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今週のヘッドライン: 2010年7月アーカイブ

 宮崎県は22日、県内のすべての牛・豚飼養農家を対象に口蹄疫の清浄性確認検査を始めた。疑似患畜の発生確認から3カ月が経過、ようやく終息の兆しが見えてきた。ただ、発生農場のふん尿処理など清浄性確保に向けた作業は残っており、周辺にはウイルスが潜む可能性があるため、油断はできない。感染源・ルートの解明など今回の発生事例を検証し、防疫体制の強化につなげる必要がある。また、爆発的な感染拡大は、約1300戸の畜産農家の家畜約28万7千頭の命を奪った。国内有数の畜産地域復興に向け、生活面も含めたきめ細かな支援の充実が求められる。口蹄疫をめぐる状況を話し合った。

100726_01.jpg  宮崎県の清浄性確認は、獣医師による目視検査で、8月11日まで県内約7700戸の牛や豚について口蹄疫の症状の有無を確かめる。新たな発生がなければ27日にも終息宣言を出す方針だ。口蹄疫根絶に向け、新たな段階に入った。
  国内で10年ぶりの発生となった口蹄疫は、4月20日の都農町での1例目確認以降、県東部地域を中心に爆発的に感染が拡大。5月17日には1日で15例、2万8452頭にも上る疑似患畜が確認された。7月4日の292例目(宮崎市)以降、22日までに新たな発生はない。患畜・疑似患畜は21万1千頭を超え、口蹄疫ワクチン接種家畜を加えると約28万7千頭が処分された。疑似患畜が確認された地域は5市6町に上る。
  殺処分や移動制限・搬出制限による出荷停止に伴う減収分などについては、畜種ごとに一定額が補てんされる。ただ、その後の具体的な支援内容は決まっていない。
100726_02.jpg  今回、爆発的な感染拡大を招いた原因の一つは、殺処分・埋却が追い付かなかったことだ。感染家畜の生存がウイルス拡散につながったと指摘されている。埋却地を確保できず、ピーク時には殺処分待機頭数は約7万頭にまで積み上がり、政府は5月19日に殺処分を前提とした国内初の口蹄疫ワクチンの使用に踏み切らざるを得なくなった。実際には県や国が協力しているものの、畜産経営の規模拡大が進み、殺処分・埋却を農家の責任と規定した現行の家畜伝染病予防法(家伝法)も、実態に合っていない。
  初動の遅れを指摘する声もある。農林水産省と宮崎県の発表では、1例目の農場では、4月9日に症状を示す牛が見つかっていた。
  現地では懸命の防疫措置が行われた。全国から派遣された獣医師などはのべ2万4千人余り。1万8千人以上の自衛隊員も活動に協力した。NOSAI団体も7月13日までに、全国から56人、県内78人の獣医師が防疫措置などに従事。一般のNOSAI職員239人も車両消毒や殺処分の補助にあたった。現場では大型家畜の扱いに慣れたNOSAI獣医師の技術が高く評価を受けている。
  一方で、家伝法の手当金と家畜共済の共済金の関係整理が課題に挙がった。家伝法の家畜の評価額と家畜共済の評価額の差があり、家畜共済の補償範囲が小さくなる例がある。西日本地区農業共済組合連合会会長等会は、家伝法の手当金や特措法の殺処分奨励金と家畜共済の補償分野について整理を求める緊急要請を山田正彦農相に提出している。

(1面)

〈写真上:埋却作業の様子(写真=都城市提供)〉
〈写真下:消毒ポイントでは24時間体制で車両消毒が行われた(写真=NOSAI連宮崎提供)〉

 複数の病害虫に抵抗性を持つ新品種や超多収米などの育成を目指し、農林水産省は、イネゲノム(全遺伝情報)の研究成果を活用した「新農業展開ゲノムプロジェクト」を展開中だ。従来方法に比べ、的を絞った短期間での育種が可能となり、大幅な生産性向上のほか、作物を利用した環境・エネルギー問題への貢献が期待されている。同省は21日、シンポジウムを開き、陸稲が持つ強いイモチ病抵抗性遺伝子を「コシヒカリ」に導入した「ともほなみ」の育成ほか、段階的に進める多収米開発に向けた研究成果などを報告した。

 ともほなみの育成は、農業生物資源研究所の福岡修一主任研究員が発表した。イモチ病が激発する圃場で栽培しても十分な抵抗性を発揮し、コシヒカリ並みの良食味を兼ね備える。減農薬栽培が可能で、コシヒカリ栽培地域への普及が期待されている。
 イモチ病の抵抗性遺伝子は、強く安定した抵抗性を発揮する陸稲「戦捷(せんしょう)」から導入した。強い抵抗性遺伝子を特定し、コシヒカリと交配して作出した後代の6千個体から、塩基配列で遺伝子を確認するDNAマーカー育種の方法で選抜した。
 従来の交配育種では、抵抗性を導入しても抵抗性が安定しなかったり、食味が落ちる問題があった。研究では、抵抗性遺伝子のそばに食味を損ねる遺伝子があると突きとめ、抵抗性遺伝子を持つ個体だけを残した。福岡主任研究員は「イモチ菌に対する反応がこれまで知られた抵抗性遺伝子と異なる。安定した抵抗性を長く保つと考えられる」と説明した。
 超多収品種の育成に向けた研究成果は、名古屋大学大学院の松岡信教授が報告した。イネの多収性にかかわる形質のうち、穂の長さや分枝数を増やす遺伝子、茎を太くする遺伝子などを特定した。
 将来にわたる食料の安定的な確保や農山漁村の活性化に向け、研究開発への期待が高まっている。政府が振興する飼料用や米粉用など新規需要米の普及、エネルギー利用を進めるバイオマスの実用化には、生産性の向上によるコスト低減が欠かせない。地球温暖化の進展による気象災害の多発などを背景に、病害虫抵抗性や高温・低温に対する耐性の強い品種開発も要望されている。

(2面・総合)

 農林水産省は16日、輸入植物検疫制度に関する意見・情報交換会を開き、検疫制度の見直しに向けた考え方を提示した。検疫対象病害虫の範囲を現行約200種から約900種に拡大することを柱とし、国内未発生の病害虫の侵入リスク低減を目指す。同省は月内にも今後の方針案として公表し、広く国民の意見を聞いた上で、検疫制度の見直しに着手する。
 近年、グローバル化や流通の多様化、さらに輸入植物の種類や輸出国の増加などから国内未発生の病害虫が侵入する危険性が増大。輸入植物の検疫件数は、2005年で80万件と、20年前の4倍に膨れあがっている。検疫制度見直しでは、科学的根拠に基づく検疫措置の実施とともに、国内未発生または経済的影響の大きい病害虫を検疫対象としてリスト化する方針を掲げた。
 具体的には、従来重点的に検疫対象としてきた病害虫200種に加え、国内未発生の約400種と国内未発生の系統がある病害虫・ウイルス約140種などを挙げた。
 さらに新たな措置として、〈1〉プラムポックスウイルスなど数種を対象にした遺伝子診断など高度検出技法の導入〈2〉サドンオークデスの病原菌など3種を対象に輸出国への新たな検疫措置の要求〈3〉ポテトスピンドルチューバーウイロイドなど3種を対象に輸出国への栽培地検査の要求――を盛り込んだ。
 リスク未評価の約1600種以上の病害虫は、しばらく検疫対象として規定。リスク評価後に検疫対象にするか決定する。

(2面・総合)

100726_03.jpg 東京都小金井市周辺の大学生で構成するサークル「いがねこ」が、江戸東京野菜を使った料理のレシピ集を作成し好評を得ている。昨年12月にサークルが企画した「江戸東京野菜料理コンテスト」の入賞作品を掲載。料理に使用した「伝統小松菜」や「亀戸大根」などは、法政大学の農業サークル「あぐり」が小金井市の農家に協力してもらい栽培した。東京周辺で作られていた伝統野菜を使ったまちおこしに取り組む小金井市と学生、農家が連携して江戸東京野菜の普及を図っている。
 レシピ集は「亀戸大根と伝統小松菜の天むす」「しんとり菜のクッキー」など、創作料理部門とスイーツ部門から成るA5版全34ページの冊子だ。デザインは東京学芸大学美術科修士1年の本間由佳さん(23)が手がけた。
 「江戸東京野菜をもっと多くの人に知ってもらいたい」と話すのは「いがねこ」の代表、飯田剛史さん(25)=東京農工大学修士2年。江戸東京野菜の普及に力を入れる小金井市の取り組みに共感し、亜細亜大学、法政大学など地元の学生に呼びかけ、2008年11月に「いがねこ」を結成。現在は10人で活動する。
 料理コンテストは、江戸東京野菜の「東京長かぶ」「亀戸大根」「大蔵大根」「伝統小松菜」「金町小かぶ」「しんとり菜」の1種類以上を使用したレシピを募集、約60件の応募があった。書類審査を通過した19品を実際に調理して、各賞を選定し、レシピ集に掲載。資金は地域活性化などを支援する東京農工大学の資金援助制度を利用した。
 本審査で使用した伝統野菜は東京長かぶと金町小かぶを除き、法政大学の農業サークル「あぐり」が全量栽培したもの。小金井市関野町の約40アールの畑でトマトやナスなど栽培する大堀耕平さん(61)の畑の一部を借り、メンバーは週3日、交代で畑で作業した。大堀さんは「江戸東京野菜の普及に貢献してくれてありがたい。農業に関心を持って食べ物がどういう形で作られているのか伝えてほしい」と期待する。

(3面・暮らし)

〈写真上:大堀さん(左)と山中さん。レシピ集は2,000部発行された〉

 口蹄疫発生で畜産農家の防疫への関心が高まっている。中央畜産会と日本養豚協会は21日、「家畜防疫対策を再認識しよう」をテーマに優秀畜産表彰中央情報交流会を開催し、養豚農家など283人が参加した。話題提供した岩手県の農事組合法人八幡平ファーム、新潟県の妻有(つまり)畜産グループの防疫対策について、概要を紹介する。

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大泉俊昭常務理事〈岩手県・農事組合法人八幡平ファーム〉
 岩手県洋野町で母豚1630頭の一貫経営をしている。SPF(特定病原菌不在)豚を飼育し、昨年は肉豚約4万1千頭を出荷した。2005年に設立し、役員2人、事務1人、現場職員17人で運営する。ウインドレスの豚舎は高台にあり、防疫上良い立地だ。
 防疫は、感染源を中に入れないのが基本で、入った場合は駆除と外に出さない対応が大切だ。感染源となるのは、種豚、ふんやふんの汚染物、カラス、猫などだ。人は感染源とならないよう職員が出入りする際は衣服を着替え、毎日洗濯している。長靴はエリアごとに履き分ける。
 消毒だけで菌やウイルスが死滅するならば、徹底的に消毒すれば疾病は無くなるはずだ。しかし、現実は違う。消毒を過信しない。まず除ふんを徹底し、水で流している。日ごろから豚舎内外を清潔に保てなければ、どれだけ消毒を強化しても効果は出ないのではないか。




100726_05.jpg田中勤代表〈新潟県・妻有畜産グループ〉
 飼料や資材の共同購入組織として、1985年にグループを設立した。メンバー10人は個々に経営し、母豚は合わせて1220頭いる。
 全国的にまん延していたオーエスキー病の防疫に取り組もうと、妻有畜産グループが地域の養豚農家に呼びかけて「中魚沼・十日町養豚防疫対策協議会」を89年に発足した。隔離豚舎を2カ所に建てて隔離豚舎組合を設けた。96年からはPRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)の検疫も行っている。
 隔離検疫は、地域外から豚を導入する際に実施する。オーエスキー病の陰性農場で陰性証明があるもののみ導入し、着地時と21日後の2回検査する。陽性豚が見つかれば、同居豚も含めて淘汰(とうた)する。隔離豚舎組合は組合員費と利用費で運営。組合員費は規模に応じて負担し、利用費は雌が1頭5千円、雄は8千円だ。
 全会員が個人情報の開示に合意し、06年から疑陽性豚が見つかるとファクスで連絡している。疑陽性農場への人の出入りを制限し、出荷車や飼料バルク車のルートを変更する。

(8面)

100726_06.jpg トマトをハウス栽培する福島県桑折町松原の阿部佐一郎さん(75)=水稲23アール、ハウストマト・メロン3.3アール=は、トマトの多段取り栽培で手間のかかる、つる下ろしを省力的に行う装置を考案。昨年8月に特許を取得した。誘引ひもを、畝の上に配置したパイプに巻き付けておき、巻き戻す方法でつる下ろしをする。畝ごとに一度にできる。誘引ひもをらせん状に巻き付けると、吊〈つ〉り下げ位置をずらしていける。阿部さんは「誘引ひもをほどいてフックを掛け直すのは力仕事だ。本数も多い。この装置を使えば楽に、作業時間も10分の1になる」という。
 「つる下ろしが楽になったよ」。阿部さんがハンドルを回すとパイプが回転し、誘引ひもが巻き戻される。畝の長さは22.5メートル。畝の反対側の端は、ギアを使って隣接の畝と連動させた。
 パイプの高さは170センチほど。茎は定植から約6カ月間で3~4メートル伸びるため、2.5メートルほどの誘引ひもを巻いておく。らせん状に巻き付けることで、巻き戻しながら吊り下げ位置が移動する。収穫の終期には根元から2メートルほどの位置まで移動していく。
 誘引ひもを巻いたパイプは、1.8メートルおきに配置した支柱と支え部材で保持する。誘引ひもの間隔は株間と同じ50センチで、それぞれに約15キロの荷重がかかる。パイプが勝手に回って誘引ひもが巻き戻らないよう、ハンドルの回転をパイプに伝える駆動部分にオームギアを使った。
 吊り下げ位置をずらしていく2メートルが確保できない端の3株は、従来の方法で1株ずつ吊り上げる。茎が伸びたら、隣の畝にフックをかける。材料はほとんどが、ビニールハウスの部材や廃材など。新規に材料を購入しても3~4万円ほどで済むという。

(11面・営農技術)

〈写真:ハンドルを回す阿部さん。パイプに力を伝えるオームギアは、廃用のコンバインの部品を利用した。〉

100726_07.jpg100726_08.jpg 【香川支局】「捕っても捕っても減らないジャンボタニシ。毎日、手で捕っている近所の人たちの手助けになればいいですね」。丸亀市郡家町の兼業農家・宮武利運さん(66歳、電機工事業)が、捕獲箱「タニシトルトル」(商標登録申請中)を考案した。捕獲箱は、大きさが1.5センチ以上の親タニシ(卵を産み、稲を食害する)を餌で呼び寄せ、捕獲して逃がさない仕組みだ。

 ジャンボタニシ捕獲箱は、随所に工夫を凝らしてある。入ったタニシが出られないよう内側にカーブさせたトラップの形やその間隔、これを止める心棒の太さ、餌を中心部に固定する弾力性のあるナイロン糸などだ。
 使用上の注意点は(1)稲が大きくなる秋までに捕獲する(2)水のあるときに使用する(3)餌を中心部にセットする――など。宮武さんは「移動して捕獲すればいいので、10アールに3台あればいいでしょう。市販の薬剤を散布したうえで、補助的に使ってください」と話す。
 餌は、ゴーヤー、タマネギ、スイカ、ナスなどの夏野菜に果物、魚のアラなど。少々腐っていてもよい。
 昨年、1カ所の農地で試験使用した行成レイ子さん(水稲60アール)は、「よく捕れます。1日に100個捕れた日があります」と話し、今年は設置数を増やす予定だ。

〈写真右:「タマネギを餌にすると、よく捕れます」と宮武さん〉
〈写真左:捕獲箱の中はジャンボタニシがぎっしり。大きさは、8×8×40センチ。1個1575円(税込み)〉

100726_09.jpg100726_10.jpg 【熊本支局】ハウスデコポン82アールと露地デコポン150アールを手掛ける芦北町湯浦の中村伸治さん(44)は、デコポンの自根を切断することで樹勢を適度に抑え、安定生産を実現している。
 自根とは、接ぎ木部より上の穂部から発生する品種自身の根のことだ。自根が発生すると、樹勢が強まって着花・結実不良を招き、果実が低糖低酸になるという。
 中村さんは「自分なりに模索しながら、約3カ月間かけて自根をのこぎりで切断しました。根元を3分の1程度にすると樹勢が落ち着き、収量が安定しました」と話す。今年から収穫が始まった露地と合わせ、10年の収量は概算で37トンだという。

〈写真左:「2年で樹勢が回復した」と中村さん〉
〈写真中:接ぎ木(台木)の上から自根が伸びた部分を断根〉

100726_11.jpg 【岩手支局】地域農業の活性化と遊休耕地の有効活用を目指し、盛岡市の砂子沢アロニア生産組合(藤原英夫組合長=71歳、組合員20人)では、アロニア栽培に取り組んでいる。同市では、アロニアの加工品の商品開発が進み、特産品として定着した。
 藤原組合長は「当初は不安もあったが、アロニアは耐寒性もあり、この地区での栽培に適していた。住民は高齢化してきたが、樹の高さは2メートル弱で収穫などは比較的簡単。栽培は日当たりと水はけが良い場所が理想的」と話す。
100726_12.jpg 盛岡手づくり村にある財団法人盛岡地域地場産業振興センターは、アロニアの収穫2年目から盛岡市の加工委託を受け、加工から販売を展開している。
 「アロニアは、生では渋味があるため、ジャムやジュース、ジェラートアイスなどに加工した。とくにジェラートアイスが人気」と同センターの佐々木雷蔵振興部長は話している。

〈写真右上:加工品を手に佐々木振興部長〉
〈写真左:アロニアの実〉

100726_13.jpg 【北海道支局】岩見沢市北村中小屋の中小屋地域推進協議会女性部「菜宝箱(さいほうばこ)(関口豊子会長=16人)」が、北海道では珍しい落花生の栽培に取り組んで4年。健康食品の落花生を手軽に取れるようにと、落花生をぜいたくに使った「ピーナッツドレッシング」を開発した。
 使用する落花生は、真空パックで冷凍保存され、長期保存でも新鮮さを損なわない。関口会長は、「ピーナッツドレッシングは、落花生ならではのコクのある甘味と、リンゴ酢のさっぱりとした酸味が特徴。柔らかくトロトロとした感触を出すのには特に苦労しました。野菜サラダにはもちろん、冷ややっこなど酒のつまみにも相性ばっちりですよ」と自信をのぞかせる。

〈写真:「菜宝箱」のメンバー(前列右が関口会長)〉

100726_14.jpg 【新潟支局】魚沼市吉水の「魚沼三山部会」は、代表の鈴木道弘さん(52)を含め、7人のメンバーとその家族でユリを生産している。品種が豊富で、花もちが良く、茎が硬くボリュームがある高品質なユリの生産を目指す。
 同会では、魚沼の厳しい暑さにも耐えられるよう、日本国内で1年養成した「国産球」と呼ばれるユリの球根を利用。国産球は、輸入球根と比べて蕾(つぼみ)の数が少なくなるため、球根自体を大きくして蕾の数を確保する。
 「国産球は管理が難しいですが、鮮やかに発色する花を生産できます」と鈴木さん。「出荷されるときは、何物にも代えがたい喜びがあります」と話している。

〈写真:森山さんの所有するハウスで、鈴木さん(右)と森山さん〉

100726_15.jpg 【千葉支局】市原市天羽田の小山正義さん(76歳、落花生15アール)は、ゆで落花生を作って20年以上。今では予約しないと手に入らないほどの人気となっている。
 小山さんが栽培する落花生の品種は、実が甘くて、皮が薄く渋味が少ない早生の「さとのか」。収穫後の泥付き落花生は、ニンジン洗い機を流用し、労力軽減に工夫を凝らす。洗浄後、圧力釜を四つ使って一気にゆでる。ゆで上がったらすぐに広げて風に当て赤くならないようにし、見た目が白くきれいになるように仕上げている。
 小山さんのゆで加減・塩加減は、「あとを引くおいしさ」「来年も食べたい」と消費者に好評で、口コミで人気が広まっている。

〈写真:「全国から注文が入ります」と小山さん〉

 【島根支局】100726_16.jpg「"牧畑"の跡地に自生しているサンショウを使って町おこしをしたい」と、その実の塩漬けの製造に、西ノ島町の「牧畑を後世に伝える会(角市(かくいち)正人会長・59歳・7人)」が取り組んでいる。
 牧畑は、牛馬の放牧と畑作を組み合わせた隠岐の島独特の農法で、昭和30年代ごろまで行われていた。
 角市会長は、牧畑に自生するサンショウに目を着け、その実で塩漬けを作った。天然物独特の香りと程よく抑えられた辛味が評判で、別府港のターミナルビル売店で販売されている。
 角市会長は「このサンショウを商品化し、町の特産品として売り出したい」と話している。

〈写真:「特産化して町おこしにつなげたい」と角市会長〉

 ▼イネのゲノム(全遺伝情報)研究が進むにつれ、米の「おいしさ」にかかわる遺伝子の手がかりも見えてきた。農林水産省が開いたシンポジウムで、農業生物資源研究所の矢野昌裕QTLゲノム育種センター長がこれまでの成果を報告した
 ▼研究では、2004年に解読した「日本晴」と新たに解読した「コシヒカリ」の全塩基配列を比較し、6万7千カ所に及ぶ配列の違いを見つけた。その違いを手がかりに主要な151品種を調査して、最近の良食味品種に共通する遺伝子が12本のうち第3染色体にあると特定した
 ▼コシヒカリ系統の「ひとめぼれ」や「ヒノヒカリ」だけでなく、良食味品種のルーツとされる「亀の尾4号」「陸羽132号」も同じ遺伝子を持つそうだ。一方でコシヒカリと同じ親の「越路早生」「ホウネンワセ」にはその遺伝子がないと分かった
 ▼水稲の品種改良の歴史はおよそ150年とされるが、良食味にかかわる特定の遺伝子が連綿と残されてきたとは驚きだ。時代とともに改良の目的も変化する中、優良品種を選ぶ研究者や農家の目が、見えない遺伝子の存在を見逃さなかったと言える
 ▼日本晴にその遺伝子を導入した系統の食味官能試験では、光沢やうま味、粘り、総合値ともコシヒカリに近い評価だった。矢野センター長は「今後は、どんな食味にするかをデザインする品種育成も可能になる」と説明した。粒の大きさや冷害に対する強さなどコシヒカリの特徴である遺伝子の解明も進んでいる
 ▼現在はコシヒカリとその系統が栽培品種の大半を占め、多くの品種が同じ良食味の遺伝子を持つ。新しい食味の品種デザインには、違った特徴を持つ食味の遺伝子解明を促す必要がある。近い将来にオーダーメードの品種が実現する時代が来るのだろうか。

100721_01.jpg 肉用牛を肥育する福島県大玉村玉井の国分農場有限会社(国分俊作社長、60歳)は、近くにある温泉旅館や有機農業に取り組む農家と一緒に生ごみのリサイクル事業に取り組んでいる。農場では、旅館の宿泊客の食べ残しに牛ふんやおがくずなどを混ぜて肥料を作り、農家に供給。農家は、この肥料を使って栽培した有機野菜を旅館の食材として提供するというものだ。飼料も食品会社などから廃棄されるパンやめんなどのくずを使って発酵飼料を作り給与する。餌代は一般の畜産農家の4割程度を実現している。
 安達太良山のふもとにある国分農場では、和牛750頭と交雑種200頭を飼い、国分社長をはじめ12人が働く。生後2カ月の子牛を導入し、26カ月間飼育して出荷している。
 肥料は1日に約4トンを生産する。生ごみを出す岳温泉旅館協同組合(14軒)が1袋(25リットル入り)400円で買い取り、有機野菜の栽培農家やゴルフ場に提供したり、旅館の売店で販売している。
 地産地消を通して循環型社会を構築しようと、2002年に旅館組合、JAみちのく安達二本松有機農業研究会、国分農場の3者で「あだたら環境農業研究会」を設立した。生ごみのリサイクル事業は、旅館組合には処理費の抑制やマスコミなどでの宣伝効果がある。有機農業研究会では、手間を掛けずに良質堆肥が利用でき、地元に販売先が広がるなどのメリットがある。
 農場では、年間を通じて一定量の肥料が出荷でき、在庫を抱えなくなったという。国分社長は「資源の循環を通じて地域と共存を図るのが目的で、会社の利益は考えていない」と強調する。
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 生ごみは、牛のふん尿やおがくず、もみ殻などと混ぜ、発酵槽に入れてかくはんする。70~80度の発酵温度を維持し、その後、熟成させ約3カ月間で有機質肥料となる。
 ホテル光雲閣の社長で環境農業研究会の大内正孝会長は、「リサイクル事業がなければ処理に困るところだ。国分農場に運び込むと肥料になり、有機野菜づくりなど有効利用できる」と話す。
 有機野菜は供給が不安定なため、旅館ではタマネギやダイコン、ジャガイモなど保存のきく野菜を中心に利用する。「地元の有機野菜などを使った漬物やみそ、納豆などのように素材を加工した特産品を販売したい」と大内会長は期待する。

(1面)

〈写真上:「酵母発酵させた飼料で育てた牛は病気に強い」と話す国分社長(左)と長男の秀作さん〉
〈写真下:酵母発酵飼料はトランスバッグに入れ熟成させるとできあがる〉

 第22回参院選は、11日に投開票を行い、民主党は改選前の54議席を下回る44議席にとどまった。その結果、与党は非改選を含めて110議席と過半数を割り込んだ。衆参両院で多数派が逆転する「ねじれ国会」となり、国政の停滞が懸念されている。山田正彦農相は13日、閣議後会見で、戸別所得補償制度の本格実施に向け、来年1月の通常国会までに関連法案を提出すると述べ、1兆円規模とした予算確保にも意欲を示した。民主党は、各政党と政策や法案ごとの連携を模索している。しかし、参院選では戸別所得補償制度を批判する政党が多く、調整は難航しそうだ。選挙結果を踏まえ、農政への影響や課題を話し合った。
   ◇    ◇ 
〈A〉 参院選は、昨年9月に誕生した民主党中心の政権への中間評価と位置付けられた。結果は、非改選を含めた議席数は、野党が132議席、与党が110議席となって逆転し、ねじれ国会となった。
〈B〉 現状では、与党は衆院で法案再可決に必要な3分の2以上の議席を確保していない。参院が法案を否決した場合の再可決は難しく、与党の政策実現には、新たな連立を組むか、政策ごとに野党の協力を得る「部分連合」などを模索せざるを得ない。菅直人首相は、法案や政策ごとの連携を図る考えだが、厳しい国会運営を迫られる。農政への影響も避けられない。
〈A〉 山田農相は13日、閣議後会見で「マニフェスト(政権公約)で約束した戸別所得補償制度をきっちりとやっていくことが大事だ」と強調。「予定通り来年本格実施する」と明言した。
〈C〉 昨年秋に歴史的な政権交代が実現し、民主党を中心とした政権は行財政改革に取り組んだ。農政も大転換するとして戸別所得補償制度の実現に動いた。しかし、本年度実施する戸別所得補償モデル対策は、政務三役を中心に短期間で導入を決めるなど半ば強引に導入した印象がある。対象農家には政策の変化が大き過ぎ、米の生産数量目標配分や地域主体で進めてきた転作への支援のあり方など生産現場の動揺を招くなど課題を残した。

(2面・総合)

 6月末まで受け付けた戸別所得補償モデル対策の加入申請件数(速報値)が、全国で131万9277件になった。農林水産省が16日、発表した。昨年産の水稲生産調整に参加した120万件を超えた。口蹄疫の発生で申請期間を延長した宮崎県、熊本県、大分県、鹿児島県の申請件数はさらに増える可能性がある。
 加入申請件数は、集落営農も1戸とカウントする。集落営農は約6千ほどあり、農家戸数では150万戸に上るとみられる。
 山田正彦農相は、閣議後の記者会見で「自治体、JA、水田協議会、農政局職員の努力で一応の成果が出た。ありがたい」と述べた。「今年の作柄にもよるが、需給はしまっていくのではないか。米の在庫も4、5月とそれなりに販売が進んだ。弱含みだが、価格は何とか維持されるのではないか」との見通しを示した。

(2面・総合)

100721_03.jpg 「自分で大切に作った穀類を無駄にせず有効活用したい」――そんな思いで地ビール製造を始めた大学の元助教授がいる。埼玉県小川町飯田の馬場勇さん(64)だ。小麦や雑穀を栽培し、原料の一部に収穫物を使用。自身が設立した「麦雑穀工房マイクロブルワリー」で数種類の銘柄を製造する。週5日営業する工房は、地ビールを飲みたいと集まる県内外の消費者でにぎわっている。麦や雑穀の生産を増やし100%自家産の原料を使ったビール造りが目標だ。
 東武東上線小川町駅前に建つ「麦雑穀工房マイクロブルワリー」は、10席ほどのカウンター席がある店舗と地ビールを醸造する製造スペースが一体となった施設だ。華やかな香りが特徴の「雑穀ヴァイツェン」、サンショウのエキスを加えたスパイシーな香りが特徴の「山椒(さんしょう)ポーター」など4種類を製造・販売する。
 電子工学と情報科学を専攻する助教授だった馬場さんは、自然環境が豊かな小川町に移り住み、58歳で大学を辞め小麦や野菜の栽培を始めた。「農業は生きることの本質・根幹で、人間が大切にしなければならないと思った」ときっかけを話す。
 現在は、借地約25アールで小麦やキビ、アワ、ライムギなどの雑穀とズッキーニやトウモロコシなどの野菜を無農薬・無化学肥料で栽培する。自分で栽培した小麦を「一粒一粒が宝石のよう」と馬場さん。外皮まで無駄にせず丸ごと利用できるとビール造りを始めた。独学で醸造技術を勉強し、酒類製造免許を取得。7年前に工房を設立した。

(3面・暮らし)

〈写真:「世界一のビールを造りたい」と口をそろえる馬場さん(右)〉

100721_04.jpg100721_05.jpg 300年の歴史を持つサトイモの産地、愛媛県四国中央市宇摩地区では新品種「伊予美人(いよびじん)」(品種名「愛媛農試V2号」)のブランド化に挑戦している。JAうま特産部は品種を伊予美人に統一。農家450戸が75ヘクタールで栽培し、京阪神地方を中心に年間1700トンを出荷する。"サトイモ"ではなく"伊予美人"として消費者の認知度を高めようと、試食会や規格外品を使った加工品開発に取り組む。部会長の鈴木凱夫さん(70)は「従来品種に比べて収量も秀品率も高い。農家の栽培意欲も高まった」と話す。
 ◇◆
 「スーパーではまだ"愛媛のサトイモ"として売られている。最終的に"伊予美人"のブランド名で店頭に並ぶまでにしたい」と話すのはJAうまの合田久営農部長だ。
 伊予美人は県農業試験場(現農林水産研究所)が「女早生(おんなわせ)」の優良系統から育成し、2008年に品種登録した。Lサイズ以上の大玉が多いのが特徴で、子イモ、孫イモの収量が女早生に比べて1株当たり約30%も多い。10アール当たり収量は約2・7トン。柔らかく、粘りがあり、イモ炊きや煮っころがしなどに向くという。
 JAうま特産部は、06年に農家へ種イモを配り、翌年から本格的に栽培を開始。08年には特産部の農家全戸が女早生から切り替えた。伊予美人の愛称は、県産品のブランド化に向けJA全農えひめが商標登録した。
 出荷は京阪神が中心。市場が8割、スーパーなどと提携した直販は2割となっている。市場の平均単価は女早生に比べて1~2割ほど高い。松山市や広島市のほか、東京や名古屋市などの大都市へも出荷し、販路拡大を図っている。

(5面・流通)

〈写真:「課題は作業の機械化を進め労力負担を減らすこと」と鈴木さん(右)と合田部長〉
〈写真:伊予美人〉

100721_06.jpg 千葉県の「千葉ヨーク振興協議会」は、規格外のサツマイモや工場で廃棄するパンなどを配合したエコフィードを中ヨークシャー種の肥育豚に給餌し、高品質の豚肉を生産している。農研機構・畜産草地研究所などが確立した技術で、必須アミノ酸のリジン含有量が少ない餌を与えると、良質の脂肪を含む肉が生産できると明らかにした。きめ細かな肉質や濃厚な風味がある豚肉は、ブランド豚「ダイヤモンドポーク」として東京都や千葉県の飲食店やデパートなどで販売する。未利用資源の利用で飼料自給率の向上にもつながる取り組みとして注目されている。
 「おいしい豚肉を生産したいというのが一番の動機です」と、千葉県富里市の養豚農家、堀江光洋〈みつひろ〉さん(68)は話す。千葉ヨーク振興協議会(7農家)のメンバーで、中ヨークシャー種の母豚約20頭とLWD(3元交配雑種)の母豚約60頭を飼養する。中ヨークシャー種には、肥育後期の約60日間、サツマイモやパンを配合したエコフィードを給餌する。
 パンやサツマイモの甘い香りがして、食いつきはいいという。ダイヤモンドポークは、脂肪がきらきらと輝くことから名付けられた。「ブランドは徐々に浸透してきている。生産を続けていきたい」と堀江さんは話す。
 「サツマイモは国産の飼料資源として期待できます」と、畜産草地研究所(茨城県つくば市)の勝俣昌也分子栄養研究チーム長は話す。餌のリジン濃度を通常の70%程度に制限すると、硬くて粘りのある良質な脂肪を含む霜降りの肉になる。規格外のサツマイモを活用し、リジン濃度の抑制とコスト低減が両立できる技術として確立した。今後は、LWDにも利用を進めていく予定だ。

(11面・営農技術)

〈写真:中ヨークシャー種の母豚。1960年代までは日本の飼養頭数の9割を占めていた〉

100721_07.jpg 【広島支局】地域の活性化に向けて、尾道市御調町山岡地区が一歩を踏み出した。同地区では、耕作放棄地を活用し、農業生産法人元気丸と地域住民が共同で、ジャンボニンニクの栽培に取り組んでいる。「地域を元気にしたい」と、山林の整備やウメの栽培も開始した。
 元気丸は、長年管理されず、カヤが背丈以上に伸びた水田を重機で掘り起こし、約3・5ヘクタールの畑へと再生。土作りに2年かかり、昨年ようやく植え付けることができたジャンボニンニクが今年初収穫を迎えている。
 元気丸の上田竜男社長(65)は「耕作放棄地を減らし、元気で活気のある御調町になればうれしい」と話す。
 山岡地区は、13戸の住民全員が60歳以上という高齢化、過疎化が深刻な地域だ。住民の藤井真爾さん(76)は「家の前から田んぼを見渡すと、荒れ果てて気分が落ち込んだ。この地区は山になるんだと思っていました」と振り返る。
 上田社長は「ニンニク栽培が軌道に乗れば加工施設を拡大して地域の方の収入確保につなげたい」と計画する。反当たり収量100キロ確保を目安に、地域だけで栽培できるよう支援は惜しまない。
 荒れていた里山も山菜の収穫が可能になった。藤井さんは「若い人が戻ってきたいと思えるような場所にしていきたい」と意欲を見せる。
〈写真:収穫に汗を流す地域住民と元気丸の従業員たち。今年収穫したニンニクは種にし、来年初出荷の予定〉

100721_08.jpg 【埼玉支局】9品種のプラムを栽培(70アール)する久喜市菖蒲町の関口一さん(74)は、これまでに「関口早生」「紅かやま」「彩の姫」の3品種を登録している。「登録まで約10年かかり、実も最初の4、5年は小さく安定しない。予想もできないものができるので楽しみ」と話す。現在も30本の実生を育成中だ。
 彩の姫は「大石早生」「ソルダム」「太陽」「サンタローザ」「寺田」「月光」の混植園での偶発実生で、99年に品種登録。糖度は15~16度と高く、中には18度のものもあるという。消費者からは「モモみたい」「青いうちから食べられる」と人気がある。
 「プラムは酸っぱいという人に、完熟したものを食べてもらいたい」と関口さん。「いろいろな品種を入れて、売る期間を長くしたい」と話す。
〈写真:慎重に出荷作業を行う関口さんと妻の末子さん(70)〉

100721_09.jpg 【鹿児島支局】ネットメロンやパパイヤメロンなど70アールを栽培する、出水市高尾野町の横峯均(よこみね ひとし)さん(61)は、新品種の開発にも取り組む。地道に交配を繰り返し、今年収穫を迎えた「鹿児島レッド373」は、糖度の高い肉厚のメロンに仕上がっている。
 「自分だけの品種を作りたい」と、赤肉で有名な夕張メロンを目標に、十数系統の品種交配を始めた横峯さん。交配と選抜を繰り返し、373粒の種の中から選抜したのが、「鹿児島レッド373」だ。糖度17.5度、枝張りもコンパクトにできる。「従来の品種より日持ちがよく、果肉のオレンジ色が強い、肉厚のメロンになりました」と出来は上々だ。
 評判が良ければ品種登録を申請する予定という。「鹿児島の赤肉メロンとしてアピールしたい」と横峯さんの期待は大きい。
〈写真:「肉厚なメロンになりました。糖度も高いですよ」と話す横峯さん〉

100721_10.jpg 【鳥取支局】希少な山菜で「貴婦人」と呼ばれる牛尾菜(シオデ)を、三朝町西尾の馬野美鈴さん(58)が両親と共に栽培。収穫期を迎えている。
 シオデはユリ科の植物で、姿が牛の尾に似ていることから牛尾菜という名がついたともいわれる。栄養価が高く、天ぷらやゴマ味噌(みそ)和(あ)えなどで味わう。
 現在、22アールを作付ける。播種後、株が太くなり出荷できるまでに8年かかる。試行錯誤の末、無農薬、有機肥料栽培で県の特別栽培農産物の認証を受けた。地元の農産物直売所のほか大阪や東京にも出荷。独特の風味が好評を得ている。
 美鈴さんは「病害虫と雑草との闘いです。しかし、消費者の皆さんのために、今後も栽培したい」と話している。
〈写真:「病害虫と雑草との闘いです」と美鈴さん〉

100721_11.jpg 【山形支局】村山市大槇の永澤農園では、「さくらんぼサポーター」制度で協力に訪れる消費者と信頼を深めながら、農作業に励んでいる。永澤克恵(かつよし)さん(35)は「消費者の方に農作業に参加してもらうことは、互いの信頼をより深めることになる。顔が見える関係は農業にとって大切」とサポーター制度を歓迎する。
 永澤農園は、克恵さん夫妻と両親でサクランボ約1ヘクタールとリンゴ約2ヘクタールを栽培。6月中旬から7月初旬まで延べ13人のサポーターを受け入れた。
 仙台市から参加した阿部厚子さん(56)と菊池節子さん(46)は毎年、サポーターとして参加する。阿部さんは「サクランボ収穫での高所作業など栽培管理の大変さを知ると農作物のありがたさが分かります」と話す。
 「今年のように天候不順で出荷が遅れるような時でも信頼関係があれば、消費者の方に理解してもらえるのでは」と永澤さん。

〈写真:前列は菊池さん(右)と阿部さん。後列右から平蔵さん(父)、志津子さん(母)、克恵さん、妻の久美子さん〉

100721_12.jpg 【岩手支局】「花巻の土壌に合った栽培方法の確立が一番の苦労でした」と話す花巻市の佐藤秀明さん(56)は、27歳で就農してすぐに大粒種のブドウ「紅伊豆」を導入し、約30年間、栽培技術の研究に取り組んできた。
 4年ほど前から、地元産直向けに「紅伊豆」と「キャンベル」をミックスしたジュースも生産している。昨年11月に東京で開かれたフードショーへの出品をきっかけに、ラベルや商品名を一新。「紅伊豆しぼり」として販売した。このほど、大手カタログ販売のサマーギフトに採用され、全国に向けて岩手の魅力を発信している。これまでのミックスに加えて、紅伊豆100%と2種類セットでの販売だ。
 佐藤さんは、「確実に高品質なものを作り続けることにより、リピーターも増えて消費拡大につながる」と話している。
〈写真:ブドウのジュースを手に佐藤さん〉

100721_13.jpg 【北海道支局】帯広市以平(いたいら)町に住む0歳から90歳まで264人(57世帯)の顔写真と氏名、誕生日を載せたカレンダー「ハッピーバースデー・オブ・イタイラ・ピープル」が完成した。
 カレンダーはJA帯広大正青年部以平支部(北口英樹支部長・部員14人)の前支部長・菊池宗幸さんが中心となり昨年11月から制作し、9年ぶりに改訂版を完成させた。
 掲載しているのは、今年1月29日生まれの赤ちゃんから大正9年生まれの女性まで。前回発行時より移住者、後継者など25人が増えた。
 菊池さんは「家族で毎日眺め、誕生日の人に会ったらおめでとうと言える。楽しい人間関係が生まれ、行事などの参加者も増えた」と話している。
〈写真:力作のカレンダーを手にする北口支部長(左)と菊池さん〉

 ▼最初の疑似患畜確認から3カ月、宮崎県で発生した口蹄疫はようやく終息が見込める状況となってきた。連日のように発表された新たな疑似患畜の発生はなくなり、一時は県の南部を覆っていた移動・搬出制限地域も解除が進んでいる
 ▼当然ながら楽観は禁物だ。農場周辺には、感染力を保ったウイルスがまだ潜んでいると考えた方がよい。イノシシやシカなども口蹄疫に感染する動物だ。直接的な接触はなくても、小動物にウイルスが付着して農場に運び込まれる可能性も否定できないという
 ▼疑似患畜の確認は290例を超え、ワクチン接種による防疫措置を含めると28万頭に及ぶ牛や豚を殺処分する未曾有の事態となった。経営再建に向けた取り組みは、再発防止を大前提に、一つずつ段階を踏んで慎重に進める必要がある
 ▼最近は、韓国や中国など近隣諸国で口蹄疫が繰り返し発生している。感染経路は明らかになっていないが、グローバル化に伴って増える人や資材の移動による持ち込みも疑われている。口蹄疫は宮崎県だけの問題ではない。目に見えない敵への備えは日ごろから十分にしておきたい
 ▼残念に思うのは、農業への理解を広げる役割を担ってきた酪農体験などへの影響だ。現在、九州地域では牧場の体験受け入れをすべて中止している。交流活動に取り組む牧場で組織する地域交流牧場全国連絡会は、事態が落ち着くまでの措置として、体験の受け入れと学校への出前授業などの自粛を決めた
 ▼酪農教育ファーム推進委員会の報告によると、月別の体験者数は学校が夏休みとなる8月が最も多い。子どもたちは、家畜とふれあうのを楽みにしている。衛生対策は、不特定の人を立ち入らせない管理が基本となるが、体験受け入れと両立できる方策はないものか。

 野生動物の生態や行動の正しい知識を習得し、地域ぐるみで農産物被害を防ごう――京都府のNOSAI丹後(丹後地区農業共済組合、太田貴美組合長)は6月29~30日、丹後地域鳥獣被害対策講習会を開催。3カ所を回り、計240人が参加した。農研機構・近畿中国四国農業研究センターから講師を招き、イノシシやシカ、サルの生態や行動からみた効果的な防除対策を講演。その後、圃場で電気柵の正しい設置法を学んだ。参加者からは「集落みんなで鳥獣被害防止に取り組みたい」との声があった。中山間を中心に獣害が深刻化する中で、全国のNOSAI団体では獣害の未然防止対策に力を入れている。

100714_01.jpg 鳥獣被害対策講習会は京都府丹後広域振興局とNOSAI丹後が共催した。30日は京丹後市大宮町の上常吉地域で開き、70人が参加。近畿中国四国農業研究センター鳥獣害研究チームの江口祐輔主任研究員が、イノシシとシカの生態と行動を約1時間講演した。
 イノシシやシカの生態では、柵を飛び越えるよりくぐり抜ける方を選び、茂みから開けた場所に出る際に警戒心からいったん立ち止まると紹介。被害軽減には、〈1〉見通しを良くする〈2〉果実は残さず収穫する〈3〉墓の供えものを持ち帰る――などをポイントに挙げた。
 その後、シカの食害が深刻な地元農家の水田に移動し、倒された電気柵をチェックした。

 地域振興局とNOSAIでは、農家の了承を得て今年新たに40アールの実証圃を設けた。昨年イノシシの食害がひどく米が収穫できなかった圃場で、電気柵を適切に設置・管理し、被害の防止効果を試験する。
 今年は大豆を播種した。栽培管理は農家、獣害対策は地域振興局とNOSAIが行う。野生動物の侵入状況や天候や草による電気柵の電圧変化を調べる予定だ。

100714_02.jpg 29日は、サルの集団被害が続く京丹後市丹後町中野の宇川地域、サル被害が出始めた宮津市の日ヶ谷地域で講習した。
 鳥獣害研究チームの山田彩研究員がサルの生態と行動を講演し、作付けのポイントなどを話した。圃場ではサルの追い払いに有効な「ロケット花火鉄砲」を実演した。考案した京丹後市丹後町の是安農事組合の福島勝組合長は「軽トラックのグローブボックスに置ける大きさ。農作業に携行しやすい」と説明。サルを追いかけて近くで鳴らすと効果的と紹介した。

 NOSAI丹後の管内では、15年ほど前から鳥獣被害が深刻化してきた。講習会は07年から始め、今回が6回目。総代会やホームページなどで告知し、会場となった集落では全戸回覧で参加を呼びかけた。
 行政やJAなどで組織する京都府野生鳥獣被害対策チームにNOSAIからも参画。今年4月には職員6人で鳥獣被害対策チームを立ち上げ、損害防止に結びつけようと懸命だ。
 野村卓男参事は「講師から学んだ知識を基に、職員が農家に電気柵の張り方などをアドバイスできるようにしていきたい」と話す。

(1面)

〈写真:がいしの向きや電線の間隔、雑草対策を参加者に説明する江口主任研究員(30日・上常吉地域)〉
〈写真:ロケット花火鉄砲を撃つ藤原さん(29日・日ヶ谷地域)〉

 農林水産省の食料・農業・農村政策審議会畜産部会(部会長・鈴木宣弘東大大学院教授)は8日、今後の政策の指標とする酪農肉用牛生産の近代化基本方針(酪肉近)をまとめ、山田正彦農相に答申した。飼料用稲や食品残さを活用し、資源循環型で自給飼料基盤に立脚した酪農・肉用牛生産への転換を推進。生産から加工・販売までを取り込んだ6次産業化を進め、経営の所得増大を図る。また、口蹄疫発生を踏まえ、家畜衛生対策の充実・強化と産業動物獣医師の養成・確保を盛り込んだ。ただ、畜産・酪農の所得補償制度は、「導入に向けた検討を行う」とし、実施時期や具体的な方向性は示さなかった。

 酪肉近では、生乳や牛肉の2020年度の生産数量目標を設定した。生乳は、08年度の795万トンから5万トン引き上げ、800万トンとする。
 牛肉は、枝肉換算で現状維持の52万トンとした。
 生産面では、水田や未利用資源を活用する資源循環型の自給飼料基盤確立を打ち出した。価格が変動し、中長期的には需給逼迫(ひっぱく)が懸念される輸入飼料依存から脱却。耕作放棄地の発生防止や多面的機能の発揮など国土保全に寄与する生産に転換する。
 水田では、稲発酵粗飼料(稲WCS)や飼料用米の増産を推進し、専用品種の開発や流通段階のマッチング支援に取り組む。農場副産物や食品残さなど多様な飼料資源の利用を促し、飼料の安定流通を確保する。
 担い手対策は、小規模家族経営を含む意欲ある経営体の育成・確保を図るほか、新規参入を促す。ヘルパー組織、飼料供給の支援組織などの機能強化、情報交流に努め、生産者の労働条件改善や生産コスト削減につなげる。
 口蹄疫発生を踏まえ、家畜衛生対策を強化する。
 悪性伝染病の発生に備え、国と地方公共団体の危機管理体制の再点検に取り組む。農場の消毒など衛生管理の徹底、万が一に備えた埋却場所の確保、地域の実情を踏まえた生活・経営再建の支援に努める。家畜伝染病予防法も含めた法制度の整備にも取り組むとした。
 安全で良質な畜産物の安定供給に、産業動物獣医師が果たす責任が増していると強調。産業動物獣医師の確保対策を強化し、伝染性疾病への的確な対応を可能にする体制を整備する。

(2面・総合)

100714_03.jpg 気温と湿度が高くなるこれからの季節は、食中毒に注意が必要だ。厚生労働省によると昨年度の食中毒患者数は2万249人。家庭での発生も少なくない。社団法人日本食品衛生協会の水谷嘉樹技術参与に食中毒の原因や家庭で簡単にできる予防法について聞いた。

(社)日本食品衛生協会技術参与
     水谷嘉樹さんに聞く

 食中毒の主な原因はサルモネラやノロウイルスなどの細菌やウイルス、フグやキノコなどの自然毒、薬剤などの化学物質に分けられる。日本で発生する食中毒のほとんどが細菌・ウイルスによるものだ。ノロウイルスが中でも最も多く、昨年度は1万874人と患者数の半分以上を占める。カンピロバクターとサルモネラを含め、食中毒の三大要因となっている。
 
◎ノロウイルスには手洗いが有効
 ノロウイルスの感染源は、もともと二枚貝といわれていた。乾燥や薬品にも比較的強く、人から人へ感染する特徴がある。手洗いを励行すると、ノロウイルスの食中毒は減少する傾向があり、手洗いは有効な対策だ。
 食中毒は食品の腐敗に関係なく発生する。

◎加熱して殺し冷やして抑える
 対策の基本は十分加熱して細菌やウイルスを殺すか、冷やして増殖を抑えることだ。
 購入したらできるだけ早く家に持ち帰り、冷蔵庫に保存する。肉や魚は分けて袋に入れ、ほかの食品と一緒にしない。
 調理する際は、食品を75度以上で1分以上は加熱する。刺し身などは買ったその日のうちに食べてしまう。調理前には、殺菌効果のある石けんで手を十分に洗い、きれいなタオルでふく。包丁やまな板も、工程が変わるごとに洗浄する。

(3面・暮らし)

100714_04.jpg 岩手県のNOSAI盛岡(盛岡地域農業共済組合、工藤忠義組合長)では、リンゴ共済の加入者を対象に生育調査を行い、園地に設置した掲示板に調査結果を表示している。生育状況を簡単に確認でき、栽培管理に生かせると農家からは好評だ。

 「リンゴの生育状況を具体的な数字で把握できるのは、ありがたい。今年は低温で開花が遅れ、小玉傾向にある」と、紫波(しわ)町の佐々木広治さん(リンゴ1.7ヘクタール、58歳)は話す。
 同組合は、リンゴ共済加入農家のうち比較的規模の大きな園地を中心に、管内7カ所に掲示板を設置している。掲示板には、品種ごとに測定した横経と、組合が保管する過去約10年間の調査結果から算定した横経の平均値を掲示している。
 普及センターが公表する県内の生育状況などと自分の園地の状況を比較するためには、数値化が不可欠だ。「感覚的にとらえている当年産の生育状況を、過去の平均値と比べて、客観的に理解できるのは助かる」と紫波町の福山昭三(しょうぞう)さん(リンゴ50アール、75歳)は評価する。
 生育調査は、1班当たり1~2人編制の3班で実施。6月ころから11月ころまで、毎月1日と15日に調査を行う。対象は樹齢8~10年くらいの標準的な木で、枝に印を付けて定点観測する。

(5面・NOSAI)

〈写真:見えやすく、邪魔にならない場所に掲示板を設置している〉

100714_05.jpg NOSAI全国(全国農業共済協会、竹中美晴会長)は2、3の両日、全国のNOSAI団体の獣医師職員採用説明会を開いた。
 2日は神奈川県相模原市の麻布大学、3日は東京都武蔵野市の日本獣医生命科学大学で開催。獣医学部(科)の在学生を中心に合計約110人が訪れた。
 両会場とも、全体説明会で家畜共済の仕組みやNOSAI獣医師の就業状況などを説明。若手獣医師の体験発表などを行った後、16道県のNOSAI連合会等が個別ブースで仕事内容や採用条件などを詳しく説明した。
 現在、全国のNOSAI獣医師は約1900人。産業動物の診療の約7割をNOSAIが担っている。ここ数年定年退職を迎える獣医師は増加する一方、産業動物の診療に就く獣医師は減少している。NOSAI全国は、2007年度から毎年採用説明会を開催、家畜共済制度を支える獣医師の確保に努めている。
 説明会では、NOSAI全国の徳井和久事務局長が「NOSAIの獣医師は、病気の治療や予防を行うことで、国民に安全・安心な食料を提供する重要な仕事を担っている。宮崎県で起こった口蹄疫(こうていえき)では、延べ1200人を超えるNOSAIの獣医師が防疫活動に参加した。現役の獣医師の話を聞いて、NOSAIへの就職を真剣に考えてもらいたい」とあいさつした。
 参加した学生は、「農家との距離が近く、魅力を感じる。女性でも一生働ける環境なのか、話を聞きにきた」(麻布大学6年、女性)、「家畜が身近にいない環境で育った。家畜を治療し、農家の生活にも役立つ仕事はやりがいがあると思う。NOSAIも就職先の一つとして考えている」(日本大学4年、女性)などと話していた。

(5面・NOSAI)

〈写真:獣医師の説明に聞き入る参加者たち〉

100714_06.jpg 水稲の有機栽培に取り組む山形県三川町の菅原孝明さん(58)は、複数の技術を組み合わせ雑草抑制と害虫防除を実践している。水田の7割でアイガモ農法(マガモ)を導入。イネミズゾウムシの発生が少ない圃場は紙マルチ栽培を選択し使い分けている。有機栽培米や減農薬・無化学肥料で栽培した米は、地元の稲作農家中心に組織した農事組合法人「庄内協同ファーム」を通して有利販売につなげている。

 菅原さんは水稲3・8ヘクタールと大麦、青ジソを栽培する。水稲は有機栽培(2・6ヘクタール)と農薬を慣行の7割削減し無化学肥料栽培を行う特別栽培米だ。品種は「ひとめぼれ」「つや姫」「でわのもち」を作付ける。
 アイガモ農法ではマガモを使っている。
 菅原さんは「ひなの調達や病気などを考えると、アイガモ農法に特化するのは危険」と説明する。マガモを水田に放していても、見回りや給餌など労力的な負担が伴う。
 前作がアイガモ農法でイネミズゾウムシの発生が少なくなった圃場では、紙マルチ栽培を行う。田植機は、田面に紙を敷くアタッチメントを装着し、その上に移植していく。
 県農業総合研究センター水田農業試験場では、「菅原さんが実践してきた有機農業への取り組みが、地域的な広がりをみせている。県でも先進農家との協働により、環境保全型農業の推進を図っていく」と話している。

(11面・営農技術)

〈写真:「畦畔波板シートを設置するとイネミズゾウムシの被害が少ない」と話す菅原さん〉

100714_07.jpg 九州の中南部を中心に、6月下旬から7月上旬にかけて局所的に激しい大雨が降り、各地で農地、農作物などに甚大な被害が発生した。中でも鹿児島県霧島市では、3日に1時間雨量が100ミリを超える猛烈な雨を観測した。
 県内の7日現在の被害状況は、土砂の流入による農地の埋没が220個所、24ヘクタールで発生、農業用施設の損壊は150個所で発生している。
 宮崎県内では、水稲の冠水、埋没、流失などの被害が150ヘクタール、園芸施設は倒壊や施設内農作物の被害が21棟で発生している(8日現在)。熊本県内では、水稲の流失・枯死が60ヘクタール、園芸施設では浸水・土砂崩れなどによる施設内農作物の被害が14棟で発生している(同)。
 被害直後から各地のNOSAIでは、被災農家に適切な被害申告を呼び掛けるとともに、管内の見回り調査を実施。被災農家への共済金早期支払いに向けて、適正迅速な損害評価に全力を挙げている。

(2面・総合)

〈写真:土砂流入で水田が埋没した(鹿児島県曽於市、8日)〉

100714_08.jpg 【滋賀支局】獣害軽減のために、ヤギの放牧と竹林伐採に取り組んでいる東近江市愛東外町では、本年度、新たにモンキードッグを導入した。3事業を併せて行うことで、より効果的な獣害対策につなげている。
 野生獣の隠れ場所を減らそうと、愛東外町農地管理組合では、2年前、永源寺高野町自治会と共同で田畑周辺に生い茂る竹林など5カ所(計7ヘクタール)を伐採。柵を張り巡らせてヤギ3頭を放牧し、下草が育たないようにした。見晴らしが良くなったことで、サルの年間出没日数は約200日(2007年度)から30日まで減ったという。
 本年度、さらなる効果を狙って導入したのが、モンキードッグだ。野生獣を見た住民から、モンキードッグの飼い主へ連絡が入れば出動するというもので、同町の植田義雄さんの「チョコ」と青山滋さんの「ランボー」の犬2匹がその任務を担っている。動物を追う訓練などは、県内の警察犬訓練所で3カ月間トレーニングした。
 植田茂太郎組合長(69)は、「獣害の原因は里山の荒廃にある。動物に『人間は恐ろしい』と思わせることが大事。今後も地域ぐるみで取り組んでいきたい」と、地域への協力を呼びかけている。

〈写真:「犬のチョコには、これからも期待している」と植田義雄さん=右。左は植田組合長〉

100714_09.jpg 【青森支局】下北地域で生産され、高級カボチャとして評価が高い「一球入魂かぼちゃ」(品種=西洋系の「ダークホース」)。今年1月、「一球入魂」が商標登録され、さらなるブランド化に期待がかかる。
 「JA十和田おいらせむつ支店一球入魂かぼちゃ生産部会」の一員として栽培に取り組む、むつ市金谷沢の品木幸一郎さん(79歳、一球入魂かぼちゃ20アール、水稲、ソバ、牧草)は、「1株に1個だけ成らせて甘さを凝縮させている。今年も自信を持って作り、消費者に届けたい」と話す。

〈写真:「今年も、おいしい一球入魂かぼちゃを届けたい」と受粉の状況を確認しながら話す品木さん〉

100714_10.jpg 【新潟支局】品質の良い米作りに力を注ぐ、柏崎市高柳町門出の鈴木貴良さん(45歳、「コシヒカリ」5ヘクタール、トマト)は、今では少なくなった「成苗田植え」を続けている。
 「稚苗に比べ、早く刈り取りができ、精粒歩合が高い」と、20年前から実施。門出地区は標高150メートルの山間地で小区画の水田や急勾配(こうばい)の棚田が多く、県内有数の豪雪地だ。厳しい条件の中、「農業を一つの産業として成り立たせること」を目標にしている。
 「成苗は、10アール当たり25枚ほどの苗箱を使い、稚苗よりも多くの苗箱が必要。箱数を少なくする流れに逆行するが、病害虫がつきにくいほか、天候の変動に強く、品質が良い」と鈴木さんは話す。

〈写真:成苗田植えをする鈴木さん。精粒歩合が高いのが利点だ〉

100714_11.jpg 【長崎支局】対馬の日本在来馬「対州馬(たいしゅうば)」の保存と活用に、対馬市が取り組んでいる。対州馬は農家で運搬用に飼われていたが、農業者の減少や機械化などで、今年の対馬での総馬数はわずか33頭だ(JA対馬調べ)。
 同市上県町では2002年度に、昔行っていた「初午祭」(10月第3日曜日)を復活させ、メーン行事として対州馬の草競馬を実施している。
 祭り復活後には、厩舎(きゅうしゃ)、参道、馬場、走路を整備し、乗馬体験施設「目保呂ダム馬事公園」をオープン。調教師として働く篠原由美恵さん(33)は「各種イベントで対州馬にふれてもらい、対州馬の良さを、まず対馬の方に知ってもらいたい」と話す。

〈写真:対州馬と一緒に「もっと多くの方に知ってもらいたい」と篠原さん〉

100714_12.jpg 【島根支局】「特産の『ピオーネ』が年中楽しめ、ほかに無いような加工品はできないものか」と、観光農園を経営する浜田市金城町の有限会社KKNでは昨年から、ピオーネをセミドライフルーツに加工している。
 セミドライ加工のピオーネは、深い光沢がありジューシーで、ピオーネ本来の味がしっかり残っているのが特長。
 専用乾燥機の開発を手掛けた島根県農業技術センター加工研究部加工グループの生田千枝子科長は「粒が軸に着いたままの状態で乾燥させるので、食べやすく、高級感もあります」と話す。

〈写真:ピオーネのセミドライフルーツ〉

100714_13.jpg 【宮城支局】自動販売機を使った、野菜の24時間販売が好評を得ている。設置したのは仙台市太白区の工藤敏夫さん(60)で、「夜も野菜を販売してほしい」という消費者の声がきっかけ。購入時間帯は、早朝は散歩の女性、夜は通勤の帰宅者とさまざまだ。
 工藤さんは1984年から、トラックでの野菜移動販売を開始。95年からは、40アールで栽培する野菜すべてを自販機で販売している。
 ワンコインの手軽さから、いつもほぼ完売で、直売の秘けつについて、「鮮度が落ちた野菜はすぐに回収すること」と工藤さん。「おいしかったと言われるのがうれしい」と話している。

〈写真:自販機に野菜を補充する工藤さん。消費者からは「安くて便利で、安心」と好評だ〉

100714_14.jpg 【岩手支局】舞川機能性果樹・山菜栽培研究会(一関市、伊藤一会長、会員16人)の佐藤二郎さん(60)は2年前から、「ルバーブ」の栽培に取り組んでいる。
 ルバーブは、シベリア原産のタデ科の植物。北海道や長野県が主産地で、フキのように葉柄を食べる。今年は1.5アールで栽培し、約150キロの収穫が目標だ。
 ビタミンCやカリウムを含み、繊維質は煮込むと溶けてなくなるのが特徴。現在、市内のアイスクリーム店で、アイスの材料として利用されている。
 佐藤さんは「ルバーブの良さを地域の人たちにも紹介して栽培面積を増やし、加工品などにも挑戦したい」と話す。

〈写真:ルバーブ畑で佐藤さん。葉柄を食べる〉

 初物のトウモロコシをいただいた。食べ物の季節感が薄れていると言われる中で、トウモロコシは夏のイメージが強い。夏休みには、トウモロコシか切り分けたスイカが、毎日のように食卓にのぼった
 ▼トウモロコシは、人類が一番恩恵を受けている作物だ。食用油やでん粉(コーンスターチ)、甘味料の原料となり、家畜の餌やバイオ燃料の原料用にも使われるなど用途が広い。世界の生産量は8億トンを超えている
 ▼2年前には燃料需要の急増で国際相場が高騰し、需給は混乱した。その後は消費を上回る生産量が確保され、国際相場も落ち着きを取り戻している。米農務省による直近の需給報告では、今年は最大の生産・輸出国である米国の作付面積が史上最高となり、世界の生産量も史上最高になる見込み。期末在庫率は17.7%で、ほぼ安全圏とされる水準にある
 ▼ドキュメンタリー映画「キング・コーン」は、米国の青年二人がアイオワ州に1エーカー(約40アール)の土地を借り、デントコーンを作りながら生産と消費の実態を探った。生産は政府の補助金なしでは採算が合わず、大規模圃場の効率管理には除草剤耐性の遺伝子組み換え品種が不可欠だ。離農者の土地を集めて規模拡大は進んだが、住人が減って町は往時の活気を失っている
 ▼食の問題は深刻だ。トウモロコシから作った甘味料が大量に食品に使われ、肥満や糖尿病が増える状況を招いたと指摘した。しかも甘味料の製造技術は日本が開発した。肥料の余剰分が河川からメキシコ湾に流れ、汚染の要因とされている環境問題にも触れた
 ▼数字をみれば需給は安定していると映る。しかし実際には、米国のトウモロコシ生産基盤は不安定で、輸入のほとんどを米国に依存する日本は、何かのきっかけで歯車が狂えば影響を免れない。最近経験したはずだが、依存する状況は変わっていない。

 NOSAI団体は、人工衛星のリモートセンシング(宇宙からの地球観測)技術を利用した水稲共済の新たな損害評価方法の開発を進めている。将来的には検見調査に換え、導入することを想定している。農林水産省の補助事業「衛星画像を活用した損害評価方法の確立事業」を受け、2008~13年度の6年計画で取り組む。3年目となる本年度は、35道府県で実施する。11年度には実施県をさらに拡大し、北海道と宮城県は本格導入に向けた試行運用を開始する予定。14年度からの全国的な本格実施を目指している。
 
 リモートセンシングによる水稲損害評価は、収穫直前の損害評価適期の衛星画像を取得。被害圃場の画像を解析(緑色、赤色、近赤外の光の波長データを抽出)して「収量推計式」に当てはめ、共済金の算定に必要な10アール当たり収穫量(単収)を推計する。
 稲が実って収量の高い圃場やイモチ病などのまん延で穂が少なく茎葉が傷んだ圃場など、収穫期の水田はそれぞれ状態の違いに応じ光の波長が異なっており、画像を解析すると単収の推計が可能となる。本事業は、過去を含む被害データを集めて波長データと収量との関連(収量推計式)を明らかにして、収量推計の精度を確保し、損害評価方法として確立するのがねらいだ。
 衛星画像は数十キロ四方の広域に分布する水田を一度に観察できる。衛星画像中の被害圃場の位置は、電子化された耕地図情報とシステム上で重ね合わせて特定する。
100707_01.jpg 「衛星画像を活用した損害評価方法の確立事業」は、09年度に岩手、秋田、山形など29府県が加わった。10年度は新たに茨城など4県が検討を始めている。
 08年度から3年間は、衛星画像データと水稲圃場の実測調査データを集積している。冷害やイモチ病、風水害など災害種類ごとに、毎年50筆以上を目標にデータを収集した。被害程度の甚大な圃場から軽微な圃場まで幅広いデータを取ることが、精度の高い収量推計式作成のポイントになる。
 並行して、過去の衛星画像データと実測調査データとを照合してデータの補完を行い、収量推計式のモデルを見直すなど精度の向上を図る。北海道と宮城県で来年度に予定する試行段階では、農家の被害申告から、衛星画像による収量推計、共済金の算定まで一連の流れをテストする。
 衛星画像に基づく損害評価方法は、損害評価員の確保が難しくなる中で、特に大規模な災害において、円滑かつ迅速な損害評価を確保するために重要であり、その着実な研究・開発と本格実施が期待される。

(1面)

 農林水産省の食料・農業・農村政策審議会果樹部会は6月28日、新たな果樹農業振興基本方針を山田正彦農相に答申した。食の多様化や簡便化志向の強まりに対応し、6次産業化の視点も踏まえ、川上(作り手)から川下(消費者への提供者)まで幅広い支援の必要性を強調。優良品目・品種への転換推進に向け、果樹農家に対し改植に伴う未収益期間の支援手法の検討を提起した。果樹農家の経営安定では、気象災害による減収を補てんする果樹共済の加入促進を明記。あわせて新たな農業所得の確保対策検討を打ち出したが、具体的な方向には踏み込まなかった。
 
 果樹農業は、高齢化の進展や後継者不足、消費不況に伴う販売不振など厳しい現状にある。新たな基本方針では、果樹農業政策について、永年性作物である果樹の特性に着目した支援策と、川上から川下まで含めた多様な客体に対して幅広い支援策を講じると明記。「果実の自給率の向上を図る」と強調した。
 消費が多様化する中で、消費者が求める食べやすさやおいしさ、機能性成分などに着目した新品種の育成・導入の重要性を指摘。消費者ニーズに即した生産供給体制の整備に向け、優良品目・品種への改植推進を課題とした。
 改植に伴う10年程度の未収益期間が品種転換に踏みきれない理由であり、新規就農が進まない要因と指摘。「支援手法の方向性を検討する」とした。
 経営安定対策は、果樹共済の加入促進を位置付けた。特に災害による果実の減収・品質低下を伴う生産金額の減少を補てんする「災害収入共済方式の推進」を掲げた。果樹共済の加入率が低位に推移しているため、関連制度全体を見直す中で、より農業者の経営安定に資する制度の方向を検討するとした。

(2面・総合)

 少しでも牛乳の消費を増やしたい――米と牛乳を使った「米粉牛乳麺(めん)」の開発に、栃木県那須塩原市の酪農家、人見(ひとみ)みゐ子さん(61)が成功した。現在は経営する酪農体験施設で観光客などに販売。もちもちした食感と牛乳の香りが好評だ。牛乳・乳製品の展示会「ミルクツアーニッポン2010」では人気商品として選ばれた。ゆくゆくは、めんの販売を経営の柱の一つに育てたいと考えている。
 
100707_02.jpg 米粉牛乳麺は、牛乳と水を8対2の割合で使用する。那須町のリゾートホテル「エピナール那須」では、コース料理の食材として利用。鮎ヶ瀬(あゆがせ)和食料理長は「米粉めん独特の食感と、ほのかな牛乳の香りがおいしいと評判です。これからも使っていきたい」と話す。
 米粉牛乳麺は、人見さんが経営する酪農体験施設「体験館トライ・トライ・トライ」での販売が中心で、1カ月に約300食を売る。ゆでめん、冷麺(れいめん)、焼きそば風、鍋物の具材として――など、食べ方はいろいろだ。近隣の別荘に滞在する観光客などが購入し、「別荘暮らしで、お米を炊かなくても、手軽に食べられるのは便利」と喜ばれている。今年6月には、農林水産省職員生活協同組合の協力を得て、農林水産省(東京都千代田区)の「消費者の部屋」で試食会を行い、PRした。


 牛乳の消費拡大に貢献したいと考えたのは、計画生産で搾りたての生乳を廃棄する、つらい経験から。2005年に雑誌で米粉需要拡大の記事を読んだのがきっかけで、生産調整がされている米と牛乳から、おいしいめんを作ろうと開発に挑戦した。
 米粉の粒子が粗いと、めんがつながらない。冷たい水でもめんは切れてしまうなど、試行錯誤を繰り返し、開発には4年かかった。「長年の経験で、湿度、温度などによって配合を毎日微妙に変えています」と話す。
(3面・暮らし)

写真:製麺所の前に立つみゐ子さん。「製めんのコツは口では伝えられません」

100707_03.jpg 温州ミカン共済の引受面積が全国一の愛媛県。NOSAIの組合等では「農業経営に欠かせない」と共済委員(NOSAI部長)が果樹共済の加入推進に力を入れている。温州ミカンの産地を抱えるNOSAI松山(松山農業共済組合、田中良組合長)とNOSAI八幡浜地方(八幡浜地方農業共済組合、石崎照夫組合長)を訪ね、ベテランと新人の共済委員二人を取材した。
 
 「1991年の台風19号の時はほとんど改植した。共済金は経営の立て直しに大変助かった」と話すのは、松山市神浦(こうのうら)地区で共済委員を長く務める森田小三さん(62)。神浦は高浜港からフェリーで50分ほどかかる中島にある。
 神浦地区の果樹共済の戸数加入率は8割を超える。高齢農家や小規模農家を除きほぼ全戸が加入。森田さんは、定年を機に就農した未加入農家などへ戸別訪問し、加入を呼びかける。「台風はいつくるか分からないし、塩害も心配。これまでの経験から加入するよう勧めている」
 森田さんは「中島地区果樹共済推進連絡協議会」の会長を務める。同協議会は30年ほど前に旧中島町の農家が立ち上げた。周辺5島17地区の共済委員で構成され、年間に5回ほど合同で会議を開く。
100707_04.jpg NOSAI八幡浜地方の組合員で、伊方町川永田地区の共済委員と損害評価員を4月から務める菊池俊光さん(34)。伊方共同選果場の川永田支部青果副支部長を務め、地域のかんきつ農業を守る若き担い手だ。
 川永田地区では、共同選果場の利用者を中心に果樹共済の加入を進めている。共済委員の初仕事は果樹共済の加入申込書の配布と取りまとめだった。任期は2年。「もしもの時の備えとして、果樹共済はなくてはならない制度」と菊池さん。今後のNOSAIを支える新しい力として期待されている。

(5面・NOSAI)

写真上:「日本海側を台風が通ると、とても大きい被害を受ける」と森田さん
写真右:「産地を守っていきたい」という菊池さん

 香川県高松市のイチゴ農家・川西裕幸さん(39)は、農家と飲食・加工業者、消費者が互いに協力して商品開発し、販売に結びつける「ファームスイーツ・プロジェクト」を立ち上げた。昨年11月に活動を開始した。農家のメリットは販売先の開拓、飲食・加工業者には商品開発と顧客の獲得、消費者にはおいしいものに出会える機会と地域を応援する楽しみが持てる。現在、農家10人、飲食・加工業者10人、消費者100人が登録し、毎月、商品企画ミーティングを行う。先日は、イチゴの米粉パンが試験販売にこぎ着けた。川西さんは「長く続く仕組みをつくり、地域を盛り上げたい」と話している。
 
100707_05.jpg プロジェクトでは先行して、川西さんのイチゴを使ったマシュマロやキャラメルを市内の洋菓子店の協力で商品化した。企画ミーティングを重ねて誕生した商品の第1号は、イチゴの米粉パンだ。
 現在進行中の商品には、トマト農家が作る調理向きの品種「シシリアンルージュ」を使ったドレッシングもある。
 「地域を笑顔にするスイーツで、農家と消費者の顔が見える関係をつくりたい」と、川西さんが提案するファームスイーツ・プロジェクトは次のような仕組み。
 果物など生産物を加工販売に結び付けたい農家に、新商品開発に意欲的なレストランのシェフや洋菓子店のパティシエ、食品加工業者などを紹介する。互いに興味を持ったら、両者で商品開発に向けて話を進めていく。
 農家は農産物を提供し、シェフやパティシエは知識や技術、会場を提供する。サポーター登録した消費者が試食してアンケートに意見を述べ、商品づくりに生かす。毎月開く企画ミーティングでは、毎回5品ぐらいが試される。
 商品は基本的に、開発者のシェフやパティシエ、農家が販売する。インターネット販売は、農産物販売を支援する別組織の「ファームプロジェクト」が協力する予定だ。

(8面・流通)

写真:夏期の商品はイチゴのかき氷やソフトクリームなどがメーン。人気のキャラメルやコンポートなどを手にした川西さん(中央)と従業員の大西知予子さん(左)、中川志保さん(右)

 豆類の栽培技術向上などを目的とした2009年度の「第38回全国豆類経営改善共励会」(主催=JA全中、日本豆類基金協会ほか)の表彰式が6月23日、東京都中央区で開かれ、全国142点の中から11点が表彰された。大豆で、農林水産大臣賞を受賞した農家・集団の経営概況などを紹介する。

▽大豆農家の部 富山県入善町 田中勝彦さん
 地域に水稲―大麦―大豆の2年3作体系を定着させた。経営の基幹部門として大豆「エンレイ」を30.8ヘクタールに作付ける。播種から収穫までの機械作業を合理化し、大豆の10アール当たり労働時間は4.3時間を実現した。
 降雨が多く条件の悪い地域で、晴れた日に播種作業を完了させるために、畦〈うね〉立て同時施肥播種機は3連から4連に改良した。
 土づくりは、ケイ酸石灰を10アール当たり100キロ以上施用して酸度矯正する。有機物は発酵鶏ふんを100キロ以上を投入し、前作の稲わら・麦桿は全量をすき込む。昨年の収量は10アール当たり253キロ(県平均169キロ)を達成した。
 
▽大豆農家の部 福岡県八女市 角賢典さん
 大豆「フクユタカ」を3.5ヘクタールに作付け、10アール当たり収量は294キロ(県平均181キロ)を達成。上位等級比率89%、労働時間は4.2時間となっている。
 播種は、条間65センチの2粒点播で、株間は20センチが中心だ。早播きは広く遅播きは狭くと、時期に合わせて最適な栽植密度に調整する。播種深度は、土壌水分や気象予測に基づき微調整する。
 耕起は、播種部分を浅くする改良を加えた部分浅耕1工程としている。排水対策を徹底し、多雨の時期でも適期播種で乗り切った。
 防除には、フェロモントラップによるハスモンヨトウ発生予察を活用し、適期防除を実践する。
 
▽大豆集団の部 京都府与謝野町 有限会社あっぷるふぁーむ
 受託・協業により12.4ヘクタールを作付ける。10アール当たり収量は283キロ(府平均113キロ)を達成し、上位等級比率は81%、労働時間は3.2時間を実現する。
 品種は、莢〈さや〉の着く位置が高くて機械化収穫に向き、豆腐加工の適性があって紫斑病に強い「サチユタカ」。
 圃場内明きょと不耕起狭畦〈きょうけい〉密植栽培を導入し、団地化を推進する。適期播種が容易になり、中耕・培土を省いて作業効率を向上させた。青空教室や広報活動に取り組み、農地所有者に排水対策の徹底を促している。
 収穫は、エアーグレイン機能を持ったコンバインを活用して、損傷や汚粒のない排出と作業の省力化を目指す。
 
▽大豆集団の部 佐賀県白石町 坂田生産組合
 昨年産大豆から作付面積の約9割で不耕起播種技術を導入した。「むらゆたか」を16.4ヘクタールに作付ける。昨年は、7月下旬の記録的豪雨にもかかわらず10アール当たり収量は331キロ(県平均238キロ)を達成、上位等級比率は95%で1等が91%を占めた。
 不耕起播種により雨期でも省力化と適期播種が可能になった。排水対策を徹底し、順調な生育を確保する。土づくりに力を入れ、稲わらや麦わらなどを施用。播種前には土壌分析を行い、石灰を散布して酸度を矯正する。
 米・麦・大豆とタマネギのブロックローテーションにより作業の効率化を図る。組合の土地利用率は約200%となっている。

(9面・営農技術)

 農林水産省は6月28日、中山間地域等直接支払制度に関する第三者委員会を開き、第2期対策最終年度に当たる2009年度の実施状況を報告した。交付総額は517億7200万円で、市町村数は前年比20(1.9%)減の1008となった。協定締結数は8増の2万8765(集落協定2万8309、個別協定456)だった。
 交付面積は687ヘクタール(0.1%)減の66万3775ヘクタール。水路や農道の管理など農業生産活動を対象に体制整備単価の8割を交付する「基礎単価」の対象面積は226ヘクタール増の13万6853ヘクタールとなった。一方、農業生産活動に加えて機械・農作業の共同化や担い手への農地集積に向けた体制整備を行う「体制整備単価」の対象面積は、913ヘクタール減の52万6922ヘクタールだった。担い手に農地利用集積を行う規模拡大加算の対象面積は236ヘクタール(9.2%)増の2800ヘクタール。法人設立加算(農業生産法人)は324ヘクタール(11.9%)減の2393ヘクタールとなった。

(2面・総合)

100707_06.jpg 【山口支局】長門市油谷の愛里巣(あいりす)グループ(内田和子代表=68歳、メンバー3人)では、「楊貴妃びわ」を使った「楊貴妃びわゼリー」を作っている。
 「形が悪くて出荷できないビワを利用して、1993年からゼリーを作り、各種イベントで販売しているんですよ」とメンバーの寺岡ツネヨさん(71)は話す。
 ビワの出荷は5月から6月。その期間、週に1回、3人の都合の良い日に、出荷できなかったビワを持ち寄るという。種を出して皮をむき、水と砂糖で煮込んで砂糖漬けを作り、瓶に詰めて保存する。ゼリーは、イベントの前日にだけ作るという。
 調理師の免許を持つ内田代表は「ゼリーは、夏かんの果汁、生のビワをブランデーに漬けて、ビワを取り除いた後のブランデーとゼリーの元を調合して作ります。この味にするのに、3年から5年試行錯誤しました」と話す。
 メンバーの村上富美恵さん(75)は「保存料は全く使用せず作っています。子どもから大人まで楽しめる味ですよ」と話す。
 
写真:「楊貴妃びわゼリー」を手に右から内田代表、寺岡さん、村上さん

100707_07.jpg 【埼玉支局】特産品作りを中心に、遊休農地の解消(約1ヘクタールを整備)にも取り組む、ときがわ町の「互笑会(ごしょうかい)」(村田憲一郎会長=70歳、会員8人)が、アピオスを使った新商品「アピオスジェラート」を開発。4月下旬にふれあいの里たまがわで販売された。
 アピオスは、メンバーが開拓した遊休農地(約20アール)を利用し、08年から栽培。4月に種芋を植え付け、11月ころに収穫期を迎える。
 このジェラートは、東松山農林振興センターの協力を得て、深谷市のジェラート工房「福島牧場」で製造されたもの。同牧場の搾りたて生乳を使用している。アピオスの果肉を入れ、風味と食感が楽しめるように工夫した。村田会長は「完成に至るまでに、ジェラートに最適なアピオスの調理法、配合割合を見つけるため、試行錯誤を繰り返しました」と苦労を話す。
 
写真:「生産量を増やしていきたい」と話す村田会長とメンバー

100707_08.jpg 【鳥取支局】タケノコを使ったキムチ風味の漬物を、江府町俣野のシイタケ農家・中尾和仁さん(55)が開発。「全国的に竹林が荒れて森を侵食している。タケノコを有効利用できないかと考えて試作した」と話す。
 長期保存の効く、乾燥させた干しタケノコは「干しの王子様」と名付け昨年から販売。「鳥取県のグリーン商品」(循環資源を原材料として県内で製造・加工される商品)に認定された。この干しタケノコを特製のたれで漬け込み、スパイスの効いた味の「キムタケ1号」、県ふるさと認証食品に認定されたみそ風味の「キムタケ2号」も販売している。
 
写真:商品を手に中尾さん。左が干しタケノコ、右は「キムタケ1号」と「キムタケ2号」

100707_09.jpg 【岩手支局】岩手大学(盛岡市、藤井克己学長)農学部の星野次汪(ほしのつぐひろ)教授のグループが、さきごろ、粘りがあって食べやすいヒエの新品種を開発。現在、「ゆめさきよ」として品種登録を出願している。
 一般的なヒエに比べて、アミロース含量が低い「ノゲヒエ」を品種改良。ノゲヒエと同じようにアミロース含量が低いため、粘りがあって食べやすいのが特徴だ。
 出穂期は、ノゲヒエより1週間ほど早く、岩手県中央では9月上旬、岩手県北部では9月中旬に収穫できる。また、作業しやすいように、背丈を低く改良したことでノゲヒエより約30センチ短く、機械での刈り取りが可能だ。
 早生で、食味がよく、バインダーやコンバインで収穫できる背丈なので、「県内外で広く栽培される可能性があることから品種登録を行った」と話す星野教授。
 背丈が短くなったことで穂の長さも短くなり、やや低単収だが、密集して植えるなど、栽培の仕方によって収量は見込めるという。
 
写真:左が「ノゲヒエ」、右が「ゆめさきよ」

100707_10.jpg100707_11.jpg 【秋田支局】ブドウの管理作業の労力軽減を目指して、湯沢市駒形の高橋武悦(たかはしえつたけ)さん(57)は、独自に作業台を考案した。
 作業台は、キャスター付きの四角の鉄枠にコンパネを乗せたもの。特徴は(1)作業高は40センチと85センチの二つに設定可能(2)車輪は4個装着。そのため園地内の移動が容易(3)作業台の大きさは1.8メートル×2.2メートルで、大人2人でもゆったり作業できる(4)材料はホームセンターなどで簡単に用意できるものを使用(5)材料費などを含め7万5千円と低コストで作れる――など。
 「部品はすべてホームセンターで調達した。鉄工所に勤めていた経験を生かし、鉄枠部分は鉄工所を借りて自分で溶接して作った。塗装はさび止めを含めて3回している」と説明する高橋さん。「4、5日の期間で完成できる」という。
 
写真:作業高は40センチと85センチで、立っても座っても作業できる

100707_12.jpg 【高知支局】400年の歴史を誇る仁淀川町長者地区の石積みの棚田を守ろうと、2003年4月に「だんだんくらぶ」(中島道雄会長=60歳)が結成され、活動をしている。
 荒れた石垣の整備や除草、ハナショウブの植栽を行い、6月には「第5回花しょうぶまつり」が開かれにぎわった。8月には「七夕まつり」、12月には「長者DEキャンドルナイト」が開催される。
 会員は、地元の農家(82人)をはじめ、高知大学、高知工科大学、東京大学の学生など約100人。事務局の野々宮輝雄さん(69)は、「まだ山も元気です。星が輝く『だんだんの里』にお越しください。とびきりの笑顔で迎えます」と話す。
 
写真:棚田で野々宮さん

100707_13.jpg 【福島支局】福島市下野寺でナシ2ヘクタール、水稲40アールを作付ける佐藤吉則さん(57)、とも子さん(55)夫妻は、ナシ畑の周辺に約380種類・600本以上のバラを植えて、昨年から開放している。
 とも子さんの趣味で、10本ほどのバラを15年前に植え始め、夫妻で年々規模を広げてきた。今では「梨(なし)園のローズロードとローズガーデン」として、福島市内外から訪れる人を楽しませている。
 「ナシも同じバラ科なので、消毒も肥料も同じ物を使用できるため、ナシ畑での栽培はしやすいですよ」と佐藤さん。
 梨園のローズロードとローズガーデンは、「福島市花のまちチャレンジガーデン」に今年、認定された。佐藤さんは「これからも、理想のフラワーガーデンの完成を目指して、まだまだ頑張ります」と抱負を話している。
 
写真:昨年から開放している

 ▼試食付きの給食食育フォーラムが東京都武蔵野市で開かれ、市立小学校に通うわが家の子どもがどんな給食を食べているか興味津々で参加した。七分づきご飯にメカジキの空揚げ、地場野菜のいため物、かき玉汁、朝どりのトウモロコシが並んだ。塩分控え目でやや薄味と感じたが、おいしくいただいた。
 ▼陶磁器製の食器類も見栄えがいい。小学生のころ、食器はアルミ製で、先割れスプーンだった。まだ米飯給食ではなく、コッペパンを食べながら、みんなでカチャカチャと音をたて、おかずをかき込んでいたなあと思い出す。
 ▼フォーラムには試食用に野菜を供給した二人の農家も参加。「畑のまわりをお客さんに囲まれ、食べる人と互いに顔が分かる。学校給食はその延長と考えている」と発言した。鮮度が大切なトウモロコシの収穫は、前日ではなく、納入に間に合うよう早起きしていると紹介された。
 ▼武蔵野市は、市内や近隣の農家から食材を仕入れる地産地消の学校給食に取り組み、露地野菜主体に品目数の2割をまかなう。1校でも500食以上が必要で、野菜は規格外品も受け入れ、機械で対応できない食材の下処理は手作業で行う。「形が不ぞろいの野菜を販売できるのはありがたい」と農家も評価した。
 ▼7万世帯が暮らす武蔵野市で、農家数は82戸、うち専業は29戸に過ぎない。農地面積も34ヘクタールまで減っている。地産地消の学校給食継続には、供給農家の数を増やし、農地を維持する支援の充実が課題となる。
 ▼都市農業は、農産物の供給だけでなく、農業体験や生消交流の場、緑地空間の提供など多様な役割が期待されている。しかし実際には、無理解な人も多く、道路際に空き缶などが捨てられる光景も目につく。子どもたちが都市農業のよき応援団になれば、農家の意欲を後押しする力になるだろう。

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