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防風林「「備えの種」の自己選択は農家の鉄則に【2017年6月3週号】」

 ▼地方には他集落や遠方に娘が嫁入りする際、その家に伝わる地野菜の種を行李(こうり)に忍ばせる風習があるという。その種が実を結び、主婦として家族を支える備えにしてほしいとの親の願い。この種は地野菜として根付き伝承される。
 ▼「備えの種をまこう。」は、今年70周年を迎える農業災害補償制度のキャッチフレーズ。経営安定を脅かす万が一の障害に対して、「備え」の意識をさらに強固に広める...との決意を種に込めた。備えの種は、大地にしっかり根を張る大樹に育てたい。しかも咲く花の色が異なる2本の主枝をもつ。
 ▼改正農業災害補償法が国会で成立した。幅広い品目に対応し価格低下などを含めた収入減少を補てんする収入保険制度の導入と、自然災害による経済的損失を補てんする農業共済の両輪で、農家のセーフティーネットを構築することになる。
 ▼農家がどの花の色を選ぶかは、経営に合った自主的な選択にゆだねられる。とかく選択には、安易で安価な方に流れやすく、「無保険状態の農家がでなければいいが」と国会審議でも憂慮する多くの声が上がった。自動車の所有者が自賠責保険と任意保険に加入するように、変化する自然や価格を相手の農業では、備えがなければ浮き苗の経営だ。
 ▼農業経営に対する多様な考え方があっていい。「無からの災害再起は本当に難しかった」と、被災農家はみな振り返る――万が一を想定した「備えの種」の自己選択は、危機管理の鉄則といえる。