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防風林「些細な気の緩みが大事故に・・・【2018年7月4週号】」

 ▼大阪北部地震から間もない月初め、西日本地方を中心とした記録的豪雨が田畑や家屋、人命までさらった後、今度は列島全域に猛暑が襲いかかってきた。天の戯れに怒鳴りたくもなる。
 ▼先週月曜日は「海の日」。日本海側の海辺で育った記憶のなかに、胸がうずく二つの出来事がある。五十数年前、海水浴場に近い郷里の家の前を、上半身裸で海水パンツ姿の小学低学年ほどの男児が、大声で泣きながら通り過ぎていく光景だ。
 ▼その1時間前ほどだろうか、急に暗雲が空を覆って屋根をたたく大粒の雨。遠雷がどんどんと近くなり閃光(せんこう)の瞬間、「ダンッ」と大音響。海沿いの松林に落雷したと感じた。後に、海水浴に来ていた家族連れの男性が着用していた海パンの金属製バックルに落ちたと耳にした。少年の父親だったのかどうかは定かではない。
 ▼そして3年前の夏の愚かな記憶。数カ月ぶりに帰郷し海辺を散策、低気圧の接近によって曇天の下は荒い波。海水浴客がいないのをいいことに、波打ち際で寝転んでいたらつい眠った。目覚めたのは県警か海上保安庁のヘリコプターのけたたましいローター音のせい。
 ▼前方百メートルほど先を低空でホバリング、寝姿が海難事故に見えたのかしばし監視していた。急ぎシャツを着ると飛び去ったのだが、思えば「天候悪化や高波の恐れあり」との警告もあったろう。些細(ささい)な軽率さが引き起こす事故は多い。夏になると、泣いて通り過ぎた少年の姿と無分別な自分への呵責(かしゃく)の記憶がよみがえる。