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防風林「自然災害報道、現場と東京の遠い距離【2017年7月3週号】」

 ▼事務所の窓から見える風景は、ギラつく太陽と抜けるような青空。なのに、九州北部では記録的な豪雨。テレビは山林からの流木が家屋や圃場を襲った光景を伝える。東京にいては実態は見えない。
 ▼九州へ農家ルポに出張中の本紙記者に、早めに福岡県入りし撮影するよう指示。被害が甚大な朝倉市周辺は大雨が降り続き、取材中の事故は絶対に避けたい。「危険箇所に立ち寄らない。土砂崩れの恐れがある傾斜地に近づかない。地元NOSAI職員の指示に従うこと」。そうメールで伝えたが一まつの不安がよぎる。
 ▼「撮影を終了し現場から離れた」と報告が入るまで、後悔の念に駆られる。深夜の降版締め切りまで時間は少ない。在京記者が聞き取った被害県の現況メモを元に記事を一気にまとめる。だが、農林水産省発表の被害状況のデータが前日のまま未更新だ。レイアウト時間を考慮すれば限界は間近。ひとまず、選んだ写真3枚と執筆途中の記事を入稿しておく。
 ▼午後5時過ぎ、農水省発表当日現在の更新情報を確認。記事修正しサーバーに入れ胸をなでおろす。だが、福岡と大分の被害数字はほとんど反映されていないのは、農業被害状況が調査中だから。現時点での最新"大本営"発表を掲載するしかない。
 ▼自然災害での経営的損失を補てんする団体が発行する農業紙。迅速な災害報道と被災農家の再起の足跡を報じるのが使命。夜10時過ぎ帰途につく。夜空には輝く月光、九州の被災地は大雨が降り続いていた。