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防風林「経済優先の幸福が、真の国益につながるのか【2016年11月3週号】」

 ▼世界で最も清貧な大統領として有名なウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領。公邸ではなく田舎の農場に国民より低い収入で生活する。「発展は人類に幸福をもたらすものでなければならない。愛情や人間関係、子供、そして必要最小限のものをもたらすべき」。この言葉は世界中に共感を呼んだ。
 ▼誹謗(ひぼう)・中傷合戦の末、米国大統領にドナルド・トランプ氏が選ばれた。他国では、内部情報を友人に漏らし便宜を図ったとして糾弾される大統領がいて、国民の窮乏を顧みず核実験やミサイルを乱射する首領もいる。国家権力者は多種多様なのだとムヒカ氏をみて思う。
 ▼米国は新大統領就任後にTPP(環太平洋連携協定)からの離脱が濃厚だという。そんな渦中、衆議院特別委と本会議では議論なき強行採決。TPP発効は暗雲漂う様相だが、国会承認を採択する以上、将来の農業や子息に経営移譲していいものか?との不安を抱く農家が納得する議論を行うのが、国民への義務だろう。
 ▼国際協調を乱し人種による国民の分断を予見させる権力者に国民の安寧は遠い。一方、食料供給や経済に直結する決定を、安易に押し通す国会や首相を戴(いただ)くわが国民も同じ。再考の府・参院での審議に注目したい。
 ▼日本や他の諸国は、ムヒカ氏の「幸福をもたらすもの」の意味を胸に手をあて考え直すべきだ。自国の農業生産や農山漁村の衰退と引き換えに経済最優先で勝ち得た幸福が、真の国益につながるか否か?を。