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防風林「食料自給率の低下で問われる国民意識【2017年8月4週号】」

 ▼2016年度の食料自給率が公表され、供給熱量(カロリー)ベースで38%となり10年度から維持してきた39%を1ポイント下げ、生産額ベースが68%となり昨年度と比較し2ポイント上昇した。供給熱量ベースが低下したのは、小麦やテンサイなどの単位当たり収穫量の低下が要因だ。
 ▼釈迦に説法だが、熱量の多い穀類などの作付けから転換して、野菜や果実、花き類などの生産や消費を増加させると熱量ベースの自給率は低下、価格の高いものほど生産額ベース自給率の向上に貢献する。ということは自給率自体が農業現場の盛衰と結び付くわけではないらしい。
 ▼特にここ数年、飼料用米奨励もあり米の生産調整目標数量に対してマイナスに転じている。さらに米価低迷の中、換金性の高い野菜類など園芸作物への作付けへとシフトすることで、供給熱量ベース自給率は今後も低下傾向を示すことが予想される。
 ▼明治期の軍隊で脚気が流行、白米に偏った糧食が原因とみた海軍では、麦を混ぜた献立で患者は減少した。「白米で満腹になれる」と兵役志願者が増えた時代だ。今や、肥満防止に炭水化物を摂取しない食事を勧める医師もいるらしい。これでは米消費量は低下し続け供給熱量ベース自給率の向上は夢のまた夢。
 ▼農家が高収益な作物を選ぶのは当然だ。問題は、40%を切る自給率でも将来の食料安定供給に不安を抱かず、体の外見だけに重きを置く国民意識の広がりだ。年々低下する米需要量に、この国全体の熱量低下が気になってくる。