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防風林「消えゆく都市部の農業空間【2019年4月4週号】」

 ▼通勤で利用する地元の駅近くに1ヘクタールほどの畑が広がる。露地野菜主体の農家で、道路に面した一角にはクリ林がある。数年前からヤギを飼っており、通りかかる人たち、特に子供たちに人気だ。
 ▼はじめはクリ林に放し飼いしたが、数カ月後にはロープでつながれた。雑草よりもクリの樹皮を好んで食べ、若木が何本か枯れてしまったためだ。クリはヤギの好物で、樹皮や実を食べないよう対策する必要がある。今ではクリ林を囲む柵をめぐらせ、クリを守っている。
 ▼ヤギは、最盛期の1960年代に約60万頭飼養されていたが、2005年に2万頭を割り、以降は増減を繰り返している。16年の飼養農家数は3614戸、飼養頭数は1万7225頭だ。農地などの雑草抑制への利用が注目されている。
 ▼都市農業には、農産物の供給だけでなく、緑地空間や景観、農業を身近に体験する場として、さらには災害時の防災空間など多様な役割の発揮が期待されている。その農園も一部を農業体験農園にし、休日には大勢の人が農作業を楽しんでいる。収穫祭などの行事は、家族連れでにぎわう。
 ▼ただ、地元の駅周辺では、畑が更地になり、マンション建設の看板が立つ場所が複数ある。日本の人口は減少に転じ、首都圏の古い団地では、高齢の独居者や空き部屋が増え、"過疎化"や"買い物弱者"問題が浮上する。わざわざ少なくなった農地をつぶし、憩いの空間をなくす必要はあるのか。