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防風林「完全な無人化作業を誰が望むのだろう【2018年12月1週号】」

 ▼トラクターを運転しながら、もう一台を無人操縦できる協調システムを搭載した機種が発売されている。数年後には歩行型でも乗用型でもない完全無人自律型トラクターが登場する予定という。準天頂衛星システム「みちびき」の成功で、GPS(衛星利用測位システム)も数センチの誤差という高精度になり現実味を帯びてきた。
 ▼耕起に往復1時間近くかかる欧米の農場では、ハンドルを握るだけの単調作業は精神的な負担で、複数の無人機を同時に運用して刈り幅を稼いだ方が効率的と考える。欧米の無人機の需要は「規模」の問題。日本では高齢・担い手不足の「人」的要因が大きいようだ。
 ▼中央果実協会の海外果樹情報によると、世界で果樹収穫ロボット研究が行われ、米国ではリンゴ分野で大学や企業が競っているらしい。一つは熟れた果実を選択してアーム先端でつかみ取る方式。二つめは樹木を揺らし枝から離れた果実を多段トレイで捕らえる方式。
 ▼前者は熟度判別するため高秀品率だが、作業能率や費用面に課題が残る。将来的に有望と目されるのが後者で、落果しやすい品種の試験で収穫率は90%、うち出荷が可能なのは85%、損傷・未熟果割合が高いと損失も大きい。一斉収穫では熟度の均一性は必須で、まして落果しやすい品種の限定では台風常襲国・日本では使えない。完全なロボット化には越えるべき制約は多いのだ。