扇の設置を勧めた。施設内の空気を循環させることでハウス内の温度を均一に保つことができる。サーモが温度を感知し、暖房の運転時間を短縮させ重油の消費量が減少。従来の重油代に比べて1割程度コスト低減が図れ、部員の2割が設置した。
 09年には、2戸の農家が試験的に排熱回収装置を設置。煙突などから排出される熱を再利用するものだ。
 百田部会長は「今後、極端に上昇すれば、ほかの対策も検討しなければならない」と、さらなる活動も視野に入れている。
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写真:排熱回収装置〉     〈写真:百田部会長〉     〈写真:側面の多重被覆〉     〈写真:循環扇

100421_12.jpg 【島根支局】4年前に地元酪農家で1年間研修を受け、両親が行う酪農経営(成乳牛35頭、育成牛9頭)に加わった、邑南町矢上の上田真琴さん(33)。現在、その飼養のほか、邑智郡酪農協同組合の家畜人工授精師と受精卵移植師としても活躍している。
 日ごろの飼養について真琴さんは、「搾乳や餌やりなどの作業は、毎日のことだから気になりません。この間、脱走した牛が飼料タンクを壊して、大変でした」と笑顔で話す。
 一方、酪農組合では唯一の酪農家の受精卵移植師として年間70頭ほどの受精卵移植をこなしている。受胎率の向上を目指す真琴さんは、受精卵移植の研修会などに積極的に参加。また、獣医師、先輩移植師の指導や助言も大切にしている。「少しでも技術を盗んで、自分のレベルアップにつなげたい」と向上心を常に忘れない。
 
写真:「牛の状態を見極めることが、受胎率の向上につながります」と話す真琴さん

100421_13.jpg 【新潟支局】南魚沼地域では珍しいホウレンソウの養液栽培に、南魚沼市山崎新田の農事組合法人「えちご魚沼」(駒形孝夫組合長=55歳・組合員4人)が、取り組んでいる。
 養液栽培は、播種から平均1カ月で出荷できる。同組合では年間を通じて7種類のホウレンソウを栽培。年間平均17回の収穫で安定的に出荷している。年間出荷量は約30トン、1万5千ケースで、市場からの要望に対応。神奈川県や東京都への出荷が主流だ。
 駒形組合長は「スーパーの一角を任せていただけるよう、これからも安全・安心なホウレンソウを栽培していきたい」と意欲的に話す。
 
写真:駒形組合長。ハウスの温湿度管理を徹底している

100421_14.jpg 【宮崎支局】新富町東五反田の長友嘉徳(ながともよしのり)さん(71歳=水稲2.5ヘクタール、繁殖和牛19頭)は、野生イノシシの子供を自宅で飼っている。
 昨年夏、側溝に落ちて鳴いているイノシシを、知人が発見。長友さんが引き取った。毎日牛乳を飲ませると、長友さん家族にも懐き、小屋から出すと喜んで足元に寄ってくるまでになった。
 餌は、古代米(赤米)を与えている。食欲旺盛でスクスク成長。庭で飼う鶏などとも仲良く駆け回り、牛小屋では、子牛と一緒に寝ていることもあった。
 長友さんは「野生でもかわいがれば飼い主になれます」と話す。
 
写真:イノシシの子に餌を与える長友さん

100421_15.jpg 【埼玉支局】JA南彩(若林龍司組合長)は、4月12日から「農協食堂」(久喜市下栢間)で、新メニューとして地元の規格外のナシを使った梨(なし)入り熟成カレーの販売を始めた。県農林総合研究センター園芸研究所と県春日部農林振興センター久喜農業支援部が協力・支援している。
 同JAでは、ナシを一次加工してピューレにすることで長期保存を可能にし、用途が広がったという。規格外果約800キロを使い、9キロ缶入りと450グラム瓶入りのピューレが出来上がった。
 このカレーは粗くすりおろしたピューレで煮込んで作るため、ナシの甘味とコクがあるのが特徴だ。米には地元の「彩のかがやき」を使用した。「カレーの評判がよければ、ペーストとしての販売も考えている。学校給食にも提供したい」と同JA営農部の金子次長(現・経済部長)は話す。
 
写真:梨入り熟成カレー

 ▼「水稲を作り続けて、天候が平年並みだった年は一度もないよ」。以前取材した稲作農家の言葉だ。「年1作で一生作ったとしてもせいぜい60回ぐらい。おいしさと収量を両立する技術や施肥を考え、さらに天候に合わせてうまく管理できたかどうか秋に結果が出る。そこが面白い」と話していた。
 ▼この春は全国的に雨がちで、寒暖の差が激しい。日照不足や低温が続いて野菜の市場価格が高騰し、消費者の食卓を直撃したとの報道も増えてきた。台風並みの暴風に見舞われた北海道や東北をはじめ、各地で農作物や農業施設に被害が出ている。
 ▼不順な天候の要因は、寒気と暖気の勢力がともに強く、日本列島を挟んだせめぎ合いが続いているためという。その影響が極端な気温の上昇や低下、暴風など荒れた天候となって現れている。気象庁によると、この状況は当面続く見通しで、引き続き警戒が必要だ。
 ▼農家が情報発信するインターネットのブログでも作業の遅れや生育の不ぞろい、遅延など異変を伝える内容が目立ってきた。「ケヤキの芽吹きがそろわない年は遅霜がくる」と先祖からの言い伝えを紹介した若手野菜農家は、定植時期をずらすなど対策すると報告している。
 ▼自然条件を生かして作物を生産する農業は、一方で度々の気象災害に悩まされてきた。耐冷性など品種改良が進み、災害時の対応技術も改善されてきたとはいえ、広範囲に甚大な被害が及ぶ災害の心配は常につきまとう。
 ▼NOSAI団体は被害の未然防止に向けた損害防止活動を各地で展開しており、自然災害による被害に対する備えとしてNOSAI制度がある。実りの秋を喜びとともに迎えるために、気象の変化に応じた管理など対策の準備は十分にしておきたい。

 NOSAI団体が行った農家アンケートで、経営体個々の生産や損失が細かに反映される仕組みや、高い補償割合の要望が強いことがあらためて確認された。農家の約6割が統計データで損害評価する「地域単位保険」への加入に関心を持ち、その半数が「農業共済と同時に加入」を選択している。収入保険では「作物単位型」への加入に興味がある農家は6割で、「経営単位型」に比べ多かった。新たな保険的手法の仕組みを検討しているNOSAI全国(全国農業共済協会、竹中美晴会長)が3月末までに、アンケートの集計結果(一次集計)をまとめた。NOSAI団体では、さらに結果の精査・分析を進め、農業災害対策としてのNOSAI制度の充実などに向けた検討に生かしていく方針だ。
 
●地域単位保険
100414_01.jpg 地域単位保険は、「地域の統計データに基づいて平均的な被害量を計算し、地域単位にみて被害があった場合に共済金を支払う仕組み」を前提に聞いた。
 加入への農家の意思は、「加入を検討してもよい」が27.1%、「農業共済と同時の加入なら検討してよい」が29.5%。両方合わせて56.6%となった。「加入しない」は22.9%、「分からない」は20.2%だった。(グラフ1参照
 「加入を検討してもよい」「農業共済と同時の加入なら検討してよい」と回答した農家の8割は、地域単位保険の特徴のうち、「補償割合の引き上げ」「共済掛金の引き下げ」を望ましいと評価している。
 
 
 
 
 
 
 
 
●作物単位型の収入保険
100414_02.jpg 作物単位型の収入保険については、加入に「興味がある」と回答した農家は60.4%だった。経営形態別にみると、果樹経営が67.4%、北海道畑作物経営が68.6%で、米・麦・大豆経営の57.7%より10ほど高い。「興味がない」は15.4%、「どちらともいえない」は24.0%だった。(グラフ2参照
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
●経営単位型の収入保険
100414_03.jpg 経営単位型の収入保険への加入に「興味ない」と回答した農家は36.5%で、「興味ある」とした農家の割合29.9%を上回った。ただし、経営形態別にみると、果樹経営と北海道畑作物経営では、「興味ある」が「興味ない」を上回っている。(グラフ3参照
 
●新たな保険的手法提案へ
 10年度は「米戸別所得補償モデル事業」が実施され、11年度からの戸別所得補償制度の本格実施に向けての検討が行われる。補てんの仕組みや内容によっては、NOSAI制度との関係調整の必要性も想定される。果樹や野菜については、農林水産省内で収入保険の検討も行われている。
 NOSAI全国では「農業経営の安定に一層役立つNOSAI制度の構築に向けて、研究を重ねていく必要がある。アンケート結果は、さらに詳細な分析を行い、新たな保険的手法の提案を行っていきたい」(企画研修部)としている。

(1面)

 中央酪農会議はこのほど、持続可能な酪農経営に必要な価格と所得の確保を前提に、多様な酪農経営の展開の重要性を強調する報告書をまとめた。「わが国酪農の中長期的課題と生産者組織の役割」と題し、生乳生産基盤が縮小傾向にある中で、「誇りある産業」として酪農家の自助努力と酪農家同士の共助的な取り組みを基本に未来を切り開いていくと明記した。「生乳の価格形成」「需給調整」「需要拡大」「経営支援」など課題別に現状と対応方向を提示。おおむね5年で実現を目指す。政府が検討する酪農の戸別所得補償制度については、生産者組織の取り組みとの整合性確保を訴えた。
 
 〈A〉 報告書は6章で構成。第1章では、日本酪農は「規模拡大と効率化という単線的な方向」で発展を遂げてきたと強調。一方で、生乳生産量は1996年の866万トンをピークに減少(08年度は794万トン)。特に都府県では乳用牛頭数がピーク時(96年)の65%に減少するなど生乳生産基盤は明らかな縮小局面に入っていると指摘した。
 〈B〉 ここ数年は、地域酪農を支えてきた中規模経営層からも離農者が出始めている。「国際競争力」の強化として「規模拡大と効率化」を進めるほど酪農家数の減少と産地崩壊が進み、「自給率向上目標が後退しかねない」と総括した。
 〈A〉 これからの日本酪農のあるべき姿として、「牛乳乳製品の自給率向上を実現する持続可能な酪農経営」と「多様な酪農経営の展開」を挙げた。牛乳乳製品は国民の食生活と健康に必要で、酪農には安全で高品質の牛乳乳製品を適切な価格で安定供給する責務があると強調。その実現に価格と所得の確保が重要な条件とした。
 〈B〉 最近は規模拡大と効率化の方向だけでなく、経営形態や生産方式の多様化が進んでいる。地理的条件などに合わせて最大限の生産力と収益性を実現しようとする多様な酪農家の支援を訴えた。また、酪農家が農村社会の機能維持に必要な人的資源であり、堆肥生産など地域農業への役割を果たしているとを明記し、「酪農経営は全国の地域に適正に配置されることが重要」と指摘した。酪農が持つ保健休養力や教育力など酪農が機能の重要性も強調した。

(2面・総合)

 赤松広隆農相は8日、農林水産省内でビルサック米農務長官と会談し、米国産牛肉の輸入制限に関して日米協議を再開することで合意した。ビルサック農務長官は米国産牛肉の安全性を説明した上で、日米関係を重視する観点から「柔軟な対応をしたい」と述べ、月齢条件など輸入制限の緩和を要請した。赤松農相は「科学的知見に基づく食の安全の確保」というこれまでのスタンスを変えずに協議に応じる意向を伝えた。
 日本は2003年に米国で牛海綿状脳症(BSE)感染牛が確認されて以来、特定危険部位(SRM)を除く生後20カ月齢以下の牛肉に限って輸入を認めている。米政府はオバマ大統領が5年間で輸出倍増を目指す「国家輸出構想」を打ち出したことを受け、日本に牛肉の輸入拡大に向けた協議を求めたもの。
 このほか、途上国の飢餓問題など世界の食料安全保障への貢献や環境問題で、日米が緊密に連携し対応することを確認した。

(2面・総合)

 共済や保険契約に関する一般的なルールを定めた「保険法」が1日、施行された。それに合わせてNOSAIの組合等ではNOSAI事業の内容を定めた共済規程(市町村では条例)の一部改正を行っている。改正内容は、今年4月から適用される。主な変更内容は、(1)契約時に加入者にあった告知義務をNOSAIから求められた質問(告示事項)に回答すればよい「質問応答義務方式」に変更、(2)農作物(水稲・陸稲・麦)共済以外の各NOSAI事業は、求めの有無にかかわらず加入者に契約内容を明記した書面を交付する――など。主な改正点について共子さんが済太郎くんに聞いた。
 
 共子 保険法の施行とNOSAI制度は関係するの?
 済太郎 保険法は、国や公共団体が運営する公保険は適用の対象外なんだ。だけど損害保険に似た仕組みを持つNOSAI制度は、事業の内容に応じて保険法の規定を一部準用しているため、共済規程も合わせて見直しているんだ。
 共子 どんなところを見直したの。
 済太郎 これまでは重要な事項について、契約時に加入者自らの告知を義務としていた。これからは、NOSAIから告知を求められた事項について答えるだけでよくなるんだ。NOSAIの各事業では、加入時の申込書に記入してもらう内容で、危険の度合いに関連する事項が告知事項に該当する。もし加入申込書に故意または重大な過失で事実を書かなかった場合などは、共済関係が解消されることもあるから注意してほしい。

(5面・NOSAI)

 福島県のNOSAI県北(福島県北農業共済組合、賀藤貞組合長)では、果樹の剪定(せんてい)枝を破砕してチップにする「チッパーシュレッダー」を3台保有。1台につき職員3人が園地に出向き、剪定枝の破砕作業を手伝っている。1日に約80アールを作業し、農家には、燃料代として10アール当たり約2千円を負担してもらう。2009年は186戸から依頼を受け、6654アールを作業した。剪定枝の処理作業に困る果樹農家が多く、喜ばれている。
 
100414_04.jpg 福島市飯坂町小川でリンゴ75アール、モモ42アール、ブドウ10アールなどを栽培する安齋俊一さん(68)方で3月26日、剪定枝の破砕作業が行われた。安齋さんは、NOSAIがサービスを始めた03年から依頼している。
 作業は、職員と農家が協力し、自走式のチッパーシュレッダーに剪定枝を入れてチップ化。小分けしてまとめられた剪定枝を一つずつ処理し、リンゴ園地25アールの作業は約1時間かかった。安齋さん方では、生成したチップは園地にまき、土に返している。
 園地に出向いた同NOSAI事業第三課の岡崎明課長補佐は「年間で10日ほど作業している。大変だが、農家の要望が強く、喜んでもらえるので頑張りたい」と話す。

(5面・NOSAI)

 
写真:安齋さん方での作業。生成したチップは園地にまいている

 「無農薬で栽培できるジャガイモ品種を提供したい」。長崎県雲仙市瑞穂町の俵正彦さん(55)は、1997年のジャガイモ「タワラムラサキ」を皮切りに、これまで10品種を登録している。ジャガイモの品種開発は公的試験研究機関で行われており、個人の育成品種は珍しい。時間と労力をかけて突然変異を見つけ、青枯れ病やそうか病に抵抗力を持つ品種を開発した。数十ヘクタール規模でジャガイモを生産・出荷していた経営を転換し、今年は5品種の種イモ生産に情熱を傾けている。
 
100414_05.jpg 今年の春作は、3月上旬に品種の保存用など1.3ヘクタール、種イモ用50アールを作付け、6月中旬の収穫予定だ。秋作は15ヘクタールに拡大する予定で、年内には300トンの種イモ販売を見込んでいる。
 俵さんの育成品種は、突然変異種で暑さや病気に強いなど共通の特徴がある。やせた土地でも作りやすく、「肥料は奨励品種の5割程度で生産できる」という。肉色は白や黄で、皮が赤や紫の有色種は光を通さないため、苦味やえぐ味が少ないなど。
 「生産効率の高いジャガイモが無農薬でできると、国内の食料自給率は高くなる」と俵さん。10アール当たり収量が300キロ程度の麦に対し、ジャガイモは3トンとれる。しかし、ジャガイモには青枯れ病やそうか病といった重要病害があり、クロルピクリンなど土壌消毒が欠かせない。
 無農薬で栽培できる品種を開発するため、農薬がなかった時代の栽培法やジャガイモの原産地であるアンデスでの栽培技術などを調べた。「赤や紫といった有色種の方が連作や環境に強いことがわかった」と俵さん。
 圃場には、奨励品種の「メイホウ」など4品種を春と秋に15ヘクタールほど作付け、200万個のジャガイモを収穫した。皮が白いメイホウの中に、突然変異で紫の帯が入ったジャガイモを発見し、早速、選抜を始めた。皮全体が紫色のタワラムラサキとして品種登録されたのは、発見から10年後だった。
 2000年には4品種、08年には「メークイン」の変異種など5品種を登録している。「登録した10品種は、いずれもこの土地に適応しようとして突然変異で生まれたもの」と俵さん。「土壌消毒が不要なジャガイモは、薬代がいらず、環境への負荷が小さい」と話す。

(13面・営農技術)

 
写真:「育成したジャガイモ品種は、病気に強く連作が可能だ」と俵さん

 【広島支局】「地域を元気にしたい」と活動している「桧山森とむら地域づくり委員会」(広島市安佐北区白木町桧山地区、メンバー10人)では、休耕田でシャクヤクの栽培を始めて10年がたつ。過疎化の進む地域に人を呼び戻そうと、シャクヤク祭りを開催するなど活動の輪を広げ、地域活性化の大きな力になっている。

100414_06.jpg 委員会は、代表の佐々木智さん(73)をはじめ、メンバー全員が農家だ。イノシシとシカの獣害に悩まされるこの地域では、増える休耕田の活用が一番の課題。「シャクヤクならば、イノシシやシカに食べられない」ことが決め手になったという。
 5月下旬の開花に合わせて開催するシャクヤク祭りでは、切り花の販売などを行い、シャクヤクをPR。毎年約150人の見物客が訪れ、にぎわいをみせるという。
 また、委員会では「桧山の森とむら農業体験教室」を開き、稲やサツマイモなどの植え付けから収穫まで、一年を通して消費者らと交流。家族連れなど100人前後の参加者のうち、半数はリピーターだ。
 佐々木さんは「農業体験の参加者や働きに出ている若い方が、桧山に定住したいと思うきっかけになれば」と期待している。
 
写真:シャクヤクがシカに踏み荒らされないよう、圃場に防除ネットを張るメンバー

100414_07.jpg 【北海道支局】「品種による豚のブランド化」を進めている、道立岩見沢農業高等学校養豚専攻班では、同校でしか食べることができない、おいしい豚肉の生産を学習目標に、イギリス原産の「中ヨークシャー種」を飼育している。
 養豚専攻班の生徒たちはこのほど、岩見沢市立志文小学校の6年生を対象に、食育の授業を行った。
 授業では農高生が「豚が豚肉になり食卓に上がるまで」を、パソコンを使って解説した。「農業とは命を誕生させ、育てて、命をいただき、消費者に提供すること」「生きるとは食べることであり、食べることは命をいただいているということ」と説明。動画による子豚の出産シーンでは、児童たちが大きな歓声を上げていた。
 養豚専攻班の斉藤克幸教諭は、「生徒たちは、自分たちの取り組みを発信することの楽しさと難しさ、評価されるうれしさを得ることができ、とても有意義な経験でした」と話している。
 
写真:食育の授業をする岩農生

100414_08.jpg 【岐阜支局】農林産物への鳥獣被害が増える中、関市担い手育成総合支援協議会ではさきごろ、イノシシ対策の研修会を開催。農家86人が参加し、コストが低い竹製捕獲おりの製作と設置方法などを学んだ。
 指導したのは、竹製おりを使った鳥獣対策の第一人者、成瀬勇夫さん(69歳、岡崎猟友会所属)。成瀬さんが考案した竹製おりの利点は、①約1万円と、鉄製に比べて安い②天然素材の使用でイノシシの警戒心が薄れ、わなにかかりやすい③おりが小さく2人で移動でき、軽トラックでの運搬も可能――などだ。
 参加者の一人、関市中之保の可児泉之進さん(50)は、「おりを手作りできることが分かりました。なにより、低コストなのがありがたいです」と話している。
 
写真:完成した捕獲おり。幅1.8メートル、奥行き3メートル、高さ1.5メートル。材料の竹は参加者が持参した

100414_09.jpg 【秋田支局】自家産の果実を利用した果実酢「りんごde酢」の販売が好調だ。これは横手市旭野岡の「工房・縁(ゆかり)」代表の佐藤みえ子さん(62)が開発したもので、地域の話題となっている。
 佐藤さんは、リンゴなど2ヘクタールを手掛ける果樹農家。果実酢は、佐藤さんが2008年から3年越しで商品開発したもので、自家産のリンゴ、ブドウ、ナシ、柿を使い、約4カ月間発酵させて製造する。
 刺激臭を抑え、まろやかな味わいにしたのが特徴で「健康飲料として、そのまま飲んでほしい」と佐藤さんは話す。
 
写真:「りんごde酢」「ぶどうde酢」「柿de酢」を手に佐藤さん

100414_10.jpg 【青森支局】六戸町にある「道の駅ろくのへ」(小笠原邦定駅長)で販売されている「ベジタブル生キャラメル」(ゴボウ、ニンジン、ホウレンソウの3種類)が、「甘すぎず、野菜の香りがそのまま」と評判だ。
 製造するのは、同町の農家女性たちで構成する「産地直売の会」(蟹谷洋江(ひろえ)会長)。昨年5月に、テレビで紹介された生キャラメルを見て、「地元の野菜を使って作れないか」と取り組み始めた。
 何度も試作を繰り返し、半年かけて完成させ、11月から販売。蟹谷会長は「店頭に並ぶと、すぐに売り切れてしまうほど。会ではほかの野菜の新商品の開発にも意欲的に取り組んでいる」と話す。
 
写真:人気の「ベジタブル生キャラメル」

100414_11.jpg 【兵庫支局】大学での研究を生かしてオリジナルレシピを完成させた、三木市の酪農家・西山農(みのり)さん(31)が作るアイスクリームが人気だ。自家産の生乳や農産物を使い、西山牧場直営のアイスクリーム工房「BOSS&MOM」で常時20種(年間を通して75種類ほど)のメニューを用意。連日、多くの人が訪れている。
 きっかけは、母・きよみさん(59)の「自分たちの牧場の牛乳で、アイスクリームを作りたい」という思いからだ。
 「工房経営が軌道に乗るまでは、販路拡大など苦労が多かった。酪農を取り巻く経営環境の悪化が世間で叫ばれている数年前は、この工房が経営を支えてくれた。やはり、付加価値の高い酪農経営は必要です」と西山さんは話す。
 
写真:アイスクリームを販売する西山さん。子供や親子連れに人気だ

100414_12.jpg 【岩手支局】飼料用乾草の結束ひもを再利用しようと、奥州市江刺区伊手の佐藤仁志さん(73)は、電気モーターを取り付けた「紐(ひも)巻き機」を開発し、コスト削減につなげている。
 共済部長を務めて19年目になる佐藤さんは、牛2頭を飼養しながら、水稲46アール、飼料用に牧草50アールを栽培。毎年、飼料用にラップサイレージ300個、乾草300個分を準備している。開発のきっかけは、農業共済新聞の「足踏みミシンを活用して巻き上げ機を製作」の記事という。
 紐巻き機は、廃物だったバインダーの部品を活用。ロールには目印があり、その太さまで巻き上げるとバインダーに設置できる。
 佐藤さんは「2回ほど再利用できる。コスト削減だけでなく環境にやさしく、冬仕事にもなる」と話す。
 
写真:紐巻き機を使う佐藤さん。ひもの結び目は、ハンマーでつぶしてある

 ▼稲・麦・大豆の輪作体系で10年後までに水田の生産力を倍増するなどの目標を掲げた「農林水産研究基本計画」を農林水産省が策定した。先に閣議決定した新たな「食料・農業・農村基本計画」に対応。食料自給率50%の達成を目指す施策の展開方向に沿って研究分野を設定し、具体的な目標を盛り込んだ。
 ▼水田農業は、農地の効率的利用や省エネルギー・省資源など生産性を高めた循環型食料生産の技術体系確立に取り組む。パンやめんに適した米、用途別の品質と収量性を高めた小麦など需要に応える品種開発と合わせ、水田輪作体系で生産コストを5割以上削減し、高収益を可能にする技術開発を推進する。
 ▼その中で飼料用米は、今後10年で10アール当たり収量を1.2トンまで引き上げるとともに、直播栽培適性や病害虫の抵抗性を高めるとした。流通での混入を避けるため、簡単に主食用米と識別できる技術の確立にも取り組む。飼料としての品質向上や給与技術も含め、総合的な体系構築を目指している。
 ▼新たな基本計画では、飼料用米を新規需要米の柱とし、生産量が1万トンに満たない現状から10年後に70万トンに増産する目標を掲げた。本年度の水田利活用自給力向上事業では、10アール当たり8万円を支援する。
 ▼この機に飼料用米の作付けを拡大し、農家の経営安定や耕作放棄地解消につなげたいと生産現場の期待は高い。ただ、現在の飼料用米品種の収量は10アール当たり800キロ程度で、支援がなければ確実にコスト割れする。農政の変遷を知る人の中には、いずれ政策が転換され、取り組み継続が困難になると懸念する声も少なくない。
 ▼水田農業の生産力強化には、省力化とコスト低減を可能とする技術体系の確立と、大幅な増収や品質向上を実現する品種開発が欠かせない。研究開発には生産現場の取り組みを後押しする大きな役割がある。目標達成に向け、着実に成果を出してもらいたい。

 NOSAI団体は2010年度、新たな全国運動として「信頼のきずな・未来を拓く運動」をスタートさせた。運動期間は14年度までの5年間。「安心のネットを広げ 農家・地域の未来を拓こう」を運動目標に、農業経営のセーフティーネットとしてのNOSAIの機能をすべての農家に提供することを目指す。多様な経営体のニーズに即した提案型の加入推進や、生産と経営を支援するリスクマネジメント(RM)支援活動--などに取り組む。行動スローガンに「もっとフィールドへ」を掲げ、これまで以上に農家との対話を重視した事業運営を展開する。
 
100408_01.jpg 新たな「食料・農業・農村基本計画」が策定され、本年度は、2011年度の戸別所得補償制度の本格実施に向けて、米戸別所得補償モデル事業が実施される。
 「信頼のきずな・未来を拓く運動」では、災害での損失補てんと損害の未然防止という、NOSAIの基本的機能を将来にわたって安定的に発揮する基盤強化を目指す。具体的な推進課題に5つの柱を掲げた。
 〈1〉完全引受けに向けた提案型推進〈2〉リスクマネジメント(RM)支援活動の充実・強化〈3〉事業運営基盤の強化〈4〉広報・広聴活動の拡充〈5〉地域農業・農村振興への貢献――に努めていく。
 NOSAIの事業運営は地域で選ばれた総代、NOSAI部長や損害評価員などの協力に支えられている。対象作物の完全引受けに努め、補償の充実を図るほか、農家の経営安定と地域農業の発展に貢献できるよう、すべてのNOSAI関係者とともに活動を展開していく。
 
 
 
 
 農業支援の一層の充実へ
  全国農業共済協会会長 竹中 美晴
 NOSAIの新全国運動「信頼のきずな・未来を拓く運動」がスタートします。「安心ネットを広げ 農家・地域の未来を拓こう」を目標に、「もっとフィールドへ」という統一行動スローガンを掲げ、さらに信頼されるNOSAIを目指していきます。
 政府は3月30日、10年後の食料自給率(カロリーベース)50%への引き上げを目標に掲げる「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定しました。2010年度予算が成立し、米戸別所得補償モデル事業と水田利活用自給力向上事業が実施されます。併せて、6次産業化など農政改革を進める方針です。自然災害に対する農業経営のセーフティーネットとしての役割は、今後もNOSAI制度が担っていきます。
 NOSAI制度は、全国のNOSAI部長、損害評価員など基礎組織の方々の協力によって支えられています。災害時にNOSAIの補償が受けられない農家が生じないよう一層普及推進に力を入れるとともに、適正・迅速な損害評価、共済金の早期支払いで農家の期待に応えていきます。
 地域の実情に応じたリスクマネジメント支援事業の展開、営農に役立つ情報の提供などを通して、農業経営の支援にも力を入れていきます。

(1面)

100408_02.jpg 政府は3月30日、新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定した。2020年度の食料自給率(供給熱量ベース)を50%に引き上げる目標を設定し、小規模農家も含めた意欲ある多様な農業者を支援する農政へと転換する。
 食料の安定供給を「国家の最も基本的な責務」と明記し、「国民全体で農業・農村を支える社会」の創造を目指す。食料・農業・農村政策を国家戦略と位置付け、農業・農村の再生に向け「戸別所得補償制度の導入」「6次産業化」「食の安全・安心に適応した生産体制への転換」を柱に施策を一体的に展開する。
 農業経営の安定を図る施策では、農業災害による損失補てんを明記。農業災害補償制度の合理化と効率的運営に取り組むとした。
 赤松広隆農相は同日、新たな基本計画を「『食』と『地域』の再生を図るための大きな道標」とする談話を発表。農政転換を通じて「若者や子どもも農村に定住し、そこに暮らす人々が将来に向かって明るい展望をもって生きていける環境を創り上げていく」と強調した。

(1面)

 
写真:戸別所得補償モデル対策の加入受け付けがスタート。農林水産省の正面玄関で看板の除幕式が開かれた

 「農と人をつなぐ」を合言葉に、滋賀県湖北地域の若手農家グループ「湖北ニューファーマーズ」(愛称はkonefa〈こねふぁ〉、35人)の有志15人が3月20日、大阪市北区中之島で農産物販売とトークショーを行った。自ら生産した米や野菜、果物の味を、言葉を尽くしてPRしながら対面販売に取り組んだ。トークショーでは、五穀豊穣〈ほうじょう〉を願う湖北地域の伝統行事「オコナイ」の紹介を交えて、農業の魅力、現状を語った。会長の清水大輔さん(33)=水稲・麦・大豆13ヘクタール=は「湖北地域を丸ごと情報発信し、消費者交流で地域の活性化につなげたい」と話している。
 
100408_03.jpg 会場は、大通りから少しはなれた閑静な場所。通りがかった人が足を止め、次々と立ち寄る。お客さんは、木の器やかご、テーブルクロスなどでおしゃれに演出された米や野菜、総菜、手作りお菓子などを、じっくり品定めする。メンバーが試食を勧めると、「あっ。おいしいね」と笑みがこぼれる。
 プロジェクトリーダーを担っている家倉敬和さん(29)=水稲・麦・大豆34ヘクタール=は「メンバーは個々が経営主だが、おいしいもの、良い物を消費者に届けたい思いは一つ。消費者に率直にPRしたい」と意気込む。
 夕方から、料理研究家の堀田裕介さん(32)をコーディネーターに、メンバーと湖北地域の農業・風習に詳しいフリーライターの井上英樹さん(37)によるトークショーを開き、約60人が参加した。
 集落の男性が総出で何十キロもの鏡もちを作り神社に奉納する伝統行事「オコナイ」や農業作業の様子、経営の現状などをスライドを見ながら語った。餅つきの迫力や、大型機械の設備投資の大きさに、会場から驚きの声が上がった。
 参加者から「農業で食べていけますか」「農政の大転換への意見は」――などの質問が出され、メンバーが回答。「効率的な生産に努めながら、安全でおいしいお米を提供していく。消費者に正当な評価をしてもらい、経営を伸ばしたい」「政策転換への不安は大きい。情報収集に努めています」と話した。

(3面・暮らし)

 
写真:トークショーの最後は、参加メンバー全員が勢ぞろい。会場との意見交換で交流を楽しんだ。胸に「konefa」、背中に「農と人をつなぐ」と書いたTシャツをユニホームにした

 ブドウやモモなどの果樹産地を管内とする山梨中央NOSAI(山梨中央農業共済組合、戸田増宝組合長)では、農家の経営安定のため、共済部長(NOSAI部長)が果樹共済の加入推進に取り組んでいる。農家が加入方式や補償割合を選ぶ際、地域の被害状況や農家の経営内容に合わせてアドバイス。納得した上で加入してもらうよう努めている。地域農家に信頼され、相談役として頼れる存在の共済部長を取材した。
 
100408_04.jpg ブドウ160アールなどを経営する笛吹市八代町奈良原の土屋寿男さん(64)は、共済部長として果樹共済の普及推進に努め、約3割だった加入率を9割まで引き上げた。「自分が率先して取り組むことが大事。見本となることで周りとの信頼関係ができる。果樹共済にも理解を示してもらえる」と話す。
 「農業は自然相手なので、もしもの時の備えとして果樹共済への加入をすすめている」と話すのは、共済部長を5年ほど務める同市御坂町栗合の前田初男さん(62)=モモ130アール。特定危険方式の暴風雨・凍霜害・ひょう害の三点セットを基本に推進している。
 前田さんは戸別に訪問し、加入方式や補償割合の相談にのりながら、納得した上での加入に努める。「最近は暴風雨による被害は少なく、ひょう害の方が心配」と前田さん。
 同市石和町唐柏の青柳栄一さん(70)=ブドウ1.2ヘクタール=は、地域の農家約20人と任意の農事組合を組織し、月に一度、農業について話し合う会合を開く。NOSAI職員を呼び、果樹共済の説明する場を設けている。
 地域では樹園地単位方式の特定危険方式への加入が主だが、青柳さんは幅広い補償が受けられる減収総合方式に加入している。青柳さんは「宅地化や高齢化も進み園地が減っている中で、NOSAI制度は頑張って農業を続ける農家の経営をサポートしてくれる。農家の皆さんに果樹共済の役割と重要性を伝え、加入をすすめたい」話す。

(5面・NOSAI)

 
写真:「市とJAからの掛金助成もあり、加入もすすめやすい」と前田さん。建物共済の推進にも取り組む

100408_05.jpg 農林水産省はこのほど、「GAP(農業生産工程管理)の共通基盤に関するガイドライン」案をまとめた。食品の安全性向上や環境の保全、労働安全の確保を図る観点から、米と麦、野菜を生産・出荷する工程での点検項目を示した。自治体や民間団体ごとにさまざまなGAPが存在する中、共通基盤を整備し、農業者や産地が取り組みやすく、消費者から信頼される仕組みとするのがねらい。一般からの意見も踏まえ、4月中に正式なガイドラインを公表する予定だ。
 
 ガイドライン案は、GAPが広く導入されている野菜、米、麦の3品目を提示した。「食品安全」「環境保全」「労働安全」を柱に、全般に係る取り組みを加えて整理している。
 野菜は46項目を盛り込んだ。「食品安全」は、〈1〉圃場環境の確認と衛生管理〈2〉農薬の使用〈3〉水の使用――など7区分16項目とした。「環境保全」は、農薬による環境負荷の低減対策など6区分14項目、「労働安全」は、危険作業などの把握など8区分8項目だ。点検項目には、それぞれ関係する法律や指針、科学的知見など説明を加えている。
 米は41項目、麦は37項目を示した。食品安全のため、優先的にリスク管理を行うべき危害要因として、米はカドミウム濃度の低減対策、麦はかび毒汚染の低減対策を盛り込んだ。ほかの作物のガイドラインは今後、検討する予定だが、農林水産省は「他品目でも応用できる内容」(生産局技術普及課)という。

(7面・流通)

100408_06.jpg 福岡県農業総合試験場筑後分場(大木町)は、促成ナスの施設栽培に、透明フィルムでトンネルを作って株元保温を行うと、低い温度管理でも一定の果数が確保でき、省エネルギー効果が高いことを明らかにした。温度管理を同条件にすると、無処理区に比べ着果数が増えて果実肥大を早期化。上物率が上がり、収量・果数はともに5~6%増えた。厳寒期の収量の落ち込みを回避し、手軽に低コストで取り組める技術として期待されている。
 
 株元保温は、透明フィルムと支柱を使い、株元の茎部分を幅約55センチ、高さ約25センチのトンネルで覆う。試験では、品種は長ナス「筑陽」を使用。9月に定植し、トンネルは畝上に12月から4月まで設置した。畝には除草作業を省力化するため黒マルチを敷いている。
 冬場の晴天日でトンネル内の夜温は、無処理区に比べて約3度高く、地温は1度以上高くなった。6月まで収穫し、10アール当たりに換算した果数は、無処理区より6%ほど多く18.6トンと試算された。森山友幸野菜チーム長は「茎と根を温めると、ナスの増収効果は大きい」と話す。
 試験区では無処理区に比べ、開花から収穫までの日数が短くなった。「4果のところが5果まで収穫でき、トンネルを取り払った後の5~6月にも増収傾向が続いた」と森山チーム長は話す。
 ナスは4本仕立てを採用し、主枝の摘心は12月ごろに約10節、畝からの高さ140センチで行った。

(13面・営農技術)

 
写真:「株元保温では、冬場の収量の落ち込みが回避できる」と話す森山チーム長

 農林水産省は3月30日、食料・農業・農村政策審議会果樹部会を開き、新たな果樹農業振興基本方針の策定に向けた論点整理を行った。加工用需要の増加など食の多様化や簡便化志向の強まりに対応するため、6次産業化の視点も踏まえた川上(作り手)から川下(消費者への提供者)までの多様な客体に対する幅広い支援策を講じる必要性を提起した。新たな食料・農業・農村基本計画の方向を反映し、5月末の策定を目指す。
 果樹農家の経営安定では、気象災害による減収を補てんする果樹共済の加入促進を位置付けた。特に災害による果実の減収・品質低下を伴う生産金額の減少を補てんする「災害収入共済方式の推進」を掲げた。一方で、景気低迷などによる最近の果実価格低迷を受け、委員からは農業所得の確保につながる対策の検討を求める発言が相次いだ。
 国産果実の需要拡大では、競争力の低下や供給過剰が見込まれる品目・品種の改植の推進の重要性を強調。食べやすさやおいしさ、多様な品目への消費者ニーズへの対応を促す。消費者の年代別・生活スタイル別の具体的な果実摂取の提案や国産果実を使った新商品・新商材の開発なども盛り込む方向だ。

(2面・総合)

100408_07.jpg 【埼玉支局】アブラナ科の一種「のらぼう菜」は、比企地域(埼玉県のほぼ中央に位置)では江戸時代から栽培されている伝統野菜だ。JA埼玉中央「のらぼう菜部会」(大野敏行会長=59歳)では、県東松山農林振興センターなどと連携して、この野菜の普及に取り組んでいる。

 のらぼう菜の収穫は3~4月。栽培に当たっては、消毒がほとんど不要という。ビタミンCが豊富に含まれ、苦味がなく甘味が強いのが特徴だ。
 のらぼう菜部会に登録している生産者は65人。部会では採種圃を限定し、その種だけを使った栽培を徹底。播種日についても各地区の責任者が生産者に伝える。こうすることで、安定供給と品質維持が図られている。
 部会では今年、30トンの収穫を目標にしていて、さらに80~100トン収穫できるよう、生産者や栽培地区・販売エリアの拡大を図っていく。
 
写真:安定供給を目指し、のらぼう菜の普及に取り組む大野会長

100408_08.jpg 【岐阜支局】食品残さを豚の飼料にする「リキッドフィーディング」を、本巣市文殊の本巣畜産(肉豚約900頭、田中孝次代表=43歳)が導入。食品リサイクルを図りながら飼料コストを低減し、経営の改善に努めている。
 リキッドフィーディングは、余剰や規格外で販売できない食品を機械で細かく粉砕して液状化し、乳酸菌を加え、発酵したものを給餌する手法だ。
 リキッドフィーディングでは、一般的な飼料に比べてコストが約10%抑えられる。本巣畜産では、産業廃棄物処理業者の許可を取り、処理料を受け取って食品残さを回収するため、さらなるコスト低減が見込まれるという。
 「乳酸菌の使用で、豚舎のにおい軽減、豚が病気にかかりにくくなる効果も」と田中代表。
 配合飼料で一般的な飼養をした場合は生後5~6カ月で出荷できるが、リキッドフィーディングは、出荷できる大きさに育つまで7~8カ月必要だ。「だが、肉の味は良い」と田中代表は話している。
 
写真:発酵を見る田中さん

100408_09.jpg 【鹿児島支局】「作物が豊かに実るこの沖永良部島が好きです」と話す老川巳貴(おいかわ みき)さんは東京出身の24歳。農業体験からスタートして、現在は和泊町瀬名の新屋園芸株式会社に就職。栽培技術の習得に励んでいる。沖永良部の人と自然、そして農業に引かれた老川さんは、島での未来を描きはじめている。
 老川さんが勤める新屋園芸は160アールでソリダゴを栽培していて、老川さんは「花の消毒以外のすべての作業をやっています。大変な作業も多いけど毎日がとても楽しい」と話す。
 「地元の人と結婚して農業を続けたい」と島への定住も希望していて、「花だけでなくパッションフルーツなどの栽培や、加工品の製造にも挑戦したい」と夢を広げる老川さんだ。
 
写真:「沖永良部に来て本当によかった」と老川さん

100408_10.jpg 【鳥取支局】鳥取市福部町のナシ観光農園「さんこうえん」代表の佐々木友己さん(60)は、昨年3月に本格イタリアンジェラートの専門店を開き、ナシの果肉入りジェラートなどを提供。利用客からの人気は高く、リピーターも増えているという。
 佐々木さんのナシ加工品は、2000年のナシカレーの販売に続く第2弾。
 同農園では「二十世紀」「新興」「王秋」など10品種のナシを2ヘクタールで栽培。「味、ナシの果肉の入れ方や大きさなど試行錯誤の連続。牛乳など材料はできるだけ地元産にこだわった」と話す。
 
写真:ナシの果肉入りジェラートなどを提供

100408_11.jpg 【新潟支局】水稲28.7ヘクタールを作付ける妙高市関山の小出農場(小出英敏代表=60歳)の広報責任者の小出信行さん(33)は「米を売り込むために、いろいろな工夫をしています」と話す。
 販売の中心はインターネットサイトで、注文は、はがきやファクス、メールなどの方法で受ける。
 商品開発も積極的で、特に、「ウエイトライス」と名づけた出生体重と同じ重さの米俵は、出産祝いなどで使われ、好評だという。
 健康志向の高い顧客には、好みの割合でぬか層を残して精米する「分づき米」を出荷。さらに、ポイント制の導入や米購入者に自家栽培の野菜をサービスするなどしてリピーターを増やしている。
 信行さんは「インターネットは多くの意見をひろってそれに合った商売ができる反面、口コミサイトやコメント欄で厳しい評価を受けることもあります」とインターネット販売の難しさを話す。
 
写真:人気の「ウエイトライス」

100408_12.jpg 【高知支局】木に登って遊ぶ子供や、みのがさ姿のお百姓さんなど、四万十町神ノ西の戸田佐代子さん(80)は、かわいい人形を作っている。
 農閑期の副収入にと、30年前から和裁をしている戸田さん。人形は、「余った布や綿がもったいない」と、端切れなどを利用し、農作業の合間に10年前から作り始めた。思いを込めて作るため、一つの作品に3~7日はかかるという。
 「幼いときの遊びや、農作業をしていた大人たちの様子、地域の風景など、子供のころの記憶を元にして作っています」と戸田さん。
 
写真:人形に囲まれて戸田さん

100408_13.jpg 【福岡支局】八女市矢部村で林業を営む原島政浩さん(47)は、不要な木材を利用し、チェーンソーで木工品を制作している。
 原島さんは林家の4代目。10年ほど前に「チェーンソーアート」を始めた。「部分的に腐敗した木材や、木目が粗い木の根元部分は商品とならず捨てられる。もったいないので、何か作れないかと始めました」と話す。
 杉の丸太で作るフクロウの置物が人気という。注文に応じて、節句祝いのコイや、招き猫など何でも作るほか、県内外のイベントで腕前を披露することも。また、直径90センチ長さ2メートルのクスノキで、トラを制作したという。
 「捨てられてしまう木材に再び命を吹き込むことで、木も喜んでいるみたいです。これからも注文に応じていろいろなものを作りたい」と原島さんは話す。
 
写真:チェーンソーを手に政浩さん

 ▼農家と住民が共同で行う農地の草取りや用水路など地域資源の保全活動を支援する「農地・水・環境保全向上対策」は、2007年度にスタートして4年目を迎えた。農林水産省は先ごろ第3者委員会を開き、09年度の実施状況を検証。地域資源の保全に加え、組織活動の活発化など波及効果を確認した。
 ▼09年度は全国で約2万組織が資源の保全活動を実施し、面積は前年度比4.3%増の141万9千ヘクタールになった。活動組織の調査では、水路や農道の長寿命化、耕作放棄地の発生防止など多くの成果が認められた。
 ▼活動組織の構成は、約147万人・団体に上る。そのうち農業者以外の参加は、約24万人と11万団体だ。参画団体は地域の自治会が9割と多く、子供会が5割、女性会が4割と続く。学校・PTAの参画も2割を占める。
 ▼子どもたちの参画は、対策に位置づけた農村環境向上活動に生きもの調査や花いっぱい運動など行事があるためだ。導入前に比べ開催数が約1.3倍に増え、貴重な地域交流の機会となっている。
 ▼事例として山形県飯豊町の松原地区保全協議会の取り組みが報告された。水路の保全から落差を利用した小水力発電へと活動を広げ、水路周辺の環境整備を進めている。発電装置の設置には地元高校が協力し、イルミネーションが点灯するPR看板は子どもたちがデザインした。
 ▼新たな「食料・農業・農村基本計画」は、農地・水・環境保全向上対策について、10年度に中間評価を実施して環境保全機能の維持・向上を図る直接的な助成手法を検討すると明記した。地域資源や環境の保全活動促進が対策のねらいだが、その地域を受け継ぐのは子どもたちだ。新たな対策には、子どもたちが地域活動にかかわる機会づくりをしっかり位置づけてもらいたい。

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