農林水産省が今年度実施する「戸別所得補償モデル対策」は、加入申請期間が6月末となっている。制度普及のため、同省は各地で「あぜ道キャラバン」を展開。「加入漏れのないよう、農家はぜひ申請を行ってほしい」(生産局農業生産支援課)と呼び掛けている。モデル対策が生産現場でどのように受け止められているか、宮城県で水田営農に取り組む農家を取材した。
太陽が雲に隠れると急に肌寒さを感じる東風が、水田地帯に吹く。気象庁は6~8月の低温傾向を予測しており、水稲など農作物への影響も心配されている。天候への不安とともに、「戸別所得補償モデル対策」という農政の大転換は、水田営農に取り組む農家の経営にどのような影響をもたらすのか。
仙台市若葉区荒浜で農事組合法人荒浜農産専務、荒浜集落営農組合組合長を務める二瓶幸次さん(60)は、「水田営農は労働費をきちんと計算すれば、どこも恒常的な赤字傾向だ。そういう点では、米の戸別所得補償はいい制度だ。一部の集落営農では専従スタッフの人件費もままならず、解散したところもあった」と経営環境の厳しさを話す。
最近は、高齢化や後継者の不在で2~3ヘクタール規模の農家からも耕作依頼が来るようになった。現在の施設・装備では近々受けきれなくなる心配があるという。
家族で水田営農に取り組む角田市岡の面川義明さん(56)は「戸別所得補償制度の実施で評価する点は、農家が自分自身の経営を見つめ直す機会を与えたことだ。所得補償を受ける以上は、自分の経営により責任を持ち、食料の安定供給など、消費者の期待に応えていかないといけない」と強調する。
農家の多くは、収益性の低い水稲生産に10アール当たり1万5千円の交付金が出ることで、素直に「ありがたい」という。その反面、「所得補償を受けるのだから、農業界にはより厳しい目が向けられる」と慎重な意見もある。
一方、全国一律の補てんなど「シンプルで分かりやすい制度」を目指したことで、麦・大豆など転作作物への助成体系が一変。激変緩和措置も講じられたが、生産現場には混乱を生じている。結果、モデル対策交付金の一部を積んで、地域独自の「とも補償」を行う動きも見られるという。
◆
農林水産省の「あぜ道キャラバン」でも、事業への疑問や米価下落への不安を指摘する声が多い。岡山県(5月14日)では、農家が「戸別所得補償制度を継続実施してほしい」「全国一律ではなく、地域に応じた交付単価の設定を」と要請した。福島県(5月21日)では、「生産調整未達成でも自給率向上事業が適用されるのはありがたい」「米価の下落が心配だ」――など。
(1面)
〈写真上:「周囲の農家からの耕作依頼が急増している。担い手を支える新たな対策が必要だ」と二瓶さん〉
〈写真右:「所得補償制度の本格実施に向けた議論も知りたい。自給率向上や後継者育成の力になる制度になって欲しい」と面川さん〉