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防風林「被災者の再起を丹念に息長く【2017年3月2週号】」

 ▼東日本大震災から6年。あの時、生まれたばかりの幼児は小学生に、中学校に進学した児童は高校を卒業する年齢か。だが晴れの姿を見られずに、亡き子を思い時間が止まったままの被災者も多いと聞く。記憶にとどめるべきことと、忘れるべきことの取捨選択は難しい。
 ▼「この時期だけ震災特集を組むマスコミは多い。私たちは、発生以降毎日、被災者と寄り添い今も継続中だ」とした東北圏域紙記者の講演が胸に突き刺さる。地震や津波、原発事故からの避難生活、復旧・営農再開。今年も特集を組んだ。農業紙記者として自問自答してきた。「読者の期待にこたえられているのか」と。
 ▼12年前、中越地震の発生直後、被災地・山古志に入るべく準備を進めたが激しい余震続き、地元NOSAIさえ立ち入りできない状況。取材とはいえ、断念せざるを得なかった。全国紙や放送などマスコミは、規制線を越え被災地での報道合戦。それを横目に言いようもない敗北感を味わった。
 ▼被災地に行ったのは数カ月たち、取材対象農家が仮設住宅に入居した数日後。父親から経営を移譲されてすぐに被災した若き和牛肥育農家。「飼育中の牛が圧死した後に、取材を受けても何も言えなかった。立ち直れた今がいい機会だ」。
 ▼刻々と変化する災害はマスメディアの速報性にはかなわない。だが被災者が再起する姿を丹念に報道することで、多くの人に記憶し続けてもらうことができる......自問の解答だ。