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防風林「農地のトイレは女性にとって大問題【2018年6月2週号】」

 ▼「男性はどこでもできるから気にしなくていいけれど、女性にとっては大きなことなのよ」――厠〈かわや〉・手洗い・便所、要するにトイレ問題のこと。農作業の最盛期に地元女性を臨時雇用する際、離れた園地に用が足せる場がないと敬遠されがちという。
 ▼東北地方の果樹産地で女性農業委員が就任早々、行政に要望したのがトイレ設置への助成だった。十数年前のこと、圧倒的な男性社会の中で、案の定「くだらない」と男性委員から拒否され、言い放ったのが冒頭の弁。その後も粘り強く交渉してようやく要望が通る。
 ▼農業女子が増えた現在は、意識改革なったかというとそうでもなさそう。簡易トイレを扱う企業の方の弁では「必要性は理解いただけるが、費用の件になると腰を引く」のだという。機械や農薬、肥料への投資は生産性に直結するが、妻や女性従業員などへの"気配り投資"は効率や利益に直結しない、との思考なのか。
 ▼アジア某国に農業視察したとき、隣との仕切りがなく床板に四角く開いた穴を見て、「ここではできない」と我慢。「男ならどこでも」というわけにはいかない。例え人けのない茂みや野山の側道でも気が引ける。そもそも見つかれば軽犯罪法違反になってしまうのだ。
 ▼多くの産業分野で人手不足、男女を問わず若者に農業へ参画してもらうには、労働環境は「いの一番」に配慮すべき課題と思う。この園地トイレ整備提案に、「不謹慎。くだらない!」と憤慨する読者はいよう。そんな人には言ってやりたい。「くだったらどうするんだ?」と。