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防風林「作出した品種を自由に栽培できる権利【2016年11月1週号】」

 ▼果樹農家の園地を訪ねると、果樹の枝に何本ものリボンが結ばれているのを目にする。他品種や変わり枝を接いだ目印。そんな個人育種家が努力を重ねても、新規品種が作出できるのはごくわずか。
 ▼2015年度に品種登録された作目のうち個人での育種は27%で、種苗会社の53%に次ぐ。果樹のみでは個人の出願登録が42%と約半数。水稲は企業育成の「みつひかり」の作付けが増えているが、国や都道府県による登録が8割以上だ。
 ▼政府の規制改革推進会議は、資材価格引き下げに向けた施策の基本方向の一つとして、主要農作物種子法の廃止を挙げた。同法により国・県の開発品種が産地品種銘柄で優先される傾向が強く、民間の品種開発意欲を阻害しているとした。農産物検査法改正で選択銘柄が追加されたものの、銘柄指定されない品種は検査を受けても特定が不能のため、品種名を表示し販売できず導入の壁となっている。
 ▼祖先が育成した酒米品種が何十年も前に栽培が途絶え、それを地元で復活させた農家はこの壁によって、再指定されるまで酒瓶に品種名を表示できなかった。「品種は栽培されることで名が残り、それが誇りだ」とある育種家。「その他の品種」では開発意欲もでまい。
 ▼農家の栽培作物の品種選択は権利であり生命線のはず。特に小規模経営でも特徴ある品種を栽培することで生き残りにつながる可能性もある。そこに規制があっては農家や地域の活力は失われる。