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防風林「地域連携の強化が命を救う最後の砦【2017年11月2週号】」

 ▼北陸地方のある小さな町で、男子中学生が自ら命を絶ったとの報道があった。同世代の子を持つ親は胸を痛めたに違いない。副担任教諭による執拗な叱責(しっせき)や担任の罵声などを気に病んだのが原因という。同僚教諭や校長なども認識しながらも制止や指導を怠っていた。
 ▼弱者への叱責や罵声を浴びせる行為は、わが身に火の粉が降りかかることを恐れる多数の日和見者を生み、少年の心の逃げ道をふさぐ。再発を防ぐには教諭免許の前に、適性や品性を見極める制度が必要かもしれない。
 ▼想定外の事件や災害が多発する中、「学校が最も安全」と親は思うがもはや考えを改めるべきか。だが、生徒同士の喧嘩(けんか)に駆けつけ仲裁し、校内での生徒のケガや発病には親に連絡し病院へ連れて行き、登下校時には街角に立って見守るような現職の教員はたくさんいる。だからこそ畏敬の念を込め先生と呼ぶ。
 ▼『坊ちゃん』(夏目漱石著)に登場する嫌味な赤シャツもなぜか愛嬌(あいきょう)があり、生徒たちが輪をかけ陽気で教師に負けてはいないのだ。内田百の随筆を映画化した『まあだだよ』(黒澤明監督)は、卒業後も教え子を見守り、教え子は老いゆく師を慕う、優しき人々の姿を描いた。
 ▼小さな町で途切れた一つの命。住民の多くが学校の卒業生に違いない。異変に地域社会が察知し抑止できなかった失態に思いをめぐらす必要があろう。地域活性化をどんなに叫んでも一つの命を救えねば意味はない。そんなところに住民連携のほころびが見えてくる。