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防風林「災害時に心癒やす歌もあれば怒りを表す歌があっていい【2018年3月3週号】」

 ▼東日本大震災発生から7年。時の速度が早いのか遅いのか。人それぞれの心に去来する思いの濃淡によって時間軸は変幻する。農林水産省が公表した津波被災農地の復旧率は平均で89%。原発事故の影響が残る福島は59%という現実からも、それは推し量られる。
 ▼被災地住民でなくても、テレビから連日流れた詩の朗読『こだまでしょうか』(金子みすゞ)や、NHKの震災復興支援ソング『花は咲く』(岩井俊二作詞)のフレーズとともに、当日の記憶を蘇らせるのは筆者だけではないかもしれない。
 ▼中越地震後の仮設住宅には平原綾香さんの『ジュピター』が静かに流れていた。7年前、東北の避難場所を巡回する若者の弾き語りの歌を、誰ともなく口ずさんでいたという。被災者の傷ついた心に音楽療法の効果が今、見直されている。
 ▼山形県長井市で40年余も農業や生活を題材に現場で歌い続けるフォークグループ「影法師」が出版したCD付きの書籍に見(聴き)いった。収録される『花は咲けども』(あおき・ふみお作詞)は「花は咲く」とは趣がかなり異なっている。
 ▼「花は咲けども 春をよろこぶ人はなし(省略)うらめし くやしと 花は散る」――地震・津波で大切な人の命、原発事故で故郷を失った住民の悲嘆を、無人の村に咲く花が誰にも見られず命を終える心情に乗せた。まさに、恨み節なのだ。憔悴(しょうすい)した心を癒やす歌もいい。時には、怒りを素直に表現する歌も大切だ。