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防風林「自国民の窮地を救えず軍事化は亡国だ【2017年9月3週号】」

 ▼大陸間弾道ミサイルの打ち上げや水爆実験を実施した北朝鮮に対し、国際的な制裁の連携が模索されている。これがさらなる妄動の引き金とならぬよう慎重さが求められる。
 ▼中国の後漢末、三国時代を勝ち抜いた魏。覇者・曹操の6男、曹植(そうしょく)は武よりも文才に秀でていたが、これを嫌う兄の曹丕(そうひ)(後の文帝)は「7歩の間に一篇の詩を詠め。出来なければ切って捨てる」と曹植に迫った。
 ▼曹植は緊張に震えながら「豆を煮るに/豆の殻を焼く/豆は釜中に在って泣く/これ同根より出づるものなり」と詠む。意訳すると、近親者同士や同族、そして人間同士の戦乱は醜いもの。曹丕は弟の文才を知り許したとされる「七歩の詩」の場面。
 ▼絶対的権力を維持する行為を煮豆と例えれば、これを作る過程で周辺国を威嚇し不安に陥れて、自国民の窮乏を顧みない政権はまさに、殻を火に投じているかのよう。中国昔話と現在の情勢が重なって見え、強力な軍事力を持つことで同根の民草が火中で泣いていては亡国への道だ。
 ▼わが国も明治維新後、「富国強兵」を旗印に軍事力を増強して大陸進出を画策した。だが同じころ、鉄鋼業を育成し鉄道網の整備など社会インフラの整備を急ぎ、農作物の品種改良を推進したほか養蚕、畜産・酪農を含めた農業近代化を図ったのも事実だ。北朝鮮の国民が貧困から立ち直った情報はない。ミサイルや水爆の開発に投じる費用で、農業振興が図られるはずだが。