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防風林「西洋文化の模倣より地域文化残す手だてを【2017年10月4週号】」

 ▼八百屋の店先にカボチャが山積みされていたので近寄ると「ハロウィーンに」との表示。西欧が起源の伝統行事が人気らしい。先日、岐阜県の読者から手紙が届いた。小正月の伝統的行事「繭玉」を毎年、子供たちと作り飾っていて「伝統や歴史を伝えるため続けています」とある。
 ▼元旦は年神様や先祖の霊を迎える神事に対し、15日の小正月は家族で豊作を祝うのが一般的とされ、木の枝に餅を飾って祝う。地方によっては「餅花」「繭玉」と呼び名が異なるらしい。便りをいただいた方の地元では、昔から本物の繭で作っていて、養蚕農家がいなくなってしまい販売先を探しあて購入しているという。
 ▼各家庭で桑を植え繭を掃き立て糸を手繰っていた頃や、絹が主力輸出品だった時代は、繭を使う地方が多かったのかも。農業のありようとともに、古来からの伝承文化が姿を変えたり消滅したりしてきたのだろう。
 ▼練馬大根は漬物にし、藍や紅花は染料加工へ、菜種は搾って採油。地作物が作られなくなると同時に職人が減少し技術も途絶える。伝統野菜の研究家から問われたときがある。「なぜ京野菜や加賀野菜が残ってるか」と。「食材として欠かせない料理の文化があるから」なのだそうだ。
 ▼地野菜は先祖の霊への供え物として使われていたのに、嗜好〈しこう〉に合わない必要ないからと畑から淘汰〈とうた〉させた地域がたくさんある。縁も縁〈ゆかり〉もない行事に浮かれる国民って何ものなのか。繭玉作りを続ける地域住民をもっと増やさねば。