ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

防風林「過去を冷静に分析しそれをどう生かすか【2017年11月4週号】」

 ▼農作業事故防止の講演などで引用される「ハインリッヒの法則」。重大事故の背景に29の軽い事故が発生し300の「ヒヤリ」とした不具合が存在する、という内容。
 ▼米国のハーバート・W・ハインリッヒが1930年代に出版した労働災害の学術書で発表し、今でも1を頂点に300が底辺の三角図形は労働衛生研修などで多用される。事故の未然防止には「危なかった」との記憶を軽く見ず原因究明し対策を講じることがもっとも大切だとする。
 ▼ドラマなどでは「サルでも反省はできる」と部下を叱責(しっせき)する場面がある。だけどサルは悪戯(いたずら)を止(や)めるのみで、目標設定の変更や行動の改善までは考えない。反省は「姿勢」ではない。第2次世界大戦で何故(なぜ)日本が負けたのか? 『超入門 失敗の本質』(鈴木博毅著)は当時の両軍の考え方の相違と現代組織を客観的に比較して興味深い。30年前に発刊された『失敗の本質』(戸部良一ほか著)の解説書だ。
 ▼「物量の差」を敗因に挙げる論者は多い。それも正しいが、事後を考慮せず戦域を拡大し続けた「戦略性の欠如」、精神重視の「硬直した思考力」、零戦や巨艦優先の「イノベーション変化への不対応」。致命的なのが、現場から報告された情報を軽視する「リーダーシップの欠如」「組織の責任不在」などにある。
 ▼日露戦争で薄氷を踏む際どさで勝った日本を冷静に分析せず、蒙昧(もうまい)な組織を築いたのが敗因。今後の日本や組織にどう生かすか? 照らし合わせ軌道修正するのが「反省」なのだ。