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防風林「育成者の権利保護と農業者の採種を考えよう【2018年5月3週号】」

 ▼野菜などの収穫時に形質のいい株を残し、次作用に採種する慣習が農家の古い作業暦(ごよみ)にはあったはず。農家の手で何百年、何十年と継承してきたからこそ在来種は今に命をつなげる。
 ▼現在は、市場出荷を前提に商品性のある購入種子を作付ける農家が多い一方で、採種経験のない農家も珍しくなくなった。購入種子は企業や民間の育種者が種苗法にもとづき品種登録した作物。自家採種する農家の権利は尊重すべきだが、育成者の権利保護も大切だ。
 ▼主要農作物種子法廃止の弊害や平昌冬季五輪で国内品種系統の韓国産イチゴが大手を振るっている件にもつながる。稲や大豆などはもとより野菜や果樹の優良品種が育成者の許諾もなく自家増殖され国外などへの流出を許せば、日本農産物の輸出拡大にも影響しよう。
 ▼種苗法は、登録品種を自家増殖する場合に育成者許諾が必要な植物を指定していて現在は約350。育成者権の存続期間は野菜が25年で果樹などは30年。存続期間が過ぎたものや登録が消滅した品種については採種できるようになる。
 ▼市販種子は近年、固定種から再現性のない一代雑種(F1)に移行し、それが採種しない農家が増えた要因か。新品種登場で種苗店の倉庫に眠り育成者権が切れた種子は多い。そんな作物を播種してみると有用形質を再発見するかも。種子を循環させれば命は永遠に続く。その使命は農家にある。