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防風林「水の循環を改めて考えることが大切【2017年6月2週号】」

 ▼環境学者のレスター・ブラウン博士がかつて訪日した際に、「農作物生産は水の収奪であり、農産物輸入は水の輸入そのもの。森林の急速な畑地転換で砂漠化が急速に深刻化している」との講演を聴いた。
 ▼アジアモンスーン気候にあり、毎年のように豪雨が発生する日本では近年、水不足や渇水への備え意識は万全だとは言い難い。これまでに、気象変動の影響で日照りや異常高温の長期化が、ため池や天水に頼る地域営農に著しい支障を来してきたことは記憶に新しい。3カ月天気予報によると、今夏は高温となる予想だ。
 ▼人は満たされている時に、その大切さを忘れる習性があるようだ。豪雨時に土砂崩れや河川氾濫などの被害が発生し、山林や水田が果たしている保水力に改めて気づかされる。政府の「水循環白書」(29年版)では、年間平均降水総量6400億立方メートルのうち、大気への蒸散分を引いた活用可能な水量は4100億立方メートル。大雨による洪水などで海に流亡した水量が多いほど、水の損失となる。
 ▼明治初期、京都府舞鶴市に海軍が軍港を造営する際、用水確保が急務となり背後の山あいに水源池を造り地元民にその管理を委嘱した。現在も周辺の森林や環境整備に取り組むという。山村で暮らす人の営みで森が守られ水源維持につながっている。
 ▼米国は、自国の不利益を発生させるとして地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。同じ地球にあるこの国にも農業がある。温暖化での水不足が不利益を生むことは計算外だ。