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狩猟・食肉処理・販売先確保 有害鳥獣は新たな資源【12月1週号 鹿児島県】

 【鹿児島支局】「うちのジビエ(野生鳥獣肉)を食べてもらえれば、肉のイメージが変わる」と話すのは、合同会社大幸で代表を務める時吉大喜さん(34)。出水市荘で水稲35ヘクタール、麦3ヘクタールを作付けるほか、県内では数少ないジビエ食肉処理施設を経営する。狩猟から解体・加工、販売まで取り組み、地域の有害鳥獣を新たな資源へとつなげた。同市では以前から農作物の鳥獣被害が多く、「早期水稲はカモの被害に悩まされていた」と時吉さん。父や親戚の影響もあって24歳で狩猟を始めたが、有害鳥獣を処理できる施設が整っていなかった。「捕獲した有害鳥獣をジビエとして有効活用できないか」と、補助金などを活用して2019年、ジビエ食肉処理施設の運営を始めた。現在、カモやシカ、イノシシなどの有害鳥獣を加工。地域の猟友会が捕獲したイノシシとシカも解体・加工する。「新鮮さで味に大きな差が出てしまう。捕獲後すぐに血を抜いて、搬入まで1時間以内のものだけを受け入れている。野生動物特有の臭いが出ないよう工夫している」。同社は「消費者に安全・安心な肉を届けたい」と、国産ジビエ認証制度を今年8月に取得した。「ジビエは北海道などが有名で、県内のジビエはまだまだ発展途上。安全・安心な肉を提供し、多くの人に手に取ってほしい」。現在は受注販売やインターネット販売のほか、県内外のレストランにも卸し、ふるさと納税の返礼品として出品する。「設備の整った施設で適切な衛生管理体制の下、丁寧に処理した肉を提供している。食べた人の『おいしい』の一言が何よりの励みになっている。鹿児島のジビエをもっと知ってもらい、多くの人に食べてもらえたら」と時吉さん。「地域になかった処理施設ができ、販売先を確保できたことで、有害鳥獣が新たな資源となった。狩猟が盛んになり、農作物被害が減って地域の農家さんが安心して農業に取り組める環境になれば」と話す。