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防風林「知的財産保護早急に対応が必要【2019年3月4週号】」

 ▼和牛の精液や受精卵を他国に流出しようとした事案が、中国の検疫官によって発覚。他国への拡散を今回はからくも水際で食い止めることができたのはよかった。
 ▼旅行客が持ち出せない植物を、軽い気持ちで荷物に紛れ込ます程度の過失ではない。冷凍保存した当該物を専用アルミ容器で運搬したというから、転売目的の遺伝資源の流出で密輸出だ。そもそも国内で育成した銘柄イチゴの苗などが隣国に渡り栽培され、その果実の輸出で外貨を稼ぐ現実も。
 ▼和牛について、網の目をすり抜けて第三国に渡っている氷山の一角ではとの懸念もあり、他の事犯がないかを厳しく調査すべきだ。日本の知的財産権保護への国民意識は高いとは言えず無防備状態。「日本の高品質生産技術を海外では真似(まね)できない」とたかをくくっていたのでは。国は法改正を視野に検討する方針だが手遅れ感もある。ブドウの「シャインマスカット」は中国各地で栽培され大人気。
 ▼近代日本の黎明期(れいめいき)は殖産興業の名のもと多額な投資によって、工業や農業の欧米専門技術者の招聘(しょうへい)や品種を導入。わが国の風土に合うよう改良し瞬く間に先進国へ突き進んだ。だが今、日本が積み上げ創意工夫した結晶を詐取・模倣する国をただ指をくわえ見ている。
 ▼農産物の海外輸出の促進を国家戦略にすえるのならば、検疫の水際強化に加え、国際的な知財権取得への支援や権利侵害に対して迅速でかつ厳しい対応が政府に求められている。