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防風林「古い農機も過去に栄光あり、海外で老骨振るう【2017年5月1週号】」

 ▼日本製トラクターのブランド人気が、開発途上国の農家にも浸透中――とイメージできる農機会社のテレビCMが放映されている。事実、2016年の生産実績(日本農業機械工業会)では、トラクター生産台数のうち72%が輸出仕向けで、国内仕向けは3割にも満たないのだ。
 ▼この状況は新品だけでなく、更新時に発生する下取り品などの古い農機具も海外では引く手あまたで、買取業者によると耐久面での評価が高く輸出先は50カ国以上だという。ある業者の農機集積場を訪ねると、時代を築いた数々の名機が並んでいた。
 ▼ロータリーの耕深制御を可能にした元祖「ICトラクター」、座席の前後位置を付け替えることが可能な「リバーシブルトラクター」、座席が左右二つある「二人乗りトラクター」。さらに四輪駆動四輪操舵式11馬力「乗用管理機」、一世を 風靡した「駆動式ディスク型プラウ」もある。
 ▼どの機種も当時は国内農家にもてはやされたが、その機能は普遍化し廃れ第一線から退いた機械たち。「奮発して買い替えた」と新品トラクターのフロントノーズをなでた若手農家がいた。目の前の機械は、鉄板がボコボコにへこんで剥げた塗装が痛々しい同一の機種。それでも動く。
 ▼ICT(情報通信技術)で数年後には無人走行式トラクターが世に出る。新しい技術が夢の農業を築く原動力になればいいと思う。農家の手や足だった農業機械から、人工知能で管理された機械に変身したら夢は誰が描くのだろうか。