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防風林「雑木林が支える伝統農法いつまで・・・【2018年5月4週号】」

 ▼地元雑木林の落ち葉を使い伝統農法を維持し続ける埼玉県南西部地域の活動を描いたドキュメンタリー映画「武蔵野~江戸の循環農業が息づく~」(原村政樹監督)の試写会が現地で開かれ出向いた。
 ▼この農法維持が強風による土壌流亡防止なども果たしている、と2年前の本欄でも紹介した。昨年3月に「武蔵野の落ち葉堆肥農法」として農林水産省の「日本農業遺産」に選定されている。映画は3年間をかけて、地元農家や落ち葉堆肥の源となる平地林と関わる人々を追い続けた渾身〈こんしん〉の作品。
 ▼同地域における江戸期の開拓は、短冊状に地割りし畑と家、林を交互に配置。区画が互いに接する平地林を共有利用させた歴史を今に残す。冬枯れで落ちた葉を家族で籠いっぱいに拾い集め積み上げ、ローダーでの切り返しを3年。完熟堆肥を施し野菜類を作る若夫婦を中心にした家族経営と、落ち葉を敷いて特産サツマイモの伏せ込み育苗を営々と続ける熟練農家が主役。
 ▼樹木を維持する人々や間伐材で工芸品を作る職人、住民ボランティアによる落ち葉収集活動で支える伝統農法。主題はここにある。畑を調査した土壌学者が「こんな肥よくな土壌は珍しい」と驚く場面が印象的。
 ▼土層の最も下の土から始まる継承の堆積が土質を変えた。試写の帰途、幹線道路から外れて雑木林を歩いた。日が傾きかけた風景は、畑越しに宅地開発による家並みと平地林を切り開いた工場予定地のフェンスが続いていた。