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防風林「多様な品種を自由に栽培するには・・・【2018年11月4週号】」

 ▼農林水産省はかつて「売れる米づくり」を施策に掲げていた時があった。易消化タンパク質を抑えた低グリテリン米(「春陽」「LGCソフト」等)や、低アレルゲン米など「機能性米」が一翼を担うものと期待していた。
 ▼腎臓疾患での療養者や医療機関などからの需要が高まる米では、と栽培農家や種子生産者を何度か訪ねたが、現場では農産物検査法の壁を知り栽培を断念するという。都道府県の産地品種銘柄米に指定されていなかったことが大きな理由だ。
 ▼自治体が産地品種銘柄に指定していない品種は、農産物検査対象ではないため「その他」の分類に該当し、品種名を名乗って販売ができない。例え、育成機関から種もみ供給を受け施肥法などを指導通りに実施し、成分が同質であってもだ。
 ▼産地品種銘柄選定の緩和で一定面積等の要件がそろえば「必須銘柄」のほか「選択銘柄」として認められやすい環境になったとはいえ、農家の品種選択が自由になったわけではない。有望な品種の前に立ちはだかり、新たな需要を模索する農家の生産意欲を削〈そ〉ぎ「米消費拡大」は本末転倒の話。
 ▼地元の篤農家が育成し長く栽培されてきたものの、優良品種に押され産地品種銘柄から除外された酒米を復活して、酒造りで活性化をねらった地域も挫折した。
 ▼農産物検査法改正に向け検討が始まる。銘柄拡大が検査員の負担ならば、画像解析など先進技術で効率的な検査ができるはず。人による目視より正確な判定が可能かも。