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今週のヘッドライン: 2010年8月アーカイブ

100831_01.gif 農林水産省は24日、来年度から本格実施する戸別所得補償制度の骨子案を明らかにした。米に加え、麦、大豆など6作物を対象に畑作物の所得補償を導入する。さらに地域裁量で水田を活用した地域特産物の振興などを支援できる「産地資金」を創設。不耕作地への作付けを促す加算措置なども設ける。中山間地域等直接支払制度や農地・水・環境保全向上対策は拡充し、戸別所得補償制度を補完する関連対策に位置づけた。関連対策を含めた予算総額は9100億円。民主党の議論も踏まえ、31日の来年度政府予算概算要求に盛り込む。ただ、自民党などは制度導入に反対しており、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」の中、予算や法案の審議は難航する見通しだ。農家の経営安定や国内生産力を向上させる農政の確立に向け、政府・与党の対応が問われている。
 戸別所得補償制度は、米、麦、大豆、テンサイ、でん粉原料用バレイショ、ソバ、ナタネが対象。品目ごとに生産数量目標に従って生産する販売農家と集落営農(農業生産法人を含む)を支援する。
 米の所得補償は、本年度のモデル対策の仕組みを踏襲。標準的な生産費と標準的な販売価格との差額を全国一律単価で支払う。単価はモデル対策と同額の10アール当たり1万5千円とする。
 当年産の販売価格が標準的な販売価格を下回った場合は、差額を補てんする「米価変動補てん交付金」を措置。全国一律単価とし、算定には全国平均の相対取引価格を使用。当年産の出回りから翌年3月までの平均価格を用い、5~6月に交付する。
 畑作物の所得補償は、農家の単収増や品質向上の努力を促すため、「数量払」を基本とし、「面積払」を併用する。数量払は、全算入生産費(直近3年平均)をベースにした標準的な生産費と販売価格との差額を交付。単価は小麦が60キロ当たり6360円、大豆が同1万1430円、テンサイはトン当たり6410円、バレイショは同1万1600円を基本とし、検査成績に応じた単価格差(品質加算)を設ける。
 面積払は、営農継続に必要な最低限の経費水準とし、麦、大豆、テンサイ、バレイショは、当年産の作付面積に対し、10アール当たり1万5千円を支払う(営農継続支払)。
 支払いは、面積払を交付後、対象作物の販売数量が判明した段階で数量払の額を確定し、面積払を超えた分を補てんする。
 なお、捨てづくりを防止するため、面積払の交付対象は「共済加入者」か「集団で麦、大豆などの生産に取り組む農業者(ブロックローテーション・集落営農)」とする。
 ソバとナタネの単価は、本年度の生産費が判明する10月をめどに算定する。
 加算措置は、畑作物の品質加算に加え、「再生利用加算」「集落営農の法人化加算」「緑肥輪作加算」を設ける。
 再生利用加算は、地域の計画に従って不作付け地に麦、大豆、ソバ、ナタネを作付けた場合に、水田で10アール当たり1万円、畑は2万円を5年間支払う(条件不利地の単価は水田が2万円、畑は3万円)。
 法人化加算は、法人化の事務費などとして10アール当たり2千円を1年限りで加算。緑肥輪作加算は輪作作物の間に地力作物を栽培し、畑にすき込む場合に10アール当たり1万円を交付する。

(1面)

〈図:戸別所得補償制度に加入した農家の対象作物ごとの助成額〉

事業仕分けで交付金減額
 深刻化する野生鳥獣の被害対策を検討するため、農林水産省は20日、鳥獣害対策に先進的に取り組む市町村長から提言を聞いた。首長らは鳥獣被害の現状と被害対策の内容を報告し、必要な鳥獣害対策予算の確保を訴えた。現行の「鳥獣被害防止総合対策交付金」は昨年の事業仕分けの判定に基づいて大幅減額され、鳥獣被害対策が滞っている状況も報告された。地方経済が疲弊し、自治体の財政状況が厳しい折、地方負担での鳥獣害対策の実施は難しい。2011年度予算編成に向け、効果的な対策と十分な予算措置が欠かせない。鳥獣被害対策を巡って話し合った。

〈A〉鳥獣害対策の特措法の施行に合わせて創設した「鳥獣被害防止総合対策事業」の08、09年度の予算額は28億円。10年度予算は、事業仕分けで「(事業の実施は)自治体の判断に任せる」と判定され、5億円余りを減額し、地方の自主性・裁量性を高めるため都道府県への「交付金」に見直した。「鳥獣害対策は重要だが、事業は国が行うべきではない。国は、県をまたがる動物の移動などに関する情報管理に特化すべきだ」などと整理された。
〈B〉市町村長から提言を聞く会で、滋賀県多賀町の久保久良町長は、10年度の鳥獣害対策費の削減を「現場の落胆は大きい」として十分な予算額確保を求めた。獣害防止対策協議会を設置、緩衝帯の整備や侵入防止柵の設置を進めてきた。「08年、09年と先行した地区は効果を上げているが、今年度に予定していた地区は事業が進まない。不満の声が大きい」と訴えた。
〈A〉市町村の被害防止計画の策定や事業実施に向けた地域の合意が整い、申請が増えてきた矢先だった。農林水産省では「今年度の事業実施の申請は、当初予算の2倍強に上り、生産現場の要望に十分に応えられなかった」(生産局生産支援課)とする。
〈C〉鳥獣被害の問題は、農作物の金銭的な被害にとどまらず、中山間地域を中心に高齢農家の営農の断念、耕作放棄地の増加を加速する点が指摘される。気象災害と異なり、効果的な対策を打たなければ、被害が拡大していく特徴もある。予算削減の結果、要望に応えきれないのは失態だ。
〈B〉長野県大町市の牛越徹市長はニホンザルによる被害の急増を報告。「農家の生産意欲の減退が深刻だ。農地保全は危機的な状況で、集落の存立にも影響する」と訴えた。
〈A〉鳥獣被害対策への取り組みの歴史の長い島根県美郷町の樋ケ司副町長は、侵入防止柵の設置など対処療法的な事業は、施工も保守も財政負担が大きいことを十分認識し、事業規模は小さくても持続可能なものにする必要性を述べた。
〈B〉山田正彦農相は、地域の実情と意見を聞き、「耕作放棄地の解消や食料自給率向上などを図る上でとても重要だ。鳥獣害対策は国の責任でやらねばならない」と述べた。農林水産省は24日、民主党農林水産部門会議に、11年度の予算概算要求に「鳥獣被害緊急総合対策」113億円を盛り込む案を示した。現行対策の大幅強化を目指す。
〈C〉鳥獣害対策は、侵入防止柵の設置などを行えば短期的な効果を得られるが、それで完結するものではない。自治体の連携による広域的な対策も重要で、人材育成など時間を掛けて取り組む必要もある。生産現場の意見を踏まえた効果の上がる対策と必要な予算の長期にわたる安定確保が求められる。

(2面・総合)

100831_02.jpg みそあんを小麦粉で包んでゆでた「かますもち」や「きゃばもち」など地域に昔から伝わる菓子などの加工品が人気を集める直売所が、岩手県二戸市浄法寺町にある「キッチンガーデン」だ。運営するのは「キッチンガーデン利用組合」(山内重人組合長、54歳)で、組合員39人のうち36人を女性が占める。併設した加工室でオリジナル商品を開発するなど、女性ならではの発想と特技を生かす。イベントなども積極的に行い、組合員一人一人が責任を持ち、楽しみながら運営に当たっている。
 キッチンガーデンは、JR二戸駅から県道沿いに車で約40分走った葉タバコや稲作風景が広がる中にある。花、キュウリやトマト、雑穀などの町内産の農産物と菓子、そばなどの加工品100種類以上が並んでいる。平日は150~200人、休日は200人以上の人が訪れ、昨年の売り上げは約8千万円でオープン以来伸ばしている。
 ほかの直売所とは違う特徴を出すため、菓子とめんを製造できる加工室を併設。各組合員が、伝統菓子のほか地元の農産物を使ったオリジナル商品を生み出してきた。
 地域の特色ある料理や伝統食などを残そうと岩手県知事が認定する「食の匠(たくみ)」制度で、組合員の4人が認定を受けている。「手打ちそば」で認定を受けた庶務担当理事の三浦静子さん(61)は「営利だけを目的としないで、地域に伝わる食文化なども広く伝えていきたい」と話す。
 取材時にレジ当番を務めていた佐々木美栄さん(70)は「お客さんと話し、いろいろなことを学んでます。とても楽しい」と話す。レジを担当する組合員の手数料は売り上げの10%、担当しない組合員は20%としている。3~10月は午前8時半~午後6時、11~2月は午前8時半~午後5時半まで営業。定期的に直売所を訪れるという40代の女性客は「自分で作っていない野菜を買いに来ます。安いし、新鮮だからおいしいです」という。

(3面・暮らし)

〈写真:「ここに来れば楽しいことがたくさんある」と佐々木さん(左)〉

100831_03.gif 水稲の作柄は、おおむね順調に推移しているが、梅雨前線の活発化や台風4号の影響による局所的な大雨で、西日本を中心に冠水や流出などの被害が発生した。各地のNOSAIでは、被害発生直後から現地見回り調査を行って被害状況の把握に努めるとともに、農家の被害申告を取りまとめ、共済金の早期支払いに向け損害評価を進めている。水稲共済の損害評価の流れなどについて、共子さんが済太郎くんに聞いた。

 共子 どの程度の被害が見込まれたら申告すればいいの。
 済太郎 まず加入方式と補償割合を確認してほしい。共済金の支払対象になりそうな目安は、水稲共済の一筆方式(7割補償)では圃場ごとに基準収穫量の3割、半相殺方式(8割補償)では被害が出た圃場の減収量の合計が2割を超えると見込まれるときだ。全相殺方式(9割補償)では農家の減収量が基準収穫量の1割を超えたときだね。分からないときは、最寄りの組合に相談すればいいよ。
 共子 損害評価はどのように行うの。
 済太郎 組合は一筆方式や半相殺方式の場合、農家から被害申告があったすべての水田で悉皆(しっかい)調査を行う。検見による調査は損害評価員3人で班を編成し、目で見たり直接穂を触って面積当たりの株数や穂数、登熟歩合などから一筆ごとの10アール当たり収量を合議で決める。全相殺方式に加入し、カントリーエレベーターなどの乾燥調製施設を利用している場合は、計量結果を確認し収穫量を調べるんだ。
 共子 連合会や国の役割は。
 済太郎 連合会は、組合からの報告を受けて抜取調査を実施し、必要に応じて修正。国は、連合会からの報告を統計調査に照らして審査を行い、損害高を認定しているよ。
 共子 今年は猛暑の影響で、高温障害による胴割れなどの被害発生が心配されているわ。品質低下も補償してくれるの。
 済太郎 水稲共済の一筆方式や半相殺方式、全相殺方式は、基本的には収穫量の減収部分を補償する仕組みで、品質低下の被害には対応していない。ただ広域で著しい被害が発生した場合、品質低下の被害を減収量に加味する「損害評価の特例措置」が講じられることがあるよ。その際も農家は被害申告を行い、収穫前にNOSAIの損害評価を受けておく必要がある。

(5面・NOSAI)

〈図:損害評価の手順〉

100831_04.jpg 東北地域で水稲直播栽培をさらに拡大しようと、農林水産省などの主催によるフォーラムが先ごろ、青森市で開催された。農家や研究者など約300人が出席した。稲作の生産コストを5割まで削減できる最新技術や実践事例が紹介された。概要を紹介する。

水稲直播栽培の現状と今後の展開
〈農研機構・東北農業研究センター 持田秀之研究管理監〉

 水稲直播栽培は、稲作の大規模化や米価の下落が進む中、一層の低コスト化・省力化を図る技術として注目されている。
 直播栽培技術導入のメリットは、(1)育苗、田植え作業が省略できる(2)生育ステージをずらして、収穫作業などの秋作業が分散できる(3)労働力不足や高齢化などの問題解決に貢献できる(4)余った労働力を園芸作物など、ほかの作物に振り分けられる――などがある。
 しかし、倒伏しやすい、鳥害を受けやすいなど、高単収を実現する上での課題もある。東北地域の全作付面積に占める割合は、0.9%程度(2009年度速報値)にとどまっている。
 鉄コーティングによって鳥害を軽減したり、作溝により出芽・苗立ちを安定化させたりするなど、新技術の開発で課題解決が進み、一層の普及が期待されている。

大規模畑作並みの米作りを目指す乾田直播技術
〈農研機構・東北農業研究センター 大谷隆二上席研究員〉

 乾田直播ではロータリーシーダーを使うことが多いが、購入費用がかかる。麦用播種機のグレーンドリルを活用すると機械導入費の大幅な削減が図れる。
 グレーンドリルは、(1)時速10キロ程度の高速作業ができる(2)種子や肥料を繰り出す精度が高い(3)耐久性が高い――といったメリットがある。一方、麦用播種機のため、播種の深さが30~50ミリと、寒冷地の乾田直播に適する15ミリよりも深いという課題があった。グレーンドリルの改造には、コストが発生する。
 研究では、播種後にカルチパッカーで圃場に重量をかけて鎮圧し、種子の深さを15ミリ程度にした。

経営規模にかかわらず導入できる鉄コーティング湛水直播栽培
〈農研機構・東北農業研究センター 白土(しらつち)宏之主任研究員〉

 水稲種子の鉄コーティングは、(1)背負式動力散布機、無人ヘリなどで播種でき、専用の播種機が不要(2)スズメの食害を受けにくい(3)種子の消毒効果がある――などメリットがある。一方、表面播種で倒伏のリスクが高い課題もある。
 研究では、耐倒伏性が強い品種(「萌(も)えみのり」「はえぬき」)と鉄コーティング法を組み合わせ、高単収の実現に取り組んだ。
 萌えみのりを用いた現地試験では、「あきたこまち」などの良食味品種の移植栽培に比べ倒伏は少なく、多くの圃場で600キロ以上の単収が得られた。

寒冷地に合った水稲不耕起直播栽培
〈青森県産業技術センター・農林総合研究所 野沢智裕研究管理員〉

 青森県では、水稲直播栽培面積は増加傾向にあり、本年度は350ヘクタールを超えた。しかし、鳥害や雑草対策などの課題もあり、試行錯誤の段階を抜け切れていない。技術の普及、定着には(1)技術に無理がない(2)地域の水利条件に合っている(3)地域の自然、社会に合っている――が必要だ。
 これら3条件を満たす省力、低コスト稲作技術として不耕起直播栽培が期待されている。メリットとして、春作業の大幅な削減、本県で多いカルガモ被害の軽減、種子コーティングが不要、出芽・苗立ちの変動が少ない、融雪水を利用した代かきで漏水の激しい圃場の漏水を軽減できる――などが挙げられる。
 実証試験では、移植栽培とほぼ同等の単収が得られ、10アール当たりの労働時間は、約9時間と、移植栽培の28時間に比べて大幅に削減された。

(7面・特集)

100831_05.jpg 農薬に耐性を持つタバココナジラミなどの害虫対策に、高知県安芸地域のナスやピーマンなどの施設園芸農家が、市販天敵と土着天敵を組み合わせた防除を実践している。農家グループが土着天敵を集めて飼育する温存ハウスを設置し、効果的な利用方法を探ってきた。また、県内の夏秋産地と協力して作型の違いを利用した産地間受給にも取り組み、天敵による防除技術が他産地にも普及している。
 「昨年はクロヒョウタンカスミカメが最後まで残って活躍し、初めて成功といえる結果だった。テントウムシとのバランスが良かった」とはJA土佐あき園芸研究会ピーマン部長の黒岩正充さん(44)だ。芸西村西分甲で30アールのピーマン促成栽培に取り組む。播種は8月上旬で、9月上旬に定植、収穫は10月初めから翌年の6月いっぱいまで続く。
 昨年は育苗段階から市販の天敵資材を育苗ハウスに放った。クロヒョウタンカスミカメとタバコカスミカメは、温存ハウスで育てた米ナスのプランターごと入れる。
 定植は、天敵が苗に付着した状態で行った。アブラムシがわく10月ごろ、ナナホシテントウなど3種類のテントウムシ類を温存ハウスや野外で採取して放飼する。ハウスで害虫の発生状況を確認し、害虫が増えていれば対応する天敵を追加していく。
 殺虫剤はヨトウムシ対策で全栽培期間中に2回使う程度だ。また、微生物資材などの利用により病気の発生が抑えられるため、殺菌剤による防除は成分換算で慣行栽培の10分の1ほどに減った。昨年は定植前に一度、定植後に二度実施で済んだという。黒岩さんは「30アールの散布には4~5時間かかる。労力的に本当に楽になった」と話す。
 土着天敵は、川の土手などの草むらで、草を揺すりシートの上に落として採取する。

(11面・営農技術)

〈写真:自家製の捕虫器で温存ハウスの天敵を採取する黒岩さん。パソコンのキーボードクリーナーを改良した〉

 農林水産省は20日、本年度実施した戸別所得補償モデル対策の加入申請面積(7月末現在の速報値)を発表した。米戸別所得補償モデル事業(主食用米)の加入面積は口蹄疫発生で未集計の九州4県(熊本、大分、宮崎、鹿児島)を除き、107万8560ヘクタールとなった。山田正彦農相は会見で、「4県を入れると120万ヘクタール弱くらいになる」と述べ、過剰作付けは1万ヘクタール程度縮小し、3万9千ヘクタール程度との見通しを示した。
 水田利活用自給力向上事業の加入申請面積は米粉用米が前年産比で約2倍、飼料用米は約4倍に拡大した。一方、新規需要米への移行が影響して麦・大豆は減少した。九州4県を含めた最終的な加入申請面積の公表は10月になる見通し。
 申請件数(熊本、大分、宮崎、鹿児島は速報値)は131万9845件で、内訳は個人が130万6771件、法人が5844件、集落営農組織が7230件。集落営農は水田・畑作経営所得安定対策の加入件数に比べ3割程度増えた。米モデル事業は交付対象面積から1戸当たり10アールが一律控除されるが、集落営農で申請すると、控除は1組織当たり10アールの仕組みになっているためとみられる。同省では「集落営農の組織化推進につながった」(戸別所得補償制度推進チーム)としている。

(2面・総合)

100831_06.jpg 【長崎支局】繁殖和牛45頭を飼育する島原市の横田光正さん(41)は、鉄筋製のカウハッチ(子牛整列枠)を作り、子牛の管理に役立てている。仲間が自作で木製のカウハッチを作り、利用しているのを見て、自分でも作ってみようと考えたのがきっかけだ。自分なりに使いやすいよう工夫したカウハッチは、今では仲間からも頼まれて作製している。それぞれの牛舎に合わせて作製されるカウハッチは、畜産農家から重宝され喜ばれている。
 横田さんは昨年、畜産農家の仲間の牛舎で、子牛の給餌に木製の仕切り枠を使っているのを見て、「これはいい」と思い、自分でも作ってみようと作製に取り掛かった。
 この枠を使うと、子牛が同時に餌を食べてもけんかせず、哺乳(ほにゅう)の管理もでき、病気の早期発見にもつながる。
100831_07.jpg 横田さんの作るカウハッチは、細い鉄筋製。耐久性があり軽くて持ち運びも楽にできる。また、ミルクや水、餌などを与えるバケツを置く棚を鉄筋で作製した。高さがある程度自由に変えられるようになっている。
 「これまで子牛の世話で目が届かなかった部分もありましたが、カウハッチを作ってからは、子牛一頭一頭の様子を見ることができるようになりました」と話す横田さん。
 カウハッチは哺乳の期間、生後3日から3カ月までの子牛に活用し、4、5頭を同じ部屋で飼育している。

〈写真上:「一頭一頭に目が届くようになった」と横田さん〉
〈写真下:鉄筋で作ったカウハッチ。高さを調節できるバケツを置く棚も、鉄筋で作製した〉

100831_08.jpg 【香川支局】水田に並ぶ、緑や黄色のプラスチック柵――。これは、三豊市山本町の安藤清さん(71)が設置した自慢のイノシシ防護柵。安藤さんは「いろいろ対策をしてきたが、一番頑丈にできた。7、8年は大丈夫でしょう」と自信満々だ。
 防護柵の正体は工事用フェンス(105センチ四方)で、建設会社から不用になった約500枚を安く譲り受けたもの。30アールの水田のうち被害を受けやすい場所から設置を始め、2年かけて完成させた。
 柵を支える支柱は、安藤さん方で解体したパイプハウスを活用するなど、設置費用は格安に抑えている。
 「ゆくゆくは地域一丸で、山すそに柵を設置したい。不用品を活用して設置できればいいですね」と安藤さんは意気込んでいる。

〈写真:「下草を刈るとき、ネットや電気柵のように気を使わずに済む」と防護柵の横で安藤さん〉

100831_09.jpg 【岩手支局】地域資源の桑を使った新たな地域おこしを目指して、北上市更木地区の更木ふるさと興社(小原孝也社長=69歳)は、昨年5月に設立された。
 同地区は、かつて約80世帯が養蚕業を営んでいたが、現在は1世帯だけ。放置された遊休桑園が点在していた。
 同社設立から2カ月後には、桑のお茶とパウダーの製造工場が操業を開始。昨年は、32トンの桑葉を8トンの桑茶に加工し、「更木桑茶」として販売している。
100831_10.jpg 同社では桑園の拡大に力を入れ、今年は40アールを復元。現在は約330アールを管理する。桑園を管理する現場主任の千田孝さんは「20年も放置された桑園を整備するのは、大変な手間と時間がかかる」と話す。
 小原社長は「桑茶は順調に軌道に乗ってきたので、桑に続く次の商品を模索している」と話し、地域の経済基盤の中心になるような商品を作りたいと意欲的だ。

〈写真上:昨年整備した桑園での収穫作業〉
〈写真下:更木桑茶と桑パウダー〉

100831_11.jpg 【愛媛支局】あくや種がほとんどなく、果皮は柔らかでほのかに甘い、西条地区の伝統野菜「絹かわなす」は、重さが350グラムほどある、重量感たっぷりの「丸なす」だ。
 これまで漬物用などとして市内で販売されてきたが、限られた区域での需要には限度があり、農家の収入も不安定。「もっと多くの人に魅力を知ってもらいたい」という生産者の思いも重なり、全国へ向け出荷を始めた。
 販路拡大を機に発足したJA西条なす部会(白石道勝部会長=75歳、部会員14人)は、県内をはじめ東京、大阪などのスーパーや市場での試食会を開催。生産者自ら立ち会い、自慢の味を売り込んでいる。
 固定客が増え、知名度も向上し、食べ方の問い合わせが増えたため、県内の野菜ソムリエで作る団体「べジフルコミュニティえひめ」に依頼しレシピ集を作成。県内外の流通、販売先に6万部無料配布し、販売強化を図っている。

〈写真:絹かわなすの出来栄えを確認する白石部会長〉

100831_12.jpg 【千葉支局】「キクラゲはクセがなく、どんな料理にも相性がいい」と話す、君津市戸崎の伊藤繁夫さん(78)。シイタケの原木栽培(ビニールハウス4棟60アール)を営む伊藤さんは、シイタケ栽培を行わない時期に同じ設備を使って栽培できるということで、2009年からキクラゲの菌床栽培を始めた。
 6月下旬に国産の菌床1500個をビニールハウスに搬入。ハウス内の温度を既存の遮光ネットなどを活用して25度前後に保ち、30分の散水を1日3回行う。7月中旬~9月上旬まで収穫している。
 収穫したキクラゲは丁寧に水洗いし、一晩乾かす。この「生キクラゲ」が生産量の6割を占める。残りの4割は水洗い後、天日干しし、さらに機械で温風乾燥させ、「乾燥キクラゲ」に加工。地元の農産物直売所「味楽囲」やスーパーなどに出荷し、好評を得ている。

〈写真:夏場にキクラゲを栽培する伊藤さん〉

100831_13.jpg 【青森支局】菌床シイタケを栽培する十和田市沢田の音道トワさん(75)は、廃ホダ木などを活用してカブトムシを飼育している。
 原木栽培していたころ、ハウスの外の廃ホダ木に、カブトムシが自然に卵を産み成虫となっていた。「近所の子供たちにあげたら大喜び。その笑顔を見たくて、飼育というか養殖を始めた」と話す。
 卵が産み付けられたホダ木類を冬場は外に積み上げておく。春になると、ビニールを網に代えて被覆した小さなビニールハウスを飼育小屋に活用。その中にホダ木類を土と一緒に入れる。7月初めから盆近くにかけて続々と成虫にかえっていく。
100831_14.jpg カブトムシは、近くの小学校や幼稚園、八戸市、青森市の学校へも提供。「子供たちが喜んでいるのを見るのが一番の楽しみ」と笑顔を見せる。

〈写真左:「自然のままに育てている」とトワさん〉
〈写真右:元気に育ったカブトムシ〉

100831_15.jpg 【岡山支局】「安心・安全を求めると、自家産、地元産になるんです」と話す真庭市の山本佳代さん(28)が店長を務めるジェラートショップ「醍醐桜(だいござくら)」では、地元産の素材を使ったジェラートを販売している。
 店では、佳代さんの父・敏雄さん(55)が飼養するジャージー牛の乳を、主なジェラートで使用。ジャージー牛乳を使用したジェラートは県内でも珍しく、開店以来好評という。
 常時8種類以上を用意していて、この夏には、地元産の「フルーツほおずき」を使った新作ジェラートの販売を開始した。「幅広い年齢層に安心して食べてもらえるものを作っていきたい」という佳代さんは、新作ジェラートに意欲的だ。

〈写真:ジェラートを手に佳代さん〉

 ▼宮崎県は、口蹄疫の終息を宣言した。牛、豚など約29万頭の家畜を犠牲にする未曾有の被害となった。発生が集中し、ワクチン接種に踏み切った県東部地域では、すべての家畜を失った。発生から4カ月余り。生産者や関係者には、どれほどつらく長い時間だったか
 ▼今後は家畜の再導入など畜産地域復興に向けた取り組みが始まる。ウイルスの残存が懸念されるため、農場の清浄性を確保し、飼料、家畜の運搬をはじめ農場間を移動する際の消毒など衛生対策の徹底が必要だ。生産者と関係機関・団体が連携し、慎重に進めなければならない
 ▼新たな侵入への警戒や備えも欠かせない。近年は中国や韓国など周辺諸国で口蹄疫が頻発している。農林水産省の疫学調査で、ウイルスは香港や韓国、ロシアで分離された株と非常に近縁だと分かった。現時点で侵入経路は特定できていないが、どこかに侵入を許す抜け穴があるはずだ
 ▼黄砂による侵入の可能性を指摘するのは、筑波大学北アフリカ研究センターの真木太一客員教授だ。日本学術会議と日本沙漠学会が共催したシンポジウムで議論した。黄砂は、中国周辺の乾燥地域の土砂が強風とともに日本に運ばれる現象。3~5月に多く、砂の表面にすき間があり、早ければ1日で日本に到達するなど理由をあげ、「確率は低いが、条件がそろえば口蹄疫ウイルスは温存される」と説明した
 ▼口蹄疫ウイルスは熱や乾燥、強酸・塩基性に弱く、参加した動物衛生の研究者からは否定的な意見が多かった。別の気象研究者は、黄砂から口蹄疫ウイルスの検出を試みていると報告した。黄砂が花粉や微生物を運び、麦のサビ病を媒介することは知られている。これからも研究を続けて事実を究明してほしい
 ▼目に見えないウイルスとの闘いは困難を伴う。しかし、克服は決して不可能ではない。

100825_01.jpg 「集落の危機に正面から向き合えば、すべきことは自然と分かるはず」と話す広島県東広島市河内町小田の吉弘昌昭(よしひろまさあき)さん(71)。地域の13集落で設立した農事組合法人「ファーム・おだ」の組合長を務め、水稲、大豆、ソバ、小麦など84ヘクタールの大規模水田営農を展開する。土作りに肥育農家から購入した堆肥を使用して生産する特別栽培農産物「小田米」は直販を中心に販売している。農作業の合理化で余った時間を活用し、女性組織が「小田そば」や手作りみそを地場産農産物から作り、直売所「寄りん菜屋(よりんさいや)」で販売している。自治組織「共和の郷・おだ」と連携し、グリーンツーリズム用の施設を整備するなど、地域の活性化に向けたさまざまな活動も行っている。

 東広島市河内町を流れる小田川沿いの山あいに、小田地区はある。「地域で一人でも多くの雇用を確保し、一円でも多く地域に還元したい」と話す吉弘組合長。ファーム・おだは、2005年に設立。現在は水稲46・6ヘクタール、大豆18ヘクタール、小麦18ヘクタール、ソバ3・7ヘクタール、野菜1・5ヘクタールを34人で耕作する。給与は時給制で、年齢、経験などによらず出役の時間に応じて支払う。オペレーター作業は一般作業より高く設定している。
 UターンやIターンの若者を受け入れ、積極的に雇用している。県内の自動車会社から転職した近藤泰博さん(42)は、「農業に関心があり転職しました。毎日充実しています」と話す。
100825_02.jpg 法人化で生まれたゆとりを活用しようと、複数の女性グループが結成された。カボチャやトウモロコシなどの野菜を生産。手作りみそや豆ごはんの素(もと)などの加工品製造も手がけ、地区の直売所「寄りん菜屋」で販売し、収入を得ている。
 ファーム・おだ設立のきっかけは、04年に地域で実施したアンケートだ。高齢化が進む中で、地区の64%の農家が「10年後には農業をやめる」と回答した。02年には小学校が廃校、05年には公民館や診療所などが閉鎖された。
 小田生まれの吉弘組合長は、広島県庁の職員として農業部門を担当、退職後に小田地区に戻った。地区の現状を目の当たりにして、「このままでは生活ができなくなる」と強い危機感を抱いた。機械を効率的に利用してコスト削減を図り、集落の全員で農業に取り組まなければ、地域は守れないと農事組合法人の設立を決意した。
 設立に当たっては、10年間の利用権を設定する方式を採った。設立時に参加しなかった場合は、後からの参加は認めないとハードルを設け、全農家の参加を促した。設立までには半年をかけ、50回程度、会合を開き話し合った。

(1面)

〈写真上:集落が見渡せる小田城の展望台に立つ吉弘組合長〉
〈写真下:Iターン・Uターンで就農した従業員。一通りの農作業を経験してもらう(左は吉弘組合長)〉

 農林水産省は11日、民主党・農林水産部門会議に来年度から本格実施する戸別所得補償制度の検討方向案を示した。米に加え、麦、大豆、ナタネなど6作物を対象とし、品目ごとに生産数量目標に従って生産する販売農家と集落営農を支援する。米は本年度のモデル対策の仕組みを踏襲。地域農業に重要な作物の振興には、新たに地域の裁量で地域特産物の振興などを支援できる産地資金(仮称)を創設する。畑作物は「面積払」と「数量払」を併用し、収量や品質向上への意欲向上を促す。不耕作地への作付けを支援する再生利用加算などの加算措置も提示した。政府・与党は24日から検討を本格化し、8月末の来年度政府予算概算要求に向け、制度の具体化を急ぐ。
 対象品目は水田・畑作で、〈1〉恒常的なコスト割れ〈2〉食料自給率の維持・向上のため、国民の食生活上特に重要〈3〉ほかの作物と組み合わせた生産が広く行われている――を基準に選定した。
 米の所得補償は、本年度実施したモデル対策の仕組みを基本とする。定額部分は、標準的な生産費を「経営費+家族労働費の8割」として、標準的な販売価格との差額を全国一律単価で面積払いする。また、現行の水田・畑作経営所得安定対策の収入減少影響緩対策(ナラシ対策)は廃止し、変動部分は米価変動に対応する補てん交付金に一本化。単価は全国一律とし、算定には全国平均の相対取引価格を使う。
 水田利活用の所得補償事業は、水田作の麦、大豆、飼料作物、米粉用・飼料用米、稲発酵粗飼料(稲WCS)、ソバ、ナタネ、加工用米を戦略作物とし、主食用米並みの所得を確保できる水準の単価(全国一律)を面積支払いする。
 また、本年度実施した激変緩和措置を発展的に解消し、産地資金(仮称)に刷新。地域裁量をもとに、〈1〉地域特産物の振興〈2〉麦、大豆などの戦略作物の団地化、ブロックローテーション導入〈3〉生産性向上に向けた技術導入――などの支援ができる仕組みを創設する。
 畑作物の所得補償は、麦、大豆、テンサイ、でん粉原料用バレイショ、ソバ、ナタネを対象に実施する。
 「面積払」の交付単価は、最低限の経費水準として10アール当たり単価を設定し、「当年産」の作付面積に応じて支払う。「数量払」は、全算入生産費をベースにした標準的な生産費と販売価格との差額を60キロ当たりの単価で交付する。交付額の比率は、捨てづくり防止などから数量払の比率を現行の水田・畑作経営所得安定対策の比率よりも高める。
 また、麦・大豆など畑作物は産地間・農業間で品質格差が大きいため、数量払は品質に応じて単価の増減を行う(品質加算)。不作付け地を引き受けて麦・大豆などを作付けた場合や、集落営農が法人化する場合、輪作作物の間に地力作物を栽培する場合の加算措置を設ける。

(2面・総合)

 農林水産省は10日、2009年度のカロリー(供給熱量)ベースの食料自給率は前年度比1ポイント低下し40%になったと発表した。3年ぶりに前年度を下回った。北海道の天候不順で小麦とテンサイ、サトウキビなど砂糖類の生産量が減少。さらに輸入小麦の値下げなどに伴う米の消費減も影響した。生産額ベースの食料自給率は、輸入飼料や輸入農産物の価格の大幅な低下に伴い相対的に国産比率が高まり、5ポイント上昇し70%となった。
 山田正彦農相は閣議後会見で、10年度から本格実施する戸別所得補償制度などを基本に「自給率向上に向けてしっかりがんばっていきたい」と強調。食料・農業・農村基本計画で目標とした20年度までにカロリーベースで50%達成に向け、麦・大豆や新規需要米の生産振興、加工食品の原料原産国表示の拡大などを強化・推進する考えを示した。
 カロリーベースの食料自給率低下は、小麦の生産量が前年度比23%減になった影響が最も大きく、0.6ポイント低下させた。テンサイが14%減、サトウキビは5%減となった砂糖類の減産は0.4ポイント、前年度比0.5キロ減の58.5キロになった米の一人当たり年間消費量の減少も0.2ポイントの引き下げ要因となった。

(2面・総合)

100825_03.jpg 名古屋市から愛媛県西条市飯岡にある父親の実家に移り住み、就農した寺田将人さん(38)。祖父が米を作っていた遊休水田を開墾し、農薬と化学肥料を使わず、ブルーベリーを中心としたベリー類の栽培(約50アール)に取り組んでいる。「考えることが毎日あっておもしろい。無理せず作れる今の面積を維持しながら楽しんで農業をしていきたい」と寺田さん。「顧客の反応を見るのが楽しみ」で、全量をインターネットなどを通じて直売している。
 ブルーベリーの収穫最盛期の8月上旬、寺田さんの畑を訪ねた。築101年の曾祖父が建てた古民家をリフォームした自宅から、徒歩1分のところにある。樹齢4年のブルーベリーは、剪定(せんてい)などの工夫でブドウの「巨峰」ほどもある大粒な実が成っていた。寺田さんは「お客さんから『こんな大きいのは初めて』とか『甘味と酸味のバランスがいい』と評価してもらっています」と話す。
 栽培の中心はブルーベリーで、約700本(35アール)を無農薬・無化学肥料で栽培する。基本的に作業は一人で行うため、早生から晩生まで品種を組み合わせ収穫時期をずらす。ラビットアイ系を中心にサザンハイブッシュ系、ノーザンハイブッシュ系の3系統から15品種を選んでいる。
 収穫期は5月末から10月末までで、1日に10~20キロを収穫する。朝5時から7時まで摘み取り、午前中に容器詰めして発送する。インターネットを通じた販売が全体の7割を占め、そのほか県内の洋菓子店や東京都内のレストランなども顧客に持つ。インターネットでは大粒の生ブルーベリーと冷凍したフローズンブルーベリーを1キロ5千円、小粒のジャム用ブルーベリーを同3500円で販売している。今年からは見た目で目立つ大粒の商品をJAの直売所に置くなど、新たな販路の開拓も進めている。

(3面・暮らし)

〈写真:寺田さんは「実がおおきくなるように大胆に剪定しています」と話す〉

100825_04.jpg 「取れたての奈良産野菜のおいしさを知ってほしい」と話すのは、大阪市城東区森之宮の農産物直売所「あいやさい」の店長・多田昌崇さん(29)。奈良県田原本町で水稲70アールと露地野菜30アールを栽培する多田さん方では、毎日車で約1時間かけて農産物や加工品を運んで販売する。品ぞろえのため、近隣の農家にも出荷を依頼。鮮度の良さや小世帯向けの小分け販売などニーズに合わせた工夫で、都市住民から支持を得ている。直売所は2008年10月にオープンし、昨年の売り上げは約2千万円。今年の売り上げは昨年を上回る見込みだ。
 JR大阪環状線・森ノ宮駅から徒歩10分ほど、高層マンションが立ち並ぶ一画に「あいやさい」はある。約50平方メートルの売り場には、野菜、果物、みそや豆腐などの加工品が100点以上並ぶ。奈良産は入り口に近い棚に集められ、「奈良・天理市産トマト(大玉)1玉100円」などと掲示されている。
 昌崇さんは「お客さんの立場になり、買いやすい売り場作りをしています」と話す。
 米や野菜は近隣住民の世帯員数を考え、小分けにしている。米は1キロ単位で量り売りし、カボチャは4分の1にカットして販売する。昌崇さんは、野菜の知識やレシピを事前に勉強して客に説明。重い荷物を持てない客には自宅まで無償で品物を届ける。きめ細かいサービスが人気となり、1日100人ほどが訪れる。
 近くに住む中渡瀬たつ子さん(79)は「野菜の鮮度がよく、店長さんの愛想もいい。毎日欠かさず来て、おしゃべりしながら買い物しています」と魅力を話す。
 仕事帰りにも立ち寄れるように営業時間は午前10時半~午後7時までだ。日曜も営業するが、盆や正月のほか、水稲の播種や田植え、稲刈りの日は直売所を休む。

(8面・流通)

〈写真:「お客さんとのふれあいを大切にしたい」と昌崇さん(右)〉

100825_05.jpg 滋賀県農業技術振興センター(近江八幡市安土町大中)では、水稲のヒコバエや畦畔〈けいはん〉・法面〈のりめん〉の緑草が、秋口~冬にかけて、シカやイノシシなど野生動物の格好の餌になっていると指摘。ヒコバエの抑制対策として、9月上~中旬収穫「コシヒカリ」の場合は、10月中旬~11月上旬にプラウ耕または高回転のロータリー耕で埋没処理するよう、農家に呼びかけている。畦畔・法面は10月中旬以降の刈り払いで冬期の緑草を抑制できる。集落の圃場に餌が放置されていると野生動物を誘引し、獣害を助長する。栽培研究部の山中成元研究員は「集落内の餌を大幅に減らせる。足並みをそろえて、集落の餌場価値の低減に取り組んでほしい」と話している。
 秋耕によるヒコバエの埋没処理は、プラウ耕が効率よくすき込める。ロータリー耕の場合は、高速回転(毎分240回転)で行うと、通常回転(毎分182回転)のときより残草量が少なくなる。圃場試験では、ヒコバエの土中埋没率は通常回転では約2割、高速回転では約6割。作業時間や燃費はほとんど変わらなかった。
 滋賀県で一般的な9月上~中旬収穫「コシヒカリ」の場合、ヒコバエ発生量が多くなる10月中旬~11月上旬に野生動物による採食も増加する。この時期までに秋耕してヒコバエを解消する。ただし、耕起が早すぎると、冬期間に緑草が発生するので注意が必要だ。耕起の適期は、ヒコバエの生育と緑草の発生状況を考慮して決める。
 畦畔・法面の除草は10月中旬以降に行うと冬期の緑草量を抑えられる。
 ヒコバエ量は、北陸地方の気候に近い県北部でも10アール当たり約300キロ、県南部では約900キロに及んだ。
 秋作業を基本に、遅植え、早期中干し、早期穂肥を組み合わせた試験で、ヒコバエ量を75%抑制できた。特に遅植えの効果が最も高く、米品質の向上を図る高温障害の回避対策とも一致する。

(9面・営農技術)

〈写真:高速回転のロータリー耕でヒコバエを土中に埋める。「作業時間は地域ごとに、ヒコバエの生育と緑草の発生状況を考慮して決めて欲しい」と山中研究員〉

100825_06.jpg 【島根支局】山間地にあり、過疎、高齢化で耕作放棄地が深刻な浜田市弥栄町の門田集落――。1979年に農業生産組合が設立され、耕作放棄地解消とコスト削減に向け、住民が立ち上がった。現在、農事組合法人「ビゴル門田」(廣瀬康友組合長=67歳・24戸)が、集落維持に住民一丸で取り組んでいる。
 「集落の土地は、みんなで守ろう」と立ち上がった住民たちは、圃場整備と生産組織の設立で、大型機械で集落農地の一元管理を開始。99年には法人化、約19ヘクタールの水稲栽培を中心に、転作ソバと大豆約1ヘクタールずつなどの耕作に取り組んでいる。
 同集落で育てられた特別栽培米「門田米」の評判は高い。「無農薬・低農薬栽培を行っています。食味がとても良い米ですよ」と廣瀬組合長。大阪の業者へ約800袋、残りをJAなどに出荷している。消費者の声に応え、毎年、稲刈り体験ツアーを実施。毎回20人ほどの参加者と稲刈りを行い、新米や地元食材を使った料理を囲んで交流を深める。
 一方、加工品にも取り組む。地域に自生するクマザサを利用した「クマ笹(ザサ)茶」や、今年からイチゴジャムにも挑戦。茶は7月下旬に収穫して調整したササから作られる。
 廣瀬組合長は「後継者対策として都会からの研修生が、ここで農作業ができるように働きかけています。この集落をこのまま後世に伝えていければ」と話している。

〈写真:昨年の「稲刈り体験ツアー」での稲刈り風景〉

100825_07.jpg 【鹿児島支局】温州ミカンなど7アールを栽培する、日置市伊集院町城山(じょうやま)の濱田盛遠(はまだ もりとお)さん(65)は、樹体を食害するゴマダラカミキリムシの幼虫対策に、ビニール製の肥料袋を使って効果を挙げている。
 濱田さんのゴマダラカミキリムシ対策は、主幹の地際から15センチほどを肥料袋で覆う方法。袋で覆った部分への産卵が回避できるというものだ。
 肥料袋なら安価で、天候や時期を気にせず作業ができると試してみると、思ったより効果があったという。袋をひもで結ぶときは、半年後に取りはずすまでの幹の成長を考え、結び加減に気を付ける。
 「以前はちょくちょく虫駆除へミカン畑に行っていましたが、今は1週間から10日おきで済み、管理が楽になりました」と喜んでいる。

〈写真:「栽培面積の少ない人には、最適の方法だと思います」と話す濱田さん〉

100825_08.jpg 【愛媛支局】「あたご柿」を中心に2ヘクタールを栽培する西条市の柿専業農家・山内信一さん(63)は、乗用草刈り機を改良して、倒伏式の除草機を製作し農作業効率を上げている。
 「刈るのではなく踏み倒してみよう」と考え、軽自動車の古タイヤ6本と、ホームセンターで購入したアングルなどの金具でローラーを製作。草刈り機の後部に取り付けた。
 おととし製作した試作機はローラーの幅が広く、園地に凸凹があるため、木の周りを小回りで旋回すると、ローラーに負荷がかかっていた。そこで昨年、タイヤが一本一本独立して回転するように工夫。小回りが可能になり、効率良く作業できるようになった。「作業時間は5分の1、燃料も草刈り機で稼働する時の4分の1で済みます」と山内さんは話す。

〈写真:山内さん夫妻と倒伏式除草機。後部のローラーを取り外せば、草刈り機として機能する〉

100825_09.jpg 【宮崎支局】えびの市長江浦地区宮川橋付近の「消毒ありがとう」と書かれた牧草ロールが道行く人の目を引いている。設置したのは、同地区の森屋要(もりや かなめ)さん(54)・清子(きよこ)さん(54)夫妻(繁殖和牛38頭、水稲1ヘクタール)。
 「防疫に関しては、地域の皆さんに迷惑をかけました。また、多くの市民の方にも協力を頂き、感謝の気持ちを伝えたかった」と要さんは話す。
 ロール掲示板の文字の担当は清子さんだ。飼料袋を切り抜いて文字の型を作り、自家製ロールにスプレーで印字。それを要さんが県道沿いに積み上げた。
 要さんは「油断は禁物。皆さん、今後も消毒は忘れないで」と呼び掛ける。

〈写真:県道沿いに積み上げた牧草ロール〉

100825_10.jpg 【岩手支局】「自家産のアスパラガスを使ったアスパラガスのフルコースは、評判がいいですよ」と話す金ケ崎町永沢平の佐藤征臣さん(61)、郁子さん(55)夫妻は、レストラン「コレット」を営むほか、水田約2ヘクタール、転作田にアスパラガス80アール、ナス7アールを栽培している。レストランでは、季節ごとの食材を使ったメニューが好評だ。
 佐藤さん方の水田では、20年ほど前の水害で土壌が粘土質になってしまった圃場があり、中でも収穫量の少ない圃場が遊休地となっていた。どうにかしたいと思っていた佐藤さん夫妻は、土作りを兼ねて、2年前から同町特産のアスパラガス栽培をスタート。
 佐藤さんは「料理を通じて、取れたての食材の魅力を感じてほしいです」と話している。

〈写真:旬の食材を提供する佐藤さん夫妻〉

100825_11.jpg 【福島支局】家庭料理の店「ほたる」を経営する、福島市西中央の平野友子さん(47)は、自家産の野菜を使ったオリジナル料理を提供している。平野さんは、キャベツやサヤインゲン、ニガウリなどを栽培。収穫した野菜で、その日のメニューを決めている。
 店には決まったメニューがない。その日収穫された食材で内容が変わる。平野さんの料理にはレシピ集こそないものの、作ることのできる品数は100を超えるという。
 早朝に車で15分ほどの実家の畑で畑仕事をしてから店で仕込み作業。ランチの時間が終わると畑へ戻り、夕方まで野菜の収穫と管理を行う。その後再び店で営業と翌日の総菜作りの準備だ。平野さんは「料理無限。なるべく農薬を使わずに、自家産の野菜で続けていきたい」と話している。

〈写真:キュウリを収穫する平野さん〉

100825_12.jpg 【栃木支局】那須塩原市鴫内の君島章さん(52歳・乳牛約80頭)方で生まれた雌の子牛が、目の周りと頭のてっぺんが黒く、顔だけ見ると「パンダ」にそっくり=写真
 那須塩原市で30年間酪農をしている君島さん。「長く牛飼いをやってきたがこんなにかわいい牛は初めて」と話す。
 この子牛は、スクスクと成長。近所の人たちもその愛らしい姿を一目見ようと見物しにくるほどで、地域の人気者になりつつある。
 君島さんは「かわいいパンダ牛なので大切に育てて、将来は立派な母牛として活躍してほしい」と話してくれた。

 ▼小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル展示が人気を集め、来場者数は10万人を突破したそうだ。7年にわたる航海で何度も故障や技術上の問題に遭遇し、帰還が絶望視された時期もあった。実物を見て涙ぐむ人もいて、往復60億キロに及ぶ波乱の物語は大きな感動を呼んでいる
 ▼はやぶさは先端技術の塊だ。イオンエンジンのほか、ロボット、省電力、耐熱材料など多くの研究成果を集約しており、各分野の産業や一般への応用が期待されている。宇宙関連予算は、昨年末の「事業仕分け」対象となり、大幅削減の憂き目にあった。成功を機に予算拡充を求める声が高まっている
 ▼政府は「農林漁業・農山漁村の6次産業化」を推進し、2020年までに農山漁村で6兆円規模の新産業創出を目指している。成長を支える基礎に、素材・エネルギー・医薬品など先端技術活用を打ち出した。農山漁村の未利用資源を生かした新素材や新商品の開発と産業化を促す
 ▼農山漁村の産品を余さずに使える技術が確立すれば、農林漁業者が収入を得る機会が増えるばかりでなく、地域の雇用増加など波及する効果も大きくなる。十分な予算と研究者をつぎ込んで研究開発を進めてほしい
 ▼ただ、6次産業化の起点は1次産業であり、農業生産にかかわる研究開発にも従来に増して力を注ぐ必要がある。今年のような酷暑でも野菜や果樹、畜産で安定生産を可能にする品種や管理技術はないものか。殺処分なしで口蹄疫ウイルスに対抗できる方法があれば、30万頭近い家畜の犠牲も不要だったはずだ
 ▼農業は気象の影響を受けやすく、病害虫や野生鳥獣の被害も依然として多い。安定生産と品質向上は生産者の変わらぬ思いであり、政府には研究開発の面からも生産者の思いや期待に応える義務がある。

100811_01.jpg 「気持ちはもう切り替えた。再建へ向かっていかなければ」――。宮崎市佐土原町の和牛繁殖農家・青木俊憲さん(43)は自分自身に言い聞かせるようにつぶやく。口蹄疫の感染拡大の防止に協力し、口蹄疫ワクチンを接種、全頭を失った。がらんとした畜舎は何度も消毒され、床は石灰で真っ白。「競りが動き出したら、徐々に導入していきたい」と話す。口蹄疫の新たな発生がなければ、宮崎県は27日にも終息宣言を出し、早期の経営再開と産地再興に動き出す。ただし、行政や農業関係機関は、畜舎消毒や家畜排せつ物の堆肥化が適正に完了したかを慎重に再点検する構えだ。NOSAIみやざき(みやざき農業共済組合)も、徹底した畜舎消毒など、再導入する農家への支援策を検討中だ。口蹄疫は地域経済にも大きな影響を及ぼした。山田正彦農相が意欲を示す復興基金の創設など国の再建支援が強く求められている。

 「1年かけて元の頭数に戻したい」と青木さん。ワクチン接種による殺処分前の飼養頭数は、繁殖母牛47頭、育成2頭、子牛37頭。削蹄師を営むほか、飼料(イタリアンライグラス)5ヘクタールなどを栽培していた。
 JA宮崎中央の家畜市場再開に合わせて、妊娠牛や子牛の再導入を徐々に進めたいとする。口蹄疫対策特別措置法(特措法)に基づく牛の評価額に納得し、ワクチン接種による殺処分を受け入れたが、再建までの生活費が補償されたわけではない。
 青木さんは「経営が安定するまで3年はかかる。残念ながら宮崎牛で一番人気の種牛も処分された。子牛の販売価格はこれまで通りとはいかないだろう。収入確保のため、母牛は65頭規模に増頭したい」と話す。
100811_02.jpg 疑似患畜発生の中心地域を管轄するNOSAIみやざきでは、畜産農家の経営再建に向けた支援策の検討を進めている。終息宣言の出る27日以降、農家の畜舎消毒の支援と併せて、農家アンケートを実施する予定だ。菊池信勝組合長は「NOSAIの組織を挙げて、できる限りの復興支援に努めたい」と述べる。
 NOSAIへの要望意見に基づいて可能なものから取り組んでいく方針。菊池組合長は「フル回転で支援していく」と意気込む。
 感染拡大防止のため、NOSAIは口蹄疫の発生以降、家畜の診療・ワクチン接種、農家訪問を自粛してきた。櫻木耕治参事は「まずはNOSAI獣医師、職員が訪問し、NOSAIに対しどんな要望があるのか把握したい」という。口蹄疫発生以降のNOSAIの対応や、家畜伝染病予防法や特措法による補償と疑似患畜・ワクチン接種家畜に対する家畜共済の補償内容についての説明責任を果たす必要もある。「JAによる農家の意向調査では、8~9割が再び家畜を飼いたいと回答している。農家の経営再建への意欲を支援したい」としている。

(1面)

〈写真上:「早く、しかし慎重に牛の導入を図っていきたい」という青木さん〉
〈写真下:NOSAIみやざきでは、家畜の再導入を図る農家への支援策を検討している〉

 農林水産省は7月30日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開き、米の備蓄制度見直しに向けた議論を始めた。政府備蓄米を主食用以外に販売する「棚上げ備蓄方式」への転換が課題となる。消費減退で民間在庫が膨らみ、さらに今年産米の豊作基調も伝えられ、大幅な米価下落も懸念されている。備蓄制度を含め、需給調整対策の確立が求められる。2009年7月から10年6月末までの主食用米の需給実績は810万トン(速報値)と報告した。消費減退を受け、昨年11月時点の需給見通しを11万トン下方修正した。10年7月から11年6月の需要量は実績比5万トン減の805万トンと見込まれ、過去最低となる。米の需給をめぐる状況を話し合った。

〈A〉
09年7月から10年6月末までの主食用米の需要実績は、前年同期比14万トン減少した。昨年11月時点では821万トンと見込んだが、米消費が見通し以上に落ち込んだ。
〈B〉10年7月から11年6月の需要見通しは805万トンに設定した。11月に決める11年産の生産数量目標策定の基になる指標は、過去最低の水準となった。
〈B〉JA全中など生産者団体は、備蓄制度を「棚上げ方式」に転換するよう求めている。主食用米に販売する現行「回転備蓄方式」よりも備蓄制度の安定化や需要引き締め効果などが期待される。民主党が昨年、党の政策集で掲げ、山田正彦農相も意欲を示している。一方で、年間約520億円と、回転備蓄の約2倍に膨らむとされる財政負担が課題だ。米卸などからは「在庫増加と豊作基調で需給の緩和感は強く、棚上げ方式になっても米価への影響は限定的」との声も強い。
〈A〉米モデル事業の参加者には、下落分を補てんする「変動部分」が措置されている。ただ、補てんは全国一律で、下落分を補い切れない地域も想定される。また、変動部分の財源は1391億円で、60キロ当たりでは約1200円とみられる。大幅な下落となれば、新たな財政措置も課題となる。生産者団体などからは、過剰在庫を抱えたままでは、11年産米の生産目標数量は引き下げになると心配する声も多い。

(2面・総合)

100811_03.jpg 縄文杉で有名な屋久島を訪れる観光客に人気の直売所が「げじべえの里千尋(せんぴろ)」だ。住民全戸192戸で組織し、地域の活性化を図ろうと活動する鹿児島県屋久島町原地区の「げじべえの里管理組合」が運営する。組合長の日高豊さん(48)は「集落活動には農家が中心に取り組む。直売所を継続して農家が元気になれば、地域も元気になる」と力強く話す。直売は特産のタンカンやポンカンなどの新たな販路として定着した。売り上げから積み立てた手数料の一部は、集落行事の経費に充てるなど、地域住民に利益を還元している。
 強い日差しと時折山から吹く心地よい風を感じながら、屋久島の観光名所「千尋(せんぴろ)の滝」がある原地区を訪れた。一枚岩を流れる落差66メートルの滝で、観光客が数多く訪れる。「年間30万人が訪れるうちの20万人はこの滝を見に来る」と日高組合長は話す。
 原地区の農家数は52戸。耕作面積は約120ヘクタールで、タンカンやポンカンなどの果樹とジャガイモやヤマイモといったイモ類の栽培が盛んだ。
 屋久島が世界遺産に登録された1993年以降、観光客が年々増加。観光客に特産品を買ってもらおうと03年に直売所を開設した。「げじべえ」は山に住むと言われる森の精にちなんで名付けた。建設費用はすべて自治会の積立金で賄った。当初は自治会が運営していたが、06年に集落全戸を組合員とする管理組合を設立した。
 農産物と加工品の通信販売にも取り組む。直売所の顧客名簿には900人が登録されていて、年に一度カタログを送付する。注文の受け付けや品物の発送は、農家有志で設立した「原の里」が請け負う。通販の売り上げは直売所全体の1割強を占めている。

(3面・暮らし)

写真:「通信販売の割合を増やしたい」と日高組合長(右)。右から2人目が川畑区長、左が日高義正さん〉

100811_05.jpg100811_04.jpg 今年は、ゴールデンウイークころから気温が上がり、梅雨明け後は猛暑が続いている。暑さは家畜にも大きなストレスを与え、関節炎や肺充血など、病気の原因にもなる。気象庁は、今後も暑い日が続き、残暑も厳しいと予想。畜舎の温度を下げ、家畜が十分に栄養を取れるようにするなど、暑熱対策が重要だ。NOSAI埼玉(埼玉県農業共済組合連合会、富田惠三会長)の神田実獣医師にポイントを聞いた。
 暑熱対策では、畜舎内の温度を下げ、家畜が健康に過ごせるようにする。乳牛の場合、畜舎内の温度を下げる対策には、(1)屋根に断熱材をはったり、散水する(2)外壁に寒冷紗(かんれいしゃ)をはる(3)換気扇で空気を入れ替える(4)外壁を巻き上げたり、網戸に替えて風通しをよくする――などに取り組む。
 十分な水が飲めるようにする対策は、水のタンクや、十分な太さの配管や大きなカップを設置する。固形塩の「鉱塩(こうえん)ブロック」や重曹ブロックを与えると、第一胃が酸性になるのを防ぐ効果がある。ビタミン剤などを与える、でんぷん質の飼料を減らして、繊維質の飼料を増やすなども大切だ。
 家畜が快適に過ごせる環境を作る対策は、牛床にマットを敷き、長時間立っていても蹄に負担がかからないようにする。牛が水遊びをしても不衛生にならないよう常に清掃する。適度に散水をして体温を下げるなど実行してほしい。
 NOSAI埼玉では、家畜の治療のほか、損害防止にも力を入れている。神田獣医師は、農家から散水システムの導入を相談されたのをきっかけに、タイマーを使い、一定間隔で散水するシステムを設計・開発した。
 なるべく安価で開発しようと、ホームセンターなどで売られている部品を使用した。40頭規模の畜舎で、材料代は十数万円だった。

(5面・NOSAI)

〈写真左:「損害防止も獣医師の大切な仕事」と神田獣医師〉
〈写真右:神田獣医師が設計した散水システム。ノズルから定期的に水をまく〉

100811_06.gif 米と米加工品について、取引記録の作成と原則3年間の保存を義務づける米トレーサビリティー制度が10月1日から施行される。一昨年に発生した事故米問題を機に、安全・安心で適正な米流通を実現し、万一の事故発生時にも素早く回収できる仕組みの確立が期待されている。必要な生産者の対応や取引記録の作成方法など制度の概要を紹介する。
 食品のトレーサビリティーは、事業者間の移動を記録・保存し、追跡を可能とする仕組み。問題が発生した際には流通ルートを速やかに特定でき、回収も可能となる。
 米トレーサビリティー制度は、10月1日から取引記録の作成・保存を義務付ける。対象事業者は、生産者や製造業者、流通業者、小売業者、外食業者など。2011年7月1日からは、餌用など非食用米を除き、記録に基づいて産地情報を包装や伝票などに記載し、取引相手や消費者に伝える産地情報伝達も義務付けとなる(学校や病院などの給食向けは除く。JAS法の原料原産地表示義務がある玄米・精米などはJAS法に従った表示を行う)。
 農林水産省は「米の取引が今まで以上に透明化され、産地偽装が起きにくくなる。生産者にもメリットがあり、しっかり対応してほしい」(消費・安全局米穀流通監視業務移行準備室)と呼びかける。
 記録の虚偽記載や不保持、取引相手への産地情報の不伝達などには50万円以下の罰金など罰則が適用される。
 農林水産省が公表する米トレーサビリティー制度Q&Aから、基本事項や生産者に求められる対応など主なものを紹介する。詳細は同省ホームページ(http://www.maff.go.jp/j/soushoku/keikaku/kome_toresa/index.html)まで。

(10面・特集)

〈図:米トレーサビリティーと産地伝達情報〉

100811_07.jpg ハウスピーマンでタバココナジラミの「バイオタイプQ」による吸汁やすす病による被害が広がっている。タバココナジラミにはバイオタイプB(シルバーリーフコナジラミ)とバイオタイプQとがあるが、この両者は判別が難しい。防除に当たっては薬剤耐性ができないように、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行い、防虫ネットの設置や圃場周辺の除草など総合的防除法の導入が重要だ。全国一のピーマン産地を抱える茨城県農業総合センター園芸研究所(笠間市)病虫研究室の鹿島哲郎室長に効果的な防除法を解説してもらった。
 対策の基本は、薬剤を使った化学的防除法をはじめ物理的防除法や耕種的防除法などを組み合わせることだ。
 薬剤防除は、作物と害虫の両方に登録のある薬剤をラベルに従って正しく使用することがまず基本である。コナジラミ類では、一時的には殺虫効果の高い薬剤でも抵抗性が発達する懸念があり、同一系統薬剤の連用は避ける必要がある。薬剤散布時の注意点として、「コナジラミ類の幼虫や成虫は葉裏に生息するため、効果的な薬剤散布は薬液が葉裏にもかかるよう下から吹き上げるようにして行う」と鹿島室長は話す。
 施設の出入口やハウスサイド、天窓などの開口部には、目の細かい(1ミリ以下)防虫ネットを張り、外部からのコナジラミ類の侵入を防ぐ。そのほか黄色粘着トラップの設置、害虫の寄生が疑われる作物残さの適切な処分や増殖源となる圃場周辺の雑草除去なども大切だ。
●バイオタイプとは
 バイオタイプとは、外観では区別が難しく、遺伝的、生理学的に異なる系統のこと。タバココナジラミバイオタイプQは、体長が約1ミリで殺虫剤に対する抵抗性がバイオタイプBに比べて高い難防除害虫だ。成虫や幼虫は、ピーマンの葉から養分を吸汁し、生育阻害を起こす。多発するとコナジラミの分泌物ですす病が発生。果実の商品価値が低下し、葉では光合成を阻害する要因となる。

(11面・営農技術)

〈写真:「タバココナジラミの幼虫は、小さくて見つけるのが難しい」と鹿島室長〉

 米専門の民間調査会社、米穀データバンク(東京都千代田区)が5日、2010年産米の収穫予想(7月31日現在)を発表した。6月以降の好天によりおおむね生育は順調として、全国の作況指数を102の「やや良」と見通した。
 106の「良」が北海道と宮城で、102~105の「やや良」は青森、福島、茨城、千葉、新潟、滋賀など22府県と予測。一方、梅雨前線に伴う大雨被害が発生した九州地域などの10県は95~98の「やや不良」と見込んだ。99~101の「平年並み」は秋田、山形、鳥取、島根など13都府県と予測した。7月末までの気象データなどに基づいて独自推計した。
 10アール当たり収穫量は541キロで、作付面積は157万ヘクタールを見込んだ。都道府県ごとの近年の生産調整実施率を基本に戸別所得補償モデル事業の動向などを踏まえ、生産調整は3万ヘクタール程度の未達になると予想した。
 収穫予想は848万トンで、生産目標数量(813万トン)より35万トン増、前年産比では17万トン増の見通し。同社では「現時点では、09年産米の持ち越し在庫(35万~40万トン)とあわせて、10年産米の全体需給は75万トン程度の過剰になる」と見込んでいる。

(2面・総合)

100811_08.jpg NOSAI岡山(岡山県農業共済組合連合会、石垣正夫会長)では、果樹共済、畑作物共済、園芸施設共済の加入者を中心に、毎年2千カ所程度、圃場の土壌診断を実施している。結果は「土壌診断書」にまとめ農家に配布し、施肥のポイントなどの助言も行う。詳細な分析は、肥培管理などに役立つと、農家からは好評だ。
 「ナス栽培には土壌診断が基本です。50年以上ナスを生産していますが、土壌の状態は分析してもらわないと分かりません」と総社市福井の矢吹泰久さん(74)は話す。ナス12アールを栽培する矢吹さんは、連作障害を避けるため、以前は数年ごとにビニールハウスを移動していたが、土壌診断を活用し、その必要はなくなったという。
 NOSAI岡山では、損害防止活動の一環として、1983年から土壌診断を実施している。対象となるのは、NOSAIに加入、または加入を検討している農家だ。
 採土(さいど)は、決められた方法で農家が行う。それをNOSAI組合等と農協が窓口となって回収。連合会は、pH(ぺーハー)、硝酸態窒素、石灰など土壌の化学的状態を15項目にわたり分析する。
 分析結果は「土壌診断書」にまとめ、コメントを付けて農家に渡す。生産組合単位で土壌分析した際には、講習会も開催。嘱託の冨久保男・元県農業試験場場長が土壌の状態や、肥培管理のポイントなどを説明する。

(5面・NOSAI)

〈写真:専用の分析室で、高機能の機器と診断ソフトを用いて分析を行う〉

100811_09.jpg 【岩手支局】リンゴ(5クタール)を栽培している一関市厳美町の佐藤勝昭さん(61)は、肥料散布の省力化と土壌改善を図ろうと、「枝下散布機」を開発した。この機械は、トラクターの動力を二つの機械(ハローとオーガ)に分散して同時に動かすことで、肥料散布しながら土壌を攪拌(かくはん)することができる。
 枝下散布機は、トラクターの代かき用ハローとコンバインの3条刈り用オーガとホッパーがベース。ハローはツメの右側を3分の1程度残して、ホッパーは微量要素が落ちやすい形状に加工している。オーガの中にはスクリューが内蔵されているため、ホッパーから落ちてきた微量要素をツメのある右側に運び、散布する仕組みだ。
 ハローとオーガを回す動力は、PTOのユニバーサルジョイントの取り付け部分にプーリーを入れて散布機用動力に利用している。
 「微量要素の重い袋を運ぶ必要がなくなり、時間的には以前の半分で済む。土と混ぜ合わせることで、雨による流出も減るだろう」と佐藤さん。土壌をかき混ぜることで、酸素が地中に入り、微生物の活性化も期待できるという。

〈写真:枝下散布機。佐藤さんは「作業効率は永遠のテーマ。どんどん参考にしてほしい」と話している〉

100811_10.jpg 【千葉支局】夏に収穫できる「サラダごぼう」の栽培(20アール)に、銚子市野尻町の安井等さん(46)が、3年前から取り組んでいる。
100811_11.jpg サラダごぼうは、JAちばみどりが新たな夏作物として4年前から本格的に出荷。通常のゴボウに比べて、長さが半分以下で柔らかいのが特徴だ。軽く湯通しして、サラダ感覚で手軽に食べられる。
 播種から95~100日で収穫でき、出荷は7月下旬~8月末までで、「生育期間が短いのが、導入したきっかけの一つ」と安井さん。栽培管理も比較的容易だという。

〈写真上:「ダイコンの後に栽培すると、肌のきれいなサラダごぼうに育ちます」と話す安井さん(右)と研修生の許さん〉
〈写真右:サラダごぼう〉

100811_12.jpg 【高知支局】「一番好きなのは田んぼの代かき」と話す、宿毛市和田の小学5年生、宮本龍くん(10)は、くわや耕うん機などを上手に使い、水稲やブロッコリーなど120アールを栽培する祖父の宮本一さん(62)を手伝う。
 農作業用の服や長靴は、それぞれの作業に必要なものを一式そろえている。また、稲やオクラは、祖父母の作業を見たり本で調べて、収穫までの流れを把握しているという。
 龍くんは、「植えた作物が大きくなるのを見るのが楽しい。自分で食べるのも、誰かに食べて喜んでもらえるのもうれしくて、また作りたくなる」と話す。

〈写真:耕うん機を上手に使って畑を耕す龍くん〉

100811_13.jpg 【長崎支局】「肥育農家に喜んでもらえる子牛を育てたい」と話す、平戸市の浦大悟さん(57)は、妻・公子さん(48)、長男・晋悟さん(19)と、繁殖母牛82頭を飼育している。
 22歳から授精師をしていた浦さんは、年間900頭ほど繁殖和牛の種付けをしていたが、牛の減少を実感し、1995年から繁殖和牛の飼育を本格的に開始した。繁殖牛の飼育で大切なのは「胃づくりと系統」と、牛の飼育方法を研究。繁殖和牛の早期離乳も10年かけて確立した。
 今ではセリ市に出荷すると、浦さん方の親牛の名前を知っている購入者がいて、固定して購入する人も。浦さんは「自分たちだけが良くなってもいけない、肥育農家との信頼関係はとても大事です」と強調する。

〈写真:給餌をする浦さん親子。「肥育農家との信頼関係はとても大事」と話す〉

100811_15.jpg 【秋田支局】「堆肥用に積んであった使用済み菌床から、カブトムシの幼虫が出てきて驚いた」と話す東成瀬村岩井川の佐々木省吾さん(61)は、カブトムシのふ化と販売を試みている。
 佐々木さんは2003年からビニールハウス3棟(約190坪)で菌床シイタケ(冬季収穫用8千個、夏季収穫用6千個)の生産に取り組む。
 「4、5年前からカブトムシの幼虫は見かけていたが、こんなにたくさん出てきたのは初めて。6月に幼虫を2匹ずつ飼育ケースに入れ、5セットを地元JAの購買店に置いたところ、思いがけず完売した」と佐々木さん。今は成虫にするため、コンテナ12箱に20匹ずつ入れて管理する。
 「雄を雌をセットで売るつもりだ。夏休み中の観察用に子供たちに買ってほしい。子供たちの笑顔と副業を楽しみたい」と話す。

〈写真:カブトムシを手に佐々木さん〉

100811_16.jpg 【新潟支局】おにぎりの販売店「むすびや」が7月8日、新発田市の中心部にオープンした。むすびやは、新発田市麓(ふもと)の農業生産法人・有限会社アグリ・システム(稲約41ヘクタール)の直営店だ。
 代表の斉藤斗南さん(50)は「地元の消費者に自分の米を味わってもらい、米の販売につなげたい」と意気込む。
 メニューは、おにぎり、茶漬け、卵かけご飯とシンプル。おにぎりは、注文を受けてから握り、作り置きはしないほか、店で食べる場合は、1個でもみそ汁を付けている。
 「米を売るには、まず食べてもらわないと始まりません。米の味を知ってもらうには、おにぎりが一番です」と、斉藤代表は話す。

〈写真:むすびやのスタッフと代表の斉藤さん(中央)〉

 ▼猛暑の影響が農業生産に及んできた。キャベツやホウレンソウなど葉茎菜類を中心に出荷量が減少し、市場の卸売価格が高騰している。極端な暑さが野菜産地を襲い、品質低下と出荷量の減少を招いた
 ▼気象庁は、3カ月予報で8、9月も平均気温は全国的に高いと予測する。農林水産省による地球温暖化の影響調査で、水稲は登熟期の高温による胴割れや白未熟粒の発生、果樹では温州ミカンの浮皮、ブドウの着色障害などの被害増加が確認されている。暑熱が続くと家畜の事故も増え、生産性が低下する。今から十分に警戒し、必要な対策を打つか準備を整えておきたい
 ▼海外では、有数の小麦輸出国であるロシアも記録的猛暑に見舞われている。干ばつ被害が拡大し、穀物輸出を一時禁止する措置に踏み切った。国内の穀物価格抑制と家畜の飼料確保を優先した。小麦の国際価格は、カナダの天候不順やロシアの干ばつ被害を受け、6月以降高騰してきた。禁輸措置を機に一層の国際価格上昇が見込まれている
 ▼日本は年間に約570万トンを消費する小麦の9割近くを輸入で確保する。米国、カナダ、オーストラリアからの輸入がほとんどだが、輸入価格は国際価格と連動するため、いずれは輸入小麦価格の上昇も避けられない
 ▼地球温暖化は、気候や生態系に大きな影響をもたらす。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、干ばつや熱波、洪水など気象災害のリスク増加を指摘した。日本でも、ゲリラ豪雨など短時間の局地的な大雨が発生し、各地に被害が出ている
 ▼輸入国には納得しがたいロシアの対応だが、国民の生命を守るのは国家の責務で安易に批判できない。むしろ食料の6割を輸入に依存することの問題を国民全体で共有する機会とすべき。農業の現状をみると食料自給率向上を題目に終わらせない政策の確立は待ったなしだ。温暖化に適応した品種や生産技術の開発も急いでほしい。

100804_01.jpg 借地中心に42ヘクタールの圃場で、水稲やソバ、小麦、大豆、野菜などを生産する兵庫県姫路市夢前町の特定農業法人・有限会社「夢前夢工房(ゆめさきゆめこうぼう)」(衣笠愛之代表、49歳)。加工品の開発やレストランを手掛けるほか、3年前から田んぼアートを催し、行政や大学、地元の会社などと協力して地域に多くの人を呼び込んでいる。今年6月の田植えイベントには2日で延べ1300人が訪れた。研修や子どもたちの体験受け入れなど担い手の育成にも熱心で、農業を基本とした地域の活性化に尽力している。

 「農薬や化学肥料に頼らないこだわった農産物を作りたい」と衣笠さん。水稲は、27ヘクタールで19品種を作付ける。9ヘクタールが無農薬・無化学肥料栽培で「コシヒカリ」や「ミルキークイーン」「あきたこまち」などを栽培する。
 米は全量を直販する。ホテルやスーパーのほか個人客も150人ほどを抱える。慣行栽培は10アール当たり13万円、無農薬・無化学肥料栽培は同20万円の売り上げを目安に、単価を設定する。
 野菜や大豆、ソバは全量無農薬栽培だ。農薬や化学肥料の使用を極力減らす生産者を県が認定する「ひょうご安心ブランド」認証を取得している。
100804_02.jpg うどんやきな粉、そばなどこれまでに加工品10種類を開発。設備投資などのリスクを考えて、製造は委託する。旬の野菜や米、そばなどの味を知ってほしいと、2009年4月に農家レストランをオープンした。1年間で1万5千人が訪れたという。
 「田んぼを起点に多くの人を呼び込み、農業体験してほしい」との思いから08年に始めたのが「ひめじ田宴(でんえん)アート」だ。書写山ロープウェイから見下ろせる玉田地区の水田1・6ヘクタールを利用する。
 実行委員会は夢工房や行政、大学、JA、バス会社などで組織した。7品種を使い、稲の葉や穂で色を表現する。栽培は夢工房が担当し、収穫した米は「夢の舞姫」と名付けて販売する。
 田植えと生きもの調査、稲刈りと年に3回のイベントを企画する。今年は旅行会社4社に協力を呼びかけた。近畿一円から110人の参加者を集めたJTB西日本は「田植え体験に多くの時間を割き好評だった。来年は観光と組み合わせたプランも考えたい」としている。

(1面)

〈写真上:生育を確認する衣笠さん(左)と研修に来ている上岡さん(右)、竹内真史さん(36)〉
〈写真下:これまでに開発した加工品〉

 農林水産省は7月28日、有機農業の推進に関する全国会議を開き、2007年に策定した有機農業推進基本方針の進行状況を検証し、今後の課題などを意見交換した。来年度中の策定を目指す新たな基本方針の議論に反映する。産地や地方自治体からは、有機栽培技術の確立・普及や販路確保、消費者の理解促進など課題や要望が出された。推進計画策定や相談窓口設置など都道府県段階の体制は整いつつある。しかし、経費負担が伴う有機JAS認証の取り組みは少なく、流通する有機農産物は国内総生産量の1%に満たない。本格的推進に向け、農家が取り組みやすい環境整備や消費者の理解促進が求められる。有機農業をめぐる状況や課題を話し合った。
 
〈A〉有機農業推進法は、環境負荷を抑えた農業生産の振興を目指し、超党派の議員立法で06年12月に成立。政府は07年4月、有機農業に取り組む条件整備を重点とした有機農業推進基本方針を策定した。
〈B〉おおむね11年度までに、〈1〉技術体系の確立〈2〉全都道府県で普及指導員による指導体制を整備〈3〉50%以上の消費者が有機農業の内容を理解〈4〉推進計画の策定(全都道府県)と推進体制整備(全都道府県と50%以上の市町村)――などの目標を掲げた。
〈A〉推進計画を策定した都道府県は本年度で40となった。一方で860程度を目標とする市町村の推進体制整備は189で、全体の11%に過ぎない。
〈B〉「有機農業」の言葉を知る消費者は94.5%と高い。しかし、有機JASマークは「知らない」が77.5%に上った。有機農業が持つ環境負荷低減の役割も「よく知っていた」は31.5%にとどまった。9割以上が環境に配慮した農産物の購入を望んでいるが、野菜では特別栽培農産物であっても、45%が慣行と同程度の価格で購入している。
〈A〉技術に関しては、農林水産省は「有機農業等推進事業」を実施し、各地の有望な技術の実証試験・成果を提供したと報告した。34県が有機農業を担当する指導員を配置し、32県が相談窓口を設置している。ただ、研究の蓄積はまだ少なく、「有機農業技術に関する基礎研究を充実してほしい」(北海道農政部)などの要望があった。

(2面・総合)

 梅雨明けから全国的な猛暑となり、熱中症の死亡事故が急増した。農林水産省は7月23日、農作業中の熱中症による事故防止の徹底を求め、都道府県に通知した。農林水産省農業生産支援課は「今後とも全国的に気温が高く、農作業中の熱中症に気を付ける必要がある」と注意を呼びかける。

100804_03.gif 7月の日本列島は、勢力の強い太平洋高気圧の影響などで、記録的な猛暑に見舞われた。消防庁のまとめでは、7月19~25日までの1週間に熱中症で病院に搬送されたのは全国で9436人で、搬送直後に死亡が確認されたのは57人だった。
 「日が出ている屋外やハウスは、いつでも危険です。『キリのいいところまで』と頑張らずに、こまめに休憩を取ることが大切です」と、農林水産省農業生産支援課の今野聡(さとし)課長補佐。昨年、農作業中に熱中症にかかったのは12人で、「農業機械・農業施設による事故以外の事故」の1割程度を占める。全員が70歳以上だった。
 農林水産省は通知で、暑熱環境下での農作業は熱中症を生じるおそれがあるとし、作業上の注意点を挙げた。〈1〉作業は、気温の高い時間帯を外すか休憩をこまめに取り、作業時間を短くする工夫をする〈2〉帽子の着用、汗を発散しやすい服装をし、できるだけ日陰で作業する〈3〉作業施設内の温度が上がらないよう風通しをよくし、室内の換気に努める――などとしている。
 環境省の「熱中症環境保健マニュアル2009」によると、熱中症が疑われる場合は、すぐに休憩を取り、水分を補給することが重要だ。体温が高い、皮膚が乾燥している、頭痛やめまい、吐き気がする――などの症状がある場合は、すでに重症になっている可能性が高い。重症の場合は、救急車を呼ぶのと同時に、体を冷やす。
 現場での応急措置は、〈1〉涼しい環境へ避難させる〈2〉衣服を脱がせて水などをかける〈3〉意識があり、吐いていない場合は水分や塩分を与える――などがある。「一人の作業中に倒れると、助けを呼ぶことができません。『圃場に行ったおじいちゃん、大丈夫かな』などと、家族が気をつけてほしい」と、今野課長補佐は話す。

(3面・暮らし)

〈図:このような症状があれば(環境省「熱中症環境保健マニュアル」から)〉

100804_04.jpg 和歌山県のNOSAI和歌山南部(和歌山南部農業共済組合、坂本英隆組合長)は全国一のウメの生産地を抱える。本年産は3月27日、4月25日に凍霜害が発生。収穫直前の5月23、24日には強風による落果で大きな災害に見舞われた。NOSAI和歌山南部では、NOSAI部長の多くが損害評価員との兼務体制をとっている。被害申告に漏れがないよう呼びかけるとともに、NOSAI組織を挙げて適正公平な損害評価に努めた。
 
100804_05.jpg 「今年ほど大きな災害は初めて。被災農家のためにも、とにかく適正な損害評価に努めた」と話すのは、田辺市新庄地区でNOSAI部長と損害評価員を務める樫山修三さん(55)=ウメ2ヘクタール、スモモ40アールなど。今年で15年ほど担当している。「凍霜害が起こった朝は一面真っ白。幼果は2日ほどたつと黒ずんでしぼんだ。残ったウメも収穫直前の強風に遭った。平年の2~3割しか収穫のない農家もいた」と振り返る。
 新庄地区は、JA紀南の中でも青梅をいち早く出荷する産地として知られている。近年、農家の高齢化が進み、災害をきっかけに農業をやめてしまう人も多いという。「農家が生産意欲を失わないよう、果樹共済を活用して産地を守っていきたい」と話している。
 田辺市芳養地区の宮﨑量大さん(56)=ウメ1.4ヘクタール、温州ミカン1.3ヘクタール=もNOSAI部長と損害評価員を兼務。25年ほど前から担当している。災害のため、本年産のウメの収穫量は平年の4~5割程度。「樹園地を離して危険分散しているが、今年は山すその園で霜に遭い、山の上は強風で落果した。ミカンも不作傾向で、経営は厳しい」という。
 被害申告に当たっては、加入農家を1軒ずつ回って、損害通知書の農家記入欄に被害の状況などを記入してもらった。「自分の樹園地だけを見ている被災農家は、被害を過大評価したり、過小評価したりする。悉皆(しっかい)調査では、被害申告に漏れがないよう注意している」という。
 損害評価の前には損害評価員が集まって悉皆調査の評価基準の統一を行う。数カ所に標準樹を設けてあり、損害評価員間でばらつきが出ないよう努める。

(5面・NOSAI)


〈写真上:「ウメ栽培面積の減少に歯止めを掛け、産地を守っていきたい。災害から経営を守るため、多くの農家に果樹共済を活用して欲しい」と樫山さん(右)〉

〈写真下:「数年おきに災害が発生している。短期的な損得ではなく、万一のためのNOSAIをPRしたい」と宮﨑さん(左)〉

100804_06.jpg 千葉県流山市の中越節生さん(40)は、農薬や化学肥料を使用せず、露地野菜を年間120種類栽培。完全会員制の年間契約で販売している。会費は年間24万円で前払い制だ。現在、25組と契約し、月2回、平均17種類の野菜を配送する。CSA(コミュニティー・サポーテッド・アグリカルチャー=地域に支えられた農業)(※)という農業システムを昨年から採用し、30アールの畑は「MAKUWAURI(マクワウリ)」と名付けている。生産者には不作・豊作に関係なく安定的な収入が得られるのがメリット。消費者からは「生産者の顔が見えて安心でおいしい」と好評だ。
 畑では、現在はトマトやナスなど夏野菜を中心に、カボチャの「バターナッツ」や「キンシウリ」、葉もののフダンソウなど一般にはあまり流通しない珍しい野菜も栽培している。「お客さんのニーズにもなるべく応えるようにしている」と中越さん。病気に強く、栽培しやすい品種を選ぶ。
 会員には、野菜と一緒に保存方法や調理方法などを記載した紙も同封する。いつ畑に訪れてもよく、栽培や収穫体験ができる特典がある。
 中越さんは不動産会社、金融関係の営業、大工を経て4年前に就農。25アールの「わたしの畑」で無農薬・無化学肥料の野菜を栽培し、宅配を中心に販売してきた。就農1年目で友人の荒木亨二さん(39)と二人で昨年6月、完全会員制の畑「MAKUWAURI」をオープンした。
 「農業も営業が必要、ターゲットも絞る」と中越さん。サラリーマン時代の経験を生かし、イベントに出店したり、パンフレットを作成し有名飲食店に置いてもらうなど工夫して販路の拡大を図る。配達される野菜の分量や味などを試す3カ月3万円のモニター制度を設けた。

(8面・流通)

〈写真:「お客さんのパートナーとして一生付き合っていきたい」と話す中越さん〉

100804_07.jpg 「リンゴ本来の味を届けたい」と、青森県弘前市下湯口で葉摘みを省く葉とらずリンゴに取り組む清野俊博さん(59)。太陽光が十分に当たらず果実に色むらができるが、光合成でできた養分が蓄積されて糖度が増し、味は濃くなる。日当たりの良い園地に赤色品種を導入し、支柱を多く使って樹冠内に太陽光を取り入れる。樹勢をコントロールするため施肥量を減らし着果量を制限した栽培を行う。平坦〈へいたん〉地では作業性を重視したわい化栽培を実践する。「目標は、3年以内に15ヘクタールまで規模拡大し、1億円の売り上げ」という。

 岩木山を望むリンゴ産地で清野さんは、有限会社「せいの農園」を経営する。13ヘクタールの圃場では約6ヘクタールで栽培する「ふじ」を主力に「黄王〈きおう〉」「つがる」「シナノゴールド」など14品種を栽培。家族4人と社員5人で管理する。
 清野さんは、15年ほど前から葉とらずリンゴに取り組んだ。「大規模経営で葉摘みには労力がかかるため、省力化と経費節減を目的に始めた」という。

 「葉とらず」は、樹冠内に太陽光を取り込んで光合成を盛んにし、リンゴの色づきを良くする工夫をしている。支柱は周囲の農家の2倍ほど入れて枝を持ち上げたり、ひもを使って引っ張る。
 通常の栽培では、リンゴの色づきを良くするため、果実の周りの葉を摘み取って太陽光を当てたり、地面に反射シートを敷く。しかし清野さんは、反射シートを使わず作業の省力化を図っている。慣行栽培に比べ労力は20%、経費は約200万円の削減を実現した。
 効率的作業体系の構築を重視し、労働生産性の向上を進めている清野さん。10アール当たりの労働時間は110時間(県平均267時間)、労働生産性は県平均の1.4倍を達成する。

 園地は草生栽培で、根元や背の高い雑草は刈り取る。病害虫防除用の薬剤は慣行の5~6割に抑えている。
 平坦地にはわい化栽培を導入、山手の園地では雪害に強い普通台木による栽培を行う。樹高は、作業効率を高めるため3メートル以下に抑えた。日照条件が良い園地は赤色、条件が良くない園地は黄色の品種を植える。

(9面・営農技術)

〈写真:「葉とらずリンゴは糖度が安定している」と話す清野さんと息子の耕司さん(30)〉

100804_08.jpg 6月中旬以降の大雨は、九州や中国地方を中心に農林水産関係でも多大な被害をもたらした。被災地のNOSAI団体は共済金の早期支払いに向けて動き出している。被災農家に被害申告を呼びかけるとともに、迅速かつ適正な損害評価に努める鹿児島県のかごしま中部農業共済組合(NOSAI中部、早水秀昭組合長)を取材した。
 
 霧島市霧島地区で和牛繁殖23頭を経営するNOSAI中部の川畑繁副組合長は、「7月3日早朝の集中豪雨で川の水かさが一気に上がった。道路も水田も水につかり、一面海のようになった」と当日の様子を語る。
 霧島地区では、2日の夜から3日朝にかけて大雨が降り続いた。午前4~5時の1時間で降水量126ミリを記録。天降(あもり)川の支流・手篭(てこ)川が氾濫(はんらん)し、水稲の冠水や圃場の崩壊などの被害が出た。
 「当日は雷と雨が一晩中続いていた。苗を移植して半月くらいでやられた」と話すのは水稲1ヘクタールと和牛繁殖80頭を経営する馬場篤政さん(53)だ。50アールの水田が冠水した。「損害評価員を務めて6年になるが、これまでの被害は初めて」と馬場さん。「稲が立っていても生育には影響が出ると思う。眼合わせ会で基準を確認し、適正な評価を心掛けたい」と話す。

(2面・総合)

〈写真:川が氾濫し、辺り一面が水につかった(7月22日、霧島地区)〉

100804_09.jpg 【秋田支局】美郷町本堂城回の星山和以紀(ほしやま かずいき)さん(61)は、乗用型粒剤動力散布機を作り、農作業に役立てている。
 星山さんは水稲4.3ヘクタールを妻と2人で作付け。乗用型粒剤動力散布機は、乗用型田植機と背負い動力散布機を合わせて作った。「当初は、溝切りに使う目的で、田植機だけ改造していた。作っている段階で、動力部分も何かに使えないかと考え、背負い動力散布機を組み合わせた」と説明する。
 特徴は、散布作業部分の取り外しが可能なこと。通常は、田植機の後部に付け、散布ホースが左右に動き、均一に散布できる。ただ、穂肥えでは均一に散布するより、生育の遅い個所への追肥が重要となるため、屋根部分に付け替えることで、手動で狙ったところへの散布を可能にした。「屋根を付けたことで、日よけにもなった」と話す。
 散布機には、稲を倒さない工夫も施されている。「ゴムタイヤの突起部分を削り、細くした。ぬからないよう、土壌の状態に気を付ける必要があるが、倒れる個所が減った」と話し、「溝切りのほか、追肥や薬剤散布に使用し、労力低減につながった」と強調する。

〈写真:乗用型粒剤動力散布機に乗る星山さん〉

100804_10.jpg 【山形支局】川西町高山で大豆を栽培する那須新一さん(60)は、大豆播種機を改良し、播種と除草剤散布が同時にできる作業機を考案した。
 作業機は、トラクターにアタッチメントとして装着するもの。肥料散布が可能な3条播きタイプの播種機に、除草剤散布できるようにタンクやホース、ノズルなどを取り付ける。タンク容量は40リットル、満タンで20アールの作業が可能だ。種と肥料とほぼ同時に使い切れる仕様になっている。
 同町は転作作物として大豆栽培が盛ん。那須さんも水稲約9ヘクタールと大豆約18ヘクタールを作付けし、取引業者と契約栽培を行う。那須さんは「この作業機で、散布した除草剤も効いている。作業効率が良く、楽になった」と話す。
 これまでは、大豆の播種作業の後、同じ圃場をもう一度除草剤散布に回るという作業を繰り返していた。作業は、早朝4時ごろから始め、平地はブームスプレーヤーで液剤を、中山間地は背負い動力散布機で粉剤散布する。天候にも左右されやすく、強風で作業ができないこともしばしば。圃場も遠くに点在するため手間がかかっていた。
 播種と除草剤散布の同時作業で効率は倍になるという。「大豆栽培の仲間からも、『作ってくれないか』と頼まれるほど」と那須さん。「今度は畝間の除草作業に何か工夫できれば」とさらなるアイデアに挑む。

〈写真:播種と同時にノズルから薬剤が噴霧〉

100804_11.jpg 【広島支局】世羅町安田で「瀬戸ジャイアンツ」や「安芸クイーン」などブドウをハウスで栽培している梶川耕治さん(73)は、ハウスの雨どいから直接、雨水を田に流せるよう工夫して、水不足に備えている。「おかげで田の水の心配をしなくてよくなった」と梶川さんは話す。
 梶川さんの圃場周辺には河川がなく、雨水だけに頼って農作業を行うため、昔から水不足の心配が常にあったという。
 梶川さんは、2年前に田の隣に連棟ハウスを新設する際、さびにくいステンレス製の雨どいをハウスの谷間に設置。雨どいにたまった水は、妻面に設置したパイプへと流れ出る。パイプは途中で枝分かれし、片方はそのまま地面に垂直に延び、もう一方は隣の田へと横に伸びている。雨水を田に延びるパイプに流したいときには、地面に延びる側のパイプの出口にふたをして水が流れ出るのを止める。パイプの分岐点まで水がたまると、田に流れ出る仕組みだ。
 ハウスを活用する以前から、雨水をタンクにためて普段の農作業に利用している梶川さんは、「雨水は井戸水よりも細菌数が少ないので、農薬の希釈水として使えるし、エコにもつながる」と話す。
 次は、雨どいからハウス内のタンクに雨水をためられるように改良して、灌水(かんすい)や作業に使いたい」と意気込む。

〈写真:ハウスの雨どいから田に雨水が流れるよう設置したパイプ〉

100804_12.jpg 【鹿児島支局】口蹄疫(こうていえき)の畜舎への侵入を防止しようと、霧島市国分郡田の窪田繁さん(52)は、車が通ると自動的に消毒液を噴霧する装置などを考案、敷地内に設置した。
 2.5ヘクタールの敷地にある畜舎8棟で、牛300頭を飼育する窪田さん。入り口に設置した自動噴霧機は、家庭用センサーライトを利用したセンサーが車両を感知すると、ポンプが動き出し左右から霧状の消毒液が噴き出す。
 噴口ノズルを改造した動力噴霧機は、トラクターでけん引し、地面や牛舎内から屋根まで薬剤を散布する作業を一台でこなせる。
 窪田さんは「部品は、自宅にあった物やもらった材料を使ったので、経費はほとんど掛かっていません。この機械を十分活用して、口蹄疫の侵入防止に努めたい」と話す。

〈写真:農場入り口の自動噴霧装置〉

100804_13.jpg 【島根支局】昨年から県内でも珍しい〝ナイターのブドウ狩り〟を始めた、安来市広瀬町富田の「足立ぶどう園(足立昌俊代表=50歳)」。75アールの園地うち60アールの観光ブドウ園では、今年も7月17日からナイターが開園し、家族連れなどでにぎわっている。
 この取り組みは、「仕事が終わってからもブドウ狩りを楽しみたい」という常連客の声と、「夕涼みとして楽しんでもらいたい」という足立さんの思いから始まった。
 照明設備の導入は、市やJAなどで構成される「産業サポートネットやすぎ(4団体)」が実施する「やすぎ夢追人支援事業」などを活用した。
 同園の新たな試みを支援する安来市商工観光課では、「近くにある温泉旅館や観光施設などとのタイアップ事業にも期待しています。安来の新たな観光名物になってほしい」と話す。

〈写真:照明の下でブドウ狩り〉

100804_14.jpg 【茨城支局】「並木植えにしてから、米の食味、甘味が共に増した」と話す、稲敷市の塚本憲男さん(60)は、昨年から水稲(9.5ヘクタール)の並木植えに挑戦している。
 並木植えは、6条用の田植機の2番目と5番目に苗を置かずに植える。雑誌「現代農業」に掲載された記事を読んだことがきっかけで始めた。苗や肥料の使用量は抑えられて、収量は維持できるという。
 「並木植えをした稲の姿を見ると、ほかの田んぼよりも明らかに元気が良い。それを見ているとまた来年もチャレンジする気持ちになる」と話す塚本さんだ。

〈写真:並木植えの圃場〉

100804_15.jpg 【福岡支局】大木町のイチゴ農家、池上祥子さん(46)は自家産の「あまおう」を手作業でペーストに加工。生ジュースなどを扱う専門店がこれを練り込んだソフトクリームを販売し、評判だ。
 母の静子さん(82)と共に、あまおうを21アールで栽培。「イチゴペーストの依頼があり、いろいろな方法で作ってみました。試行錯誤の結果、あまおう本来のおいしさ、色の鮮やかさを生かす作り方を見つけました」と池上さん。
 5~6月に収穫した1トンのあまおうを冷凍会社に預け、注文を受けるたびに、必要な分だけペーストに加工している。「1カ月の納品量が約70キロと、夜なべ仕事でできる量なので、楽しみながらやっています」と池上さんは笑う。
 このソフトクリームは、福岡県などにフランチャイズ展開する専門店「くだものかふぇ」(有限会社「ライフ」=本社・大分県)の7店で販売されている。
 池上さんは「これからも、大木町のイチゴのPRも兼ねて、高品質のイチゴとイチゴペーストの生産に励みます」と話している。

〈写真:ペーストを手に池上さん〉

 ▼昆虫採集が夏休みの自由研究で定番だったのは昔のこと。今や昆虫少年そのものが絶滅危惧種と指摘される時代だ。そんな中で年々盛んになっている田んぼの生きもの調査は、昆虫少年の復活や、同じく希少なカワガキ(川で遊ぶ子どもたち)増殖への貢献が期待されている
 ▼昆虫やカエル、魚など水田周辺に生息する動物は2千から3千種と言われる。夏の水田にもクモやバッタなど小動物は多い。あぜを歩けば獲物を探すヘビとはち合わせするかもしれない。捕まえて標本にしなくても、デジカメに撮りためておけば、あとから名前を調べたり、自分なりの図鑑を作るのは簡単だ
 ▼農林水産省と環境省が進める田んぼの生きもの調査では、トウキョウダルマガエルやコガタノゲンゴロウ、コオイムシなど絶滅が心配される希少な動物が多数見つかっている。一方で既存の生態系を脅かす恐れがあるウシガエルなど外来生物も多く確認された。水田や周辺の水路を調べてみれば、意外な生きものが見つかる可能性がある
 ▼今年は国連が定めた国際生物多様性年であり、10月には生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開かれる。各国・地域に固有の生態系を守るため、外来生物の移動や侵入をいかに制限するかも重要なテーマだ
 ▼田んぼに限っても、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)やイネミズゾウムシは、生息地域の拡大とともに稲作への被害が大きく大問題となった。定着した地域では防除が欠かせない
 ▼身近な田んぼを調べてみれば、大人には地域の生態系が昔と比べて様変わりしたと実感できるだろう。機械化が進み、子どもが田んぼに入る機会は減っている。夏の1日を子どもと田んぼで過ごし、生きものを調べたり、食べ物との関係を考えてみる時間を持つのも有意義ではないか。

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