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防風林「理念なき経営は 根のなき浮き草のよう【2017年6月1週号】」

 ▼ラベル表示と異なる規格の製品や賞味期限切れ食品などを販売する「擬装事件」が、過去に多く発生した。現在も、莫大な経営赤字を抱え決算報告を先延ばしする大手電機メーカーや、政治との癒着を疑われる学校法人の報道が世間の耳目を集めている。
 ▼企業も人と同じモラルが求められるのは当然。故・松下幸之助氏など創業者の思想や姿勢がそのまま「経営理念」として引き継がれ、信頼を構築した企業の例は多い。だが、組織拡大や世代交代を契機に忘れ去られお飾り同然になっている企業も。
 ▼古い経営体質を刷新し企業競争力が求められるケースも多い。同族経営を廃し外部経営陣を迎え再出発したある会社の事例だ。農家と企業が互いに「あるべき農業の姿」の実現に向けて、情報交換などを通じ「作る側、売る側」の枠を超えた関係に徹する理念の継承はなかったようだ。
 ▼収量のみの追求ならば、施肥や薬剤で可能だろう。深耕し緑肥を土壌還元する作業は、手間を掛け1作分の収入を棒に振っても農家には代えがたい投資なのだ。過去の経営者と膝詰めで語り明かした記憶のある農家は、今の会社に限界をみたという。
 ▼300年続く農家の後継者は、父親と違う作目を選択し経営を軌道に乗せた。父もまた祖父と違う営農で切り開いた経験者という。人や営農形態が変化しても、家に伝わる経営思想がそこにはある。「理念」なき経営は、見掛けは立派でも根のない浮草なのだ。