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防風林「成人式で改めて『どう生きるか』を問う【2018年1月2週号】」

 ▼成人式会場に集まった新成人。奇抜な羽織袴(はかま)の男子、花魁(おいらん)のような振り袖姿の女子も混じる。減少したとはいえ、今年も祝辞の最中に暴れる映像が流れ大人への階段を踏み外した「異成人」に見えた。
 ▼仕事などの諸事情で出席かなわなかった新成人もいたはず。騒いで周囲に迷惑をかけたことへの悔い改めの時が、彼らの成人式。数十年前の筆者も当日はアルバイト。今思えば帰りに入った赤提灯(ちょうちん)が成人式だった。
 ▼式前に貸衣装業者が姿をくらました詐欺事件は、大人への門出の非情な洗礼か。心待ちにしていた家族らの失意を思うと許し難い。だが、呉服店や美容室などによる無償の善意は、「世の中、捨てたものじゃない」と記憶に残したいエピソード。
 ▼1937年に発行した『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)が、約80年の時を超えて再び脚光を浴びているというので読んでみた。中学生の「コペル君」と、「立派な大人に」との言葉を残して亡くなった父親の願いを受け継ぐ「叔父さん」との、ノートを通じた心温まる物語。
 ▼友への背信行為に悩むコペル君は、叔父さんの「誤りをつらく感じるのは人間だけ...僕たちは誤りから立ち直れる」とつづられた文章に勇気をもらい謝罪、大人へと一歩近づく。
 ▼中国との戦時下にあって戦争批判をにおわす反骨の児童書だ。筆者は読者に「君たちはどう生きるか」と問う。現代の新成人や悪事に手を染める大人にも問い掛けたい。