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防風林「消費者無視のおごりが不正を招く【2017年11月3週号】」

 ▼製鋼・建機製造企業によるデータの改ざんに加え、自動車会社2社での無資格者による品質検査も明らかになった。世界的に著名な企業の不正は、"日本品質"の評価を一気に低下させるのは明らかだ。
 ▼農業分野でも農協系レストランで高級銘柄牛肉と偽り、格下ランク肉の料理を提供していた事案も発覚した。かつて同様の偽装で団体トップが引責辞任した歴史は忘却の彼方に迷い込んだのか。このような不祥事のたびに頭をよぎるのは、規則を徹底順守してきた多数の従業員のこと。
 ▼築きあげたブランド力は一蹴されて、販売力低下は企業の命運にかかわる致命傷になる恐れもある。製品に対する品質の裏付けは、機械も食も同じで「安全・安心」は絶対だ。使用者などへの背信行為を「人の噂(うわさ)も七十五日」と軽く考えてはならない。
 ▼農業資材の製品紹介を担当していたころ、ある研究機関の方から「仕様データを熟読すること。カタログは誇張が必ずあるから、うのみにしてはダメだ。それだけでも公正な解説がでるきはず」と教えられた。基本となる製品データが改ざんされていてはゆがんだ記事となってしまう。
 ▼「高性能」「壊れない」と評された日本製品は、使用者や消費者の声なき信用の蓄積であり、生産に携わる人すべての創意や努力の成果だ。生販過程における些細(ささい)な緩みや過失が、消費者の不信の声となりこだまのように増幅し、名声は容易に失墜する。改ざんや偽装は消費者不在のおごりから発生している。