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防風林「イノベーションと産業論の狭間の農村社会とは?【2017年7月2週号】」

 ▼国内の農業経営体数が130万を切り125万8千となったことが、農林水産省の農業構造動態調査で分かった。減少する個人経営体に対し法人など組織経営体は増加傾向。
 ▼農地の8割を担い手に集中、資材・流通コスト削減を産業界の努力やAI(人工知能)・ロボット技術などイノベーション(技術革新)活用で高度化を図り、農産物輸出力を強化。「攻めの農林水産業」への政策シナリオは着々と前進する。
 ▼遡(さかのぼ)ること三十数年前の学生時代、国民経済研究協会理事長の叶芳和氏が発表した「農業・先進国型産業論」が物議をかもした時期が。「規模の拡大とイノベーション、人材力育成により、日本農業は先進国型産業に変化できる」との論調は明快。だが当時はまだ食管法時代、農地流動化は一向に進まず小規模農家層が多かった。しかも、イノベーションという言葉は、田舎出身の学生にとっても、現場感覚が希薄な実現の可能性が低い論調だと解釈した。
 ▼現在、この農業・先進国型産業論にならった農業改革が進められている気がするのだ。規制改革推進会議などでの提言が、多くの人に忘れられた同論が下敷きだったとしたら背筋が凍る。
 ▼囲碁などでAIとの対局は高段者が完膚なきまで敗北。農業でも無人農機が実用化され数年後に市販化される。まさに「イノベーション」「産業論」に基づいた農業施策が展開された国の集落や文化、多面的機能はどうなるのかとふと考えてしまう。