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防風林「国の統計は 国家の信頼を確保する【2019年2月3週号】」

 ▼「大陸の彼(か)の国は、国土が広すぎ国民の人口さえ把握できないのでは?」などと冗談を言っている場合ではない。政府の勤労報酬に関する統計調査で、定められた層の企業に実施せず、実態と離れた数値だった案件が社会問題化している。
 ▼失業手当など国民に支払われる金額を決定する際に、その数値が用いられる重要な調査だ。すでに支払い済みの額に対し、差額分の支出に100億円を超える国家予算が必要とされているという。政府職員のガバナンス低下が、統計に加え国自体の信頼性を傷つけかねない。かつての"消えた年金"問題では旧社会保険庁が解体される事態だった。
 ▼調査にあたった特別監査委員会の杜撰(ずさん)な調査も指摘され仕切り直しが求められたうえに、過去データの一部が残っていないお粗末さ。民間を行政指導する機関の監視が必要とは愚の骨頂。
 ▼農林水産関係の統計の中には、農林業センサスや農業構造動態調査、水稲作柄概況(作況指数)のほか自然災害発生時の被害状況調査などがあり、それぞれが施策方針や農産物価格水準の判断などに直結するため精緻な調査であってほしい。
 ▼調査対象者の不在や回答拒否など、担当者の苦労話もよく耳にする。だからといって「曖昧」「いい加減」であっていいわけがない。彼の国から「日本だって同じじゃないか」と哄笑(こうしょう)されてはたまらない。地味な統計調査で得られた数値や結果は、国家の「威信」や「信用」に直結するのだ。