ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

防風林「生活文化に味添える味噌、仕込む風景を残したい【2017年12月2週号】」

 ▼寒さも日に日に増して、早くも年の瀬。秋に収穫した大豆を煮豆作りや味噌(みそ)仕込みに取り組む農家もいるのでは? 10月に掲載した味噌企画記事に「身近な食材なのに知らないことが多かった」などのお便りやクイズの解答はがきを読者からいただいた。
 ▼「三年を囲うつもりで豆を搗(つ)く」(後藤比奈夫)。俳句の世界では、「味噌焚(た)き」や「味噌搗き」などが冬の季語だという。豆を蒸したり煮たりして、麹(こうじ)と塩を混ぜ込むシンプルな手順だが、麹には米や麦を使い地域や家庭ごとに受け継がれた工夫が伝承されている。日本人と味噌との間には悠久の食の歴史が積まれている。
 ▼スーパーには塩分を抑えた田舎味噌から白味噌、赤味噌など多彩な製品が販売されてはいるが、子供の頃から朝晩にすすった味噌汁が懐かしく郷里の味に近いものを選んでいる。野菜や魚、豚肉などを味噌樽(だる)に埋め込み保存のきく漬物や、「○○鍋」と称した味噌と地域食材をぐつぐつ煮込む料理は、全国どこにでもある。
 ▼醤油(しょうゆ)も大豆加工でできる調味料の一つだが、穀物が豊富に取れない海辺の地方では、小魚やイカの内臓を発酵させて魚醤油などを醸造した。日本人の生活の知恵が、米や大豆、農産物を多様な食文化に育ててきた。
 ▼近年、農家でも豆を煮る家庭は少なくなった。「老いてより夫婦気の合う味噌仕込み」(古賀まり子)。老夫婦が大豆を栽培し仲良く味噌を仕込む。そんな農村の営みや風景は永劫(えいごう)に続いてほしい。