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防風林「酉年の今年、『鴻鵠(こうこく)の志』を持てるように【2017年1月1週号】」

 ▼新しい朝の訪れを告げる鶏。「酉(とり)年」は縁起のいい干支(えと)だとされる。TPP(環太平洋連携協定)からの離脱を明言するトランプ氏が今月、米国の新大統領に就任するが、現実となれば発効の可能性はゼロに等しい。昨年、日本では自由貿易の先導役よろしく国会承認手続きを完了したが、不安を抱く農民の心中はまだ夜明け前。
 ▼米国は巨大産業の衰退や企業の海外流出、増える難民問題を抱える。加えて新自由主義体制下で資本家に偏重した利益配分が所得格差を生み出し、国民利益に反すとの不満が大統領選に現れた。トランプ氏が有言実行するか否かは予測不能、予断を許さないのは米国も日本も同じ。
 ▼交渉が進むEU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)交渉では、「守るべきものは守る」の姿勢を貫いてほしい。相手国が農産品の関税撤廃を迫るのは、農業を国益と位置づけているためで、自然や農村景観を守る姿がその国の品格に値する。
 ▼政府は、農業資材価格の引き下げなど13項目の農業競争力を強化するための政策方針を決定した。だが、農地集積や輸出対応、担い手確保などが難しい中・小農家は多く存在する。競争力の前に、経営維持が精一杯という経営をいかに守るかが先。
 ▼今後、農業経営の安定対策の一つに収入保険制度が導入される。多様な農業の存在がひいては国益につながる。新たな分野へ踏み込む際の、農家の安心の杖(つえ)として機能してほしい。今年は、燕(ツバメ)や雀(スズメ)でも「鴻鵠(こうこく)の志」を持てる酉年にしたい。