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防風林「変化する天候に天の恵みを得る苦労【2016年10月2週号】」

 ▼キンモクセイの花がほのかな甘い香りを放つ10月に入っても、台風が猛威を振るいながら日本列島を北上する近年まれにみる気象。しかも30度近い猛暑日もあり、秋の装いではじっとり汗がにじむ異様さだ。
 ▼「野ざらしを 心に風の しむ身かな」(松尾芭蕉)。秋の物悲しさを誘う句だが、さすがの芭蕉もこの天候の下に吹く風では、わびさびを感じるどころではない。今月12日には芭蕉忌を迎え、各地で催される句会の参加者はさぞかし汗を拭きながら...との光景が見られるやもしれない。
 ▼冷夏や暖冬の予想は農作業暦に影響をおよぼしやすいことから話題になるが、「暖秋」は夏と冬の谷間にあるためかなぜか影が薄い。調べるとここ数年は暖秋傾向が続いていて、鍋物シーズンにハクサイなど秋を彩る野菜の消費低迷が心配されている。
 ▼二十四節気でいうと今は「霜降り」、七十二侯では「菊花開く」だ。近年の気象状況に合う事象にしようとの意見も多い。俳句に詠み込む季語も適切となり、なにより歳時記をもとにした農作業も風雅ではないか。
 ▼農林水産省は4月以降、気象庁の気象情報をもとにした技術指導を多く通知した。夏前の高温に続き大雨、後に高温や渇水、9月末の日照不足と猫の目のように変化した。今年産水稲の作況指数(9月15日現在)は全国平均で103、作柄は「平年並み」ないし「多い」と見込んだ。農家が自然からの恵みを得るためには、あまりにも過酷な災禍を人知で乗り越えなければならない。