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防風林「棚田や森林の保護、子供でもわかるその意義【2018年9月1週号】」

 ▼国土の約70%を森林が占めるわが国は、河川が海に吐き出す堆積物で構成した扇状地や河岸段丘の平地部に田畑を拓(ひら)いてきた。さらに急傾斜に棚状の農地を築いた山村は多い。平野部でさえ高齢化や後継者不在で耕作放棄水田が散在する時代。棚田を含めた森林保全を真剣に考えねばならない。
 ▼農研機構・食と農の科学館(茨城県つくば市)に「緑のダム『棚田』の役割」と題した展示がある。森林、棚田、放棄され崩れた棚田の模型の上から、人工雨を降らすと、2本の透明な容器に水がたまる仕組み。
 ▼1本は「地下水になる量」が示され、水量は棚田が森林を超え一番多い。放棄棚田の方はほとんどたまらず、2本目の「洪水になる量」の容器に最も多くたまった。参観の子どもたちも水田や森林の持つ「涵養力(かんようりょく)」が容易に理解できるはず。
 ▼豪雨のたびに河川が氾濫し土砂崩れで人命が奪われる被害。子供らから「国はなぜ森林や棚田を守らないの」と質問されたら、大人は「経済性や効率性を優先し、狭い農地や高齢農家を大切にしないから」と説明せざるを得ないではないか。
 ▼与党議員で構成する棚田支援に関するPTは、涵養力や景観、歴史・文化的側面から保全や維持する法制化を目指すという。来年度からの森林環境税・同譲与税の導入目的「新たな森林管理システム創出」では、農と林を切り離さず、対象年齢も問わない山村集落の運営支援が重要だと思う。森林や棚田は人の手が入らねば管理できないからだ。