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防風林「卸売市場の改革 効率性ばかりでは誰のためになるのか【2017年10月1週号】」

 ▼政府の規制改革推進会議で今後、卸売市場法の見直しについて審議される。大手外食店や大規模量販店の進出により、市場を経由しない相対取引の割合が増え、せりによる価格決定の役割や、市場に搬入せねばならない「商物一致」の原則が時代に合わないとの指摘は多かった。
 ▼「昔はさ、せり人はみんな独自の値頃感の尺度を持ってて、指し値に買参人が応えた。それが信頼ってんだね」。東京・築地、青果物の「やっちゃば」で、長年せり人として携わった大手卸の役員に聞いた時がある。季節や出荷量などで大まかな卸価格は決まる。現役時代に値頃感の尺度としたのは「缶飲料」だったという。
 ▼値動きが少なく手頃な価格の商品を基準に、天候や荷動き、経験も含めて値決めする「感ピューター」が、仲卸や小売りも納得する値に落ち着いた。だが今、天候不順で取れない野菜が、腰を抜かすほどの安さで量販店に並ぶ不可解さは何だろう。
 ▼大手量販店は直営や契約農場を増やし、大口相対で生産者を寡占化し大量に集荷する。赤字覚悟の目玉商品をそろえ誘客し、他商品の売り上げで利益を補う。小売店の客足を奪い閑散とした商店街ばかりの道筋だ。
 ▼市場は公平・公正な価格決定の機能がある。物流を牛耳る強者が高騰・暴落も思いのままでは、時代劇の「〇〇屋、お主も悪よのう」の偏った流通だ。折々の値頃感を示すことは、消費者や小売業者だけでなく農家にも益があるはず。効率性を理由に〇〇屋だけがニンマリする改革だけは避けたいものだ。