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防風林「基本を守ること、その連続が大切では【2018年6月1週号】」

 ▼米国の大リーグで18年間、第一線に立ち続け多くの記録を樹立したシアトルマリナーズのイチロー選手(44)が、球団の特別アシスタントに就任し今季を含め今後の活躍はもう見られないかもしれない。彼は基本の練習をストイックなほど繰り返す姿勢を崩さず、他の大リーガーたちも敬意を払うほど。
 ▼柔道の高段者から「習い始めは"投げた後に相手の袖(引手)は離すな"と教えられる。だが練習で海外選手はもとより日本代表級の選手でも順守する者は少ない」と聞いたときがある。相手のケガを回避する基本動作、この意識なく柔の道を究めたと言えないそう。
 ▼今夏は猛暑との予報だ。米の品質低下を警戒した深水管理や適切な肥培管理、慎重な水田観察など、普及機関などから「基本技術の励行」の呼びかけがあるはず。内容はまさしく「基本のキ」。プロ農家ならば指示されなくても当然の対処技術なのだが、気の緩みで痛手を被ることもままある。
 ▼規模拡大とともに、細やかな葉色観察や追肥が行えず不稔(ふねん)や白色粒発生を抑えられない場合も。例年通りの気象なら問題にもならなかった基本技術の不徹底が、取り返しのつかない事態を招いては泣くに泣けない。
 ▼年間に百数十試合も行う野球選手と違い、水稲農家は年に1度の真剣勝負、経営委譲までの数十回が限度。しかも対戦相手は作物と土、毎年姿を変える気象。田植えはほぼ終了し、収穫までのイニングはまだ中盤、まだ先は長い。