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防風林「技術革新に潜む功と罪の認識が重要【2019年1月3週号】」

 ▼明治維新から150年。維新後、地位や生活の途を失ったうえ薩摩・長州出身者に偏る新政府人事、急激な西洋文化の模倣化などに不満を抱く旧士族らによる反乱が多数発生。中でも1877年に薩摩士族が西郷隆盛を擁立し挙兵した西南戦争は、新政府の根幹を揺るがすほどの規模に拡大した。
 ▼封建社会から近代国家への転換点とされ、勝敗を決した最大の要因は「技術革新」だったという。薩軍は旧態依然とした武士集団、対する政府軍は平民の徴兵が主体。薩軍幹部の桐野利秋は「鎮台兵には刀はいらぬ。青竹で十分」と豪語していたというから、精神論が優先の挙兵だったらしい。
 ▼薩軍は刀槍(とうそう)と銃口から弾丸を装填(そうてん)する旧式銃を主力武器とし、政府軍は野砲のほか元込め式の連発可能な新式銃だ。初戦では接近戦で優位に立つものの最新兵器の破壊力のまえに、熊本城陥落どころか後退につぐ後退を余儀なくされたのだ。
 ▼世はすでに新橋・横浜間を汽車が走り、西南戦争時には鉄路は京都・神戸間に延び、物や人の移動を短縮化した。さらに、電信網は戦域拡大とともに九州に広がって、中央政府に戦況が即時に伝えられ、兵士や物資の補強により政府軍が勝利して封建社会は終焉(しゅうえん)した。
 ▼原動機や爆薬・化学薬の発明は、戦争や犯罪をより凄惨(せいさん)にした黒歴史があるにもかかわらず、副産物の"快適生活"の恩恵だけが脚光を浴びる。現在の技術革新を享受するとき、この功と罪の認識が重要だ。