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防風林「改めて、先人の記録を紐解きを【2016年9月1週号】」

 ▼過去の自然災害記録を基に、危険を未然に察知し、適切な対策をとることで被害は最小限に止められるはず。だが、太古の天変地異を伝える古文書や碑(いしぶみ)忘れ去られている例が多い。
 ▼『天災から日本史を読みなおす―先人に学ぶ防災』(磯田道史著)は、だからこそ地層や古文書、碑文などの照合分析が重要という。1586年の天正大地震は近畿・東海・北陸に大被害をもたらした。研究ではM7.9と推測され大坂城や長浜城、大垣城などが倒壊。若狭湾に巨大津波が押し寄せたとの記録が残る。
 ▼太閤・豊臣秀吉は強大化する徳川家康を討伐する態勢を固めたその矢先、地震が発生し計画は頓挫する。歴史に「なら...」は無意味。地震予知できたなら、日本史は違う展開になっていたのではと、磯田氏はいう。
 ▼東日本大震災や熊本地震などの震災に対し、地震波形の変化や交通情報、被災者行動といったさまざまなビッグデータを分析する研究が進んでいる。これをどう防災行政に取り込み、住民の危険予知や避難行動に生かせるかが最も難しい課題だろう。
 ▼海岸沿いの松林を防波堤代わりに見直す風潮もある。その流木が住宅や橋などインフラ破壊につながる事例もあると磯田氏。北海道や東北では相次ぐ台風による傷痕を残した。地震・津波対策を含め、伝承される災害記録の紐(ひも)解きと、直面した被災状況を100年、千年後に伝えることが大切。防災の日(1日)を契機に、改めて先人の記録を真摯(しんし)に受け止めたい。