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防風林「農家の意識改革が集落の将来を決める【2017年5月4週号】」

 ▼大区画畑が黄金色に染まる麦秋風景を熊本で見た。集落営農に行き詰まり、今は法人経営体が一帯を耕作するという。記憶によみがえったのが、かつて訪ねた一集落一農場法人の代表者。「全農家の意識改革が重要だった」と住民合意を求め奔走した。
 ▼各戸所有の古い農機は廃棄処分してもらい、新しい機械は法人が買い上げて減価償却後に処分、大型農機を導入し共同所有にする。「もう"個人経営には逆戻りできない"との状況を知ってらうのが目的」と言う。
 ▼だが、「運営が行き詰まり田んぼが返ってきても、田植機やコンバインがなければ米は作れない。機械はその時の保険」と多くが反対。その通りだと思った。「私も田や機械を法人に委ねる」では、説得力はない。法人設立後の経営計画書を作り根気強く各戸訪問を繰り返す。「私の意識改革から始まった」と彼は明かす。
 ▼水稲は専任者を決め、労力不足には土日でも従事できる組合員を募った。畑地転換し野菜と飼料作を導入。野菜は高齢者に託し、米粉パン工房を併設した直売所は女性の副収入の途に......など雇用創出を配慮した
 ▼同法人は多角的な事業を展開させて今もなお健在。農地中間管理機構による農地集積を進める今、営農の継続を願う小さな農家を切り捨てる"農地置いてけ堀"では、人の姿が見えないあの麦秋風景が増えるばかり。そこに住む農家の意識改革で、集落は生き返ることが可能だ。