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防風林「稲架け、呼び方も方法も多様だが稲作文化遠くなりにけり【2017年2月4週号】」

 ▼稲を天日乾燥する道具「稲架」を"はざ"と読むのが一般的らしいが、"はさ""はぜ""はで""がぼし"と呼ぶ集落もある。「正しいのは何?」と問われ言葉に詰まった。早速、図書館に足を運んで『稲干しのすがた』(浅野明著)を開いてみた。
 ▼国内には、「掛け干し」のほか「地干し」「積み干し」など、呼び名だけでなく方法も多彩。地干しには"平干し""立て干し"と異なる方法がある。立て干しは穂を上に向ける地方が多く、乾田地帯では穂を下にする例も。穂発芽が心配だが、茎を乾かすことで籾(もみ)水分量も早く抜けやすいというのが理由だ。
 ▼さて掛け干しだが、タモやハンノキなどの立ち木に木材や竹などを横に通し稲束を掛ける「立ち木稲架」や田に長い杭を打ち込む「棒稲架」、数本の木を交差させ傾斜部に横木を通す「斜め稲架」、フクロウや小屋に似せた形もある。
 ▼強い風の吹く地方などに積み干しは多く見られ、穂先を内側や外側にと方法は地方独自の工夫を凝らした。豆類などでは現代でもニオ積みが散見される地域も多い。人手を要す自然乾燥は高度経済成長期以降、激減し高齢者の記憶にしか残っていない。
 ▼自脱コンバインと米麦乾燥機の普及が、稲架掛けの重労働から解放させたが、稲作文化の途切れた味気ない農村風景に変えたのも事実。最近はにわかに米の良食味志向か、今風のスチール製稲架も見られるようになった。労力に見合う商品価値を米価に反映させたいものだ。