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防風林「新たな扉を開くときは『なせば成る』【2017年3月1週号】」

 ▼米国の第35代大統領・ジョン・F・ケネディが生前、日本人記者団からの「最も尊敬する日本人は?」との質問に、「ウエスギヨウザン」と答えたが、誰もその名を知る者がなく目を白黒させていた...という。
 ▼上杉鷹山は江戸期の米沢藩第9代藩主、幕府に版籍を奉還する直前まで窮迫した財政を立て直した。上杉家は戦国の雄・上杉謙信公の流れをくむ名家だが、減封を重ね15万石の小領主に。にも関わらず会津120万石時代の家臣団6千人を召し抱え、藩の収支は借金まみれ倒産寸前だ。
 ▼そこで九州の小藩主の次男・鷹山が、米沢藩主の姫を娶(めと)り後継者となる。領民や家臣団だけに及ばず自ら質素倹約を課し、紅花や縮織りなどの殖産興業、武士による新田開発、藩校を設立し人材育成に着手した。これらの取り組みが功を奏して財政難から脱出したばかりか、天明大飢饉(ききん)でも藩内から死者を出さなかった。
 ▼鷹山は藩主が慎むべく心得を「伝国の辞」に書(しる)したほか、「なせば成る為さねば成らぬ何事も」は誰もが知る名言だ。農家伍什(ごじゅう)組合など相互扶助の精神は今のNOSAI制度に引き継がれ、農家経営安定の礎として70年の長きにわたり機能し続ける。
 ▼NOSAIは今後、災害補償と収入保険の両輪で農家支援の責務を負う。鷹山が腐心したのは藩内の意識改革。苦難を共にする側近に「改革の火種を灯(とも)し続けよ」と諭し、反対派もやがて足並みをそろえる。「なせば成る」。新たな扉を開くとき、肝に銘じるべき言葉だ。