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防風林「兵法書『孫子』が子ども社会に必要なわけは?【2017年9月2週号】」

 ▼兵法書『孫子』がにわかにブームだそうだ。ビジネスを兵法の手法になぞらえるのは理解できそうだが、漫画版も出版され子供社会も計略が必要なご時世なのだろうか。
 ▼この兵法、紀元前500年頃の中国春秋時代の呉国・孫武が作者とされる(子孫にあたる孫臏〈そんぴん〉との学説も)。ざっくりと「五事七計」で構成され、事は道・天・地・将・法の五つで、自然や組織、人などの要素を基本とする。計は味方や敵を含めた状態を七項目に分けて冷静に分析して、後は、兵の勢いが大切だとする。
 ▼戦いは敵を打ち負かすことが常だが、孫子は「戦わずいかに損失なく勝つか」が上策で、これは経済学に通じる。嘘の情報を流し戦場をかく乱したり、調略で敵同士を反目させて力を削ぐ場面は、『三国志演義』や日本の歴史小説にも再三登場する。
 ▼一方の子供社会では、校内暴力で荒れた昔と異なり、今は陰湿なイジメが横行するという。今年も夏休み後半から新学期にかけて小・中学生の自殺報道が続いた。教師を含む子供社会のゆがみは、大人社会にも匹敵する厳しさがあるのかもしれない。
 ▼暴力や誹謗(ひぼう)・中傷などに対し正攻法で解決しようにも難しい時があり、戦わずにイジメっ子を悔い改めさせる戦法があればと考える。学校や組織を一先(ひとま)ず離れることで開ける未来もある。足利尊氏など多くの覇者も大敗を喫した後に再起した。大人も同じ。五事七計が整うまで自分磨きの期間があっていい。